REDSエージェント、宅建士の渡部です。物件の販売図面の備考欄に「お買い替えのため引き渡し猶予あり」と書かれていることがあり、「これはどういうことですか?」とお客様から尋ねられることがあります。

 

住まいの買い替えの際に便利な「引き渡し猶予」について、私が担当した実例で解説してみましょう。

 

鍵 図面 家

(写真はイメージです)

 

駐車場がない…。急遽、住み替えを変更

 

住まいをお買い替えの場合、事前に資金計画を立てて綿密な計画のもとに住んでいる家の販売活動を開始します。

 

最近、私が担当させていただいたお客様の場合、転居先は賃貸住宅の予定でした。REDSでは賃貸の仲介は行っておりませんので、売却活動の流れを見ながら転居先を探すよう売主様に説明し、販売活動をスタートしました。手前みそながら、物件はREDSの合理的な販売方法が実り、早期に成約しました。

 

転居先の選定もスムーズに進んでいました。ところが、所有している車と大型バイクの駐車場がないことが分かり、急遽、購入に切り替えたいという相談がありました。今住んでいる家を売って、同時に新しい住まいを買うという「住み替え」に変化したというわけです。

 

売却契約が済んだ今の家は、すでに引き渡しの時期が決まっています。それまでに次の家を探さなければならないため、急いで物件を探すことになりました。私は毎週複数の物件をご案内させていただきました。しかしローン審査が難航し、良物件が見つかっても売主側と交渉が進まず物件を押さえることができません。

 

途端にローン審査が難航した理由

 

なぜ、ローン審査が難航したのか。住宅ローンの残債が残っている物件を売却して購入する場合、「自宅は1つ」という原則から、「2つの住宅ローンを(一時的にでも)同時に組む」ということは非常にハードルが高くなるからです。返済比率(毎月の収入に対する返済額の割合)に余裕がある場合などでは特例を認めてくれる銀行もありますが、大半の場合で売却物件のローン残債を購入物件の融資時までに完済し、抵当権を抹消すること」という条件が付きます。

 

既存の住宅ローンの返済には買主様からいただく売却代金が用いられます。売却の「決済=引き渡し」を購入の決済までに行う必要が生じるわけです。引き渡しは「鍵を買主に渡すこと」で行いますが、鍵を渡すためには引っ越しを終えなければならず、引っ越すためには購入物件の鍵を先にもらわないといけません(短期で一時的に賃貸に入る方法もありますが負担が大きくなります)。

 

「引き渡し猶予」の仕組み

 

こうしたことから、お買い替えの場合に利用されるのが「引き渡し猶予」です。覚書を交わして特約で定める場合もありますし、契約書で引き渡し時期を「売買代金の全額受領日から7日以内」などと取り決めることもあります。いったん売却の決済をして代金を受領して住宅ローンを完済し、抵当権を抹消しますが、鍵の引き渡しを1週間程度猶予してもらい、その猶予期間中に購入物件の決済を行います。そこで鍵の引き渡しを受けて、新居に引っ越します。転居完了後、売却物件の鍵を買主様に渡して取引完了となります。

 

買主様からするとお金を払って登記名義も自分に変更(申請)したにもかかわらず、しばらくは鍵の引き渡しが受けられないばかりか、引っ越しもできません。

 

その点で不利な面がありますが、住宅ローンが残っている物件を売却してお買い替えをされる方は非常に多いため、現実にはとてもよく利用されています。私自身も数え切れないほど取り扱っております。これまで一度もトラブルがないことがちょっとした自慢です。

 

引き渡し猶予は、原則として募集図面にその意向を記載し、売却の契約時に取り決めておく必要がありますが、今回は契約後に事情が変更したため利用することができませんでした。こうした場合は自宅の残債を残したまま購入のローンが組める金融機関を利用する必要があります。ただ、これはなかなか厳しく、対応してくれる金融機関が少ないため選択肢が限られます。

 

住宅金融支援機構の「フラット35」のように買い替えに強い商品もありますが、事前審査の精度が低かったり、審査に時間がかかったりという問題もあります。中古物件では、物件自体が銀行の融資条件に合わないことも。

 

先の実例では、気に入った物件を2つほど競合する他社のお客様に奪われるなど失意と苦労を重ねて、何とかたどり着き、売主の建売業者様の理解と寛大な提案があり、何とか合意に至ることができました。難易度の高さではここ数年でも屈指の契約でした。売却のスタート時に、万が一賃貸が決まらない場合のことも提案しておくべきだったか、と大いに反省しています。

 

残債ある住み替えは必ず最初に相談を

 

引き渡し猶予は計画的に、綿密な打ち合わせのもとに利用しましょう! 当初から取り決めておけば購入の融資の選択肢も拡がります。

 

一方、引き渡し猶予がついた物件を購入する場合の注意点として、一部の金融機関(ネット銀行)は引き渡し猶予が付された物件には原則として融資ができません。こうした制限も生じますので、とにかく早めにご相談ください。

 

 

渡部親三(REDSエージェント、090-9815-2948、s.watanabe@red-sys.jp)
福島県出身。保有資格は宅地建物取引士、宅建マイスター、損保募集人資格、行政書士(未登録)。首都圏一円で、戸建て・マンションは居住用・投資用ともに得意としている。
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