不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 最終更新日:2019年12月9日
  • 公開日:2018年10月9日

不動産投資詐欺になぜ中堅サラリーマンが1億円も出してしまうのか? 「かぼちゃの馬車」事件から学ぶべき教訓を不動産事業プロデューサー、牧野知弘氏が神解説!(下)

牧野氏3

牧野知弘氏

 

不動産界隈の人はあなたの人生に興味はない。買うときは「なぜ?」を繰り返して納得してからにしよう

 

日本人のサラリーマン化で不動産・金融リテラシーが低下

 

(中)から続く

 

「かぼちゃの馬車」の問題で改めて思い知らされたのが、高収入層であっても不動産リテラシーが浸透していないということですが、その原因は何なのか、改めて考えました。やはり、日本人全体が急速にサラリーマン化しているということが挙げられます。昔はもっと自営業者がいたのですが、勤労者数の中で8割以上がサラリーマンになりました。

 

サラリーマンは毎月25日になると勝手に口座に給料が入りますし、税金の申告もほとんどする必要がありません。言葉悪く言えば、ぼやっとしていても、生活はしていけます。そういった意味では、お金に対する感度がどうしても低くなってしまうのですね。

 

そんな中、「ちょっとでももうけたい」とか「生活を豊かにしたい」とかいう気持ちは多くの人が持っています。「かぼちゃの馬車」はそこにうまくつけ込んでいった商品だったのかなとは思います。なかなか給料が伸びていかない会社が増えていて、社会全体の停滞感というのも背景にあると思います。

 

実は日本の場合は独立起業した人が銀行に融資を求めると、必ず個人保証を取られます。平たく言えば、事業に1回失敗しただけで人生がアウトです。大企業だったらいくらでも貸すけど、そういう個人の起業家にはものすごく審査が厳しいのです。ここは金融庁にも直してほしいと思いますが、金融の仕組みがこんなだから、みんなリスクは取りたくなくて一般のサラリーマンになるんですね。先に言ったようにサラリーマンはお金に関する感度が低い。だから「かぼちゃの馬車」みたいな簡単な詐欺に引っ掛かってしまうんです。

 

また、人生を長い目で見るということが、全体的にできなくなってしまっているのではないでしょうか。世の中を見通せなくなっているのだと思います。目の前のものに飛びつきがち。「かぼちゃの馬車」が10年後、さらには「家賃を保証する」という30年の中で本当に成り立つビジネスなのかを考えないといけません。

 

ここでも金融教育の必要性を感じるのですが、学校教育では忌避していますよね。ちゃんと教えないから、こういうところに引っかかるのでしょう。私は「利回り8%を30年保証」なんてものは、聞いた途端に「うそ」って分かりますよ。そんな商品は平成バブルの頃にだってないですから。

 

「なぜ?」と聞いて納得して買えば後悔しない

 

「かぼちゃの馬車」をきっかけに、また不動産業界のイメージは悪くなったことでしょう。そこで、一般の人がマンションを買う場合に、本当に不動産会社を信用していいのか不安に感じる人も増えたかもしれません。

 

不動産会社の善し悪しを見分けるためにできることは、一般論になりますが、まずブランドだけで判断しないようにすることです。大手の不動産会社はテレビのCMなどを大量に行っていますから、名前がすり込まれてしまい、その時点で安心と感じる人も多いかもしれません。しかし、それはいつも正しいというわけではありません。ブランドの看板はリスクを下げるという選択肢ではあっても、そのブランドが作ったものだから絶対に大丈夫ということはありません。外れは確かに少ないですが、全面的に信じるのは禁物です。

 

むしろ大事にしてほしいのが、営業担当者とのコミュニケーションです。はっきり言って、いいことばかり言う人は、どんなに感じがよくても疑ったほうがいいです。よい営業マンは必ずリスクの説明をしてくれるからです。リスクを含めた説明を正面から受け止めた上で購入すると、あとで「しまった」と後悔する確率は確実に少なくなります。

 

専門家でもない限り、分からないことはあって当然なので、少しでも分からないことがあると、ご自分から質問をしてください。「なぜ?」と何度も質問してほしい。「このマンションは管理費が安いからオススメですよ」と言われたら「なぜ安いんですか?」と聞いてください。「タワーマンションはたくさん住んでいるので一人あたりの負担は安くなるんです」などと答えてくれるはずです。そこでまた「なぜですか? タワーマンションというのは普通のマンションとくらべて管理費はどれくらい違うんですか?」と聞けば、そこでいい加減にごまかしてくる営業マンは危ないですね。ごまかしたところには必ずリスクがあります。営業マンならちゃんと答えられないといけない。

 

感じがいいとか悪いとかは置いておいて、「なぜですか」と何度も何度も納得がいくまで質問してから判断して購入できたら、それが一番いい買い物と思います。

 

愛想のいいやぶ医者と、キツい指摘をするけど腕のいい医者ならどちらにかかりますか、という話ですよね。住宅購入は数千万円もしますから、生涯を左右する大ごとじゃないですか。医者と同等以上に相手に求める物をしっかりしていかないといけません。「感じがいいから」「いうことを聞いてくれるから」だけで買うのは禁物です。

 

投資用物件を買う場合も、自分の住まいを買う場合でも同じことですが、販売する業者も、融資をする金融機関も、相談に乗る税理士も、この中の誰一人としてあなたの人生には興味がないのです。端的に言ってしまうとみんな実績を上げたいだけですから。だから全面的に信用するのはやめてください。彼らは全員ノルマと実績を上げたいだけです。あなたの人生に責任を持っていませんから。人生において責任を負うのは自分だけです。

 

彼らの中にもいい人はたくさんいます。しかし、そういう一面もよく理解した上で、彼らをうまく使えばいいのです。ただいい人だから契約する、というのではなく、「なぜ?」と聞いて彼らに説明させて、それを聞いて自分で納得したとしたら、1億円のシェアハウスを買うのもいいと思います。そうすれば失敗しても納得いくでしょう? それを後になって人のせいにすることほど悲しい人生はないと思います。

 

(終わり)

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牧野知弘氏 
オラガ総研株式会社代表取締役。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に入社。「コレド日本橋」「虎ノ門琴平タワー」など、数多くの不動産買収や開発、証券化業務を手がける。2015年にはオラガ総研株式会社を設立し、代表取締役に就任。ホテルやマンション、オフィスなど不動産全般のアドバイザリー業務を行う。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(祥伝社新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)などがある。テレビ、新聞などメディア出演も多数、精力的に行っている。

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

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