空き家を売却したいけれど、何から始めればいいのかわからない。そんな不安をお持ちではありませんか?スムーズな売却を実現するには、基本的な流れや費用、注意点を知ることが重要です。本記事では、空き家売却のステップや費用、活用できる補助金制度などを徹底解説します。
※「空き家」は店舗や工場なども意味することもありますが、本記事では、「住居である空き家」について解説します。

(写真はイメージです)
空き家売却の基本的な流れ
空き家売却の全体的な流れを把握しましょう。売却を始める前の準備から契約までのステップは、大きく以下の5つがあります。
- 不動産会社に空き家の価格査定を依頼する
- 不動産会社と売却販売価格を決め媒介契約を結ぶ
- 売却活動を始める
- 買主と売買契約を締結する
- 空き家を引き渡す
各ステップをそれぞれ解説します。
不動産会社に空き家の価格査定を依頼する
空き家売却では、まず不動産会社に依頼して、空き家がどのくらいの価格で売れそうなのか査定してもらいましょう。不動産会社によって査定額は異なります。必ず複数社に依頼し、適正な査定価格を探りましょう。このとき、担当者の知識量や対応の仕方もよく見ておくことが重要です。
査定前には空き家の清掃と整理整頓を念入りに行います。家財は撤去しておくとなおよいでしょう。物件の図面や建築確認申請書、定期点検やリフォームの記録などを示すと、信頼性が増し、査定にプラスに影響する可能性があります。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定を依頼した複数の不動産会社の中から、売却活動をまかせたい会社を選び、仲介を依頼します。このときに結ぶ契約を媒介契約と呼びます。
媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。どれを選ぶかは売主が選択することができます。どの種類でも成約した場合の仲介手数料の額は同じですが、種類によって売主と不動産会社それぞれの売却活動の自由度が異なります。詳しくは不動産会社に尋ねてください。
不動産会社を選ぶにあたっては「最も高値の査定額を出してくれた」という理由だけで選ぶことは禁物です。担当者の知識量や相談のしやすさ、会社の信頼性や売却実績などもよく考慮しましょう。
売却価格を決め、売却活動を始める
査定価格をもとに不動産会社の担当者と売却販売価格を決定したら、いよいよ媒介契約の締結となり売却活動が始まります。
査定価格は「おおむね3カ月以内で売却できる価格」を想定して設定されますが、空き家が古かったり立地が悪かったりすると、売却期間が3カ月を上回ることがあります。その場合、担当者と相談の上、売却価格を見直すようにしましょう。
内見希望者が現れたら、その都度、事前に空き家を清掃し、空気を入れ換えて対応すると好印象につながるでしょう。
買主と売買契約を締結する
購入希望者が現れたら、売却価格について価格交渉を求められる場合があります。どのようなスタンスで対応するかは、ご自身の考えもあると思いますが担当者とも相談して決めましょう。
その後、売買が決まると、不動産会社とともに売買契約書や重要事項説明書などを作成し、買主と契約を結びます。この際、買主から手付金(代金の10%前後が相場)を受領することが一般的です。
空き家を引き渡す
物件によっても異なりますが、一般に中古物件の売買においては、売買契約から引渡しまでの間隔が1~2カ月程度あります。
売主は買主から手付金以外の残代金を受け取る一方、買主に空き家の鍵や所有権移転に必要な書類を渡すことで引渡しは完了します。所有権移転の手続きは、通常、司法書士の職務に該当します。
空き家売却の方法とその特徴

空き家を売却する方法として、代表的なものに下記の2つがあります。
- そのまま売却する
- 解体して売却する
それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
そのまま売却する
売却に時間と手間、お金をかけたくない方に向いているのが、「空き家をそのままの状態で売却する」方法です。住宅として使用することが可能なものは「中古戸建て」の売却、老朽化が進んで建物としての価値がほぼなくなったものは「古家付き土地」での売却といいます。
空き家をそのままで売却する大きなメリットは、空き家を解体する手間と費用がかからないことです。一方、デメリットは「中古戸建て」のリフォーム費用や「古家付き土地」の解体費用が買主の負担となるため、売却価格が低くなる場合があります。
中古戸建ての場合、一部をリフォームして販売するという方法もあります。水回りやクロスが新しくなれば、購入検討者の空き家に対するイメージもよくなるでしょう。リフォーム費用を上乗せして売却価格を設定できることも大きなメリットといえます。
一方、リフォーム費用がかかることや、耐震基準が現在と異なり耐震性に不安が残ることがデメリットかもしれません。また、リフォームのテイストが買主の好みと一致しなかったり、リフォーム費用を上乗せした価格では購入につながらなかったりするケースもあるでしょう。
解体して売却する
一定の費用がかかるものの、より高値で、より早期に売却したいという方には「空き家を解体して、更地にして売却する」方法が向いているでしょう。
更地で売却する最大のメリットは、一般的に「古家付き土地」よりも高値で、さらに早期に売却できる可能性が高まることです。更地だと買主は購入直後から建物の建築工事に着手できますし、住居だけでなく事業用地として使うなど活用の幅が広がります。また、買主に空き家の解体費用負担がないため、高く早く売却することが可能になるのです。但し、土地売却には売主負担で土地の測量を行うケースが多く、費用負担増がデメリットとなるでしょう。
このほか、空き家の維持管理にかかる手間が不要になることも挙げられるでしょう。また、更地のほうが土壌調査もスムーズに進みます。地盤調査や、土壌汚染・地中埋設物の有無を調べておくことで、買主にも安心安全をアピールできるでしょう。土壌・地中埋設物に問題があるまま売ってしまうと、契約不適合責任を問われ、売却代金の減額や契約解除、損害賠償などを請求される可能性もあります。(一般的に地盤調査は買主負担が多く見受けられます。)
一方のデメリットとしては、解体費用に加え、売却できるまでの固定資産税がそれまでよりも高くなるなど金銭的負担が大きくなることです。
空き家売却にかかる費用と税金
空き家を売却するときには、必ずかかる費用や税金があります。費用や税金を適切に管理することで、資金計画のめどをつけることができます。主な費用と税金は以下のとおりです。
【費用】
- 仲介手数料
- 解体・家財の処分費用
【税金】
- 譲渡所得税・住民税
- 印紙税
それぞれ解説します。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社に売却を依頼し、取引が成立した際の成功報酬として支払うお金で、その上限額は宅建業法で定められています。
400万円を超える金額で売却できた場合、仲介手数料の上限額は「売却価格の3%+6万円」となります。売却価格が200万円超えで400万円以下の場合は「4%+2万円」、200万円以下の場合は「取引額の5%」の手数料がかかります。仲介手数料には別途消費税がかかります。
売却価格(税抜) |
仲介手数料の上限額 |
400万円超 |
売却価格の3%+6万円 |
200万円超400万円以下 |
売却価格の4%+2万円 |
200万円以下 |
売却価格の5% |
※別途消費税がかかります。
参考)仲介手数料の法定上限額とは?
上記はいずれも上限額です。不動産会社によって請求額は異なりますので、媒介契約を結ぶ前に確認しておくことが重要です。
ただし、2024年7月から低廉な空き家など(価格が800万円以下)の場合、上記の原則による上限を超えて最大「30万円+消費税」が請求できるようになりました。
例えば、売却価格500万円の場合、「3%+6万円」のルールに従えば、仲介手数料の上限は「21万円+消費税」までになります。しかし、低廉な空き家などの場合は、この上限を超えて「30万円+消費税」までかかる可能性があります。
参考)空き家等に係る媒介報酬規制の見直し(PDF、国土交通省)
解体・家財処分費用
空き家を解体する場合、木造の場合で1坪あたり5万~6万円程度、軽量鉄骨造・重量鉄骨造・RC(鉄筋コンクリート)造の場合で8万~10万円程度かかります。これに人件費が加わることもあります。
家財処分費用は間取りと広さ、家財の量によって異なります。一軒家の場合の家財処分費用の相場は20万~100万円以上とされています。家財処分費用は可能なものはご自身で処分すると、ある程度は圧縮することが可能です。
解体費用・家財処分費用は、地域や業者によって異なります。高額になりますので、複数の業者から見積もりを取っておきましょう。
譲渡所得税・住民税・復興特別所得税
譲渡所得税と住民税、復興特別所得税は、空き家を売却して利益が出た場合に発生する税金です。税率は以下のように定められています。
区分(所有期間) |
所得税 |
住民税 |
復興特別所得税 |
合計 |
短期譲渡所得(5年以下) |
30% |
9% |
0.63% |
39.63% |
長期譲渡所得(5年超) |
15% |
5% |
0.315% |
20.315% |
※所有期間とは売却した年の1月1日時点での期間のこと
※空き家を相続した場合は、被相続人の所有期間が引き継がれる
譲渡所得税と住民税は、まず譲渡所得を求め、その金額に上記の表の税率を乗じて算出します。
※取得費:家の購入時にかかった金額。売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。建物の取得費は、購入代金または建築代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額です。
※売却にかかった経費:仲介手数料や解体費用など。
空き家を5,000万円で売却、取得費が4,000万円、売却にかかった経費が200万円だった場合、譲渡所得は5,000万円-4,000万円-200万円=800万円となります。所得税、住民税、復興特別税の合計額は、所有期間が5年以下の場合、800万円×39.63%=約317万円、同じく5年超の場合は800万円×20.315%=約163万円となります。
印紙税
印紙税とは、売買契約書を書面で交わした際にかかる税金です。契約書に収入印紙を貼って納税します。電子契約書の場合は不要です。売却金額に応じて、以下のように税額が定められています。
契約金額 |
税額 |
軽減された税額※ |
10万円超~50万円以下 |
400円 |
200円 |
50万円超~100万円以下 |
1,000円 |
500円 |
100万円超~500万円以下 |
2,000円 |
1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 |
1万円 |
5千円 |
1,000万円超~5,000万円以下 |
2万円 |
1万円 |
5,000万円超~1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
※2027年3月31日までに作成される契約書の場合に適用
空き家売却時の注意点
空き家売却に際して、後になってトラブルになると面倒です。また、税制上、手続きのタイミングも重要です。特に注意すべき点を以下の3つにまとめました。
- 空き家の名義人は自分になっているか
- 空き家の状態を正しく把握する
- 空き家の解体は元旦を過ぎてから
この3点について、具体例を交えて解説します。
空き家の名義人は自分になっているか
実家を相続した場合などは、空き家の名義人が自分になっているか、確認が必要です。不動産を売却できる権利があるのは名義人である本人だけです。名義変更が行われていない場合、法務局で相続登記を行います。
事前に相続人どうしでしっかり協議し、名義を自分にすることの了承を得る必要があります。この作業を怠ると、後に相続人どうしでもめることになるかもしれません。
空き家の状態を正しく把握する
長く人が住んでいない場合は特にですが、空き家の劣化状況を正しく把握する必要があります。シロアリ被害や雨漏り、配管設備不良などを把握せず、買主に知らせないまま引き渡した場合、後に買主から契約不適合責任を訴えられるリスクがあります。
空き家の解体は元旦を過ぎてから
土地の上に家があると、住宅用地の軽減が適用され土地の固定資産税が安くなります。その事実は毎年1月1日時点で判断されるため、1月1日に建物が残っているとその年の固定資産税は更地の状態よりも安くなります。
空き家を解体して売ることを決めた場合、売却まで時間がかかりそうなら、取り壊すのは元旦を過ぎてからにしたほうがいいでしょう。
費用や税金を抑えるための特例と補助金
空き家の売却にかかる費用や税金を軽減するために活用できる特例や補助金制度があります。主なものは以下の3つです。
- 解体費用の補助金
- 被相続人の居住用財産を売却する場合の特例
- 相続財産の取得費特例
具体的な条件や手続きを詳しく解説します。
解体費用の補助金
個人が空き家を解体する際には、全国の地方自治体ごとに空き家の解体に対する補助金を設けていますので、積極的に利用しましょう。補助金を受け取れる条件や金額は各地で異なるため自治体に問い合わせてみましょう。
被相続人の居住用財産を売却する場合の特例
被相続人から取得した相続不動産(空き家)をそのまま売却して譲渡所得(売却益)が出た場合に、一定の要件を満たせば、特例が適用され、譲渡所得から3,000万円が控除されます。つまり、譲渡所得が3,000万円以下なら、譲渡所得税・住民税・復興所得税はかかりません。
ただし、2024年1月1日以後の相続で、相続人の数が3人以上の場合は2,000万円までとなります。
特例の適用を受けるためには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。
相続財産の取得費特例
相続で取得した空き家を売却した場合、譲渡所得を求める際に必要な「取得費」に相続税の一部を加算できる特例があります。この特例を利用するには、相続税の申告期限の翌日から3年が経過するまでに譲渡している必要があります。
特例の適用を受けるためには、確定申告書に必要書類を添えて税務署に提出することが必要です。
まとめ
以上、空き家売却の流れや注意点、かかる費用や税金の種類と補助金制度などについて解説しました。
2023年から、空き家を放置して、倒壊の恐れのある「特定空き家」やいずれ特定空き家になりそうな「管理不全空き家」に指定されると、固定資産税が6倍に増額されるようになりました。手続きが面倒だからといって漫然と保有しているとご自身に不利益をもたらしかねません。家に住まなくなったり、住む見込みのない物件を相続したりした時点で、可能な限り早めに売却を検討しましょう。
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