マンション入居後のトラブルは気になるところ。マンション管理費の滞納やマンション住民や管理会社の間でのトラブルが発生したとき、誰に相談すべきだろうか? 
  「マンション弁護士会計士.com」を運営し、マンションのトラブルを手がける数少ない弁護士として、管理費滞納や規約変更の問題を専門的に扱う神戸靖一郎弁護士に最近のマンション管理をめぐる問題について話を聞いた。
  

マンション管理のトラブルで多いのは?

 
Q.マンションの管理の問題では、どのような相談が多いのでしょうか?
 
神戸弁護士:管理費回収の相談がダントツに多いです。例えば、管理費と修繕積立金を合わせて月額3万円だとすると、12ヶ月で36万円。これが3年、4年経つと100万円、200万円と膨らんでいきます。さらに遅延損害金のパーセンテージが18%などと高く設定されていることが多いことから、3年、4年以上滞納が続いている案件になると、弁護士の出番になってきます。
 
最近は管理会社もこの点をフォローするようになってきて、滞納が1年続いたら、「少額訴訟を起こしましょう」と管理組合に提案をするところもあります。60万円以下の少額訴訟は、フォーマットがだいたい決まっているので、きちんと管理をしている管理組合ならば、判決を取ること自体は難しくありません。そうなると、弁護士は、少なくとも強制執行が必要になってくるような案件を扱うことになるわけです。あとは、区分所有者同士の騒音に関するトラブルや、区分所有者と管理会社との問題で感情的な対立にエスカレートしてしまうことなどでの相談も多いですね。
 

管理会社の変更に伴うトラブルー旧管理会社が引継業務を怠る

Q.管理会社とのトラブルとは、どのようなものでしょうか?
 
神戸弁護士:管理会社の変更をめぐるトラブルの相談があります。法的には、管理規約に則って、不在の人から委任状をもらって、総会決議を取ればそれで済みますが、実務上は、元の管理会社から新しい管理会社への引継がうまくいかず、大ごとになってサポートの依頼が来ることがあります。特に旧管理会社のフロント担当にとっては、後ろ向きの業務になるので書類の引継ぎを渋ったりすることから、トラブルになります。また、管理会社の変更とセットで管理規約を変更するケースがあります。15年から20年ぐらい前までのマンションには、管理規約に問題があることがあり、例えば、管理規約に特定の管理会社を明記しているといったことがあります。そうすると、管理会社を変えるには管理規約を変更せざるを得ないわけです。
 
管理会社の変更の際にトラブルとなるのは、実は元の管理会社に対して不満があるケースがほとんどです。お金の問題だけならば、トラブルにはなりません。例えば、大手財閥系のデベロッパーから独立系のデベロッパーに変更すると、通常2、3割から場合によっては5割くらい費用が安くなりますが、これは経済合理性でやっているだけなので、お互いに遺恨はありません。これに対して、「管理会社のフロントが気に食わない」とか、「管理会社に対して経理面で不信感がある」といった事案の場合に、弁護士に相談が来ます。「何となく不安だから」という相談ではなく、課題が特定された状態での交渉の依頼が多いです。管理組合としては、後任の会社への引継ぎまでを含めて、これまでの管理会社がきちんと最後まで対応すべきという考えのようです。
 

管理費の不正流用のケースは?

Q.管理組合の理事長や理事による管理費の不正流用といったことはあるのでしょうか?
 
神戸弁護士:例えば、理事長の親族が建設会社を経営しているといった場合、やろうと思えばできてしまうことです。管理会社には通常、施工業者の子会社があります。例えば、大規模修繕をする場合に、3社の相見積のパターンになると、たいていは管理会社かその子会社が、他の2社の見積を見ながら自社の見積を作れることが多く、契約を取ります。また大手管理会社の1社受けの場合、受注額の2-3割のマージンを抜き、丸々下請けに出したとすると、その先はブラックボックスになりますよね。管理組合が、その外注先までのお金の流れを全部把握できるかというと、不可能です。
 
次いで多いのはキックバックですね。これが発生するのは、「管理会社を変更するとき」と「大規模修繕のとき」です。大規模修繕だと、1億円単位のお金が動きますし、管理会社の変更は、何千万円という売上が管理会社に立つか立たないかという話ですから、管理会社としては当然、営業をして契約を取ろうとします。経済合理性だけで契約できれば簡単ですが、たいていそうではなくて、「これまでの付き合いがあるし・・・」という話が始まるわけです。基本的には理事会の全員、少なくとも過半数以上を説得して、総会に出して、通さなくてはいけないから、内部で強力に推進してくれる人が必要になってきます。建前としては、理事にその役目を無償で担ってもらうのが健全なのですが、そこにインセンティブを出す管理会社があるということは聞いています。大規模修繕も、同じ構造ですね。ウチに受注させてくれたら、キックバックを渡しますよ、という話も聞かないわけではないです。ただ、あまり表に出てこないためか、それほど多くは聞かないのですが、やっていることが分かると目立ってしまうという面もあるのではないでしょうか。
 

これから増える!?―マンション管理費の滞納問題は解決できるのか?

 
Q.マンションの管理費や修繕積立金の支払遅延は、増えていく傾向にありますか?
 
神戸弁護士:マンションによります。マンションの管理費滞納は、解消されるメカニズムは、制度の中に組み込まれています。区分所有法の第7条、第8条で、次の区分所有者が前の区分所有者の滞納分の管理費を負担するというルールがあり、これが非常に強力な制度となっています。
 
例えば、マンション管理費を滞納して、にっちもさっちもいかなくなって誰かに売るとき、売主は本来、滞納している管理費を払わなくてはいけないので、1、000万円くらいの市場価値がある物件を、滞納している管理費分100万円を引いて900万円で売ります。管理組合は、区分所有法の第7条、第8条に従って買主に滞納管理費を請求すればいいので、区分所有者が変われば、基本的には払ってもらえます。買主側も、管理費を引いた金額で買っているので、文句が出ないというメカニズムです。
 
また、抵当権が設定されているケースがあります。管理費を滞納している人は、銀行の住宅ローンも滞納していることが多く、住宅ローンを放置していると、不動産の抵当権が実行されます。管理費には優先配当されるルールがあり、競落人は自分で管理費を背負わなくてはいけないルールもあるので、管理組合は、競売の配当でもらうこともあるし、配当でもらえなかったとしても競落人に請求すればいいわけです。
 
競落人が不動産業者や身元の確かな人であれば、そこで必ず回収できるという正のメカニズムが働いているので、市場価値が1、000万円以上あるマンションについて言えば、管理費滞納はそれほど深刻ではなく、いずれかの段階で解決される問題です。管理費の時効が5年なので、時効のことにだけ気をつけていれば、遅延損害金が18%や20%と高い分、結果的にマイナスとはならないマンションも多いですね。一般の人はその辺りのメカニズムに詳しくないので、弁護士が関与することが多いです。
 
このメカニズムが働かない場合に、どうやって動かすか、というのが弁護士の仕事になってきます。タワーマンションでは、まだ深刻な問題になってきません。ローンが払えなくて残債が残っていても、競売にかけられても、滞納管理費の処理はそのときに実行されるからです。またタワーマンションに限らず、山手線沿線のマンションだったら、そんなに深刻な問題は起こりません。
 
既に問題となっているのは、郊外の物件です。物件の価値が1、000万円を割ってくるようになると、買い手もつかず、滞納だけが残るという事態が起こります。将来的には、正のメカニズムが働かない事案、つまりキャッシュで買ったけれども放置するという事案は増えていくと思います。

 

相続人のいない所有者が亡くなった場合は・・・

神戸弁護士:キャッシュで買われたマンションが放置されて問題になるのは、相続人がいない所有者が亡くなってしまう事案で、文字通り放置されるケースです。独身でひとりっ子の人が亡くなったら、相続する人がいません。最終的には残された財産は国のものとなりますが、実務上、自動的に国に納められるようなメカニズムにはなっていません。相続財産管理人を選任して、その人が売ったり競売にかけたりして換価した上で、管理費等を払うという手順です。
 
相続人がいないまま放置されている物件でも、銀行が抵当権をつけていれば、回収のために処理がされますが、キャッシュで買われた物件は処理する人がいません。弁護士に依頼が来る案件は、誰も手が付けられないような事案です。管理費回収のためには、管理組合が相続財産管理人の選任をしなくてはなりませんが、その際、裁判所への予納金が、関東近辺だとおよそ100万円かかります。
 
実際にこうした相談は増えています。管理組合が相続人を探すことは難しいので、司法書士や弁護士に任せることになります。相続人が見つかればいいのですが、相続人がいなかったり、相続人がみんな放棄していたりすると、相続財産管理人を選任しなくてはなりませんが、選任したとしても、滞納管理費を取れるかどうかわかりません。隠れた借金がたくさんあったり、管理費より税金の方が優先されたりして、100万円の予納金をかけても、返ってくるという保証はなく、やってみないとわからないという状況です。
 
タワーマンションの管理組合であれば、おそらく100万円程度の費用は負担できるでしょうが、50戸程度の戸数で、一戸あたりの市場価格が1、000万円程度のマンションの場合、管理組合にとって100万円の負担がどれだけ大きいかということです。3戸、4戸の区分所有者が、年間に払う管理費に相当するのですから、規模の小さなマンションの管理組合にとっては大きな額です。
 

相続財産管理人に係る予納金の見直しが必要

そろそろ制度改革をしないと、管理費をめぐる正のメカニズムから外れた事案は増えていくばかりです。制度改革をするとすれば、まずは相続財産管理人の選任について、裁判所に納める予納金を下げるということでしょう。20万円くらいに下げれば、解決につながるのではないかと思います。
 
一人っ子で独身の方でも、マンションを買っている方は多いですね。お亡くなりになる頃には、ローンが終わっているか、あるいは、団体信用生命保険でローンがなくなります。そうなると、普通に暮らしていて、マンションを買って、孤独死する人にはマンションが残ります。そのマンションの後処理に困ることになります。
 
解決方法のひとつは、遺言を書いてもらうことです。しかし、遺言書で財産全部をあげる人がいればいいのですが、なかなかいないし、組合が区分所有者に対して「遺言を書いてください」というのは難しいですね。
 
Q.リバースモゲージは解決策になるのでしょうか?
 
神戸弁護士:確かにリバースモゲージはよい制度で、管理費を正のメカニズムに乗せる制度です。彼らが根抵当を設定して、必ず債務が残る状態にして、勝手に抵当権を実行してくれるのでいいのですが、実際に効果が上がるのは資産価値の高いマンションでしょう。市場価値で1、000万円以下のマンションが、リバースモゲージを受けられるのか? という話です。マンションはどんどん価値が下がっていきます。
 
特に郊外や地方で、ひと昔前に2、000~3、000万円したマンションが、今は数百万円に下がっても買い手がつかないところがたくさんあります。郊外の駅からバスで20分といった団地も、当時は1、500万円とか2、000万円したと思いますが、数百万になっています。全体として、リバースモゲージは増えていくかもしれませんが、一定以上の資産価値がないと付けられないところに制約があります。
 
タワーマンションであれば、弁護士を立てて、予納金を積んで、処理すればいいのですが、それができない、あるいは、できにくいところが増えていって、管理不能になるマンションが多くなると思います。そろそろ対策を講じることが必要になるでしょう。そのひとつとして、相続財産管理人の制度の改革ですね。先の予納金100万円というのはあり得ない金額だと思います。
 
マンション管理
 
神戸 靖一郎 弁護士 第二東京弁護士会所属
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、千葉大学大学院専門法務研究科法務専攻卒業、平成19年弁護士登録。仕事の中心は、交通事故等の損害保険、労働災害、マンション管理。
麹町パートナーズ法律事務所 HP www.k-partners.jp
 
(※本記事は「storie」での2015年10月23日、24日の記事を関係者の許可を得て再編集し、掲載したものです。)

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