2020年も後半になれば沈静化に向かうとも思われたコロナ禍ですが、10月には再びドイツやフランスなどで感染者数が増加し、ロックダウンなどの対策をする都市が欧州で散見されるようになりました。日本でも「第三波」の襲来が叫ばれ、政府が力を入れる「Go Toキャンペーン」も見直しが迫られる状況です。

 

株価は絶好調ながら、しだいに不景気への懸念が現実化しつつある日本経済ですが、不動産市場に目を向けてみると、当初多くの方や評論家が予測したような値崩れも起こっていません。特にテレワークの浸透により、マンションよりも在宅勤務の環境に適した戸建ての需要が伸びていると言われています。

 

そこで気になるのは、戸建ては新築がいいのか中古がいいのかという問題です。今回は中古戸建てに注目して、メリット・デメリットのほか、購入時の注意点などについて解説します。

 

不動産イメージ

(写真はイメージです)

 

2020年 首都圏の戸建てで売れているのは中古

 

まずは、新築着工数の推移を見てみましょう。

 

住宅着工統計01

 

国交省の住宅着工統計によると、令和元(2019)年度の分譲住宅の新設着工件数は、26万戸弱で、前年比▲2.8%となっています。戸建てはそのうち56%を占める14.6万戸。平成25(2013)年度から令和元年度までの7年間で、マンションの供給数は前年を割り込むことが5年もあり、分譲に占める構成比が47.8%から43.0%まで下がっています。

 

その一方で戸建ての供給数は、平成26(2014)年度を除き前年を上回り続けており、構成比も51.7%から56.3%まで増大しています。新築市場では、マンションよりも戸建てが顕著に供給数を伸ばしていたことが分かります。

 

しかし令和元年10月以降、新設住宅の着工件数はがらりと様相を変えました。令和元年度上半期4~9月の分譲住宅の着工件数は、合計で前年比+2.0%と増加だったのが、年度全体では▲2.8%の減少となっています。単純計算すると下半期は▲4.8%と非常に大きな減少になったと考えられます。月別に見ても、昨年10月以降、マンションも戸建ても新築着工件数は前年比割れが続いていることが分かります。これは令和元年10月の消費増税に加え、コロナ禍の影響が大きいことが原因と考えられます。

 

令和2(2020)年度上半期4~9月も分譲住宅全体で▲8.9%、戸建ては▲14.5%と、新築着工件数は戸建てを中心に大きく減少しました。もちろんコロナ禍の影響と考えてよいでしょう。マンションよりも比較的工期について自由度の高い戸建ての分譲の方が、工期を遅らせるなどの個別の事情への対応を進めやすいのかもしれません。

 

次に、首都圏の中古戸建て住宅の成約状況をみてみましょう。下記の表は、公益財団法人 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)による首都圏の2020年7~9月期の不動産流通市場のサマリーレポートから抜粋した表です。

 

不動産流通市場サマリーレポート

 

この7~9月期では、成約件数は前年比で8.5%上昇しており、7~9月期の成約件数としては1990年5月の東日本レインズ発足以来、過去最高の件数となっています。成約価格は、4~6月期の前年比で▲10%の下落となり価格低下が懸念されましたが、7~9月期は再び上昇に転じており3100万円台の平均価格となっています。新築物件とは違い、中古戸建ての成約件数は大幅に増加しており、価格も堅調なことがわかります。

 

今、中古の戸建てがアツいということがお分かりいただけたでしょうか。

 

中古戸建てのメリットとデメリット

 

新築着工件数が減少している中で、中古戸建ての成約件数が増加しているのはなぜなのでしょうか。

 

「新築大好き日本人」のメンタリティとは明らかに逆の現象となっていますが、新築戸建てにはない魅力が着目されているのは、やはり世相を反映してのことでしょう。中古戸建てのメリットとデメリットをまとめてみることで、その魅力がわかるかもしれません。

 

中古戸建ては安くて立地がよくて改造も自由自在

 

(1)価格が安い

 

東日本レインズのレポートによると、首都圏の中古戸建ての7~9月の成約価格の平均は3,162万円でした。一方、不動産情報サイトの「アットホーム」が2020年10月27日に発表した9月の首都圏の新築戸建て平均価格は3,956万円となっています。800万円近くも中古住宅の方が安い価格となっています。やはり、800万円の差は大きいです。

 

新築戸建

 

(2)値下がり幅が小さい

 

新築の家は、一日でも人が住んでしまうと中古となるため評価が下がり、よく「新築プレミアムがはがれる」と言われます。しかし、いったん中古となってしまえば、評価の下がり方は緩やかになり、極端にガクンと落ちることはありません。

 

また会計上、木造住宅の法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年ですから、それよりも古くなった建物は、売買時にはほとんど評価されずに土地の評価額にプラスアルファされる程度となります。値下がりする余地もあまりないことになります。

 

(3)立地が良く、建物が広い

 

全国いたるところで住宅開発と高層化は進み、現在の戸建ての新築分譲地は、どうしても郊外かせいぜい狭小地に限られます。一方、中古住宅はもともと土地が安い時代に建築された物件があること、建物評価が安くなっていることから、立地がよくて広い物件を購入できる可能性があります。

 

(4)実際の暮らしのイメージが湧きやすい

 

新築物件は、購入検討時にはまだ家が建っておらず、周りの環境も未整備で隣近所の住民が存在しない場合すらあるため、実際の暮らしがなかなかイメージしにくいことがあります。中古の場合はすでに建物ができあがっていて人も住んでいるため、日当たりや近所の環境も含めて、自分や家族が住んでいる状況をイメージしやすいでしょう。

 

(5)リフォーム・リノベ-ションができる

 

近年の流行ではありますが、現在の建物を生かしたリフォームやリノベーションを実施することで、新築するよりも安く新築並みの住まいを手に入れることもできます。

 

中古は古さからくる欠陥に気をつけよう

 

もちろんデメリットもあります。以下が中古住宅のデメリットです。

 

(1)古い・新しくないという不満が出る

 

中古住宅の一番の不満は「新しくない」「誰かが使用したことがある」ということだと言われています。特に日本では、戦後の高度成長時代による人口増でひっ迫する住宅を、新築のマイホーム志向によってカバーしてきた歴史があるため、「新築信仰」は根強いものがあります。それを払拭するためには、斬新なリフォームやリノベーションを行うことで、「斬新さ」「センスの良さ」を取り入れる必要があるでしょう。

 

(2)保証が短い

 

新築の場合、売主は基礎や柱などの主要な構造部分について目に見えない欠点(瑕疵)が見つかったとしても法律で10年間保証することが定められています。また、売主が保証期間途中で倒産した場合のために、保証金を供託するか10年間の瑕疵担保責任保険への加入をするかが義務付けられています。新築は欠陥に対して手厚い保証があるということです。

 

中古の場合は、不動産業者が売主の場合には2年間の瑕疵担保責任・契約不適合責任が義務づけられています。しかし売主が個人の場合はこの瑕疵担保責任・契約不適合責任が免責となることも多く、保証期間があったとしても「引き渡し後3ヵ月まで」などと短い期間に定められている場合がほとんどです。また、瑕疵担保責任保険も中古の場合は最長5年となっており、対象の物件も加入できる条件が厳しく定められています。

 

(3)住宅ローンの審査が厳しく、住宅ローン控除等の適用条件も厳しい

 

建築基準法は何度か建物の耐震性についての基準を改正しています。1981年6月以降に建築確認申請の建築確認済証を取得した建物は新耐震基準を満たしているとみなされます。また2000年6月以降に確認申請された戸建てについては、2000年の耐震基準・省エネ基準を満たしたものとみなされます。時代とともに性能がよくなっているため、旧世代の戸建てになるほど住宅ローンの金融機関の審査が厳しくなる可能性があります。

 

また、前述した会計上の耐用年数(木造22年、鉄筋コンクリート造47年)を超えた建物の場合は、住宅ローンの返済期間が短く設定されたり審査が通らなかったりする可能性もあります。

 

(4)見えない不備がある可能性がある

 

中古住宅の最大の欠点は文字通り「古さ」です。古いためにどうしても経年劣化による不具合・不備が発生している可能性があります。特に表立って目に見えない部分や居住者自身が慣れてしまって気付かないようなところに不備や不具合が潜む可能性があります。

 

ただし、居住者が何年か住んでいたわけですから、明らかな不具合(施工者による手抜き工事など)は解決済みか事前に把握できるというメリットもあります。

 

中古戸建てのメリット・デメリットは正確に把握して、冷静に総合的に物件を評価して、購入を決断しましょう。

 

後悔しないための中古戸建てチェックポイント

 

以上のように、中古住宅にはさまざまなリスクが潜んでいます。購入前にチェックしておくべきポイントは以下のとおりです。

 

まずは築年数です。耐震基準、省エネ基準などを考慮すると築20年未満の中古物件だと、まずは安心といえるでしょう。築年は平成12(2000)年以後、要するに21世紀になって建てられたものだと安心です。それ以前の物件だと、個別の判断が必要になります。

 

雨漏りや結露、上下水道やガス配管の漏れ、漏電、壁や床、天井の傾き・ひび割れ、虫や動物による被害などはないでしょうか。まずは、売主からの告知書や物件状況報告書、不動産業者による重要事項説明書に目を光らせましょう。修繕や防水・塗装工事、リフォームなどの工事実績も必ず確認しておきましょう。

 

インスペクションは宅建士としてオススメ

 

そうはいっても、素人にはなかなか判断がつかないでしょう。そこで、買主が不当な欠点のある中古物件を購入してしまうことを未然に防げるように、不動産業者は中古物件の売買を仲介する際に、建物状況調査(インスペクション)について買主に説明をすることが2018年の改正宅建業法で義務付けられました。インスペクションとは、建築士の有資格者で一定の研修を受けたものが建物の状況について第三者の立場で検査し報告することです。

 

現在はインスペクションという仕組みがあるという説明までが義務で、売主・買主ともにインスペクション実施は義務付けられていません。しかし、売買が終わった後になって重大な瑕疵が見つかった場合、売主はその瑕疵を知っていようが知らなかろうが、契約不適合責任を問われる可能性が増えてきています。

 

お互いが売買の本来の目的を達成するためには、できるだけ正確に物件の現状を把握する必要があります。そのためにはインスペクションは非常に有効な方法です。インスペクションを実行することで問題がなければ、瑕疵担保保険に入るための検査として活用することも可能となります。

 

筆者は売買の際、売主様であろうが買主様であろうがお客様にはインスペクションの実施を勧めています。物件案内をチェックするポイントとして、インスペクションに関する記載を確認してみてはいかがでしょうか。売主や不動産会社の中古住宅販売のリスクに対する姿勢が見えてくるかもしれません。場合によっては不動産会社をチェンジすることもアリでしょう。

 

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。