『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

  • 公開日:2024年2月28日

『正直不動産2』第8話宅建士解説|フルコミの悲哀と宅建士もおすすめできないワンルーム投資

人気コミックが原作のNHKドラマ『正直不動産2』第8話「無限ループ地獄」が、2024年2月27日(火)夜10時から放送されました。「1月は行く、2月は逃げる……」なんて言葉がありますが、2024年ももう2カ月が過ぎてしまったことに愕然としています。シーズン2も、今回の放送を含めても、いよいよあと3話です。ドラマ内の人間関係もだいぶ煮詰まってきたようですね。

 

今回の物語は、主人公の永瀬財地(演:山下智久)の朝の風景から始まります。商店街を後輩の月下咲良(演:福原遥)と通勤していると、店主から挨拶されたり相談されたりと、永瀬の評判は上々なようです。

 

※ドラマの監修を担当したREDSではどのメディアよりも早く、そして詳しく、レビュー記事と解説記事をお届けします。REDSのSNS「X」「Facebook」ではレビューと解説記事がサイトに掲載されたらお知らせ投稿をしていますので、ぜひフォロー&通知ONのうえ、見逃さないようにしていただければ幸いです!

 

都市とビジネスマン

(写真はイメージです)

 

営業成績グラフ、今でも掲げている会社は多いの?

 

会社に着くと、営業成績グラフが嫌でも目に入ります。こういう会社、今でも多いのでしょうか? やる気を促す面もあるでしょうが、上司のパワハラ気質を刺激する面もあるでしょう。ドラマでは、大河部長(演:長谷川忍)が永瀬をいじり始めます。

 

現時点で1位は良家の子息で地主や大家にネットワークを持つ藤原結弦(演:馬場徹)、2位はフルコミで入社した黒須圭佑(演:松田悟志)、永瀬はわずかな差で3位です。飄々としている藤原と比較すると、フルコミの黒須は強引な営業スタイルが災いして、クレームも多く、ストレスからか、胃を痛めている模様。「フルコミの俺にとっては、売上こそが存在価値」と、売上競争にどっぶりはまっています。今回は、こうした黒須の仕事に対する姿勢が、物語に大きな影響を与えます。

 

フルコミ社員はいつもピリピリ、ストレスフル?

 

さて、黒須のいう「フルコミ」とはどのような立場なのでしょう。黒須の行動原理にも関わりますので、解説しておきます。

 

フルコミは個人事業主と不動産会社の業務委託契約

 

「フルコミ」とは「フルコミッション」の略で、給与が「完全歩合制」のことです。「完全に」「成果に対してあらかじめ定められた報酬」を得ることを意味しますので、成果が得られなければ、報酬はゼロ」となる報酬形態です。

 

「完全歩合制」「フルコミ」は、普通の会社と労働者の雇用形態としては、適用することはできません。労働基準法で、会社は労働者に労働時間に応じて一定額の賃金を保障するように定められているからです。これを「出来高払い制の保証給」といいます。

 

一般の営業社員に歩合制を導入する場合は、一定の給与を固定給として保証した上で、歩合を定めることになります。全額固定給の給与と比較して、歩合制の場合は60%程度の固定給を定める必要がある、とされています。

 

そのため「フルコミ」「完全歩合給」の報酬とする場合は、労働基準法に反しないように、企業と完全に独立した「個人事業主」との間で「業務委託契約」を締結する形がとられることが多くなります。

 

フルコミ不動産営業のメリット:成果が高収入に直結!

 

フルコミの不動産営業の場合、固定給はゼロですが、歩合は仲介手数料の50%からが一般的で、80%に及ぶこともあるようです。働く側にとってのフルコミのメリットは、まさに高収入という点ですが、まとめると以下のとおりとなります。

 

・不動産は成約価格が大きく、高収入も期待できる
・成果が報酬に直結するので、モチベーションが維持されやすい
・成果さえ出せば、組織に拘束されることなく、働き方・時間も自由

 

フルコミ不動産営業のデメリット:収入も立場も不安定!

 

一方でデメリットは、兎にも角にも「不安定」ということに尽きます。

 

・契約ができなければ収入なし、業務委託の打ち切りもやむなし
・職場で孤独になりがち
・経費は全部自分持ち
・名刺も販促品も自己負担
・パソコンや携帯電話などの備品や、システム・会議室・営業車などの使用料も徴収される場合あり
・社会保険料は自己負担

 

フルコミの営業マンは、たとえ高収入を実現していたとしても、常にプレッシャーにさらされた生活をしているといえるでしょう。黒須がピリピリしているのも理解できるというものです。

 

ワンルーム投資の罠にはまった男たち。「噓つきは数字を使う」

 

永瀬の勤める登坂不動産に、ライバルであるミネルヴァ不動産の神木涼真(演:ディーン・フジオカ)からの紹介客として篠崎と海野がそれぞれ永瀬を訪ねてきます。永瀬が神木を問い詰めると、神木は「明らかに割高なワンルームマンション(1R)を客に買わせたら俺の勝ち、買わせられなかったら永瀬の勝ち」という挑戦状をたたきつけてきました。業界ナンバーワンの営業マンは自分だと永瀬に思い知らせるために紹介した、というのですが……。

 

ワンルームマンション投資は、一時期、強引な営業手法が問題となった投資です。ドラマ内でもTBGコーポレーションがあくどい方法でワンルームマンションを売りつけ、その顧客名簿を基に二次被害が発生していることをほのめかしています(ちなみに「TBG」とは若手のガラの悪い不動産営業マンを揶揄する〝ツーブロックゴリラ〟の略称です)。

 

ワンルームマンション投資は、マンションの一室を購入して、第三者に貸し出して毎月の家賃収入を得ることで利益を得る投資です。

 

ワンルーム投資の成功例、なきにしもあらず、なのだが……

 

メリットとして謳われるのは、以下のとおりです。

 

・資金や資産が少ないサラリーマンや若い人でも、金融機関からの融資によって投資が可能
・減価償却費を経費として計上できるため、節税ができる
・収支が赤字となっていても、損益を通算することで節税ができる
・将来返済が終わったあとには家賃収入が年金や生命保険代わりになる
・空室時の家賃保証として、サブリースを利用することも可能

 

しかしながら、永瀬が篠崎に語ったように、多くのワンルームマンション投資は失敗に終わっています。必ず失敗する、とは言い切れないのが、不動産投資に関する難しい点です。毎月順調に家賃が入り、売却時には購入時よりも値上がりが期待できる成功例も多々あるから、ワンルームマンション投資を勧める人たちはそうした成功例を持ち出します。

 

まさに「嘘つきは数字を使う」のです。

 

筆者がワンルームマンション投資を勧めない5つの理由

 

永瀬同様、筆者はワンルーム投資をお勧めしていません。それは以下の理由からです。

 

1.空家になって家賃収入ゼロに陥りやすい
2.家賃保証(サブリース)の契約内容が厳しい
3.収支が赤字でも気づきにくい
4.保険・年金代わりとしては不十分
5.節税効果が小さい

 

以下、それぞれ解説します。

 

1.空家になって家賃収入ゼロに陥りやすい

 

ワンルームマンション投資は家賃が唯一の収入源です。1棟マンション・アパートなどの投資は、空室リスクを部屋数に分散されるため自動的にヘッジされていますが、ワンルームの場合は空室になった瞬間に収入の目途が絶たれてしまいます。

 

しかし融資の返済や修繕積立金・固定資産税等の支払いは続きますから、大きな赤字を生むことになります。それを避ける方法のひとつが複数のワンルームを購入して投資することです。しかし、複数投資は、何戸もまずい投資をしてしまい状況を悪化させるという「無限ループ地獄」の入り口でもあります。

 

2.家賃保証(サブリース)の契約内容が厳しい

 

空室リスクを避けるために、家賃保証(サブリース)の契約をする場合も多くあります。ここで問題になる点の一つ目は、サブリースの保証家賃は、保証料として家賃収入の90%以下となることが多くなることです。リスクを避けるためにランニングコストを支払うわけですから、当然採算は当初の予定より悪化します。

 

このほか、過去のトラブル例としては、サブリース契約の内容として「10年保証」と説明しておきながら、保証家賃の減額請求権が保証側にだけあったり、空室期間が6カ月までは家賃保証に免責期間があったり、保証家賃の金額が家賃の8割であったり、といった、営業マンが口頭で行った説明には触れられなかった特約が契約書に含まれていることが多々あり、訴訟に発展することもありました。

 

家賃保証の会社自体が倒産してしまうことも考えられます。サブリースに過度な期待をするのは危険だと思われます。

 

3.収支が赤字でも気づきにくい

 

ワンルームマンション投資は銀行融資が通りやすいように、ぱっと見は赤字にならない、あるいは赤字といっても月1万円程度の試算や資金計画をしています。少額のマイナスであれば、「状況が好転したり景気がよくなったり、金利が下がったりしさえすればなんとかなる」という楽観的予測にすぎません。

 

これにだまされると、現状を変えようとはせず、ずるずると赤字を垂れ流しやすいものです。

 

4. 保険・年金代わりとしては不十分

 

「ローンを払い終えた後の収入は年金代わりになるし、そのとき売れば保険金代わりになる」と言われますが、20~30年後に空き部屋にならない保証はどこにもありません。修繕費がいくらかかるかわからない古びたマンションが残っているだけですから、保険金代わりになるかどうかも保証できません。

 

5.節税効果が小さい

 

鉄筋コンクリート造のワンルームマンションは減価償却期間が47年と長いため、年額の減価償却費は少額であり節税効果は小さいといえます。また、減税効果が本当に大きい人は所得税率が高い人(収入がとても多い人)なので、その場合は、弊社であればワンルームマンションよりも、一棟マンションなどの投資をお勧めしてしまうかもしれません。

 

永瀬は、篠崎に「ハイエナどもは、ワンルームマンションを売りつけ、物上げ屋が格安で買いたたき、またワンルーム屋が新たに売りつける無限ループ地獄だ」と言い放ちます。TBGコーポレーションの顧客名簿を神木が購入したのもこうした利用価値があるからですね。

 

そこまで言われても篠崎は危うく神木の誘いに乗ってワンルームマンションをまた買ってしまうところでした。それを寸前で止めたのは、永瀬が商店街で信頼されている姿を見て、頼ってみるよう提案する娘の琴乃の言葉でした。永瀬の日頃の正直な態度の積み重ねは決して無駄ではなかったのでしょう。

 

強引な手法で窮地に陥いる黒須、手付金と中間金

 

神木から紹介されたもう一人の客である海野は、黒須の勧めに乗ってワンルームマンションの購入契約を締結していましたが「妻が亡くなり、もう無理して投資をする必要もない」と契約の解約を申し入れてきました。ところが今回の契約は、初期費用を抑えたいという海野の申し出から、黒須の提案で手付金を支払わず、契約締結後に「中間金」を支払う形にしていました。

 

一般的には、「手付金」は売買代金の5~10%の現金が契約締結時に支払われ、買主は手付金を放棄すれば、売主は手付金を倍にして返却すれば、契約を解約することができる「解約手付」の意義を持ちます。

 

「中間金」は売買代金の3%以下で契約締結後に支払われます。中間金が支払われると「契約の履行に着手」したとみなされるため、双方の合意がないと解約はできず、和解金は通常「20%程度+α」といわれています。

 

黒須は、いったんは海野を見捨てる腹づもりにもなりましたが、永瀬や月下、それに藤原の協力もあり、なんとか転売先を見つけることもできました。

 

いよいよ榎本美波との関係にも結論か?

 

黒須は、誤解した海野ともみ合い、ケガもして、登坂不動産を辞めて実家の旅館を継ぐことに。藤原が思ったよりもいい人っぽい感じで、人間関係にも変化が見えてきました。

 

永瀬と榎本美波(演:泉里香)との関係も、いよいよ結論が出そうです。あと2話、いったいどんな結論となるのでしょうか? 永瀬にはどんでん返しなどなく、幸せになってほしいなあ。楽しみです。へばっ!

 

 

プロフィール
早坂 龍太(宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。『正不動産』監修のREDSエージェントは100% 宅建士

最後までお読みいただきありがとうございました。

『正不動産』監修のREDS
エージェントは100% 宅建士

主人公・永瀬財地や月下咲良
のように、不動産売買の
お悩みを解決いたします。

主人公・永瀬財地や月下咲良のように、
不動産売買のお悩みを解決いたします。

  • できるだけ安く
    買いたい
  • 頼れる宅建士に
    相談したい
  • 自分のペースで
    ゆっくり考えたい
  • できるだけ高く
    売りたい
  • 引き渡し後に苦情が
    ないか心配
  • 長く待たされそう
    で不安

もし、ひとつでも当てはまるものがあれば…

仲介手数料が最大無料のREDSまで、
お気軽にお問い合わせください!