シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社が破綻した問題は、融資していた銀行の不正問題にまで火がつき、平成最後の一大経済事件として発展することが確実視されています。インターネットの発達による情報化の進展と企業のコンプライアンスが叫ばれるこのご時世で、なぜこんなことが起きてしまったのでしょうか。また、この問題から私たちが学ぶべきことは何でしょうか。不動産事業プロデューサーとして幅広く活躍している牧野知弘氏にうかがいました。

 

牧野氏1

牧野知弘氏

 

「かぼちゃの馬車」は詐欺のレアケース。「不動産=悪」ではない!

 

自転車操業のビジネスが長続きするわけがない。これはズバリ詐欺だ

 

実は、私の知り合いの知り合いが「かぼちゃの馬車」を購入してしまったのです。中堅サラリーマンで、すでにワンルームマンションを2戸所有しており、いい状態で経営できるような方です。ところが、「もっともうかる不動産があるよ」と誘われて、さらに1億円の借金をしてしまったということです。

 

その方はご家族もいて、住宅ローンもありますし、ワンルームマンションを購入するための借り入れもあります。合わせると1億6,000万円くらいの負債総額になってしまいました。そしてなんと購入して3か月後には「賃料が払えない」と驚天動地のお知らせが届いたそうです。そういうこともあり、この問題には関心を持っていました。

 

長年、不動産を通じて国内の金融・経済を見てきましたが、この手の問題は繰り返し起こるのだなと感じています。「かぼちゃの馬車」の運営会社、スマートデイズ社はこんなビジネスが長続きしないことは分かってやっていたはずです。この手の事業は資産を回転させている限り、平たく言うと売れ続けている限りは、新しい顧客の売買代金で既存顧客への賃料を補填していきます。

 

完全な自転車操業。だから、補塡がストップした瞬間にパタッと倒れることになりますね。こういう自転車操業の状態になっているビジネスは不動産に限ったことではありません。ただ、「かぼちゃの馬車」の場合、もともとの商品企画自体が完全に詐欺だったということが大問題です。

 

とはいえ、この手のビジネスも新手のものではありません。ビジネスの手法も形態も旧来のものですが、金融機関や販売業者を巻き込んで組織的に大規模に行われた事案としては、希有な例と言えます。

 

かぼちゃの馬車が悪いのであって、不動産投資は悪くない

 

商品を作る詐欺師と、それに加担した金融機関であるスルガ銀行の問題が大きく報道されています。不動産にかかわる立場からすると、「これではいかんな」と感じます。一般に不動産業界に対する世間の人の印象は「カネに汚い」とか「うそつき」など、あまりいいイメージを持っていませんから、「ほら見たことか。やっぱり不動産は危ないし、業界は詐欺師の集団だ。だから不動産投資なんかやってはいけないんだ」と、振り子が極端に振れてしまうのではないかという懸念です。

 

実際、金融庁が「けしからん」という態度を示したことで、金融機関が個人の不動産投資家に対してこぞって慎重な姿勢を示し始めたというか、完全にシャッターを閉めるような動きがすでに出始めています。10億円とか20億円の物件は金融機関からお金を借りなくてもいい人たちが動かしているので、そこそこ売れているようですが、1億~2億円くらいの投資用物件の動きは今、パタッと止まっているらしいですね。

 

こういう流れになることについて、私は心穏やかでないですね。こんなあしき事例ひとつで不動産にかかわることについて世の中全体がシュリンクしてしまうことに、大きな危機感を覚えます。確かに、書類の改ざんのようなとんでもないことをした金融機関に対しては金融庁は指導をするべきです。

 

しかし、「かぼちゃの馬車」はあくまでも極端な例にすぎません。こういう極端な例を見て、世の中全体が「不動産投資は悪」というふうに世論が誘導されてしまうことは、世の中全体にとってもあまりいいことではないでしょう。

 

金融機関も「単細胞」だなと思います。金融機関は不動産に限らず、法人に融資をする場合にはそもそも何を見るべきなのか。それは、事業の成立可能性でしょう。それに対する評価で融資をすべきだと思います。事業計画書に基づいて、金融機関も適切な審査をして、支援をするというのがあるべき姿ではないでしょうか。

 

私自身、いろんなお客さまのビジネスのお手伝いをしていて、いつも「金融機関って何をもってお金を貸しているの?」と感じることが多いんですよ。金融機関は事業融資だったら法人の事業計画、住宅ローンだったら個人の人生をお金でサポートするのが役割のはずです。でも金融機関の論理ばかりが先に出てしまっています。中小企業の社長や不動産投資家の方から話を聞くと、金融機関が彼らを応援している感じが全然しないのです。

 

「担保価値がこのくらいの額だからこの何割にあたるお金を融資します」とか「この人はお金を持ってないから金利を高くします」なんていうことだったら誰でもできるじゃないですか。たとえば「かぼちゃの馬車」というシェアハウスは今後どれだけの成長可能性を持っているのか。そこに1億円のお金をかけるのだったら、それが30年後に2億円、3億円になっているのか。このように事業の可能性を判断してサポートしていく金融機関をほとんど見聞きすることはありません。

 

結局、銀行員は自分の実績を上げたいだけです。シェアハウスという事業に対して、何も考えていない。だから詐欺集団の一味になってしまうのですよ。スルガ銀行は役員会にもそういう報告が上がってなかったと言っていますが、それは信じがたい話ですよね。銀行員は「余計なことをしないことが出世のカギ」だと言われてもいて、その意味ではスルガは先進的ではあったのですが、隠蔽(いんぺい)や改ざんとなると、方向性を間違えていましたね。前向きな姿勢は評価されますけども、ひとつの価値軸からは逸脱しています。

 

業界の正しい情報発信は重要。リテラシーをもってやれば不動産はもうかるから!

 

いずれにしても「不動産投資は悪」という考え方を払拭(ふっしょく)しなければなりません。そのためにも、不動産業界に身を置く私たちの責任は重大です。「家賃は100%保証します」「1億円のお金を銀行が貸してくれます」「地方から出てきた女子に就職のあっせんをしているから、さらにお小遣いがもらえますよ」なんて話を聞かされたときに、お客様がふつうに「変だ」と思えるように、業界は正しい情報発信をしないといけませんね。

 

というのも、不動産や金融に対するリテラシーを持っていれば、安全で確実な資産形成をしたり、自分が投じたお金を増やしたりする手段として、不動産はとてもいいメリットがあるからです。私は不動産の企画をやっていますが、資金計画さえしっかり立てれば、不動産はすごくレバレッジがかかって、もうかるということをよく知っています。

 

だから、不動産自体が悪ではありません。金融機関も投資家も、国も業界もそこを間違えないようにしてほしいなと思います。

 

=(中)に続く

 

※「かぼちゃの馬車」問題

2012年に設立し、急成長したスマートデイズは、主に高年収の一般サラリーマン投資家に不動産を仲介、建設費用込みで銀行ローンを組ませてシェアハウス「かぼちゃの馬車」を建設し、一括で借り上げ、家賃を長期保証するサブリース事業を展開。「8%前後の利回りで3%代後半の利息を払っても十分に利益が出る」とうたい、投資家は平均で1億円といわれるローンを組んでいた。しかし、入居率が悪く、自転車操業に陥るとともに銀行からの融資が打ち切られたことから、2018年に入って投資家への賃料支払いがストップし、破綻。投資家は巨額の負債を抱え、自己破産者も多いとされる。

 

タッグを組んでいたのが静岡県の地銀、スルガ銀行で、過大なノルマをこなすため行員が投資家の年収や預金残高を水増しして審査基準を満たすよう書類を改ざんするなどの不正行為を行ったことが明らかになった。これを受け、金融庁が10月に一部業務停止命令を出すに至った。

 

 

牧野知弘氏 
オラガ総研株式会社代表取締役。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に入社。「コレド日本橋」「虎ノ門琴平タワー」など、数多くの不動産買収や開発、証券化業務を手がける。2015年にはオラガ総研株式会社を設立し、代表取締役に就任。ホテルやマンション、オフィスなど不動産全般のアドバイザリー業務を行う。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(祥伝社新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)などがある。テレビ、新聞などメディア出演も多数、精力的に行っている。

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

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