株式会社不動産流通システム(REDS)の宅地建物取引業免許が、2020年8月26日をもって「東京都知事免許(2)92343号」から「国土交通大臣免許(1)9770号」に更新されました。
都道府県知事から国土交通大臣に切り替わったということで、なにやら偉くなったような感じがしますね。でも実際のところ、どのような理由があって切り替えに至ったのでしょうか?
また、例えば自動車の運転免許証だと、ゴールド免許は更新時や免許の期間など優遇があり、任意保険料が安くなったりします。では宅地建物取引業の大臣免許にも、何かの特典があるのでしょうか?
今回は、宅地建物取引業者(宅建業者)の免許の違いについて、詳しく調べてみましょう。

(写真はイメージです)
宅地建物取引業免許とは?
不動産取引に関する様々なことを定める法律を「宅地建物取引業法(以下、宅建業法)」といいます。
宅建業法では、「宅地」または「建物」の「取引」を「業」として行うことを「宅地建物取引業」と定めています(宅建業法第2条第2項)。
そして宅地建物取引業を行うためには「免許」を受ける必要があります(宅建業法第3条第1項)。不動産業は「開発・分譲」「流通」「賃貸(大家)」「管理」など様々な業種に分類できますが、そのうち免許が必要になるのは、
(1)自ら「売買」「交換」
(2)媒介して「売買」「交換」「貸借」
(3)代理して「売買」「交換」「貸借」
を「業」として行う場合です。具体的には、分譲や流通業が宅地建物取引業の対象となります。
「業として行う」といえるかどうかの判断基準
上記の、宅地建物取引を「業として行う」ということについて、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(ガイドライン)」によると、「社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態」を指し、以下の5点を勘案して総合的に判断されます。
① 取引の対象者:広く一般の者を対象に取引を行おうとする者は事業性が高く、取引当事者に親族間など特定の関係が認められるものは事業性が低い。
② 取引の目的:利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要の充足を求めるもの(相続税の納税、住み替えのための売却など)は事業性が低い。
③ 取引対象物件の取得経緯:転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続や自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い。
④ 取引の態様:自ら購入者を募集し一般消費者に直接取引をしようとするものは事業性が高く、宅地建物取引業者に代理または媒介を依頼しようとするものは事業性が低い。
⑤ 取引の反復継続性:反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。
宅地建物取引業者票の掲示義務
宅建業法第50条第1項では、「宅地建物取引業者は、公衆の見やすい場所に、宅地建物取引業者である旨の標識(いわゆる業者票、報酬額表など)を掲示しなければならない」としています。
業者票は、サイズや様式も定められており、一般的には以下のようなものが用いられています。不動産会社には必ず目立つところに掲示されていますので「ああ、あれか」と思い当たる方も多いのではないでしょうか?

業者票に記載される内容として、免許証番号と免許有効期間があります。
免許の有効期間は5年間。免許の更新は、期限の90日前から30日前までに申請することとなっており、更新をしないと免許が失効となってしまいます。
免許証番号
免許証番号は、下図の通り、免許の種類、免許の更新回数、固有の番号で構成されています。

カッコ内には、何回目の更新かという数字が入ります。初めて免許の交付を受けた宅地建物取引業者(宅建業者)の場合は(1)となり、1度更新した業者は(2)、2度更新した業者なら(3)となります。つまり免許証番号を見れば、その宅建業者が不動産業にどのくらい長い経験を持つのかが、おおよそ分かるわけです。
免許の有効期間は5年間ですから、(1)であれば免許を取得してから0~5年、(2)であれば、6~10年、といった具合です。カッコ内の数字が大きいほど、厳しい不動産業界を長く生き抜いてきた老舗の会社だと推測できます。
ただし免許の種類が変わった場合は、更新回数の欄もまた(1)からとなります。まさに今回のREDSがそのパターンですね。老舗の不動産会社でも、免許の種類が変わると数字は若くなりますので、その点は注意しておきましょう。
逆に、老舗の宅建業者をベンチャー会社がM&Aする際に宅建業の免許も承継する場合があります。その場合は、不動産テックなどを手掛ける新興の会社で「経営者もずいぶんと若いのに、免許番号だけは妙に古い」ということが起こり得ます。ホームページなどで社歴や沿革を確認しておくと良いでしょう。
都道府県知事免許と国土交通大臣免許の違い
さて本題の、「都道府県知事免許」と「国土交通大臣免許」の違いについてです。これは宅建業法第3条第1項で次のように定められています。
・2つ以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいいます)を設置して宅地建物取引業を営もうとする場合は、国土交通大臣の免許を受けなければなりません。
・1つの都道府県の区域内のみ事務所を設置する場合は、所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければなりません。
例えば、本店と支店が2つ以上の都道府県にまたがって設置されていて、支店で不動産業務を実施している場合は、本店で不動産業務を実施していなくても、国土交通大臣の免許が必要になります。
しかし、本店だけで不動産業務を実施していて、他の都道府県にある支店では不動産業務を実施していない場合は、本店所在地を管轄する都道府県知事の免許が必要になります。
事務所が複数あったとしても、同一の都道府県に所在する場合は、都道府県知事の免許を受けることになります。
また、同一の個人や法人が、国土交通大臣の免許と都道府県知事の免許を同時に受けることはありません。要件が変更された場合は、必ず30日以内に変更の届け出をするように定められています(宅建業法第9条)。
今回のREDSの免許変更の意味
今回REDSが、東京都知事免許から国土交通大臣免許に変更になったのは、横浜に新たに事務所を開設したからです。業容の拡大にあわせ、お客様の利便性を重視しての対応だとのこと。
本来、国土交通大臣の免許と都道府県知事の免許の違いは、法的には「事務所の設置状況」のみ、です。
特に国土交通大臣免許の方が都道府県知事の免許よりも優れているとか、「高額な物件を取り扱える」「扱える業種が増える」といった特典があるとか、あるいは義務が大きいといった違いはありません。国土交通大臣の免許で取り扱える取引は、都道府県知事の免許でも取り扱えます。
しかし、国土交通大臣の免許を受けているということは、お客様の利便性のために都県をまたいで2つ以上の事務所を開設しているということですから、実質的にはやはり、都道府県知事免許の宅建業者よりも業容は大きく、商圏も広い、といえます。おのずと信頼感は増し、スケールメリットも期待できるでしょう。
宅地建物取引業免許事務等処理システム(宅建システム)というものがあります。これは、宅建業者の免許申請や宅地建物取引士(宅建士)の登録申請などの各種申請内容に対する、国及び都道府県(行政機関)の審査事務の厳正化・迅速化を図る電算処理システムです。(一財)不動産適正取引推進機構によって運営管理されています。
その宅建システムで、大臣免許業者数と知事免許業者数を調べてみましょう。令和元年度末(令和2年3月31日現在)の統計が最新となっています。

この統計時点で、全国で125,638の宅地建物取引業免許業者が存在しています。(余談ですが、日本の人口約1,000人に1軒の免許業者がいることになります。不動産屋は過当競争といえるかもしれません)
そのうちの123,035業者、実に97.9%が、都道府県知事免許となっています。一方で国土交通大臣免許業者は全国で2,603業者、わずか2.1%とほんの一握りです。この数字を見るだけでも、国土交通大臣免許業者は都道府県知事免許業者と比べていかに希少な存在であるかが分かります。
昨年度からの増加数をみても、大臣免許業者はわずか35軒に過ぎません。そんな「狭き門」をREDSが見事通過した、といっては言い過ぎでしょうか?
もちろん、REDSのセールスポイント「仲介手数料がすべて割引、最大無料」は、国土交通大臣の免許になっても健在です。今後もますますお客様の期待に応えられるように努めてまいります。