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  • 公開日:2025年1月14日

マンションの維持費はいくら?内訳と負担を軽減する方法を徹底解説!

マンション購入を考える際、重視するポイントは立地、間取り、価格、そして学区(お子様がいる場合)などが一般的です。要するに、経済性と快適さを基準に条件を決めることになるでしょう。

 

しかし、購入時には価格や条件の検討に集中し、「維持費(ランニングコスト)」が軽視されがちです。維持費とは、快適な暮らしを続けるために毎月支払う費用で、家計に大きな影響を与えるものです。購入後や住宅ローン完済後も支払い続ける必要があるため、経済的に非常に重要です。

 

この記事では、マンションの維持費について詳しく解説します。

 

維持費

(写真はイメージです)

 

マンション維持費の内訳

マンションの維持費といわれるものは以下の5つに大別されます。

  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 駐車場・駐輪場代
  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険料

それぞれについて簡単にご説明しましょう。

(1)管理費

共用部の維持管理等に使われる費用です。マンション管理規約等で金額や徴収方法は定められており、通常は毎月徴収されます。

具体的には、以下のような費用に使用されます。

  • エレベーターの保守点検費用
  • 消防点検、報告費用
  • エントランスや廊下等共用部の清掃代
  • 共用部の水道光熱費
  • 管理人の人件費等

(2)修繕積立金

マンションを修繕するために毎月積み立てる費用で、マンション管理規約等で金額や徴収方法は定められています。外壁塗装や天井防水工事などの大規模修繕は、長期修繕計画に基づいて定められる場合が多いのですが、築年数が長くなればなるほど修繕費用も嵩むため、積立金も増加する傾向があります。

主に以下の費用に使用されます。

  • 外壁塗装
  • 屋上、天井防水工事
  • 給排水管取替工事
  • 受水槽取替工事
  • 自然災害による被害の修繕工事
  • セキュリティ設備工事

(3)駐車場・駐輪場代

自動車やバイク、自転車を所有している場合は、駐車場代や駐輪場代がかかります。いずれもマンションの管理規約や使用細則で金額や徴収方法が定められています。駐車場代は毎月徴収がほとんどですが、バイクや自転車の駐輪場代は年額で定められているケースもあります。

(4)固定資産税・都市計画税

毎年1月1日付で所有しているマンションにはその資産価値に応じて固定資産税都市計画税が課せられます。毎年4月中旬以降に各市町村より納税通知書が送付されてきます。税額は築年数や坪数・立地によって個別に算出されますので、同じ広さのマンションでも立地や築年数によって大きく異なります。

(5)火災保険料

火災や地震災害に備えるため、火災保険への加入が推奨されます。火災保険の加入期間は、かつては最長で36年となっており住宅ローン期間に合わせた設定も可能でしたが、2022年10月には最長5年に改訂されました。これは大型災害に伴う火災・地震保険の求償が増加し、保険内容の見直しが必要となったため、といわれています。

マンション維持費の年間相場

国土交通省では、5年ごとに「マンション総合調査」を実施しています。これはマンションの管理状況やマンション居住者の管理に対する意識を調査したもので、最新版は「令和5年度マンション総合調査」として国土交通省のホームページで公表されています。

 

参考:住宅:マンションに関する統計・データ等 – 国土交通省

 

令和5年(2023年)の国土交通省の調査によると、管理費の月当たりの平均額は11,503円となっています。

 

マンションの一戸あたりの管理費は、

管理費総額÷総専有面積×各住戸の専有面積=年間の管理費

で算出されるのが一般的です。管理費総額は、設備や管理の内容次第で異なります。管理の人件費やセキュリティ設備は郊外より都市部の方が高額になりがちなので、都市部の方が郊外より管理費が高くなる傾向があります。また総戸数の多い建物は、戸数の少ない建物よりは管理費が低くなる傾向となります。ただし、20階以上のタワーマンションなどは、管理費は高くなる傾向となります。

 

 

 

 

(数値は国土交通省「令和5年度マンション総合調査」から抜粋)

 

国土交通省は、修繕積立金についても「マンション総合調査」で調査を実施しています。月当たりの修繕積立金の平均額は13,054円となっています。

 

管理費と同様に、総戸数規模・階数が大きくなると修繕積立金も安くなる傾向となります。20階以上のタワーマンションとなると、修繕積立金が高くなるのも同様です。地域的な特徴としては、北海道・東北の修繕積立金が、九州・四国などより高い傾向があり、寒冷地仕様の設備・修繕費用が高いためではないかという仮説が成り立ちます。

 

 

 

 

(数値は国土交通省「令和5年度マンション総合調査」から抜粋)

 

その他の維持費としての、駐車場代・駐輪場代、固定資産税等、保険料などについては、地域や立地、広さ等個別の条件で変わってきます。マンションの維持費の相場としては以下の表の通りだと推定します。

 

マンションの維持費

 

項目 目安 中心値
月額 年額
管理費 1~3万円 ¥11,503 ¥138,036
修繕積立金 1~3万円 ¥13,054 ¥156,648
駐車場・駐輪場代 0~5万円 ¥15,000 ¥180,000
固定資産税等 10~30万円/年   ¥200,000
火災保険料 2~4万円/年   ¥30,000
合計   ¥58,724 ¥704,684

 

(①~②は「マンション総合調査」から中心値抜粋、③~⑤は筆者推定)

 

およそ年間で70万円、月々6万円程度は維持費がかかる、と考えていればよいでしょう。

 

築年数による維持費の変動

マンションの維持費は一定ではなく、築年数の経過に伴う修繕や、セキュリティ設備などの追加工事、さらにはインフレなどの社会情勢の影響により変動することがあります。

 

管理費は、水道光熱費や管理人の人件費、管理委託費用などがインフレの影響で上昇する場合に値上げされることがあります。また、新築物件は、中古物件と比べて管理が必要な施設や設備が充実していることが多く、さらに管理を外部の会社に委託するケースが一般的なため、管理費が高くなる傾向があります。

 

 

(数値は国土交通省「令和5年度マンション総合調査」から抜粋)

 

「マンション総合調査」によると、修繕積立金は78.4%のケースで、長期修繕計画に基づいて決定されています。ただし、修繕工事の材料費や人件費の値上がりが見込まれる場合、定期的な見直しが必要です。

 

積立方式については、均等に積み立てる「均等積立方式」が40.5%を占める一方、新築時の修繕費用が少ない期間は積立金を低く設定し、段階的に増額する「段階増額積立方式」が47.1%と、ほぼ半数を占めています。この方式は、将来的に修繕積立金が増えることを前提とした計画的な方法です。特に、完成年次が新しいマンションほど段階増額積立方式を採用する傾向があります。

 

 

(数値は国土交通省「令和5年度マンション総合調査」より抜粋)

 

マンションは築12年を目途に、外壁塗装や屋上防水工事を予定・実施する場合が多いと言われています。築12年~築15年で大規模修繕を実施(計画)すると当然積立金には余裕がなくなりますので、次の大規模修繕に備えるためには修繕積立金の徴収金額を高くする必要があります。その結果、築20~30年のマンションの修繕積立金が高くなっていると推測できます。

 

駐車場代は、周辺の相場に応じて変動することがあります。特に、タワー式や機械式駐車場では、老朽化による更新や改修費用が発生した場合、それが料金に反映されることがあります。

 

一方、駐輪場代はもともと料金が低いため、変動しても家計への影響は比較的小さいと考えられます。

 

固定資産税や都市計画税は、土地と建物の評価額に応じて変動します。一般的に、建物は築年数が経つほど減額係数が適用されるため、税額が下がる傾向にあります。ただし、都心部などで評価額が上昇する場合は、必ずしも税額が下がるとは限りません。

 

火災保険料は、単年契約よりも5年契約の方が1年あたりの契約金額は少なくなります。ただし、自然災害等による火災保険の求償金額が増加したことを理由に2024年10月には保険料が値上げされています。

 

このように概ね築年数が増えるにつれ、マンションの維持費は増える傾向があります。金額的に大きな変化は、修繕積立金の増加が見込まれる築15-30年のタイミングで顕在化することが多いです。

 

マンションと戸建ての維持費の違い

意外にマンションの維持費は高いものだなあという認識をされた方は多いのではないでしょうか?これならば戸建ての方が維持費はかからないのではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。そこで、マンションと戸建ての維持費の違いを見てみましょう。

 

マンションでは決められた管理費・修繕積立金・駐車場代を毎月払わなければなりませんが、戸建ては毎月の出費はありません。それだけを考えると戸建ての方が、維持費がかからないように見えます。

 

しかし、2016年に実施されたアンケート調査によれば、戸建てに住んでいる人が自宅の修繕にかけた費用は、平均築年数35.8年で平均総額556万円と、修繕積立金のような月々の一定額の出費とは異なり、資金的な準備が必要となる、まとまった金額となっています(※)。

 

加えて、設備の維持・管理にかかる点検・保守作業、水道光熱費、部品代等は、所有者がその都度、自分自身で判断して実施しなければなりません。

 

※ 参考: 2016年新築一戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞く「一戸建て修繕の実態」調査(PDF)|トレンド調査の調査データ|アットホーム株式会社

 

その点、マンションの場合は、管理費や修繕積立金を月々支払っていれば、修繕や修理が必要な場合でも、基本的には全て管理組合に任せることができます。急にまとまったお金が必要になることもありませんし、自身で管理する手間もかかりません。

 

維持費については、マンションと戸建てそれぞれにメリットとデメリットがあります。長期的に見ると、維持費そのものに大きな差はなく、戸建ての方が若干安く見えるのは、所有者自身が手間をかけて管理することで人件費が発生していないためです。

 

マンション維持費が払えない場合の対処法

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは全体の30.1%とかなり多く発生しています。

 

マンションの築年数が古いということは、新築の当初から購入した多くの所有者の居住年数が長くなっているということです。購入した時は30歳から40歳の働き盛りで、維持費も考慮したうえで充分な支払い能力がある、と見込んで購入を決断した所有者がほとんどでしょう。

 

しかし、所有者とともにマンションも年を取ります。前述したように、築年数が12~15年を超えたマンションでは、次回の大規模修繕のために修繕積立金を値上げすることがありますし、他にも物価上昇などの要因により、管理費を値上げしたりすることが多くなります。また築30年以上のマンションでは所有者も、定年退職や失業などの理由で想定していた収入に足りなくなるケースも増えていきます。そのような状況から築年数が古いマンションの方が延滞を起こす割合が高くなっているものと思われます。

 

それでは、マンションの維持費の支払いが困難になった場合は、どのように対処すればよいでしょうか?

 

管理費や修繕積立金を延滞すると、管理会社から手紙や電話、訪問などで督促を受けることになります。それでも支払いがない場合、管理組合から内容証明郵便で催告書が送られてきます。それでも応じない場合は、支払い督促が申し立てられ、最終的には強制執行や財産差押え、競売といった手続きに進む可能性があります。

 

こうした事態を防ぐために、下記①~④の対応を早めに行うことが重要です。特に支払いが難しい場合は、延滞が発生する前に管理会社に相談することが最優先です。

 

①家計の見直し

まずは無駄な固定費をできるだけ省くことに着手しましょう。通信費・保険料・駐車場や車のローンといった毎月の出費項目を契約から見直すことから始めましょう。

②管理会社へ連絡

滞納しそうな場合・滞納が避けられないような場合は、一人で悩まずに管理会社に早めに連絡・相談をしましょう。なかなか相談しづらいことかもしれませんが、管理会社にとってはそれなりによくある話で、対応手順が定められていることも多いのです。滞納しそうな理由、対処の見込み、今後の方向性等、真摯に相談してみることをお勧めします。この場合、法的手続きに進むことを抑えてもらえるように、まず支払いのために善処する意思があることを伝え、分割払いなどの解決策を提案しつつ相談することが肝心です。

③分割・減額交渉

今後の収入・返済の見込みが立つようであれば、その方法として分割や減額の交渉を実施してみましょう。この場合は、希望的観測ではなく、できるだけ現実的かつ具体的に条件を提示し、実施について信頼してもらうことが重要です。

④公的支援・売却検討

住宅ローンも含めて支払いが困難な場合は、残念ながらマンションの売却を検討するべきでしょう。その場合もできれば延滞を起こす前に金融機関と支払いのリスケジュールなどができないか相談するべきでしょう。また「生活福祉資金貸付制度」「生活困窮者自立支援制度」など公的支援制度の利用を検討してみることも必要です。

 

参考:生活にお困りで一時的に資金が必要な方へ「生活福祉資金貸付制度」があります。 | 政府広報オンライン

 

築年数が長いマンションほど維持費の延滞率が高くなるのはなぜ?

 

マンションの築年数が古いということは、新築の当初から購入した多くの所有者の居住年数が長くなっているということです。購入した時は30歳から40歳の働き盛りで、維持費も考慮したうえで充分な支払い能力がある、と見込んで購入を決断した所有者がほとんどでしょう。

しかし、所有者とともにマンションも年を取ります。前述したように、築年数が12~15年を超えたマンションでは、次回の大規模修繕のために修繕積立金を値上げすることがありますし、他にも物価上昇などの要因により、管理費を値上げしたりすることが多くなります。また築30年以上のマンションでは、所有者も定年退職や失業などの理由で想定していた収入に足りなくなるケースも増えていきます。そのような状況から築年数が長いマンションの方が延滞を起こす割合が高くなっているものと思われます。

 

維持費の節約・節減方法

マンションの維持費は住民の生活に大きく影響します。負担が増えすぎると生活が困難になる一方で、必要以上に削減するとマンション全体の運営に支障が出る恐れもあります。では、維持費を節約・削減する方法はあるのでしょうか?

 

維持費の中でも特に大きな割合を占めるのは「管理費」と「修繕積立金」です。そのため、これらの見直しが節約のポイントとなります。ただし、これらの金額や削減項目はマンション管理規約に基づいて定められているため、変更する場合は管理組合の理事会や総会で適切な手続きを踏む必要があります。

 

管理費については、

①管理会社への委託費用の見直し

  • 管理委託費用の料率見直し
  • 管理人の業務時間の短縮、廃止
  • 定期清掃の頻度見直し
  • 建物、設備(オートロック・インターフォン等)の見直し、保安契約の見直し

②共用部の光熱費の見直し

  • LED照明への切替
  • 照明時間の見直し
  • 電気契約先、内容の見直し

③保険契約の見直し

  • 保険契約先、内容の見直し

などが考えられます。

 

また、修繕積立金については、大規模修繕計画の見直しによるコスト削減、と纏めることができるでしょう。あるさいたま市内のマンションの事例をご紹介しましょう。そこでは修繕積立金不足や維持費の増加、居住者間の貧富の格差による意識の分断という課題に直面した際に、「ランニングコスト(維持費)の低減=向こう30年間の無駄な支出削減」という観点に一貫して立つことで、長期的な修繕計画を作成しました。その結果、従来の場当たり的なコスト低減策の積み重ねではなく、例えば、工事精度を高めることで修繕頻度を下げるといった長い目でのコスト低減を実現したといわれています。詳細は下記リンクをご参照ください。

 

参考:事例から学ぶ修繕コストを長期的に抑える効果的な対策(PDF、さいたま市ホームページ)

将来のマンション資産価値を守る維持費のポイント

マンションの資産価値を守るためには、しっかりした管理体制が欠かせません。管理会社と管理組合が両輪となって、積立金やメンテナンス・修繕計画などを、透明性を以て共有し運用していくことで、住民全体の資産価値を守る意識も上がります。

 

修繕が遅れると、建物の劣化が進み資産価値も低下します。大規模修繕は10年~15年周期で必要となります。しっかりした長期計画とそれに基づいた修繕積立金をプールしておく必要があります。

 

また、エレベーターや給排水設備といった共有部分のメンテナンスも、資産価値に大きな影響を与えます。法定点検やメンテナンスを定期的に行い、居住者の利便性を高めることが資産価値の向上につながります。

消防点検や消防報告・更新をしっかり実施することで、住民の安全を図り火災にも強いマンションを維持することとなります。耐震対策等も重要です。

 

ゴミステーションや駐輪場の利用ルールや、共用部の整理整頓、ペット飼育のルール等を共有し、清潔で明るいマンションを維持することも、資産価値を高める上で重要なことでしょう。

まとめ

マンションで快適に生活するために、定期的に必要になる出費が「維持費」です。管理費、修繕積立金、駐車場・駐輪場代、固定資産税等、火災保険といった項目に分かれますが、特に重要なのは、日々の共用部の整備に必要な管理費と、大規模修繕に備えて積み立てる修繕積立金で、マンションの資産価値にも大きな影響を与えます。

 

マンションを購入する際、宅地建物業者から、購入時の直近の、管理費・修繕積立金の月額や徴収方法、全体の残高や延滞金の状況が説明されます。これは、そのマンションの現在や将来の資産価値がどのように保たれていくのか、という点で大切な指標となりますので、じっくりと説明を聞き、理解を深めてから購入を決めるようにしましょう。

 

また、仮に生活が苦しくなって、維持費の支払いが難しくなってしまった場合は、まずは管理会社や金融機関に連絡し、解決方法について相談しましょう。

 

 

この記事の執筆者

早坂 龍太(宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士)

㈱エー・エムコーポレーション代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

㈱エー・エムコーポレーション代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。