不動産会社を選ぶ決め手は「仲介手数料の安さ」と「知名度、規模の大きさ」

不動産仲介会社の最大の収入源である仲介手数料を安くすることは、不動産会社の業績悪化を招く恐れもあり、業界内で反発があるのは当然のことだと思います。

しかしながら、REDSが実施した前出の『不動産の賃貸、売買の仲介手数料に関する認知度』調査で、取引をする不動産会社を選ぶ決め手について質問したところ、男女とも「仲介手数料が安い会社」と「知名度があり、規模の大きな会社」という2つを上位に挙げたのです。

【Q.あなたが不動産の賃貸や売買をする際に不動産会社を選ぶポイントについて、重要と考えるものをお知らせください［複数回答可］】

業界内に異論はあろうとも、消費者が不動産業界に求めているのは大手の「看板」による安心感がある一方、仲介手数料の値下げの要望があることが見てとれます。

仲介手数料が安いだけではダメ！消費者が選ぶのは信頼性も兼ね備えた会社

では、仲介手数料を安くさえすればよいのでしょうか？　前出の『不動産の賃貸、売買の仲介手数料に関する認知度』調査で、「不動産売買の仲介手数料を割引する不動産会社があった場合、その会社を利用するか」についても質問してみたところ、少し意外なことに利用を検討する人は半数にとどまったことが分かりました。

不動産会社を選ぶ決め手として「仲介手数料が安い」ことを上位に挙げながらも、実際には利用はしないという一見、矛盾した結果が出たのはどういうことなのでしょうか。

これは恐らく、そもそも仲介手数料に関する認知が低いことや、仲介手数料の割引を行っている会社の多くは創業年数が浅く、個人経営かまたは小規模な不動産会社が多いことに関連があると推測できます。そうした会社は、消費者の不動産会社を選ぶ決め手のひとつとなっている「知名度、規模の大きさ」の条件を満たさず、信頼性の面で不安が生じるのかもしれません。

仲介手数料の割引できる合理的な理由

とは言え、不動産の仲介手数料の割引を行う会社は年々増加しています。その多くが中小の不動産会社であり、大手は上限いっぱいの手数料を取っている現状維持に汲々としているのが現状です。体力面でどう考えても大手に勝てない中小が仲介手数料の割引を敢行しているのはなぜでしょうか。それには、以下の3つの理由が大きく関係しています。

（１） 駅前などでの店舗を持たない

消費者の信頼を得られない理由のひとつともなっている「実店舗を持たない」ことが、テナント賃料などの固定費を浮かせることにつながっています。

（２）折り込みチラシの撤廃

多大な経費がかかる折り込みチラシなどの紙の広告を止め、インターネット広告や自社サイトによる情報発信を強化するなど低コストのネット媒体を活用することで、広告費の大幅削減を実現させました。

（３）業務の効率化

不動産業界で長年行われてきた電話による非効率なセールスや顧客とコミュニケーションのあり方を見直し、業務のほとんどをインターネット上で行うようにしたことで、業務の効率化と最適な人員配置ができるようになり、人件費のカットにつなげることができました。

今後、不動産の仲介手数料の割引制度を業界内に浸透させるためには、実際に消費者に割引制度を利用してもらい、その良さを口コミなどで広め、信頼を勝ち取っていく必要があります。中小の不動産会社の場合、どうしても知名度や規模が大手より劣ってしまいます。しかし、志ある会社が力を合わせ、不動産の仲介手数料の割引がなぜ行えるのか、その仕組みを消費者に向け積極的に公表していくべきなのではないでしょうか。

梅津千春
1979年生まれ。明治大学政治経済学部政治学科卒。日本テレビ系の制作会社勤務後、建設と不動産の専門紙『建通新聞』入社。記者として官公庁の取材や大手デベロッパーなどを担当する。フリー転身後は、日経ＭＪや日本経済新聞などの新聞媒体に執筆。

参考資料
『不動産業についてのアンケート調査』 報告書（一般財団法人 土地総合研究所）

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