マンション売却の第一歩である売却査定は、売却活動全体の成否を左右する重要な要素です。しかし、査定額の決まり方や適正な価格の見極め方が分からず、不安を感じる方も少なくありません。本記事では、マンションの売却査定の仕組みや高く売るための活用術、失敗しないためのポイントを解説します。
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マンション売却査定とは?基本の流れを押さえよう
マンション売却査定の注意点を見る前に、そもそも売却査定とはどのようなものなのかを解説します。
マンション売却査定とは
マンション売却査定とは、マンションを売却するにあたって「その物件がいくらで売れそうなのか」を不動産会社に査定してもらう手続きです。不動産取引では、売却査定で算出された金額をもとに売出価格を設定するのが一般的です。
実際の売買金額(売れる金額)は購入希望者との交渉次第であるものの、売出価格は販売開始時点での価格の判断材料となります。そのため、マンション売却査定を成功させることが好条件で売却するカギだと言えるでしょう。
マンション売却査定の流れ
マンション売却査定は、一般的に以下の流れに沿って進んでいきます。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 簡易査定(机上査定)を受ける
- 訪問日時を決定する(訪問査定へ進める場合)
- 訪問査定を受ける
- 査定結果の報告を受ける
それぞれを詳しく見てみましょう。
1.不動産会社に査定を依頼する
まず、不動産会社にマンション売却査定を依頼します。公式ホームページから問い合わせたり、電話で依頼したりする方法があります。
査定を依頼する際は1社だけに絞らず、なるべく複数社に依頼して査定結果を比較検討できるようにしましょう。
2.簡易査定(机上査定)を受ける
マンション売却査定の方法には「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定」の2つがあります。そのうち、不動産会社が実際に部屋を訪問しない簡易査定(机上査定)を希望する場合は、マンション名や部屋の広さ、階数や向きなどを伝えてメールや書面で査定結果を受け取り査定は完了です。
3.訪問日時を決定する
訪問査定による詳しい査定結果が知りたい場合は、不動産会社の訪問日時を調整します。訪問査定には1時間〜2時間程度必要となるため、時間に余裕を持って日時を設定すると良いでしょう。
4.訪問査定を受ける
訪問日時が決まれば、不動産会社に室内を確認してもらいます。その際、不動産会社から質問されることがあり、その回答によっては査定金額が変わることがあります。質問に対して明確に答えられるように、書類の準備などを忘れないようにしましょう。
5.査定結果の報告を受ける
一般的に、訪問査定の1週間後までには査定結果がわかります。提示された金額の根拠についてしっかり説明を受け、実際に売却に進むかどうかを検討しましょう。
マンション査定額はどう決まる?評価のポイントを解説
マンション売却査定の重要性や流れが理解できたところで、ここからは査定額がどう決まるのかを解説します。
交通アクセスや周辺環境
交通アクセスや周辺環境などの立地環境は、査定額に影響を与える重要なポイントです。立地環境が良いマンションは需要が高くなるため、査定額のアップが期待できます。
たとえば、「最寄り駅から徒歩10分以内である」「学校や病院などの公共施設が近くにある」などの条件は、査定額が上がりやすいポイントだと言えます。一方、「徒歩圏内に駅やバス停がない」「ゴミ処理場が近くにある」などの立地環境はマイナス評価につながるため、査定額が低くなるケースが多いでしょう。
管理やメンテナンス状況
マンションの管理やメンテナンス状況によっても、査定額が変動します。近年は「マンションは管理を買え」と言われるほど、マンション管理は売却において重要な要素となっています。
具体的には、「大規模修繕計画で建物の長期的な管理がなされている」「エントランスや植栽の日々の管理が行き届いている」などのポイントが査定額のアップにつながるでしょう。
また、建物の老朽化を防ぐための修繕や、耐震性を高めるための対策を定期的に行っているかも評価につながります。
築年数や間取り
築年数や間取りも査定額に影響する要素です。以下のグラフは、国土交通省が公表している新築の時点から時間の経過によってどれだけ資産価値が下がるのかを調査したものです。
これを見ると、マンションは築10年で価格が約20%〜25%減少、築25年が経過すると約半分にまで資産価値が下がっていることがわかります。つまり、築年数の経過とともに査定額が低くなることが一般的だと言えます。
また、マンションの主要ターゲットであるファミリー層には、家族で使いやすい3LDKや4LDKの間取りが人気です。そのため、1Kなどの単身用物件と比較して、3LDKや4LDKなどのファミリー物件のほうが査定額が高くなる傾向にあります。また、都心の人気エリアでは、築30年を超えても高値で売れるケースもあります。
市場動向
マンションの査定価格は、市場動向や社会情勢の影響も受けます。
たとえば、政策金利が上昇するとそれに連動して住宅ローン金利も上がるため、マンション購入の需要が減り、価格が下落します。一方で、円安により建築コストが高騰したり、企業の人手不足の影響により人件費が上がったりすると不動産価格は上昇します。
このように、マンション売却査定ではマンション自体の強みを活かすだけでなく、市場動向も踏まえてタイミングを図ることが大切です。
訪問査定 vs 簡易査定、どちらを選ぶべきか?
マンション売却査定で最初に悩むのは「訪問査定か簡易査定のどちらかを選べば良いのか」という問題ではないでしょうか。ここでは、訪問査定と簡易査定の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。ここで紹介するポイントを参考にして、自分に合った査定方法を選びましょう。
訪問査定
訪問査定とは、不動産会社の担当者が実際に現地に訪問して査定を行う方法です。室内の状況や周辺環境など、細かい部分まで確認して査定額を算出するため、簡易査定と比較して精度の高い査定結果が期待できます。
訪問査定のメリットは、実際に担当者に会って話を聞けるため、査定結果だけでなく資金計画や販売戦略のアドバイスも受けられる点です。さらに、複数の不動産会社に査定を依頼している場合は、直接話を聞くことで不動産会社を見極める判断材料になるでしょう。
その反面、査定結果が出るまでに時間がかかってしまうことがデメリットです。訪問査定では、室内以外にも周辺環境を調べたり、法務局や役所などで権利関係や法規制の調査をしたりする必要があります。その後、調査結果をもとに近隣の成約事例と比較して評価するため、査定結果が出るまで1週間程度かかることが一般的です。
このような特徴から、訪問査定は「査定が出るまでに時間がかかっても精度の高い査定結果が欲しい」という方に向いています。
簡易査定(机上査定)
簡易査定とは、物件情報や近隣の成約事例などの情報をもとに査定額を算出する査定方法です。現地に実際に訪問せず、データを用いて査定を行うことから「机上査定」とも呼ばれます。
簡易査定のメリットは、査定結果が比較的すぐにわかることです。訪問査定の場合、訪問日程の調整や現地での立ち会いが必要であるため、最低でも数日から10日程度の時間がかかってしまいます。その点、簡易査定であれば早ければ当日中、遅くても数日で査定結果が届きます。
ただし、簡易査定はあくまでマンション情報や成約事例などのデータのみを参考にしているため、実際に売却できる金額と大きな差が生まれるおそれがあります。たとえば、室内をこまめに修繕している部屋と管理状況が悪い部屋では、査定価格に大きな価格差が生じます。
そのため、簡易査定は「多少査定結果の精度が低くても早急に査定結果が知りたい」方におすすめの査定方法です。
マンション売却査定で注意すべきポイント
ここからは、マンション売却査定を受ける際に気をつけるべきポイントを見ていきましょう。
マンションに関する書類を用意しておく
マンション売却査定を受ける際は、マンションに関連する書類を事前に用意しておきましょう。査定時に書類があれば、不動産会社からの質問に明確に回答でき、より正確な査定結果が得られます。それにより、不動産会社が物件のアピールポイントを把握できるため、査定額のアップにつながります。
主に、以下の書類を用意しておくと良いでしょう。
- 登記識別情報通知または登記済証(権利証)
- 分譲時のパンフレット・間取り図
- 購入時の重要事項説明書
- マンションの管理規約・大規模修繕計画
- 耐震改修工事やリフォーム工事に関する書類
- 住宅ローンの返済予定表
もし、どの書類を用意すれば良いのかがわからない場合は、査定依頼時に不動産会社に相談してみてください。
査定額と売却額は必ずしも一致しない
不動産会社が算出した査定額は、実際に売れる金額とは必ずしも一致しないことを理解しておきましょう。実際にマンションが売れる金額は、売主と買主の意思の合致が必要であるため、交渉によっては売出価格より低い金額で売買が成立するケースがあります。
たとえば、相場が3,000万円のマンションの場合、相場通りの金額で売り出しても購入希望者が現れなければ売買は成立しません。一方、同じマンションを相場より高い3,500万円で売り出して購入希望者が1人でもいた場合は、その金額で売買が成立します。
同じエリアでも、買い手のニーズによって価格が上下するため、マンション売却査定を依頼する際は提示された査定額を過信しすぎず、金額だけで不動産会社を選ばないようにしましょう。
信頼できる不動産会社を選ぶ
マンション売却査定は、信頼できる不動産会社に依頼することが大切です。悪質な不動産会社に査定を依頼すると、実際には売却できない高額な査定額を出して、とにかく媒介契約を締結しようと迫ってくることが考えられます。また、売却後にトラブルが起きても全く対応してくれない不動産会社も存在します。
信頼できる不動産会社かどうかを見極めるためには、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 地域情報に精通しているか
- マンションの売却実績が豊富か
- 電話やメールで真摯に対応してくれるか
上記に気をつけて不動産会社を選ぶことで、悪質な不動産会社に遭遇する可能性を大幅に減らせるでしょう。
高く売るための査定活用術
ここからは、マンション売却査定をうまく活用して、好条件でマンションを売却するコツを紹介します。
値引き交渉前提で売出価格を決める
売出価格は、値引き交渉がある前提で設定しましょう。マンション売却では、購入希望者から値下げ交渉を受けるケースが多くあります。そのため、「どのようにして値下げ交渉を防ぐか」を考えるよりも、値下げ交渉前提で価格を設定したほうが、お互い満足した価格で売買できるのです。
たとえば、希望売却価格が3,000万円の場合は、売出価格を3,080万円に設定すれば余裕を持って値下げ交渉に応じることができます。ただし、売出価格を高く設定しすぎると売却のチャンスを逃してしまうため、金額設定は慎重に行う必要があります。
ゆとりのあるスケジュールを組む
余裕を持ったスケジュールで売却に臨むことも、マンションを高く売るためのコツです。売却しなければいけない時期が決まっている場合、ギリギリのスケジュールだと焦って売り急いでしまい、最終的に値下げせざるを得なくなるケースが考えられます。
公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「
首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」では、
中古マンションの売り出しから成約にかかる期間(2024年)は85.3日です。このことから、マンション売却では、
売り出しから少なくとも3カ月以上の余裕を持つことをおすすめします。
時間をかければ高く売れるとは限らないものの、なるべくゆとりのあるスケジュールで売却活動を進めると好条件で売れる可能性が高まります。
関連リンク
マンションを売却する際、どれくらいの期間がかかるのかは、多くの売主様が心配される部分です。本記事では、東京23区のマンションのケースを例に、売却期間の目安や売却活動のプロセス、売却をスムーズに進めるためのポイントについて解説します。
内覧前に室内を整理整頓する
売却活動中は、購入検討者の内覧に対応する場面が出てきます。内覧で良い印象を持ってもらうためには、室内の整理整頓や掃除を行い、清潔感を出すことを意識しましょう。
特に、以下の項目を重点的に確認してください。
- 不要なものの処分や整理整頓を行う
- 収納内も整理しておく
- キッチンやトイレ、浴室などの水回りを綺麗にする
- タバコやペットなどの室内の臭い対策を行う
内覧が決定してから急いで対策するのではなく、売却活動を始めてから少しずつ準備を進めれば、スムーズな内覧対応ができるでしょう。
査定後の流れと売却までの手続き
査定を受けた後は、どのように売却に進んでいくのでしょうか。ここからは、査定を受けた後の流れについて解説します。
査定の根拠を確認する
査定結果が届けば、まずその根拠を確認しましょう。根拠がはっきりしていないと、査定額が相場と乖離するおそれがあるためです。
特に、過去の成約事例の量と同じマンションの成約事例を確認します。参考にする事例の量が多いとその分信憑性が増しますし、同じマンションの直近の事例が最も参考になるためです。
不動産会社と媒介契約を締結する
売却を依頼する不動産会社が決まれば、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約とは、売主と不動産会社との間で、マンション売却にあたり売却活動や手数料などの条件を定めた契約のことです。
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
|
専属専任媒介契約 |
専任媒介契約 |
一般媒介契約 |
依頼可能社数 |
1社 |
1社 |
制限なし |
募集状況の 報告義務
|
7日に1回 |
14日に1回 |
報告義務なし |
不動産流通機構への 登録義務 |
媒介契約から 5日以内 |
媒介契約から 7日以内 |
登録義務なし |
自ら購入者を 見つけてきた場合 |
自ら探した相手と 契約不可 |
自ら探した相手と 契約可 |
自ら探した相手と 契約可 |
不動産会社からそれぞれの特徴をしっかりと聞き、自分に合った契約内容を選びましょう。
関連リンク
不動産の売却をする際には、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には種類があることをご存知でしょうか?媒介契約にはどのような種類があり、どのように違うのかを解説します。
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専任媒介契約とは、不動産売却を1社の不動産会社に任せる契約です。他の不動産会社に依頼できないため、売却活動の窓口が一本化され、情報が整理されやすくなります。また、不動産会社には売却状況の報告義務があり、売却活動の透明性が向上します。不動産会社の対応力が成否を左右するため、信頼できる会社を選ぶことが重要です。
売却活動を開始する
不動産会社と媒介契約を締結すれば、売却活動が開始されます。売却活動では、主に以下の業務が行われます。
- 広告活動
- 内覧準備
- 内覧対応
- 購入希望者との条件交渉
- 取引全般のサポート
実際に売主が行うのは、主に内覧準備と内覧対応です。スムーズに売却が進むよう、不動産会社から内覧対応について積極的にアドバイスを受けましょう。
購入希望者と交渉を行う
マンション購入を決断した購入希望者から、希望額や希望条件が記載された購入申込書が提示されます。具体的には、購入の意思表示や希望金額などが記載されています。売主として交渉に応じ、条件がまとまれば次のステップへ進みます。
売買契約を締結する
購入希望者との交渉が成立すれば、売買契約の締結が行われます。売買契約には、不動産会社の担当者、売主、買主が集まるのが一般的です。
売買契約書に署名・捺印を行い、買主から手付金を受領すれば売買契約の完了です。手付金とは、売買契約がキャンセルになった際に違約金としての役割を果たすお金で、売却価格の5%〜10%が目安となります。
マンションを引き渡す
引き渡しの場所は、一般的に買主が住宅ローンを組む金融機関で行われます。買主から手付金を除く残代金を受領し、部屋の鍵やマンションに関する書類を引き渡せば、引き渡しの完了です。
売却により利益が出た場合や税金の特例を利用する場合は、引き渡し後に確定申告が必要です。
まとめ
今回は、マンションの売却査定で失敗しないためのポイントや、査定を受ける流れを解説しました。マンションの売却査定で失敗しないためには、自分でも市場相場を調べて提示された金額が適正かどうかを判断できるようにしなければなりません。
また、査定価格と売却価格は必ずしも一致しないことを理解した上で、信頼できる不動産会社を見つけることが大切です。信頼できる不動産会社を見つけるためには「査定額とともに明確な根拠を提示してくれる」「マンションの売却実績が豊富である」などのポイントを基準にすると良いでしょう。
マンションの売却査定で失敗したくないという方は、この記事で紹介した内容を実践してみてください。