新型コロナウイルスの影響で、マンションから戸建て住宅に移る人が増えています。戸建て住宅と言えば一般に2階建てをイメージする人が多いかもしれません。敷地面積が狭い場合は3階建てを選ぶ人もいますが、郊外の地価が安いエリアでマイホームを買うなら「平屋」も一考の価値があります。
平屋にしかないメリットとはなにか、建築方式や、土地、リノベーションなどの点から解説します。
(写真はイメージです)
目次
平屋のメリット
平屋のメリットはなんといっても住み心地のよさでしょう。マンションと同じくワンフロアのため移動が楽だったり、庭との距離が近いため家庭菜園やガーデニング、BBQなどを手軽に楽しめたりなど、日常生活をエンジョイしやすいといえます。その他、メリットを挙げてみます。
(1)生活導線が楽
平屋のメリットは、何といっても生活導線がシンプルなことです。リビングやキッチン、トイレなどがワンフロアに収まっていて、階段を上り下りする必要はありません。また、常に家族と近い位置にいて生活ができることも強みです。小さい子供がいる夫婦の中には「家を建てるなら平屋」とこだわる人もいるくらいです。階段がないことで、不慮の転落事故などもありません。
(2)光熱費・メンテナンス費用が節約できる
平屋は階段がなく間取りがシンプルなため、空気の循環がスムーズです。つまり冷暖効率がよく、光熱費で大きな節約が期待できます。戸建て住宅の場合、新築から10年を目安に「外壁塗装」と言って、防水・防塵処理を行う必要があります。劣化を防ぎ、資産価値を守るためには欠かせないのですが、2、3階建ての住宅と違って足場を組む必要がありません。十数万円程度の節約になります。
(3)庭と一体的になった余裕ある間取りが作りやすい
平屋は庭と一体的になった間取り設計がしやすいため、ウッドデッキをリビングと繋げて広いテラスを作ることや、開口部を広くとって日光を大きく取り込むことができることなどがメリットです。
(4)震災に強い
当然ですが、2階分の重量を支える必要がなく建物の重心が低いため、地震の揺れに強く、倒壊のリスクが低いといえます。東日本大震災以降、建築基準の厳格化や等級基準の見直しなど地震に対する意識は強まっているなか、平屋を選ぶだけで2階建て住宅に比べて倒壊リスクをかなり軽減できます。
平屋のデメリット
(1)日照に気を付ける必要がある
2階建てが立ち並ぶエリアにある平屋だと、夕方や朝の時間帯によっては、日差しが遮られる可能性があります。敷地の周辺環境によっては、風通しまで悪くなることもあります。家の形をコの字型やロの字型にしたり、中庭を設けたり、庭面向きのL字型にしたりすることで改善できることがあります。北側にも複数の窓を忘れずに設けましょう。
(2)防犯対策が必要
マンションと比較すると、戸建ては侵入が容易なため防犯の面で劣ります。平屋の場合、家族が全員同じフロアにいることから、侵入されたときのことを考えると心配になるという人も少なくありません。警備システムを導入することも検討しましょう。
(3)坪あたりの建築コストが割高に
同じ延床面積の平屋と2階建ての建物を比べた場合、平屋は屋根と基礎の面積が2階建ての倍になるため、その分の工事費がアップして坪単価が高くなる傾向があります。ただ、平屋は大きな足場を組まなくて済むうえ、2階のトイレや洗面台などの住宅設備が不要となるためコスト圧縮になります。
平屋のリフォーム・リノベーション
平屋を、リフォームやリノベーションするときに、どんなメリットや注意点があるのか考えてみましょう。
(1)大空間が作れる
平屋のリフォーム・リノベーションは、空間作りの自由度の高さが魅力です。2階建てと違って建物を支える躯体が少ないため、リビングやキッチン、ダイニングなど住む人が過ごす時間が長い場所に広いスペースを取ることができます。
(2)コストについて
平屋で、リフォーム・リノベーションの大がかりな工事をする場合は、土台・柱・屋根は既存の構造体を活用し、その他の部分を全面的にやり直すスケルトン形式が一般的です。どの程度のリノベーションを行うかにもよりますが、新築と同程度の住み心地を目指す場合、同じサイズの平屋を新築で建てた場合のおよそ6割程度が目安です。
(3)築古平屋の注意点
平屋の中でも築古物件をを購入してリフォームやリノベーションをするときには気を付けたいことがあります。まず、平屋は屋根の面積が大きいため、雨漏りがないかは真っ先にプロに確認してもらいましょう。次に、古すぎて想定していた予算では思うようなリノベーションができないこともあります。契約前の段階でリノベ事業者に同行してもらい、どの程度の工事なら可能か調査してもらいましょう。
(4)高い資産性
戸建て住宅を売却する場合、査定は基本的に「土地価格」と「建物価格」の合計値となります。平屋の場合、2階建て住宅よりも建物価格の総額は抑えられるため、不動産総額における土地価格の比率が高くなるという傾向にあります。
建物は経年劣化しますが、土地は腐りません。新築で購入してから20年経過する頃には一般的に建物価格はゼロになるため、不動産総額における建物価格の割合が高いほど(=土地割合が少ないほど)売却時の値下がり幅が大きくなるということになります。
つまり、平屋は土地の資産割合が高いため値下がりリスクを抑えられることになります。昨今では不動産取引が以前よりも一般的になり、子供の独立後には自宅を売却して2回目の不動産購入する方も多くなりました。売却時にどのくらいで売却できるかによって、老後の資金に差が生まれるため、非常に重視したいポイントです。
半沢隆太郎(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。実家が建設・不動産会社を経営。新卒で大手機械メーカー、その後コンサル会社を経て、現在は不動産業種の上場会社の経営企画部門に勤務。