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公開日:2024年3月10日

不動産の心理的瑕疵物件に対する国の見解と不動産業者が取るべき対応

REDSエージェントの宅建士、伊藤靖陽です。今回は心理的瑕疵物件がテーマです。皆さまが不動産を購入検討する際には必ず確認しなければならない、大変気になる内容ですよね。

私も20年間不動産営業に従事してきた中で、心理的瑕疵物件(中古マンション、中古戸建て)に出合う機会は何度かありました。

私たちもお客様へ不動産をご紹介する際は、社会的影響が大きいことから、過去に何かなかったか十分に調べたうえでご案内しますし、もし心理的瑕疵物件だった際は事前にお伝えできるよう常に注意を払っております。それはお客様のご自宅の売却を任せられた不動産の売却活動を行う際に、その不動産に心理的瑕疵があった場合も同様です。

しかし、亡くなった方やその遺族の名誉および生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、特に慎重な対応を要することも事実です。

国土交通省では「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」での議論を踏まえ、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されておりますので一部ご紹介いたします。

心理的瑕疵物件

心理的瑕疵について国がまとめたガイドラインの内容

ガイドラインの概況は以下のような内容です。

本ガイドラインは、取引の対象不動産において過去に人の死が生じた場合において、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、現時点における裁判例や取引実務に照らし、一般的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものです。

例えば以下の事項について整理しています。

●宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、告知書に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。

●取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい。

●賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生からおおむね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい。

●人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある。

告知が必要なケースとは?

国のガイドラインでは、告知が必要なケースを以下のように定めています。

宅地建物取引業者は、媒介業務または販売活動に伴う通常の情報収集等の業務の中で、売主・貸主(媒介業務を行う場合)や管理会社(自ら売主となる場合)から人の死に関する事項を知らされた場合や自らこれらの事項を認識した場合(例えば、売主業者が当該物件を取得する際に事案の存在を把握した場合など)には、当該人の死に関する事項を取引の相手方等に説明・告知する必要があるかを判断しなければならない。宅地建物取引業者が業務の中で人の死に関する事項を認識した場合に告知を要する事案は、次のとおりである。

(1)殺人、自殺、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合
○取引の対象となる不動産において、過去に、殺人事件、自殺、事故死が生じた場合には、裁判例において、買主が売主に対して説明義務違反などを理由とする損害賠償責任をめぐる多くの紛争がみられる。

○このように、過去に殺人事件、自殺、事故死が生じた場合には、買主・借主が契約を締結するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、原則として、告知を要するものとする。

○なお、取引の対象となる不動産において、過去に原因が明らかでない死亡が生じている場合(例えば、事故死か自然死か明らかでない場合など)においても、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、これらの発生を認識した場合には、原則として、告知を要するものとする。

【自然死が発生した場合】
○老衰、持病による病死など、いわゆる自然死については、そのような死が発生することは当然に予想されるものであり、統計においても、自宅における死因割合のうち、老衰や病死による死亡が9割を占める一般的なものである。

○また、裁判例においても、自然死について、心理的瑕疵への該当を否定したものが存在することから、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いものと考えられ、原則として、告知は要しないものとする。

○ただし、自然死が発生した場合であっても、取引の対象となる不動産において、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置されたことなどに伴い、室内外に臭気・害虫などが発生し、いわゆる特殊清掃が行われた場合においては、買主・借主が契約を締結するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、これらを認識した場合には、告知を要するものとする。

とされています。

賃貸物件についてガイドラインはどう定めているか

【告知すべき内容】
○取引対象となる不動産において、過去に、殺人、自殺、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生している場合には、これを認識している媒介業者は、事案の発生時期、場所および死因(不明である場合にはその旨)について、借主に対して告知を要するものとする。ここでいう事案の発生時期、場所および死因については、後記で示す調査において貸主・管理業者から聴取した内容をそのまま告知すべきである。

【告知すべき期間】
〇事案が発生してから期間を経過している場合、いつまで告知を要するかについては、その事件性、周知性、社会に与えた影響などにより変化するものと考えられるが、過去の裁判例においても、「住み心地の良さへの影響は自殺などの後に第三者である別の賃借人が居住した事実によって希薄化すると考えられるとされている事例」(東京地裁H19.8.10判決、東京地裁H25.7.3判決)「賃貸住宅の専有部において自殺が起きた後には、賃貸不可期間が1年、賃料に影響が出る期間が2年あると判断されている事例」(東京地裁H19.8.10判決、東京地裁 H22.9.2判決等)などの事例があるほか、公的賃貸住宅においても、事案発生後の最初の入居者が退去した後には、通常の住戸として募集する運用が長らく行われているところである。

これらを踏まえ、殺人、自殺、事故死については、事案の発生から、少なくとも3年間は、借主に対して、告知を要するものとする。

なお、取引の対象となる不動産において、自然死があった場合には原則として告知は要しないが、人が死亡し、長期間放置されたこと等に伴い、特殊清掃などが行われた場合においては、これを認識している媒介業者は、上記に掲げる事項ならびに発見時期および臭気・害虫などが発生した旨について、殺人、自殺、事故死の場合と同様に、事案の発生から、少なくとも3年間は、借主に対して、告知を要するものとする。

とされています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。やはり告知事項(心理的瑕疵)については基本すべてお伝えする形ですが、自然死の場合や、賃貸物件の心理的瑕疵については4年目からは告知しなくてもいいとされております。

賃貸物件の営業経験がない私は、3年間の期限が設定されていることに少し驚きましたが、売買物件については調査して、その結果をありのままお伝えするようにしております。もし、現在検討されている皆様も気になりましたらその営業スタッフに聞いてみるといいでしょう。また、Web上でも事故物件のサイトがありますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

少し走り書きになってしまいましたが、心理的瑕疵物件についてはしっかりガイドラインがあり、ルールがあるということを理解したうえで探した方がいいと思い、今回に至りました。ぜひ今後の参考にしていただけましたら幸いです。それでは引き続きよろしくお願いいたします。

 

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伊藤 靖陽
(宅建士・リフォームスタイリスト)

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