新型コロナウイルスの猛威は、本稿を書いている2021年4月現在、とどまるところを知りません。1月に再発令された緊急事態宣言は3月下旬に解除されたものの、1カ月後の4月25日に3度目の発令となりました。

 

「コロナ禍の下ではマンションなんか売れるわけがない」と考える人もいるでしょう。本当にそうなのか、不動産会社の従業員へのアンケートや東日本不動産流通機構(レインズ)のマーケットレポートから、市場の動向や売れる物件にはどんな理由があるのかを探ってみましょう。

 

2021年の不動産市況

(写真はイメージです)

 

「売れない・売りづらい不動産の理由」意識調査に見るコロナ禍の影響

 

2021年1月21日に株式会社すむたすは不動産業者の「売れない・売れづらい不動産の理由」に関する意識調査結果を発表しました。このアンケート調査をもとに、コロナ下のマンション市場の実像を探ってみましょう。

 

(1)コロナ禍による収入減でローン相談が激増

 

不動産売却に関して、新型コロナの影響によって増加した相談内容の第1位は「住宅ローンを返済できなくなった」、第2位は「資金が必要となった」となっています。マンションの買い手である一般消費者の就業状況の悪化や収入減には深刻な状況がうかがえます。

 

(2)マンション周辺に病院やスーパーがないと売れない

 

また、マンションが売れない理由も変化しているようです。重要度が増したとされる要因の1位は「医療施設・介護施設がない・少ない」、第2位は「周辺にスーパー・コンビニ等の商業施設がない・少ない」が挙がっています。

 

住居の購入に関して、外出自粛が呼びかけられているコロナ下では、自宅で過ごす時間が増えることを意識して、マンションの周辺に医療施設や商業施設がほしいと考える人が増えたということでしょう。

 

(3)売れない理由の上位はコロナ禍とは関係ない?

 

上記(1)(2)は一般消費者が考えることです。では、不動産のプロである不動産会社の従業員はどう考えているのでしょうか。「売れない・売れづらい不動産物件の理由」について、不動産のプロは「コロナ禍だから」とばかりは考えていないように見えます。

 

断トツの1位は「売主の希望価格が相場よりも高く設定されている」でした。2位は「共用部が汚い・状態が良くない」、3位は「築古で室内状態が劣化」、4位は「設備が古い」。

 

つまり、「高い」「汚い」「古い」マンションは売れない、売りづらいと言っているのです。いかにも普遍的で、コロナとはあまり関係ないといえます。

 

ただ、以上の調査結果から、嫌な想像をする人がいるかもしれません。

 

売主はコロナ禍で経済状態が悪くなって、その穴埋めに不動産を売却しようと少しでも高い価格で売ろうとするので、相場より高い売り出しとなる→買主も経済状態が悪いので実際に買える価格は低下傾向となる→価格を下げないと成約できない市場となる。

 

「売れない、値段を下げる、それでも売れない、さらに下げる」という負のスパイラルが生まれることで不動産市場がますます縮小となり、成約数は減少し、価格も下落を続ける……。2021年の中古住宅市場は、そんな悲観的な相場を形成すると予想するべきなのでしょうか?

 

2020年の首都圏の中古住宅市場

 

下記の表は、東日本不動産流通機構(レインズ)が取りまとめて公表している、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の中古住宅市場の成約データを筆者が取りまとめたものです。2020年の成約データを2019年と比較しています。

 

【レインズ月別速報】
レインズ月例速報

中古マンションの成約件数は、2020年は前年対比で6%減となっています。特に初の緊急事態宣言が発令された2020年4月は前年比▲52.6%と半減しており、5月も▲38.5%と、減少傾向が続くことも予想されました。

 

価格も2020年4月は前年前月に比して約200万円も下回りました。2020年4月のこうした状況は戸建て住宅でも同様で、成約件数は▲41.5%、価格は▲389万円という、まさに最悪の状況と思われました。

 

しかし、7月以降は成約件数も成約価格も上昇し、市場は再び活性化します。年間の単純平均でも、中古マンションは成約件数こそ▲6%ですが、成約平均価格では134万円も2019年を上回ります。中古戸建ての成約件数は年間を通じて前年比2.4%のプラスとなりました。価格もほぼ前年並みとなっています。

 

落ち込んだ4~6月を加えてもこの数字ですから、7~9月の半年間で比較すると、成約件数も価格も昨年を超える活況を示していることが如実に分かります。半年間の成約件数は前年比でマンション・戸建てともに1000件以上の増加となっています。平均価格もマンションで197万円、戸建てで108万円の増加となりました。

 

つまり、2020年以降の中古住宅市場は、コロナ禍でも当初の一時期を除けば、活況を示し、相場動向としては、数量・価格ともに上昇傾向にあった、といえます。コロナによってか、コロナにもかかわらずか、はさておき、現在、中古住宅市場は活況。中古マンションは売りやすく、買いやすい状況にあるということです。

 

コロナ下でも中古住宅市場の相場が活況な理由

 

中古住宅市場の相場が活況な理由は、以下のように考えられます。

 

・コロナの死亡率・重症化率が、中古住宅市場の需要階層の中心である30~40歳代ではさほど深刻なレベルではないこと
・政府および地方自治体のコロナ対策、経済対策が一応の効果を上げていること
・ステイホーム、テレワークといった自宅で過ごす機会が多くなり、「家」に関する意識が高まったこと
・低金利政策により、家賃と比較すると同等以下の支払いで「住宅ローン」返済が可能であること
・住宅ローン利用でついてくる団体信用生命保険は、コロナ禍という健康不安を考慮するとむしろ賃貸に比べメリットであること
・住宅の需要が増えるということは、売主は売却メリットより保有メリットを感じやすいので売却をしようとする売主は減少し、在庫は減り価格上昇に拍車がかかる
・とはいえ新築は高価すぎるし、すぐには入居できないため、中古住宅に人気が集中

 

こうした要因が相乗効果を高め、市場の活況につながったといえるでしょう。

 

2021年も、こうした状況は変わりないと思われます。極端にコロナによる死亡率や重症化率が上がるか、逆にコロナ禍が沈静化して政府が金融緩和策や低金利政策を取りやめて緊縮財政化を図るとか、米中戦争が火を噴くといった突発事態が起こらない限り、中古住宅市場は活性化し続け、価格は穏やかに上昇し続けることが予想されます。

 

東京五輪が迫る中、3回目の緊急事態宣言が発令されるなど、世間は何かと物騒ではありますが、マンションが売れる理由はそろっているといえます。これまでマンション売却の踏ん切りがつかなかった方も、今こそぜひマンション売却を本気で検討されてみてはいかがでしょうか。

 

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。