不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 最終更新日:2019年12月9日
  • 公開日:2018年12月10日

不動産投資詐欺になぜ中堅サラリーマンが1億円も出してしまうのか? 「かぼちゃの馬車」事件から学ぶべき教訓を不動産事業プロデューサー、牧野知弘氏が神解説!(中)

牧野氏2

牧野知弘氏

 

高収入サラリーマンがなぜ引っ掛かる? でも、あまり同情されていませんよ

 

今回の被害者が軒並み年収800万円前後の中年サラリーマンの怪

 

=(上)から続く

 

「かぼちゃの馬車」と似たような詐欺の例は昔からあります。そういった意味では、別に驚きはないのです。しかし、私が最も驚いたのは消費者の方ですよ。これまでは高齢者や不動産や投資に関して知見のない一般消費者が、うまい話に乗っかってしまって被害を受けるという事件が主体でした。でも今回は被害者の多くが、高収入の中堅サラリーマンの方だったということですね。まず、そういうところに時代を感じますよね。

 

それにしても、社会でも立派にポジションを築いている方々が、なぜこんな内容の投資話に引っ掛かってしまうのか。そこに私は問題の根深さを感じます。やはり彼らは人生設計をあまりにも甘く考えていたのではなかったかというのが2つ目の感想です。

 

「サラリーマン投資家」や「サラリーマン大家さん」を勧める本はたくさん出ています。確かに節税につながる面もありますし、なかなか給与収入が伸びない中で、副業として不動産収入で稼ぐことは興味深いことでしょう。おかしなことに、これまでは大企業も含めて普通のサラリーマンは副業が禁止されていることが多かったのですが、アパート経営だけは不問になることが多かったのですね。アパートを持つことによって稼ぎたいという気持ちは動機としてはよくわかります。

 

しかし、問題はそこからですよ。アパートに投資をして、中長期にわたって稼いでいくアパート経営を、本当に「事業」として考えていらっしゃるのかということです。消費者から事業者になるということをよく理解されていない人が実に多いのですよ。不動産投資をする人は消費者ではなく事業者です。このため、事業に失敗したからといって消費者保護の対象にはならないということをまず肝に銘じてほしいですね。

 

だまされたという気持ちも分かるのですが、お金を借りたのは本人であり、この商品を事業としてやることを決断したのも本人。受諾しがたいと思われるかもしれませんが、世の中的には責任がついて回るということですよね。ここまで言っていいのか分かりませんが、あまり同情されません。

 

「これは怪しい」と直感する力と現場を確認するフットワークが欠けている

 

運営会社からは「30年の家賃保証があります」とか「利回りが8%あります」とか「スルガ銀行が全額お金を貸してくれます」と説明されたのでしょう。しかし、年収800万円のサラリーマンが、1億円以上のもの借入金でこのシェアハウスに投資をするということを、もう少し冷静に、自分の頭の中で整理して考えるべきじゃないのかな。

 

利回り8%保証の金融商品なんて、今あるわけないでしょう。そう説明されたらまず「不可解」と考えないといけないはずです。30年が経過したときにこの建物がそもそも時代に合ったものとして通用するのかどうか。リスクとリターンの関係を考えて「8%の利回り? どんな危険があるんだろう?」ということを直感的に、感覚的に考えないのはどうしたことなのだろうと思います。

 

しかも、彼らの中には現物のシェアハウスを見ることもなく契約した人もいるそうですが、不動産は「物を見ないで決める」というのは絶対にダメです。金融商品はある意味では流通性も高く、ペーパーなので、物を見なくてもいいのですが、不動産は一軒一軒が全部違います。同じ銀座に建っている隣同士の建物でも評価はぜんぜん違います。

 

意外と重要なのが、物件を見たときの「第六感」です。「あ、これいいな」とか「ちょっと、この物件なんなんだろう…」という感覚。これは別に不動産の専門家でなくても、足を運んで現物を確認し、周辺の環境を見れば「あ、これなら確かに地方からの若い女性が集まるだろうね」とか「街の雰囲気もいいね」ということを感じられるはずです。

 

冒頭(上)で紹介した私の知人の知人も「かぼちゃの馬車」を買ったという話をしましたが、その知人も賃料の支払いが止まってから、初めて見に行ったそうです。すると女性が1人しか入っていなくて、その女性は「とても快適だ」と言っていたそうです(笑)。なので、何も考えずに、現物を見ることもなく不動産に投資することはやめてほしいと思います。そういう商品の設計をする人も罰せられてしかるべきです。ただ、買う側も賢くなってほしいというのが私のメッセージです。

 

B/SとP/Lから30年もつ会社か判断しよう

 

単に数字だけを見て、ポエムのような宣伝文句に引きずられて買ってしまっては後悔します。買う前に、この「スマートデイズ」という会社をよく調べて、「本当にこの会社は向こう30年賃料を保証してくれるのか」を確かめるくらいはしないといけません。

 

会社の決算書を見るときは、必ず会社の会計は貸借対照表(Balance Sheet、B/S)と損益計算書(Profit & Loss statement、P/L)を見ますよね。ところがこの事件の被害者の多くは事業のPLしか見ていないのですね。しかも、単年度か、せいぜい2~3年のP/Lしか見ていないのです。そこにいい数字が並んでいても、未来永劫、ずっと続くわけがありません。

 

バランスシートの負債の部分に1億円を乗っけることの意味を本気で考えてほしい。「かぼちゃの馬車」のシェアハウスが、本当に左側でバランスするのかと。あっという間に左側の資産が小さくなるってことは、ちょっとでも会計を勉強していれば分かることですよね。たとえ学問的に理解できなくても、感覚的に分かってほしいところです。

 

日本人はお金のことを大ぴっらに語ることを嫌がりますが、今後はやはりお金に対する教育って必要ですよね。

 

目先のもうけだけで一世一代の投資はしないほうが

 

この問題に限らないですが、日本人は目の前のもうけ、心地よさにしか目が行かないように思います。僕もこの仕事をやっていて、「不動産って奥が深いな」って思うのは、目先では何も決まらないのですね。前職では大型のオフィスビルを担当していたのですが、最初はこれが成功したのかどうかなんて分かりません。5年、10年たったときに「あの投資はよかったな、あれは失敗だったな」ってことが分かるってことを学びました。

 

当初の企画書は「利回りは何%で、借入金はいくらで」ということを綿密にやるのですが、その通りに行かないことが普通です。勤めていたのが大きな会社だから、うまくいかなくてもなんとかバランスすることはできますよ。一方、高収入とはいえ普通のサラリーマン個人が、僕からしたら発狂したのじゃないかと思えるくらいの思い切った一世一代の投資を平気でしてしまうのを見ていると、なんとも言えない気持ちになります。失敗したって言われても、「よく考えてやりなよ」って言いたくなりますよね。

 

=(下)に続く

 

※「かぼちゃの馬車」問題
2012年に設立し、急成長したスマートデイズは、主に高年収の一般サラリーマン投資家に不動産を仲介、建設費用込みで銀行ローンを組ませてシェアハウス「かぼちゃの馬車」を建設し、一括で借り上げ、家賃を長期保証するサブリース事業を展開。「8%前後の利回りで3%代後半の利息を払っても十分に利益が出る」とうたい、投資家は平均で1億円といわれるローンを組んでいた。しかし、入居率が悪く、自転車操業に陥るとともに銀行からの融資が打ち切られたことから、2018年に入って投資家への賃料支払いがストップし、破綻。投資家は巨額の負債を抱え、自己破産者も多いとされる。

 

タッグを組んでいたのが静岡県の地銀、スルガ銀行で、過大なノルマをこなすため行員が投資家の年収や預金残高を水増しして審査基準を満たすよう書類を改ざんするなどの不正行為を行ったことが明らかになった。これを受け、金融庁が10月に一部業務停止命令を出すに至った。

 

 

牧野知弘氏 
オラガ総研株式会社代表取締役。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に入社。「コレド日本橋」「虎ノ門琴平タワー」など、数多くの不動産買収や開発、証券化業務を手がける。2015年にはオラガ総研株式会社を設立し、代表取締役に就任。ホテルやマンション、オフィスなど不動産全般のアドバイザリー業務を行う。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(祥伝社新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)などがある。テレビ、新聞などメディア出演も多数、精力的に行っている。

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

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※2026年11月01日現在 本社・首都圏営業所の数値

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    2 週間前

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    3 週間前

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    2 週間前

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    2 か月前

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