毎年3月は、4月からの新年度に備えての「お引越しシーズン」とされています。確かにこの時期は、入学や入社で人の移動が活発化しますのでうなずける話です。では、住み替えに先立ってマンションの売買が活性化するシーズンはあるのでしょうか?

 

手早くマンションを売却して、新居への住み替えを考えている方にとって「売却しやすい時期」を把握することは、早期のマンション売却を成功させるポイントです。そこで今回は、「マンションを売却しやすい時期」について、客観的なデータをもとに考えてみます。

 

マンションと桜

(写真はイメージです)

 

マンションの売却数の変化を時期別に見てみよう

 

マンションの売却というのはある意味、経済的・社会的な活動であり、経済や社会の動きによって影響を受けることになります。例えば冒頭で述べた「お引越しシーズン」のように時季ごとに人の移動の増減がある場合、マンションの売却活動においても考慮する必要があります。
もちろん、マンションの売却しやすさを季節的なサイクルだけで考えるのは早計ですが、まずはここから見ていきましょう。

 

ここでは、マンションの売却数を定量的に把握するために東京23区を対象とします。サンプル数も多く、人々の意識の代表例として考えても問題ないでしょう。
売却データを入手する手段として、国交省ホームページに「土地総合情報システム」という不動産取引の実績情報を検索できるサイトがあります。ここに掲載されている不動産取引価格情報は、四半期ごとに市区町村レベルでダウンロードできます。
参照:土地総合情報システム

 

上記のシステムから得られる、東京23区の中古マンションの成約実績の推移をグラフ化したのが図1です。
この図を見ると、成約件数の変動の仕方にもパターンがあるように見えます。
※グラフは筆者作成。以下同じ。

 

売却しやすい時期-図1

図1.中古マンションの成約件数の推移(東京23区)

 

そこで、四半期ごとに、各年(2007年~2018年)の成約件数の和を求めてみましょう。その結果を以下に示します。

 

第1四半期(1~3月)⇒ 37,296件
第2四半期(4~6月)⇒ 34,951件
第3四半期(7~9月)⇒ 35,524件
第4四半期(10~12月)⇒ 36,210件

 

新年度を迎える前の第1四半期に成約件数が上昇しています。これは一般的に言われている引越しシーズンにも合致しています。梅雨場や夏場は下降し、第4四半期にはまた件数が伸びています。年末年始を新居で迎えたいという意図で購入する人が多いのかもしれません。

 

この結果から、中古マンションの売却を企図するなら第4四半期に行動を開始すればより早期の売却が期待できるといえます。需要の高い第4四半期から翌年の第1四半期にかけて、余裕を持った販売計画を立てることができるでしょう。

 

マンションの売却に影響を与える因子とは?

 

不動産・マンション売買をめぐる状況は、年々、時々刻々と様々な要因が変化していきます。経済的な要因だけを見ても住宅ローン金利、地価の上昇・下落局面、建築資材費などが挙げられます。
さらにマンションの売却に関しては、新築と中古の価格相場の関係も気になるところです。

 

住宅価格を論じる指標として「年収倍率」というものがあります。こちらも国交省のウェブサイトに年収倍率の推移が掲載されていますので関心のある方はご覧ください。
参照:平成30年度 住宅経済関連データ
※「首都圏の住宅価格の年収倍率の推移」というリンクからExcelデータをダウンロードできます

 

このデータには、首都圏における新築マンションの平均価格と年収の推移が挙げられています。この推移と、中古マンションの成約件数の推移とを合成したグラフが以下の図2になります。

 


図2.新築マンションの年収倍率と中古マンションの成約件数の推移

 

いずれも多少の上下はありますが、おおむね右肩上がりの傾向といえます。なお2009年に大きく落ち込んでいるのはリーマンショックの影響です。近年では2012年をボトムに、これ以前と比較して上昇のスピードがアップしているのが分かります。また、消費税8%アップの影響も見られます。

 

また、中古マンションの成約件数の推移と年収倍率の関係をみると、ほぼ同じような推移をたどっています。これは、新築が高騰すると中古が売れるということを表しています。

 

金利が下がれば中古マンションは売れやすくなる

 

当然のことですが、中古マンションが売れるためには、買主の存在が不可欠です。今日、全額を自己資金で賄える買主はまれでしょうから、大部分の買主は住宅ローンのお世話になります。この住宅ローンの利用に大きく関わってくるのが金利の状況です。ここで、国債の金利と成約件数の推移を図3に示します。
※参照:財務省ホームページ「過去の金利情報」

 

売却しやすい時期_図3
図3.国債の金利と中古マンションの成約件数の推移

 

このグラフから、金利の低下と共に成約件数が増加しているのが分かります。現在は、歴史的にも史上最低水準の金利状況にあります。買い手としてはこの低金利のチャンスをものにしたいと考えており、売出しには絶好のタイミングといえます。

 

マンションの「売却しやすい時期」とは?

 

ここまでご紹介してきた情報を整理します。

 

中古マンションの成約件数が多い、つまり「売却しやすい」時期として、年間のサイクルとしては第4四半期から第1四半期になります。引っ越し需要や新居で新年を迎えたいという動機が働いているものと考えられ、これは季節的要因といえます。

 

また、経済的な要因としては新築マンションの価格動向があります。新築マンションの価格が高騰すれば、価格的に手頃な中古マンションの人気が高まるものです。さらに、住宅ローン金利が高ければ利払いのことを考えて様子見の態度を取る方が増えますが、現在のように超低金利状態であれば、積極的な借入、購入の姿勢を示します。

 

これらの他にも、先の東日本大震災のような大災害や経済的な大事故(リーマンショック)が発生すると、社会的な不安感が高まり、買い手の意欲が削がれ成約件数が減少することが分かります。不幸なイベントの後は売却に不利なタイミングといえるでしょう。

 

さらに国の施策がマンションの売却タイミングに影響を与えることもあります。2014年に消費税が8%に上がった時は増税を避けるために駆け込み需要が発生し、増税後の需要を先食いしました。ただし今回の10%への増税は、平準化策が打たれたため大きな影響は出ていないようです。
ただ、これらの平準化策が終了するタイミングでは需要が落ち込む可能性があります。その意味では今シーズンが絶好のタイミングになりそうです。また、来年に東京オリンピックが控えていることもあり、経験則的に景気が落ち込む可能性があります。行動を起こすなら今です。

 

 

八木 裕(Life Assets Design 代表)
兼業サラリーマン大家として賃貸物件を経営している。優良経営を実践するために宅建士試験合格後、賃貸不動産経営管理士試験、土地活用プランナー試験に合格し、個人資産のコンサルティングを行っている。(FP2級技能士)