ついに消費税が10%に上がりました。国は、住宅購入においては優遇措置が多数あるため増税分は吸収されるとしています。しかしその優遇措置はいつまで継続するのでしょうか。また時限措置であるならば、住宅購入を検討中の人は急ぐべきなのでしょうか?優遇措置の性質も含めてFPの目で検討します。

(写真はイメージです)
消費税増税による4つの優遇措置
まずは冒頭であげた、住宅購入に関する4つの優遇措置について簡単に振り返ります。
優遇措置その1 住宅ローン控除
住宅ローン控除は正式には「住宅借入金等特別控除」といい、従来の制度は次のようなものでした。
・住宅ローン利用者が対象
・所得税(一部、翌年の住民税を含む)から、年末における住宅ローン残高の1%が控除される
・控除期間は10年間
しかし、消費税率10%の住宅を取得した場合、控除期間が10年から13年に延長されます。
11年~13年目の控除額は、次のうち少ないほうの金額になります。
・年末の住宅ローン残高の1%
・建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3
延長期間は上限規定が厳しくはなります。それでも、所得税の制限を考慮せず試算すると理論上、消費税の増税分を補ってくれます。
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優遇措置その2 すまい給付金
すまい給付金は住宅取得者の所得に応じて給付金が受け取れる制度です。給付額のボーダーラインは家族構成や勤務形態によって変わります。
消費税8%の時は収入額の目安「510万円以下」の人が給付対象でしたが、10%になり「775万円以下」となりました。また給付額の上限も30万円から50万円へ引き上げられました。
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優遇措置その3 住宅エコポイント
住宅の新築や分譲住宅の購入・リフォームに対して、以下の3つの視点からポイントが付与されます。
・標準ポイント
耐震性や断熱等級など、所定の条件を満たした住宅が得られるポイント
・優良ポイント
長期優良住宅や低炭素認定住宅など、所定の条件を満たす住宅が得られるポイント
・オプションポイント
ビルトイン食器洗機や宅配ボックスなど、主に家事負担軽減設備を備えた場合に得られるポイント
新築住宅に対する発行ポイントの上限は35万ポイントで、「次世代住宅ポイント」のサイトに掲載されている様々な商品と交換できます。交換可能商品は家電・インテイリア・子供用品など多岐にわたります。
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【消費増税後でも新築戸建て購入はお得!】
優遇措置その4 住宅購入資金の贈与税非課税
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けて住宅を取得した場合の「非課税枠」が拡大しました。消費税8%時の非課税枠は「最大1,200万円」でしたが、消費税10%の場合は「最大3,000万円」に拡充されたのです。
通常の贈与であれば、非課税枠は基礎控除の110万円のみとなります。仮に3,000万円の贈与を受けた場合の贈与税率は45%(直系尊属からの贈与の場合)と、その差は歴然です。
※住宅購入資金の贈与税非課税について詳しくは
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大枠は継続すると考えられる優遇措置
消費税増税対策の目玉の一つ「1 住宅ローン控除」の期間延長ですが、実はこの優遇措置は「2020年12月31日までに入居した場合」が対象と決まっています(2019年10月現在)。ただし入居がそれ以後になっても、従来型(適用期間10年型)の住宅ローン控除は適用可能です。これは制度として定着しているものであり、急に廃止になることは考えにくいです。
もう一つの目玉「2 すまい給付金」は、「2020年12月まで実施」(2019年10月現在)とされていますが、その後終了とのアナウンスはありません。住宅価格と所得税額が高いほど恩恵の大きい「住宅ローン控除」と、所得制限があり低所得者ほど大きい給付を受けられる「すまい給付金」は、セットの政策と考えられています。そのため、すまい給付金も住宅ローン控除と同様、制度自体は中長期的に継続すると推測します。ただし受給要件の見直しや受給額の変更などはあり得ますので情報をこまめにチェックしておきましょう。
2020年3月が区切りとなる優遇措置
残念ながら、「3 住宅エコポイント」は、2020年3月までの契約・着工分までが対象となっています。
また「4 住宅購入資金の贈与税非課税」は2020年3月以降、適用金額が次のように縮小されます。

※出典 国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
過去、税制改革の影響等で一時的に本制度の非課税枠が増額されることもありましたが、2019年10月現在の非課税金額はかなり高いものです。したがって非課税枠自体は今後も継続するものの、現在の(2020年3月末まで適用される)金額が最高水準と考えて良いでしょう。
優遇措置がある2020年3月までの購入がお得か?
ここまでご紹介した、増税による優遇措置の恩恵を最大限受けたいなら2020年3月までの住宅購入が望ましいでしょう。特に「そろそろ購入したいと考えている人」や「親からの贈与が期待できる」人は、この方向で動くほうがお得です。
「自分の親は贈与を全く考えていない」とする子世代も多いですが、制度が贈与を後押しする例も意外に多いです。上述の贈与税非課税の制度を知ることで、「それならば」と贈与を検討してくれるかもしれません。親世代の資金力に余裕がある人は、より有利に住宅を購入できるよう交渉してみてはいかがでしょうか。
なお、「近いうちに購入したいが、2020年3月には間に合わない」という人は、無理に計画を早める必要はありません。次善の策として、住宅ローン控除の3年間延長が適用される2020年12月までを目標とすると良いでしょう。
先に述べたように、住宅ローン控除の延長により、消費税の増税分は吸収できるとされています。この2020年12月が、「優遇措置によってお得に購入できる」ボーダーラインになるといえます。
購入時の注意点
まず優遇措置等の適用の要件(住宅や収入など)は個々に異なるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
また恩恵の度合も個々の事情で変わります。すまい給付金の受給額は10万円~50万円と差がありますし、住宅エコポイントもどのような家を購入するかによって取得ポイント数がかなり違ってきます。
さらに注意点は、優遇措置を目当てに、購入する住宅の水準を無理に引き上げないことです。優遇措置はあくまで優遇措置であって値引きではありません。「すまい給付金のぶん、住宅のグレードを上げよう」「エコポイントがもらえるなら、〇〇の設備を追加しよう」などの考えは危険です。無理な住宅購入にならないよう、価格・借入額には十分注意したいです。優遇措置の恩恵は将来の家計として享受するようにしましょう。
まとめ
増税後の住宅購入を検討している人は、2020年3月末まで、遅くとも2020年中に購入したほうがお得になるでしょう。ただし、あくまで現在検討中の人の話です。年齢やライフイベント上での購入のタイミングでなければ、無理に急ぐことはありません。制度を賢く活用することはあっても、制度に振り回されてはいけません。ご自身で納得の上で購入に踏み切りましょう。
横山晴美(ライフプラン応援事務所代表)
2013年にFPとして独立。企業に所属せず、中立・公平の立場で活動する。新規購入・リフォーム・二世帯住宅を問わず、家に関することなら購入額から返済計画まで幅広く対応。(AFP FP2級技能士 住宅ローンアドバイザー)