日本能率協会総合研究所が行った調査によると、住宅ローンの人気上位を占めたのは、意外にもインターネット銀行(以下、ネット銀行)が取り扱う商品だったようです。
実店舗を持たないため経費負担が少なくて済むネット銀行は、一般の銀行に比べて金利も割安。一方で、大きな金額を借りる住宅ローンは、相手の顔が見えないネットでの手続きに「何となく心配…」と思われる方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、こうしたネット銀行で住宅ローンを組むメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。
ネット銀行の特色やメリット
ネット銀行とは、その名の通りインターネット上の銀行で、実店舗を持たないことが特徴です。通帳はなく、振込や口座振替はインターネットで行えます。現金を扱う時は提携するコンビニのATMが利用でき、深夜・早朝でもスマートフォンやパソコンなどから各種手続きが可能です。
また、ネット銀行の手続きはメールや郵送で完結します。手続きのために平日休みを取ったり、わざわざ店舗に出向いたりする負担もありません。
こうした利便性の高さ以上に、ネット銀行の一番のメリットとされるのが「住宅ローン金利の低さ」です。実店舗を持つ銀行に比べ、人件費や家賃などの経費が少なくて済むためです。
ここでネット銀行とメガバンクの金利を比較してみます。
あわせて、実際にローンを利用する際に必要な諸経費として「事務手数料」と「保証料」も見てみましょう。
※金利や諸経費は、全て2016年12月7日現在のものです
※実際の適用金利は自己資金割合や審査によって異なります
※借入期間は35年としています
【楽天銀行(ネット銀行)】
金利 |
変動金利 |
0.507% |
フラット35 |
1.10% |
事務手数料 |
金利 変動金利 |
324,000円 |
変動金利 |
借入金額の1.08%(税込)
※最低融資事務手数料108,000円(税込) |
保証料 |
なし |
(出典 http://www.rakuten-bank.co.jp/home-loan/)
【住信SBIネット銀行(ネット銀行)】
金利 |
変動金利 |
0.497% |
フラット35 |
1.10% |
事務手数料 |
借入金額の2%(税別) |
保証料 |
なし |
(出典 https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i080101CT)
【みずほ銀行(メガバンク)】
金利 |
変動金利 |
0.600%~ |
35年間固定金利(※) |
1.11% |
保証料 |
金利0.2%上乗せ(一括前払い方式もあり) |
(※)フラット35ではなく、みずほ銀行独自のローンです。フラット35の取り扱いもあり、最低金利も同じですが、事務手数料が定率制となります。
(出典 https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/index.html)
【三菱東京UFJ銀行(メガバンク)】
金利 |
変動金利 |
0.625% |
35年間固定金利(※) |
1.21% |
事務手数料 |
32,400円(税込) |
保証料 |
金利0.2%上乗せ(一括前払い方式もあり) |
(※)東京三菱UFJ銀行独自のローンです。フラット35の取り扱いはありません。
(出典 http://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/yuuguu/index.html)
いずれのネット銀行もメガバンクの金利を下回り、保証料もかかりません。一方、事務手数料はメガバンクの方が低い傾向があるようです。
今回比較した結果をまとめると……
1. 金利はネット銀行の方が低い
2. 保証料はネット銀行の方が安い(無料)
3. 事務手数料はネット銀行の方が高い
ただし、これは一般論であって、ネット銀行でも実は金利が特別低くないということはありますし、店舗のある銀行でも優遇金利やキャンペーンなどで低い金利を実現している場合もあります。
なお、返済中の繰り上げ返済やローン条件の変更などにも、店頭手続きはインターネットよりも高い手数料が一般的です。必要経費と割り切るにせよ、細かいお金こそシビアに判断するにせよ、ローンを選ぶ際に手数料は考慮しておいてください。
ネット銀行で住宅ローンを組むデメリットは
次に、一般的にネット銀行で注意すべきと言われていることを検証してみたいと思います。
1. 直接相談できない?
住宅ローンという大きい買い物を、誰にも直接相談できないというのは不安かもしれません。
また、顔なじみの担当者が店舗にいればちょっとした相談もしやすいでしょうし、返済額の見直しなどもスムーズに運びます。そういったケアの手厚さは、店舗を有する銀行ならではです。
この点では、例えば楽天銀行ではコールセンターがあり、年末年始を除く土・日も電話できます。毎日9時22時まで、対面に近い感覚で話せるSkype(インターネット電話)の予約が可能です。
しかし、電話は家族など多人数で話すには不向きですし、心情的に直接顔を見て話したいという人などもあるでしょう。
住友SBIネット銀行では、東京駅前にマネープラザを設置し、大手銀行さながらの対面サービスを開始しました。今後はこういった動きが広がる可能性もありますので、動向を注視したいところです。
2. 審査に時間がかかる?
住宅購入時は、不動産会社から提携金融機関のローンを提示されることがよくあります。主に大手銀行のローンなのですが、提携しているだけあって審査がスムーズで、時間も早いと言われています。一方、ネット銀行の住宅ローンは審査基準が杓子定規で、基準が分かりにくいようです。
どの金融機関でも審査基準は公表されていませんが、提携先のローンであれば、不動産会社も扱いが多く様々な事例に慣れているので、より的確なアドバイスが受けられるかもしれません。
3. ローン商品が限定される?
ローン商品(金利設定や団信など)のバリエーションがやや少ないネット銀行も見受けられます。商品を絞れば管理費などのコスト削減効果があるためですが、そこに自分の組みたいローンがあるかは事前に検討しておきましょう。
また将来、リフォームローンやリバースモーゲージ(自宅を担保に融資を受け、本人の死後、遺族が家を売却して返済する制度)などを活用する場合、もし住宅ローンの借入先にこうしたメニューがあれば対応してもらいやすくなると思われます。
商品の豊富さや、返済後のフォロー体制の充実を望むならば、通常の銀行を検討しても良いでしょう。
4.保証料と事務手数料の違い
ネット銀行は、保証料は大半が無料ですが、事務手数料がメガバンクの保証料とほぼ同じ位かかります。繰り上げ返済や物件を売却して一括返済をして、早く返済が終われば、諸費用を差し引いて保証料は返還されますが、事務手数料は一切返還されません。
早期に繰り上げ返済や住み替え・買い替えで全額返済をする可能性があるならば、金利だけに捉われない選択をしましょう。
大切なのは、様々な要素を個別に判断すること
ネット銀行は金利面で大きな魅力がある一方、通常の銀行と比べると、フォロー体制や商品力で劣るかもしれません。しかしこれは、デメリットというよりは「特色」です。
皆様は、ご自身の優先事項が金利なのか、安定したフォロー体制なのか、また別のことなのか……を明確にしてネット銀行の可否を考えましょう。
また、ネット銀行のセキュリティの危険性や倒産リスクを懸念する人もいるかと思います。これはネット銀行に限らず大事にしたい視点です。セキュリティ面に関しては企業の安全対策も確認すべきですが、パスワード管理の徹底など自衛策も大切です。
単純に「ネット銀行だから…」と大ざっぱに見るのでなく、各行の金利や諸経費、商品ラインアップやサポートなどを個別に判断することが大切です。そしてご自身の嗜好を踏まえ、総合的に判断して一番良い金融機関を選びたいですね。
これまでのREDS(レッズ)のお客様にも、ネット銀行をご利用になられた方は多く、評判も上々のようです。月々の支払い額を少なくするために、金利を最重要視するお客様につきましては、担当スタッフよりネット銀行のご利用についてもご提案させていただいております。