お知らせINFORMATION

最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年8月17日

2016年夏の人気テレビドラマ「家売るオンナ」。
テーコー不動産営業マン・ウーマンたちの人間関係に少しずつ動きが出てきた第5話。今回も中古マンションの売買にまつわる業界の裏話をご紹介していきます。

Basic RGB

「マンション買うのやめます」揺れ動く顧客の気持ち

一般の消費者にとって、不動産購入は人生で一番大きな買い物で、初めて購入するという方がほとんど。無事に引き渡しを終えるまで、とにかく不安でいっぱいです。

なので、昼には満面の笑みで「絶対に買います!」と言っていたお客様から、夜遅くに断りの電話をいただいたことは何回もあります。
われわれ不動産仲介業者にとっても、契約締結までは一時も気を抜けないのです。

申し込みまでは購入に前のめりになっていた詩文と歩子ですが、心境の変化から、2人とも庭野に断ることを伝えます。

自信と喜びに満ちている庭野に、「本契約まで気を抜くな!」と叫ぶ万智はここまで見越していました。断りが入ることなど想定内なのです。

本当の営業はここから。不安に飲み込まれたお客様をどのように安心していただけるまでお導きするかが、営業マンの腕の見せどころです。よく言われる「断られてからが営業」というやつです。

「アリとキリギリス」、お客様はどっちのタイプ?

歩子と詩文それぞれに対し、万智は「アリとキリギリス」のイソップ寓話を引用し、まったく異なるアプローチで最後の営業攻勢をかけます。

校閲部で真面目にこつこつ働く歩子には「あなたは勤勉なアリだ、日本の美徳そのものだ」と。
一方の詩文に対しては「歌うべき歌を歌い、誇り高く使命を果たし、今この瞬間、命を謳歌するキリギリスだ」と語ります。

アリとキリギリス

相手によって価値観を柔軟に言い換える万智の営業トークは、頭の中だけで都合よく考えているのではなく、彼女自身の幸せを心の底から希求する人生観に基づいたものなのかもしれません。

人の生き方に優劣はなく、それぞれがいろいろな事情を持ち、自分なりに一生懸命生きている中で、心の底から「家が欲しい」と思っている。
そんな一人一人の気持ちを、万智は決してないがしろにはしません。

全ての人の生き方に価値を見出すことができる柔軟性は、万智の営業姿勢の大きな礎となっているところです。

庭野との帰り道、店の軒先で雨宿りをしているときに万智はふと、自身に辛い過去があったことを明かします。
「何があってもあの時以上に辛いことはない」。
こんな信念から生まれた万智の前向きさは、客に懐の深さを感じさせ、心を打つのかもしれません。

営業マンを育てるのは社内の先輩・上司だけではない

庭野は詩文に「何とかしろ」と迫られて、同じマンションに売り物件がないかを探しに行きます。
同行していた白洲美加(イモトアヤコ)は、居住者のおばあちゃんに雑用を頼まれますが、途中で投げ出し庭野に押し付けてしまいます。
庭野はけなげにおばあちゃんに言われるままに雑用をこなし、雑談につき合うのですが、おばあちゃんは突然、「この家を売りたい」と言いだします。

この場面には、われわれ営業マンにはとても感じるものがありました。

「ウソかホントかわからないけれど、あんたからなら買うよ」。お客様との信頼関係を構築できた結果、こんなふうに言ってもらえた経験が蓄積するたび、それらは営業マンの人間的魅力となり、営業力を重厚なものにしていく。

この仕事の醍醐味が、ドラマでしっかり描かれていることに大きな感動を覚えました。

ieuru_vol5_3_goodrelation

不動産営業を通じて成長する姿も見ものです

「家を売ること」への強い思いの理由が徐々に明かされていく万智、そんな万智のことが気になる庭野。その気持ちは庭野をどこへ引き上げていくのでしょうか。

当たりの客にたまたま出会うなど何かと「引き」が強いのに、自分で全く生かせていない白洲。
知らず知らずのうちに万智の影響を受けている屋代課長(仲村トオル)。
トップの座から転落中の足立(千葉雄大)は、全員が帰った後も遅くまで仕事をしていますが、回を追うごとに大きくなってくる万智の存在感に明らかに焦りとストレスを感じています。

オーバーな表現や、テレビドラマならではのご都合主義的な展開ながら、営業マンや客の心理描写については些細な部分にリアリティが差し込まれていて、われわれ本職もうなる「家売るオンナ」。今後の展開も見逃せません。

(監修:不動産流通システム)

カテゴリー:

最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年8月11日

不動産会社のスーパー営業ウーマン三軒屋万智(北川景子)が、「私に売れない家はありません!」とプロ意識に満ちた言動と奇想天外な切り口で家を売りまくる痛快お仕事ドラマ「家売るオンナ」(日テレ系水曜ドラマ)は、視聴率平均12%と高い人気を維持しているようです。

Basic RGB

第4話は、万智を取り巻く今後の恋模様を期待させるお話です。万智が意外にも結婚願望が強いことや、同僚たちがほのかに万智を意識し始める様子がコミカルに描かれています。「家を売る」部分は、前回までと比較すると少なくなりましたが、今回もドラマの内容を振り返りながら、不動産業界の実情をご紹介しましょう。

お金を持っているかどうかは、外見ではわからない!

万智の後輩で新人の白洲美加(イモトアヤコ)は酔いつぶれた公園でホームレス風のおじさん、富田(渡辺哲)と知り合います。
富田は次の日に会社を訪ねて来て「家を買ってやろうか」と言いますが、白洲は本気にせず追い返してしまいます。
それを見た万智は「お金を持っているかどうかは外見では分からない!お前は家を買いたいという人を追い返したのか!」と怒鳴り飛ばします。

現実の不動産営業でも、お客様の外見や身なり、年恰好などから、このくらいの金額の物件なら買ってくれそうだ、これは手が届かないだろう、などと第一印象で紹介する物件の価格レベルを判断してしまうことがあります。
ベテランの営業マンほど、自分の経験による判断基準を持っているので、その傾向は強いかもしれません。
ホームレス風のおじさんというのは極端な例ですが、ほとんどの営業マンは丁重に追い返してしまうことでしょう。

しかし、売主様と買主様の双方が満足する物件選びをサポートするためには、やはり外見や第一印象ではなく、
何度も会話を重ねて信頼関係を築き、お客様の事情を的確に把握していくことが重要だといえます。

ieuru_vol_4_man

融資が下りない場合は? ローン条項の規定について

不動産会社が買主様の経済状況にも不安がないと判断し、契約を締結しても、銀行や金融機関から融資の承認が得られずに取引が流れてしまう、ということも現実にはあります。
そのため、買主様が融資を利用して購入資金を手配する場合、売買契約書には
「融資の全部又は一部について承認が得られない場合、買主は一定の期日内であれば契約を解除できる」
という内容の特約条項を盛り込んでおくのが一般的です。
これがいわゆる「融資利用の特約」いわゆるローン特約です。

この特約によって契約が解除された場合、契約は無かったことになりますので、買主様は保護され、売主様や仲介会社は、すでに受領した手付金や仲介手数料を無利息にてすみやかに返還しなければなりません。

一方で、買主様側の権利の乱用を防ぐために、融資の承認が得られるように努力する義務を負うこと、利用する金融機関・融資金額・融資承認期日等を明記することが求められます。

屋代課長は営業マン失格? 不動産業者に求められる役割

屋代課長(仲村トオル)は、長年の上得意である高級料理研究家の沢木峰乃(かとうかず子)に7億円のマンションを勧めていました。
屋代課長はかつて、沢木に自宅や投資マンションを何軒も買ってもらっています。
しかし、沢木は現在、本業が不振に陥り、新規購入どころか破産寸前。投資物件は全て売却済み、自宅も売却したいと打ち明けられてしまいます。

ただ、こんな場面は現実ではありえません。あくまでテレビ的なデフォルメと思ってください。
自宅のみならず、何軒も投資物件を自社から購入いただいた投資家に対し、運営状況のヒアリングや、定期的な情報交換、資産の置き換えの提案といったフォローアップをしない会社があるとは、いまや考えられないからです。

現代の不動産営業は、お客様に対してプロとしての助言や情報を提供し続けることで、お客様の利益をサポートする役割が求められています。
単なる売買の仲介者から、不動産投資・資産管理のコンサルティングパートナーに変貌したといえます。

屋代課長が沢木に対して「親しいお客様」だからと甘えていないで、仕事として真剣に取り組んでいれば、沢木の現況を把握することができ、投資マンションの売却を引き受けるなど早い段階から力になれたかもしれません。

ieuru_vol_4_consulting

17年間で3億円の物件が1億5千万円に値下がり?

不動産営業マンとして沢木と接することを怠ってきた屋代課長は、沢木に「17年前に3億円で購入した自宅をいくらで売却できるか」と聞かれ、1億5千万円でなら何とか、と答えるのが精一杯でした。当然、正式な査定ではありません。

ところで、17年前といえば、1999年。すでにバブルは崩壊し、不動産価格は底値といわれた時代です。そんなに値下がりしてしまうものなのでしょうか?

物件はいくつもの部屋があり、窓から富士山が見えて、豪邸が立ち並ぶことから都内の西側である世田谷区か渋谷区の立地、庭付きで土地坪数100坪の一軒家、ということで想定してみました。

1999年の公示価格、平米当たりの平均

  • ・世田谷区:536,200円
  • ・渋谷区:733,800円

100坪に換算すると

  • ・世田谷区:約1億8千万円
  • ・渋谷区:約2億4千万円

新築時の価格はざっくり土地2億円、建物1億円の物件だったとしましょう。

これに対し、今年の公示価格は平米当たりの平均

  • ・世田谷区:544,100円
  • ・渋谷区:1,054,000円

と値上がりしています。渋谷区だったとすれば、土地評価は1億円以上値上がりしていてもおかしくありません。

建物の価値はゼロと厳しく査定しても、この物件に関していえば1億5千万円の値下がり査定は、ちょっと弱気すぎるといえます。

さて、ここにきてようやく、例のホームレス風おじさんの富田が出てきます。

万智は富田に沢木の自宅を紹介します。実は富田の正体は、電気釜が主力製品の電機メーカーの会長であり、死ぬ前に食べたいものは白い飯というほどのご飯好きでした。
沢木の自宅の台所に昔ながらの釜戸があることに感激した富田に価格を聞かれた万智は、「3億円です!」とズバリ言い切りますが富田は快くOKし、見事沢木の自宅を売ることに成功します。

ここで疑問なのが、そもそも1億5千万円の物件を、勝手に営業マンが3億円まで値上げしても良いのでしょうか?

宅地建物取引業法では、不動産会社は、

  • 売主の物件の売買を仲介する際には、物件の売価を明記して媒介契約を締結すること
  • 物件の売価に意見を述べる際は根拠を提示すること
  • 売買契約を締結する前には重要事項として売価を書面で買主に提示して説明すること
  • 契約のために重要事項説明書と違う内容を説明してはいけないこと

などが規定されています。つまり売買は、売価を含め売買の当事者が決めることであり、不動産会社は、売主様の合意が無ければ勝手に希望価格を変更することは、本来できないのです。

ただし、今回のケースは、

  • 沢木の利益を損なう価格提示ではなく、むしろ歓迎される内容であったこと
  • 富田に対しての最初の価格提示であり不当に価格を釣り上げたとはいえないこと
  • 重要事項説明書などによる書面の交付は今後であること

などを考慮すると、未公開の状態ということを大前提に考えれば、問題になることはないでしょう。
そもそも1億5千万円という屋代課長の査定が「?」だったと思えば、3億円が適正な価格だったのかもしれません。

「私は不動産屋です」

富田の職業や嗜好を見抜いて3億円の売買を見事に成功させた万智。最初から富田のことを知っていたのかと無邪気に尋ねる後輩の庭野(工藤阿須加)にこう答えます。

「私は不動産屋です。総資産ランキング上位者の顔くらい頭に入っていて当然です」

すみません。私もそこまでは頭に入っていません。万智ほどのスーパー営業ウーマンなら当然なのかもしれません。不動産会社の営業マンならそこまでやって当然と思われるのは、勘弁です(笑)。

ieuru_vol_4_millionaire

この番組を観た視聴者の方から「私もあんな人(万智)に家を売ってほしいわ」といった羨望とため息が交じり合った感想を聞くことがあります。不動産仲介現場の敏腕の「家売るオトコ」たちからも、「あの提案力は凄い」といった声も聞かれます。
ドラマの話と一笑するのは簡単ですが、この番組が高視聴率を維持する背景には、スーパー営業ウーマンで婚活を取り組む万智の姿には、時代が求める新たなヒーロー像があるのかもしれません。

(監修:不動産流通システム)

カテゴリー:

最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年8月11日

前回は、夏木桜(はいだしょうこ)と保坂(中野裕太)のストーリーから、保坂の売却物件までを見てきました。今回はさらに、桜と保坂のお話に焦点を合わせながら内容を分析してみたいと思います。

ieuru_vol3_3_main

2LDKは同棲カップルに人気の間取り!

「ライフスタイルの違う2人が一緒に暮らすためには、空間をきっちり分ければよいのです」

万智の言うとおり、空間を確実に分けることができるため 、同棲がうまくいく間取りとして人気の高いのが2LDK。 お金のない若いカップルがワンルームで同棲するケースも多いですが、付き合い始めの燃え上っている頃はいいものの、喧嘩をしたときに一人になれる空間がないことで関係が長続きせず、同棲解消となることも少なくないようです。 人間づきあいにも、ひいては人生にとっても、間取りはとても重要なのです。 最近増えているDINKS世帯(子供を持たない共稼ぎの夫婦)にも2LDKは需要があり、人気を高めています。 今回、夏木と保坂が購入を決めた狭小住宅を1階と3階、すなわちフロアで仕切るという方法は、提案力に満ちた仲介でした。

この2人がもしもマンションを買ったなら

物件の傾向はエリアによってかなり違います

3000万円前後で2LDK以上のマンションを探すとなると、実は現在2人が住んでいる中野区でも、同価格帯で築浅の中古マンションが出ていますが、物件数が多くて選択肢が広がるのは江東区、墨田区などの城東エリアです。 いずれも夏木の勤め先である六本木までの通勤時間は東京メトロ利用で平均して40分前後です。新築・築浅よりも築30?40年のリノベーション物件が多い印象です。 テーコー不動産は桜のマンションの売却も引き受けています。桜のマンションは御茶ノ水のワンルームマンション(5階)です。 さて、御茶ノ水周辺の現在売出し中の物件をざっと見てみました。 現在売出し中の物件をざっと見てみると、御茶ノ水周辺の中古マンションはファミリータイプの方が多く、ワンルームは希少性があり、一人暮らしの購入者様も多いため、早期の売却が見込めそうです。 なお、周辺の類似物件の売出価格は2,000万円台前半から2,700万円程度の相場です。 売出価格は成約価格ではありませんから、実際にこの価格で売れる保証はありませんが、実際に2,000万円台で売却できる可能性は高いです。

ieuru_vol3_3_oneroom

2人で購入資金を出し合うのはどうかというと…

もし、夏木の自宅が売れた費用を上乗せして、2人で購入資金を出し合い、予算を5,000万円台まで伸ばすことができます。 そうしたら2,980万円の狭小戸建てと言わず、六本木まで通勤しやすい渋谷区、目黒区等のさらに立地のいい都心の駅近2LDKマンションの購入も可能でしょう。 しかし、この先2人に何があるかは分かりませんし、またいつ別れるかも分かりません。結婚の約束でもしない限り、資金を出し合って購入するのはやめておいた方がよさそうです。 さらにいうと、上記のような提案では中野区弥生町の狭小住宅は売れ残ってしまうかもしれません。そうなると、せっかくの難しい物件販売の機会を損失してしまい、結果的にテーコー不動産新宿営業所が困るという訳です。

さて、今回の仲介手数料はいくらくらい?

保坂の仲介手数料は?そして両手仲介だとしたら…

それでは、保坂が弥生町の狭小住宅(2,980万円)を購入する場合、テーコー不動産はどれくらい仲介手数料を取ることができるか、シミュレーションしてみましょう。 法定上限となる一般的な仲介手数料の額は、その物件価格の3%+6万円で計算することができます。 2,980万円の3%(89.4万円)+6万円=95.4万円 つまり、保坂がテーコー不動産に払う仲介手数料は、95.4万円。 一方、手数料は物件の売主(オーナー)からも得ることができます。 そして今回の物件は、現地販売ウィークということで、テーコー不動産が、売主様と専属専任(もしくは専任)媒介契約を結んでいる、会社のプッシュ物件と思われます。 売主様と専属専任媒介契約を結んでいる物件は、売れた場合に買主様からだけではなく、売却の依頼を受けた売主様からも報酬を受け、テーコー不動産はダブルで報酬を得ることができます。これを業界用語で両手仲介と呼び、儲けのカラクリでもあります。 この取引によるテーコー不動産の売り上げは、95.4万円+95.4万円=190.8万円となります。

仲介手数料無料、または割引の場合は…

最近では、企業努力によって仲介手数料を割引、もしくは全額無料にすることでお得感を出して、不動産会社間の競争の中、差別化を図っている会社もあります。 仮に、保坂が仲介を依頼したのがそういった会社だった場合、支払う仲介手数料は

(1) 仲介手数料割引の場合・・・・47.7万円(差額47.7万円)
(2) 仲介手数料無料の場合・・・・0円(差額95.4万円)

となります。金額にして改めて考えるとかなり大きいですね。 ※今回の仲介手数料の表記は税抜きです。通常は消費税を含む金額を受領します。 またしても万智の手腕を間近で目の当たりにすることになった庭野。「家を売る方法を勉強させていただきたい」と同行する庭野を、意外にも万智は追い払いません。

ieuru_vol3_3_keiyakusho
(まとめ) 庭野のこの経験が、ドラマ終了までに庭野の中でどう生きてくるのか、それともそんなところは描かれないのか分かりません。 ただ、やや単純だけど実直で良心的な庭野が、お客に寄り添う気持ちはそのままに、万智の手腕を吸収して提案力のある営業に成長したら…。 もしかしたら彼は、万智をも凌ぐスーパー営業マンになれるのではないかとも思います。 一方の万智も、お客様や新宿営業所の営業マンたちとの日々を通して影響を受け、変わっていくのか、それとも変わらずに自分の道を突き進むのか? そこもまた見どころです。

(監修:不動産流通システム)

カテゴリー:

最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年8月11日

大人気の「家売るオンナ」、今回は第3話のストーリーをなぞらえながら、その内容を実際の不動産仲介の現場と照らし合わせて検証していきます。読みどころたっぷりの3回に分けてお届けします! 今回は中編です。

ieuru_vol3_2_main

現地販売ならではの戦略

現地販売ウィークに突入したテーコー不動産。

  • 中野坂上:サンルームのある高級戸建て
  • 新中野:外国人向け2バスルームマンション
  • 中野区弥生町:狭小住宅

課長の矢代大(仲村トオル)は、これらの物件を、現地販売会を催して集中的に販売しようと試みます。
物件ごとにメンバーを振り分けるなか、主人公の三軒家万智は課長と一緒にフォローを命じられます。

そんななか、テーコー不動産に現れたのは、歯科衛生士の夏木桜(はいだしょうこ)。自宅の売却と新規の購入依頼を受けた万智が夏木の自宅に内見に出向いたところ、そこは、物があふれかえり、ゴミ屋敷のような状態でした。

ほどなく、同様に別の物件の売却と新規の購入依頼が飛び込んできます。いわゆる「捨てられない女」の夏木とは正反対に捨てまくる「ミニマリスト」、保坂(中野裕太)でした。

正反対の性格の夏木と保坂。凄腕営業ウーマンの万智は、とある思惑にそって2人を引き合わせます。
この2人はなんと元恋人同士だったのです。再会した2人は復縁をしますが、ライフスタイルと性格が全く違うためにまたしても破局。

あたふたする同僚の庭野聖司(工藤阿須加)に、万智は「これでいい。想定内です」と答えます。

断られてからが本番。
「まわし物件」を見せて、本命物件を決める

万智に余裕があるのは、別の作戦があり、断られてからが本当の営業のスタートだと思っているからです。

  • ダメな物件を見せてから良い物件を見せる
  • 同じ物件でも短所を伝えてから長所を伝える

このように、最初から売るつもりのない物件を見せてから、次に本命物件を案内するといった手法は、昔から不動産仲介ではよく使われています。今でもおこなっている会社もあります。一度気持ちを落としてからまた盛り上げて、その勢いで決めさせるのです。(もちろん、当社では一切このようなことは行っておりません。)

「自分で選んだ」という物語をつくる

不動産販売では、一度断るというステップを踏んでもらい、最後にはお客様自身に「自分で決断した」という感覚を持ってもらうことが重要です。

不動産会社の営業マンに物件を案内してもらったことのある人は、いくつかの物件を見比べることで、そのうちの1つの物件がとても良く見えてきたような…そんな経験をしたことはないでしょうか?

この、良い物件を見せる前に案内する物件を、業界用語では「まわし物件」といいます。

今回の売り方は、「まわし物件」を見せただけではなく、万智自身が占い師に扮してもう一押しするという現実離れした心理作戦をとりましたが、最終的に保坂は弥生町の狭小住宅を購入し、夏木と暮らすことを決意します。

買い手の心理を巧みにつかむ万智のテクニック

つい親身になってあれこれ感想を持ち、時にはお客さまに意見してしまう庭野と対照的に、万智は買い手の意思をあくまで尊重し、否定的なことは言いません。

第2話のひきこもりのヨシキに対してもそうでしたが、今回も物を捨てられずに恋人から捨てられてしまった夏木に対し、万智は

  • 「夏木様が変わる必要はありません」
  • 「あなたはあなたのままで」

と包み込むようにお客様を肯定します。

こうして万智は、一見買い手の心を尊重しながら自分のペースに徐々に乗せていき、思い通りのシナリオを完成させ、契約を獲得します。
家を売ること以外は「知ったこっちゃない」という万智の一見、暴言に思えるような発言に動揺する庭野。実は彼は、テレビの視聴者に近い感覚を持つ人物のようにも思えます。

ieuru_vol3_2_mawashi

都内に多い狭小住宅の特徴と現実

比較的安価、だけど売りにくい狭小住宅

東京都内には30坪に満たない狭小宅地や、四角ではなく変形していたり、細長かったりする変形宅地が多く存在します。
住宅需要の高い都心部や、都心までのアクセスの良いエリアには、そういった狭小地や変形地の有効活用として建てられる戸建てのことを指して「狭小住宅」と呼びます。

狭小住宅は土地面積が小さいため、立地が良く、土地代が高いエリアでも、取得費用が安く済みます。

ですが、4人家族等のファミリーなど一般の人はなかなか手を出さないため、客層が限定されることもあって、売る側にとっては「売りにくい」「難しい」物件という認識が強いのです。

万智がミーティングで「宅間さん(本多力)と白洲美加(イモトアヤコ)にこの狭小住宅(を売るのは)は無理です」と言ったのもそのためです。

ieuru_vol3_2_kyoushou

保坂の売却物件はズバリこんな家!

保坂が売却を依頼する自宅は、所在地は明言されていませんが、ダイニングだけを見ても20帖近い広さがありながら庭付きです。土地面積も、建売でよくみられる30坪以上は優にありそうです。

築年数は経っていそうですが、エクステリアや室内の造作を見る限り、注文住宅でしょう。大型のダイニングに加え主寝室は10帖と広く、また居室が数部屋あるようです。少なくとも3LDKはあるのではないでしょうか。

保坂の売却、買い替えシミュレーションは…

保坂が買い替える狭小住宅は2,980万円。購入の際にかかる諸費用を考えると、手持ちで3,500万円程度の現金があれば無理なく買い替えができそうです。

新宿営業所に問い合わせをしてきているところから、保坂の自宅は新宿付近と思われます。
都心近郊エリアで同様のスペックの中古住宅を売却すると、相場から、3,500万円以上の価格で売却することができそうです。
自宅の売却費用で、新しい物件の購入資金2,980万円+諸費用は、すべて賄えることでしょう。
詳しくは、第三話の(その3)に続きます!

(監修:不動産流通システム)

カテゴリー:

最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年8月10日

2016年の夏クールで放送中の日テレ系水曜ドラマ『家売るオンナ』。北川景子さん演じる三軒屋万智が、テーコー不動産新宿営業所の営業チーフとしてクールかつ独特の手法で不動産物件を売りまくる姿を、時にコミカルに、時にシリアスに描くお仕事ドラマです。第3話のテーマは「現地販売」。今回もドラマのストーリーに沿いながら、不動産仲介営業の現実について、所感を交えながらご紹介します。今回は3話の解説の第一弾です!Basic RGB

現地販売で1,000万円の値引きを即決ってあるの!?

今回まず取り上げる1件目は、エリート営業マンの足立(千葉雄大)が担当した現地販売物件。売り出し価格1億1,000万円でサンルームのある邸宅。

訪問したマダムがとても気に入って「1億円なら買う」と言い出します。すると、さすがエリート足立。すかさず、きっぱりと「現金なら1億円で!」と言って、購入申込書にサインをもらいました。

でも、少し冷静に考えてみましょう。1,000万円の値引きって、そんなに簡単にできるのでしょうか?

結論から言うと、あり得ますが…

通常、売り出し価格は査定に基づいて売主様と相談の上で決定します。
実はその際に、あらかじめ値引き可能額を合意していることもあるのです。今回の1,000万円の値引き額がその範囲であれば、この場合は問題ないことになります。

また不動産売買、特に自宅の購入にあたっては住宅ローンを利用する買主様が多く、その場合には金融機関による審査があります。従って購入の申し込み・契約から実際の決済まで通常1?1カ月半程度はかかり、審査の結果によっては契約が成立しないこともあるわけです。

そのため売却代金を早期かつ確実に入手できるという売り手側のメリットを考えると、現金決済は値引きの材料になり得るので、こういったことも考えられるのです。

でも実際はさすがに、滅多にありません

しかし、売主様が入手する実際の金額は売買金額そのものであり、現金決済でも住宅ローンを利用しても、その金額は変わりません。

「他に買主様が現れない、なかなか売れない物件だ」という状況でもないかぎり、住宅ローンを利用することが大きなデメリットになるとは考えにくいわけです。

ですから、現金決済だからといって、即決で1,000万円の値引きをしなければならないとは思えません。

今回のケースのメリット・デメリット

売主様にとって今回のケースには、メリットとデメリットの両面があります。

メリット
売却が早期かつ確実になる点です。まとまった金額を早く手にすることができるし、「物件の売却」という大きな問題が解決されれば安心できますね。
デメリット
一方で、売り出し価格のまま値引きせずに販売できるかもしれない可能性を、販売開始わずか1日目で断ち切ってしまうことは、大きなデメリットです。
1億1,000万円で売れるかもしれないのに、いかに合意のうえとはいえ、本人の知らないところで1,000万円も値引きされてしまったとしたら、後でトラブルに発展する可能性が大いにあるわけです。

お値引きには戦略が重要です!

従って、いかにエリートといえども、一介の20代の営業マンに1,000万円もの値引きの裁量権を与えるとは、通常では考えられません。

現実的な視点で、足立の営業トークを考えてみると、
「現金であれば、1千万円の値引きが可能かもしれません。
しかし、正式な回答は売主様と上司と相談してからご連絡を差し上げます。
まずは購入申込書の備考欄に、値引きのご希望金額を添えてご記入いただけますしょうか
と言うのが妥当な線でしょう。「お客様のご希望の条件」として会社に交渉する。それなら現実的にも考えられる方法ですね。

ieuru_vol3_1_ichioku

人気のない物件が、キャッチコピーとSNSでの拡散で超人気に…?

万智のSNS作戦が大成功!!さすがSNS!?

2件目の現地販売の物件は、外国人向け2バスルームのバブリーなマンション。
一時期は一国の大使が所有していたような高級マンションですが、今や設備が過剰なところが不人気の原因となってしまっている物件です。

ところが、万智のアイデアで、電話での問い合わせが殺到する超人気物件に!2バスルームという特徴をバブリーと捉えるのではなく高い機能性と捉え、
「トイレやお風呂が渋滞する大家族にお勧めの物件」
としてSNSで拡散した結果、話題の大人気物件になり、さすが万智!というわけなのですが…。

これは「ない」でしょう…

例えばまったく引き合いのなかった中古住宅に「古民家カフェなどへの転用に最適!」等のキャッチコピーを付けることによって、売却が決定するようなことは実例としてあります。
物件の特徴を把握した上で、視点を変え、強調するセールスポイント、ターゲットを変更する
ということは、販売戦略の上で重要なことでもあるのです。

また、多くの不動産会社が自社のホームページを活用したり、スマホのアプリを開発するなどして、SNS上でも販促活動を実施しています。これからの時代、その役割は重要性が増していくでしょう。

しかし、ある営業マンが販売物件のキャッチコピーを変えたぐらいで、SNS上で、すごい勢いで拡散していき、「問い合わせが殺到!」というのは現実的ではありません。
特に今回のような「2つのバスルームがあって、トイレやお風呂が渋滞する大家族にお勧め!」という訴求ポイントは、一般の方が興味を持つほどの話題ではないですし…。

主演の北川景子さんぐらいの有名人が、自身のツイッターで「大家族の方は、あの物件は一見の価値ありです。私もいるからぜひ見に来てください。」とでもつぶやけば別でしょうが(笑)。

4坪の狭小住宅をシェアハウスとして販売

第3話の最後の現地販売物件は、なんと4坪という狭小敷地に建つ2DKの3階建て住宅です。
あまりにも狭くてお子様のいる家族向けとは言い難く、なかなか買い手がつきません。

2件の運命的な売却依頼は…

一方、万智の元には、2件の売却依頼が舞い込みます。
1件は、いわゆる「捨てられない女」が所有するゴミ屋敷と化したマンション。もう1件は、身の回りのものはパソコンと段ボール箱ひとつという究極の「ミニマリスト男」が不要とした邸宅です。

万智が2人を引き合わせたところ、偶然にも彼らは元恋人。再会を機によりを戻すことを決意した2人は、彼氏が彼女のマンションを購入し、同居するということで合意するのですが、断捨離は進まず、決裂してしまいます。

そこで万智は、この狭小住宅を非常に効果的に紹介。

  • 1階の3畳の洋室は彼氏の部屋
  • 3階の広め(といっても6畳)の部屋は彼女の部屋
  • 2階のDKで愛を育む

という提案をし、双方に受け入れられたのです。
現地販売物件は彼氏が購入し、さらに両者の所有物件が売却案件となる。この案件は、お客様にとっても不動産会社にとっても丸く収まる大団円を迎えました。

専門家も見習いたい、万智の機転は満点!

狭小住宅の1階と3階をそれぞれのプライベート空間とし、DKを共有スペースとしてシェアするという発想は、なかなか見事で感心させられました。
「狭い」ということに捉われてしまう物件ですが、シェアハウスとして利用することで新たな付加価値を創造したといえます。

仮にこのカップルが購入しなくても、収益物件として販売することも可能でしょう。

「私の仕事は家を売ることです」凄まじい万智のプロ意識

このドラマでは、主人公のキメ台詞として、

  • 「私が売ります」
  • 「すべて私にお任せください」
  • 「この家売りました」
  • 「私の仕事は家を売ることです」

等、プロ意識に満ちた言葉が、力強く語られます。
荒唐無稽な手法や性格はともかく、このプロ意識はすべての不動産営業マンに求められるものだと思います。

 

ieuru_vol3_1_kyousyou
 

今後「家を売るのは個人の仕事」、「家を売った後のことは私の知ったことではない」といった主人公・三軒家万智の寂しくて頑なな考え方が、周囲の登場人物との関わりの中で、いかに成長していくか期待したいところです。

(監修:不動産流通システム)

カテゴリー:

最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年8月4日

2016年夏、北川景子さん主演で始まった日テレの新ドラマ「家売るオンナ」。第2話でも、不動産売買仲介の営業経験者の筆者が、そのウソとホント、そしてちょっとした裏話を交えてご紹介したいと思います。

家売るオンナのサイトはこちらをご覧ください!

ieuru_image_B

売却物件の査定方法は簡単ではありません!

平日なのに4件もアポが取れている万智(北川景子)ですが、週末でもないのにこれだけの商談があるというのは、並大抵のことではありません。すごいですね…。

サクッと査定を終える万智ですが…

アポのうちのひとつは、お付き合いのあるお客様からの売却依頼物件2部屋の内見。家の中を軽く確認し、2LDKを2,500万円、1LDKを2,000万円と査定します。あれくらいスピーディーにできれば物件査定も楽ですが、このくだりは完全にフィクションです。

実際の査定は調査を重ねます!

確かに、現地の確認だけであればものの数十分で終わります。しかし実際に売却物件を預かる際には、不動産営業マンは専門的な立場から物件が売れそうな価格を査定します。

そしてそれ以外にも法務局で権利関係、役所では法規制の確認、さらに類似した取引事例などを調査したうえで総合的な判断に基づき査定価格を報告するのが一般的です。

このように、価格の査定は様々な専門的調査の結論なのです。決して現地の内見だけで直感的に出せるものではありません。

物件の短所は長所に。
新しい魅力、価値観の提案が大切

不動産物件は工業製品と違い個別性が高く、また利用する目的によって長所も短所も変わってきます。

誰かにとっては魅力のない物件であっても、他の誰かにとっては条件にぴったりの運命の物件だった…まるで小説のようですが、そんなことが日常的にあります。

今回のストーリーは、不動産会社の営業マンに求められる重要なスキルである「価値の解釈の提案」がテーマとなっていました。

ヨシキのひきこもりの城マンション

売却の相談を受けた部屋を内見した三軒家万智(北川景子)は、物件の特徴をざっと把握します。

2つの部屋が隣接した特殊な物件。ですがこの点を、ひきこもり大家ヨシキ一家にとってはこれ以上ない最高の物件として説明します。

短所→長所の転換ポイント

1階の共用エントランスに近い物件は、人の出入りが落ち着かない、音がうるさいなどと敬遠するお客様も多い。
玄関から出てすぐに荷物を受け取ることができる。
家の外と中をつなぐ玄関が雑然としていて印象が悪い。
奥様の意向に配慮しつつ、部屋の中への期待が膨らむようホームステージングを提案。
前に住んでいた人の造作が残っている。
ボルタリングの壁はひきこもりの運動不足解消に最適であり、さらに壁厚が防音にもつながることを伝え、前に住んでいた人の気配を物件の魅力に転換。

墓地の隣の中古マンション

もうひとつの物件は、なんと墓地の隣の1,590万円のイケてない中古マンション。しかしこちらについても、求めるお客様によってはセールスポイントとしてアピールできることを、新人の白洲美加(イモトアヤコ)に伝授します。

注目したいのは、その発想の転換です。

短所→長所の転換ポイント

墓地の隣。
将来、高いビルや大きな建物が建つ可能性が低いため、日当たりが保証される。
西向きは午後の日差しがきつい。
朝はゆっくり起きることができる。また、山の稜線に落ちる夕日の景色もすばらしい。
隣で飼っている犬がよく吠える。
番犬代わりになって下着泥棒が減った。
駅からの道のりは交通量が多くて危ない。
夜も交通量が多いため、女性の独り歩きでも安心。
ヤモリが出る。
ヤモリは「家を守る」守り神ともと言われていて、家内安全のためにわざわざ飼う人もいるくらい。

一見、短所とも思われる物件の状況でも、見方を変えれば長所にもなり得ます。だからと言って、決してウソを伝えている訳ではありません(ヤモリについてはあえて言わなくても良いかもしれませんが…)。

足立(千葉雄大)の物件説明が素晴らしい!

初めの美加の母娘に対する物件説明は、すべてが短所に聞こえるように話して失敗してしまいます。

ところが、タイミング良く戻って来た足立(千葉雄大)が、上記のようにまったく見方を変えた説明をすると、母娘の気持ちは一変し、大いに盛り上がるのです。

機転を利かせた言い換えで快適な暮らしのイメージを与え、お客様の気持ちの後押しをすること。これは営業マンの大変重要で、なおかつやりがいのある仕事です。

The couple are looking for a new house because the marriage

二日酔いで出勤する屋代課長=実際はNG!

ドラマでは、万智のパリッとしたファッションや足立のお洒落なスーツも一つの見どころですが、現実の世界でも営業マンは身だしなみに気を使っています。

営業は接客業なので、夜遅くにお客様から連絡が入り翌朝早々に商談となることなど日常茶飯事です。だからこそ意識の高い営業マンは、クシ・汗拭き・ブレスケアを常に携行しています。

また最近は嫌煙志向のお客様も増え、不動産会社の中でも分煙が進んでいます。タバコのにおいがするだけで気分を害する方もいるため、特に喫煙者の営業にとってにおい対策は必須です。

行きつけの飲み屋「ちちんぷいぷい」で深酒して二日酔いのまま出社する屋代大課長(仲村トオル)。突然の接客だってあるかもしれないのに、部下に気付かれるような深酒をするようでは失格です。

「チラシなんか捨てちゃえば」と言う、ベテラン社員の布施(梶原善)

万智からチラシの投函を命じられふてくされている美加に、ベテラン営業マンの布施(梶原 善)は「チラシなんか配らないで捨てちゃえば、便所とかに」と耳打ちでアドバイス。もともと気が乗らず出発した美加は、チラシを紙袋ごとトイレのごみ箱に捨ててしまいます。

チラシを捨てるのは、あってはならないこと!

しかし、考えてみましょう。美加の配るチラシの売却物件にも誰か売主がいるわけです。その売主が自分だったらどうでしょう?

みなさんが家を売るとき、任せた業者が自分の物件の価格や写真を載せたチラシを、公衆トイレやゴミ箱に捨てていたらどう思いますか?こんなことをするテーコー不動産に家の売却を任せたいでしょうか。

そう、チラシを捨てるという行為は絶対にしてはならないことなのです。

不動産業界の人材の育て方もテーマになっていました

チーム主義の屋代課長、個人主義の万智と足立

さて、美加はチラシを捨てたことをとがめられ「私、会社を辞めます」と泣き出します。

そんな彼女を引き留めるでもなく「それは自由だよ」と微笑む足立(千葉雄大)。

万智は会社では浮き気味で人を振り回すチーフですが、果たしてこの二人は家を買いたい人、売りたい人にとって、ひどい営業マンでしょうか?嫌なやつでしょうか?

第1話でも「君のやってることはパワハラだぞ!」、「パワハラが人を育てることもあります」とグレーなテーマでたびたび衝突している屋代課長と万智。

「時代は変わってる」と、「今どきの教育方針」とチームで夢を追うことを主張する屋代課長ですが、部下たちの反応はいまいち薄く、ぼんやりとクールです。

美加のような新人をうまく使って優しく育てていきたい屋代課長と、教えるものではなく自分でもぎ取っていけば良いと言わんばかりの万智。こういった考え方の対立の構図は、不動産業界のみならず社会のあちらこちらに実在するように思えます。

「教育は必要と思いません」万智と足立の考え方は間違い?

良い意味で、不動産売買仲介の営業はチームワークではありません。足立の言う通り一人一人が個人商店、事業主のような意識が求められます。

そして、人の一生を左右するような高額商品である不動産を扱うには、一人ひとりがプロとしてお客様の要求に応えられる力を備えていなければなりません。

「売れない営業マン=能力を備えていない営業マン」だとするなら、売れない営業マンは、会社はもちろんお客様にとっても困った存在になってしまうのです。

ですので、「教育が必要ない」というのは極論だとしても、「教えてもらえる」という他人任せな姿勢ではなく「進んで学びにいく」という、仕事に対する積極的な姿勢は欠かせないのではないでしょうか。

ieuru_vol2_tairitsu

エリート足立の接客に触れ自分との差に落ち込み、万智からの「物件に何度も通え」という指示に嫌々ながらも忠実にこなしている美加。

そして、お客様の希望をちゃんと聞き取りせずに予算以上の物件を紹介してしまう、相変わらず「売れない営業マン」として描かれている庭野。

彼はもしかしたら、このドラマが終わるまでに、万智に認められる営業マンに成長していくのではないか?と予感させるような伏線もあり、今後の展開が楽しみです。

第三話もお楽しみください!

(監修:不動産流通システム)

カテゴリー:

最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年8月4日

2016年夏、北川景子さん主演で始まった日テレの新ドラマ「家売るオンナ」。
不動産会社ってほんとにこんなことするの? というくらい、不動産売買仲介の日常を、いくつかのエピソードを織り交ぜてコミカルかつ時にオーバーに描いていますが、実際のところあながち全部が嘘とも言えず、登場人物のセリフや、お客様の要望、購入意思を固めるまでの心理戦など、ところどころにリアリティを感じさせます。

ieuru_vol1_main

サンドイッチマンや椅子にグルグル巻き…不動産営業ってブラック?

昭和の時代にはよく見かけたサンドイッチマン

新宿営業所にチーフとしてやってきた三軒家万智(北川景子)。赴任早々、既に営業全員の名前と共に個人成績をそらんじています。

そしてさっそく、入社以来ずっと売上ゼロの新人営業ウーマン、白洲美加(イモトアヤコ)を売り物件のセールスパネルで挟んで、新宿駅前でのサンドイッチマンに命じます。

作中でも言われている通り、昭和の香りがするサンドイッチマン。最近はかなり減りましたが、看板の形態を変えての不動産業界のサンドイッチマンは今も健在です。

現代のサンドイッチマンは、形を変えて…

よく春先などに、プラカードを持ってパイプ椅子に座っている営業マンを見かけることはないでしょうか。
この真夏でも、新入社員らしきスーツを着た若い人が、炎天下で売り物件の看板を持って駅前や曲がり角に待機しているのを見かけます。暑くて本当に大変そうですね。

なぜ従来型のサンドイッチマンがいなくなったのか。その理由は時代の変化にあります。

バブル期には、その場でふらっと立ち寄って即金でポンと購入してしまうような羽振りのいいお客様がいらっしゃいましたので、はた目にも目立つサンドッチマンは効果的でした。
しかし現在はそのようなことが見られなくなったので、駅前のサンドイッチマンにそこまで人手を割かなくなったということなのでしょう。

ガムテープでぐるぐるも実際にありました

屋代課長(仲村トオル)の指示で白洲美加は途中で帰ってくることができましたが、一日サンドイッチマンをしてもアポが取れなかった美加を、三軒家万智は今度はガムテープでぐるぐる巻きにして椅子に縛りつけます。

家の鍵を取り上げ、顧客リストに片っ端から電話をかけて、アポが取れるまで家に帰るなと指示。
今の時代にそこまでやるか? という万智の過剰なしごきに「さすがにこれはドラマだろう…」と思われたのではないでしょうか。

ブラックと言われてしまうようなことも…

実は10?20年程前であれば、お客様のアポが取れるまで、粘着テープで手に受話器を固定して、朝から電話をかけ続けるなんてことはよくある話でした。
中には、反響の電話をすべて自分が取りたいために、上司の指示ではなく、自主的に会社に泊まり込み、契約を取るまでは意地でも家に帰らない営業マンもいたようです。

現代では、ここまでやる営業マンもやらせる会社もほとんどないと思いますが、会社によってルールが全く違うため、あながちフィクションともいえないところが恐ろしいところです。

不動産会社がしばしば「ブラック」といわれてしまうゆえんではないでしょうか。

ieuru_vol1_eigyouman

「このくらい曲がれなければ、不動産屋とはいえない」

売買仲介の営業マンには、車の運転免許は必須です。新入社員の中には、就職に合わせて春休みに運転免許を取得したばかりの若葉マークの者も多く、車と運転に慣れるのにひと苦労です。

住宅街ほど、いわゆる「みなし道路」と呼ばれる幅員が4メートルに満たない細い道が多く、運転に自信のない新人にとっては、車をこすったりぶつけたりすることもある、恐ろしいエリアです。

庭野と万智のやりとりはとてもリアル!

できれば細い道を避けて、幹線道路で現場まで行きたいのですが、先輩が同行する場合は、万智のように「曲がれ」「行け」と無茶に思える指示が飛んできます。

庭野(工藤阿須加)が冷や汗をかきながらギリギリで曲がる様は、新人の運転そのもののようなリアリティがありました。
ですが、そのうち汗ひとつかかずに、狭い路地でもスッと曲がれるようになるのです!

不動産屋は地図を見ない。幹線道路ではなく、誰も知らない裏道を使う。

お客は、こんな裏道まで知っている人は、物件のある町に詳しいと思う。

そして不動産屋を信頼する。

その人の言うことなら信じてみようと思う。

万智が住宅街の細い路地を飛ばしながら語っていたこのセリフは事実です。

軽快で確実な運転技術、営業には必須!

幹線道路は交通量も多く、渋滞や事故の可能性もあります。
もし物件からの移動中に渋滞に巻き込まれてしまうと、せっかく盛り上がっていたお客様の気持ちが下がってしまうことも大いにあり得ます。
お客様のテンションが下がってしまうことは、営業においては死活問題ですね。

逆に、裏道に詳しければ、そのことに関心と好感を持ち、担当の営業に対する信頼感と安心感がぐっと増します。

急発進・急加速・急ブレーキのない運転を心掛け、周辺環境や物件についての説明をしながら、かつお客様のテンションを維持したまま、目的地まで最短距離で快適かつスムーズに送り届けること。これも、契約につなげる大切な手段のひとつなのです。

「家を売るためにはどんなことでもする!」

お客様から提案された「リビングイン階段」

「リビングイン階段があれば、子供は必ずリビングを通ってから2階の自分の部屋に行く。
言葉を交わさなくても親子のコミュニケーションが取れるもの。譲れない」

医者夫婦の土方様の奥様の譲れない条件、「リビングイン階段」。子育て世代の奥様から実際にご要望の多い人気条件のひとつです。

ところが、土方様のこの「譲れない」要望を軽やかに無視して、ピントのはずれた物件を紹介してしまう庭野…。
感じのいい青年風ですが、やや独りよがりで「売れない営業マン」として描かれる庭野と、「天才営業ウーマン」万智を比較しながらストーリーを追うのも面白い見方です。

そしてこのお客様はリビングイン階段以外にも、以下のような様々なご要望がありました。

  • 思春期までは自室は与えず勉強はリビング学習
  • 子どもを囲んで父・母・テレビがトライアングルを描くよう家具を配置する対面キッチンのリビング

家族構成やお子様の年齢から、いずれも「子どもの知育や情操教育のために良いといわれている」内容ばかりですが、万智はそれを額面通りに受け取りません。
「その家庭に何が必要か」を見出し、自分ならではの提案をしていく様子も見どころです。

※ちなみに、リビングイン階段は冷暖房効率の悪さなどのデメリットもあり、逆に嫌という方もいらっしゃいます。

ieuru_vol1_livingroom

万智の熱意と必死さが築く客との信頼関係

さて、ある日当直になってしまった土方夫妻。その代わりに、万智はなんと泊りがけで息子さんの面倒を申し出ます。
万智のこの「私の仕事は家を売ること」という割り切りと、家を売るためであればどんなことでもするという姿勢は見ものです。

万智は土方先生(奥様)に、当直明けの朝7時に物件を見学するように提案します。普通ならありえないことです。だって、当直明けの早朝なんて正直なところハードすぎます。普通のお客様なら「なんて無茶苦茶な不動産屋だ!」と追い返すでしょう。

しかし土方先生は万智に対して「そこまでして家を売りたいの?」と少し呆れ気味にクールな言葉を投げかけつつも、「朝7時なら」と応じます。ここで奥様の本気のほどがうかがえます。

ここまでお客様の真剣な気持ちにどこまでも付き合える営業マンが一体どれだけいるでしょうか?
お客様はもちろん熱心なのですが、三軒家万智チーフは、お客様よりも熱いのです。

子どもとのやりとりからも万智の人柄が…

土方宅で、ご夫妻が当直中に息子さんと留守番をする庭野と三軒家万智。
息子のそら君に「ウソつくの?」と尋ねられた万智。
「つきます」と即座に答えています。
万智は、このやりとりにおいては、ある意味ウソをついていません。

ドラマ中での三軒家万智は、言っていることが本当なのか、またはウソなのか、ポーカーフェイスでいまいち掴みきれません。

ただ、過剰なほどの必死さ、熱意だけはお客様に伝わり、その熱さに、お客様は抑えていた本音、真剣で必死な気持ちを包み隠さずぶつけることができ、信頼関係につながっていくのかもしれません。

さすがに、枝を折るのはアウト…

しかし、そうはいっても、お客様の家のびわの木の枝を切って挿し木にしたのは、現実ではぎりぎりアウトと言って良いでしょう。

話がまとまったから良いものの、他人宅の竹木の枝を無断で伐採することは、実際にやったら訴訟になってもおかしくありません。ここばかりはドラマ上のフィクションの演出を感じました。

満を持して始まった「家売るオンナ」。不動産業界でお仕事される方も多くが興味深くご覧になっていると思いますが、この第1話は営業経験のある人なら、共感できる部分のひとつやふたつは少なからずあったのではないでしょうか。

万智とテーコー不動産のそれぞれの活躍が、今後どのように描かれていくのか楽しみです。

(監修:不動産流通システム)

カテゴリー: