国土交通省は、2021年1月25日に開催した「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」で、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)に関連した分野のうち、不動産売買取引のIT重説(オンラインで重要事項説明を行うこと)を、2021年4月から本格運用すると発表しました。

 

賃貸契約については、すでに2017年よりIT重説は本格運用が開始されていて、売買契約についても社会実験を実施してきました(REDSなど一部不動産業者で現在も実施中)。コロナ禍において非対面での説明ニーズが高まる中、本格運用が決定した、ということです。

 

今回の記事ではオンラインによるIT重説の注意ポイントを詳しく説明していきます。

 

オンラインで説明

(写真はイメージです)

 

重要事項説明とは何か?

 

不動産取引は高額なため、不測の損害やトラブルを防止するために対象物件や取引条件、その他の事項について、売主・買主の双方が十分に確認したうえで契約を締結する必要があります。しかし、多くの消費者は不動産の売買の経験や知識が十分だとはいえません。一方で一部の売主や仲介をする宅建業者は不動産取引のプロです。

 

そこで、不動産取引と宅建業者を規定する宅建業法35条では、消費者保護と取引の安全のため、取引にかかわる宅建業者に、契約成立前に買主または借主に対し、対象物件や取引条件のほか書面を交付して説明することを義務付けています。これを重要事項説明といい、その書面を重要事項説明書といいます。

 

重要事項説明は、宅地建物取引士(以下「宅建士」といいます)が宅地建物取引士証を提示の上説明することを義務付けており、また、書面の交付にあたっては、宅建士の記名押印を必要とします。学生時代や独身時代にワンルームを借りたことがある人なら、契約前の最終段階になって不動産会社でそれまでの担当者とは違う人が出てきて目の前で書面を朗読された経験があると思いますが、アレです。

 

オンライン重説の手順

 

IT重説(オンライン重説)は重要事項説明をパソコンやスマートフォンなどを活用して、オンラインで実施することを意味します。

 

具体的には以下の手順で行われることになるでしょう。

 

① 事前に買主に宅建士の記名押印をした重要事項説明書を送付
② 映像と音声で双方向コミュニケーションができるテレビ会議アプリを利用
③ 宅建士が宅建士証を提示、買主に確認をしてもらってから説明
④ 買主が重要事項説明書に署名押印して返送

 

予想されるメリット・デメリット

 

オンライン重説は賃貸借契約で先行して実施され、社会実験も行われていてメリットとデメリットは出尽くしています。メリットは以下のとおりです。

 

① 買主の移動負担を低減できる
② 買主がリラックスできる
③ 対面・接触による感染リスクがゼロ

 

通常、重要事項説明は、説明をする宅建業者や金融機関の事務所で行われます。そのため買主は説明が行われる場所までの交通費や移動時間が負担となっていました。特に地方から上京する場合や東京から地方に行く場合などでは、重要事項説明を受けるためだけに移動しなければならないことが消費者の大きな負担となってきました。また、子育て中の人にとっては長時間にわたって拘束されることも高い壁でした。オンライン重説によってその負担を低減することができます。

 

また、自宅などリラックスできる空間を買主自身が選ぶことが可能になれば、質問などもしやすく理解を深めることができるでしょう。

 

さらにコロナ禍の現在では、移動や説明場所での対面・接触の機会がなくなるので、ウイルス感染のリスクを減らせます。

 

一方で、デメリットはなんでしょうか? オンライン重説の最大の問題点は、パソコンやスマホなどの機器を使用し、インターネットを利用できる通信環境でなければいけないのですが、そうでない買主や宅建業者は利用できない、ということです。「いまどきネット対応できない宅建業者などありえないだろう」と思う方も多いかもしれません。しかしまだまだFAXによる物件案内が主流、メールやラインよりも電話で会話しないと失礼、という文化の業界ですから油断はできません。

 

また買主側に「説明を受けた後、重要事項説明書に署名・押印をして返送する」という作業が発生します。署名押印は対面でもありますし、返送作業だけなら大したことではないのですが……。

 

オンライン重説では通信が途切れた隙につけ込まれないように

 

オンライン重説でも基本的には宅建業者の義務は従来と変わりません。重要事項説明書を書面で用意すること、宅建士によって説明すること、宅建士証を提示し、買主に確認してもらうことが必要となります。

 

オンライン重説を実施中は、双方向コミュニケーションがとれる通信環境を維持することが重要になります。重説の途中で音声や映像が乱れ、少しでも意志疎通が難しくなった場合には、一旦重説を中断し、通信環境を整えたうえで再開するようにしましょう。音声や映像が途絶えた間に重要事項が口頭で説明されているかもしれません。押印してしまえば後になって「それは聞いていなかった」は通用しません。

 

もちろん業者には通信環境を確認する義務が課せられていて、これが履行できなければ、通常の重要事項説明の違反と同様に罰則が与えられることになります。ただ、買主のみなさんも、ネット通信が途切れた隙につけ込まれないように注意していただいたほうがいいでしょう。すべての仲介業者が善人とは限りません。通信が途切れた隙に書面にない事項が口頭で説明されていないとも限らないのです。

 

オンライン重説の利用は増加するのか?

 

オンライン重説の社会実験後のアンケートでは、約7割が「利用したい」と回答し、「利用したくない」はごく少数(2.7%)でした。このため本格運用のニーズは高く、この4月からは主流になっていくことが予想されます。

 

特に、コロナ感染の危機意識が強い現状では、利用者側・宅建業者側の双方で、接触機会を減らすことに対するニーズは高いといえます。事前に重要事項説明書に目を通すことが可能となりますので、理解度もむしろ高まることも期待できます。

 

一方で、デメリットはさほど大きいものがありません。繰り返しになりますが、通信が途切れないかに十分注意し、もしも途切れてしまったらその間にどんなことを説明したのかを明らかにしてもらいましょう。やりとりを録画できるアプリもあるので、しっかり活用すれば後になって契約不適合が発見されてももめることはありません。

 

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売り会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。