『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

  • 公開日:2024年2月21日

『正直不動産2』第7話宅建士解説|手付の貸与、デート商法、耐震偽装告知義務違反が〝スーパー悪徳営業〟である理由

不動産流通システムREDSエージェント、宅建士の伊藤靖陽と申します。

 

2024年2月20日に放映された『正直不動産2』第7話に出てきたテーマ「デート商法」「手付の貸与」「耐震偽装」について解説します。

 

今回の第7話も、不動産業界で働く私から見ても大変面白い内容でした。

 

永瀬財地(山下智久)と月下咲良(福原遥)の名コンビが問題を解決していくやり取りや、ミネルヴァ不動産の神木涼真(ディーン・フジオカ)と花澤涼子(倉科カナ)の悪徳っぷりが大変面白いのですが、個人的には永瀬財地に好意を抱く!?光友銀行の融資係・榎本美波(泉里香)のお見合い話もあり、恋愛ドラマのような展開になっていて、また違った楽しみ方が増えたと思います。今後が気になりますね。

 

第7話に出てきた「デート商法」「手付の貸与」「耐震偽装」、この3つのポイントに絞り解説させていただきます。

 

※REDSはドラマの監修も担当しており、当日の放送直後にドラマの内容紹介をいち早くお届けしています。こちらの記事もご覧ください。REDSのSNS「X」「Facebook」ではレビューと解説記事がサイトに掲載されたらお知らせ投稿をしていますので、ぜひフォロー&通知ONのうえ、見逃さないようにしていただければ幸いです!

 

タワマン購入

(写真はイメージです)

 

ミネルヴァ不動産の花澤が手を染めた「デート商法」

 

今回ミネルヴァ不動産の花澤涼子(倉科カナ)のターゲットとなった綿村は婚活アプリの登録者。アプリ内の男性登録者には「家持ち(お金持ちのステータス)」の男性が多く、女性からのアプローチも多いとのことでした。

 

綿村は35歳で大企業に勤める理系オタク。プロフィールには「30代でマンション購入めざしています!」と登録していて、そこに付け込んだのが花澤というわけです。

 

花澤がやったエグいデート商法、被害者は増加中

 

花澤は結婚願望のある「ようこ」を演じてアプリに登録。綿村と連絡をとりデートの約束を取り付けます(この時点でやることが悪徳すぎます)。デート当日、「ようこ」が体調を崩して来られないと綿村に伝え、「ようこ」の友人を演じる花澤(一人二役……。さらに悪徳営業っぷりが過熱します!)

 

うまく綿村を誘い、マンション購入させ、その後落ち着くと、「ようこ」からの連絡が途絶える……という計画でした。

 

一見、こんな話があり得るの?と思ってしまいますが、実は今、こうした「デート商法」の被害者が増えているのです。

 

「デート商法」は「恋人商法」とも呼ばれ、異性への恋愛感情を巧みに利用して高額な商品を売りつける悪質商法。最近はインターネットの婚活サイトなどで被害者に近づいたうえで、不動産投資などを持ちかけ、投資用マンションを購入させる商法が増えています。

 

婚活サイトなどで投資コンサルタントなどをかたって相手に近づき、「ふたりの将来のため」などという甘い言葉とともに、専門家を装ってアドバイスしながら高額な投資用マンションを購入させるという、かつてよりも大胆で巧妙な手口に変化しています。

 

ドラマでも「ようこ」は「結婚したら旦那様と素敵なお家に住みたい」と甘い言葉で巧みに誘っています。綿村は結婚への期待感もあって割とあっさりマンション購入を決意します。

 

今回の被害者は男性ですが、女性が被害に遭う場合もあります。こうした被害に遭わないためには、まず、結婚を目的とする婚活サイトで本来の目的以外の勧誘(今回のようにマンション購入など)をしつこく受けたら、その話は疑ってみましょう。高額な投資を勧める人は、本当に信用できる人でしょうか。おかしいと思った場合は、ひとりで悩まず、家族や友人に相談しましょう。

 

デート商法は特商法の「訪問販売」にあたる

 

特定商取引法によれば、「訪問販売」とは業者が客先に訪問する形態のみならず、業者の営業所以外の場所で客を呼び止めて同行させる形態も含むとされており、いわゆる「デート商法」は、特定商取引法上、訪問販売として扱われることになります。

 

特定商取引法は事業者による違法・悪質な勧誘行為を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律で、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。

 

――――――――――――――――――――――――――
〇クーリング・オフ
特商取引法は、「クーリング・オフ」を認めています。クーリング・オフとは、契約の申込み又は締結の後に、法律で決められた書面を受け取ってから一定の期間内(※)に、無条件で解約することです。
※訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入においては8日以内、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては20日以内。通信販売には、クーリング・オフに関する規定はありません。
――――――――――――――――――――――――――

 

宅建業者のクーリング・オフ条件

 

特定商取引の民事ルールではクーリング・オフが決められた期間内であれば、可能となります。しかし、一般的に訪問販売は特商法の制限を受けますが、宅建業者は特定商取引の制限を受けず(適用除外)、宅建業法による制限のみとなり、注意が必要です。

 

【宅建業法上のクーリング・オフの適用条件】
条件1:売主が宅建業者であること
条件2:買主が宅建業者以外であること
条件3:申込みや契約の場所が宅建業者の事務所や自ら申し出た自宅・勤務先以外であること
条件4:代金を支払っていない、引渡しを受けていないこと
条件5:クーリング・オフの説明を受けてから8日以内であること

 

売主が宅建業者の場合だと「クーリング・オフ」が可能となる場合がありますが、売主が個人の場合にはどうなのかというと、残念ながら契約解除はできません。

 

デート商法による損害賠償請求の裁判例

 

しかし、最近の裁判例によれば、「デート商法」によりマンション購入契約をさせられたとする買主の購入代金全額の損害賠償請求が容認された事例もあります。

 

●判例①
SNSで知り合った者から勧誘を受け、市場価格と比して異常に高額で自宅及び投資用として複数のマンションを購入させられ、売買代金相当額の損害を被ったとして、買主がそれらの購入にあたり、コンサルを行い、売主となった宅建業者に対してその賠償等を求めた事案において、買主の請求がほぼ認められた事例(東京地裁 令和3年7月20日判決 ウエストロー・ジャパン)

 

●判例②
マンションの買主が、婚活サイトで知り合った者の言葉巧みな話術で好意を抱かされ、これにつけ込まれて購入するに至ったとして、同人、当該物件を紹介した会社及び同社の代表者に対して売買代金、諸費用及び弁護士費用等の支払を求めた事案において、これら3者の共同不法行為責任を認め、売買代金と諸費用の合計額から当該マンションの現存価値を差し引いた金額及びそれと相当因果関係のある弁護士費用に限り請求が認容された事例(東京地裁 平成26年4月1日判決 一部認容 ウエストロー・ジャパン)

 

デート商法により投資用等のマンションを購入させられた被害者による、売主等であった宅建業者に対する損害賠償請求がほぼ全面的に認容された事例です。ただ、いくら裁判で勝訴したとしても、被害に遭えば経済的な負担は大きく、手口に気付いた後の精神的なダメージは計り知れないですね。

 

国民生活センターからも同様の被害についての相談が各地の消費生活センターにも寄せられているとして、必要以上の個人情報の提供や、契約締結には慎重な判断を促す内容の注意喚起のプレスリリースが出されております。また、婚活サイトなどを通じたデート商法によって投資用マンションなどを購入させられたとする相談は、2009年度以降急増し、その相談者の7割近くが女性で、30歳代が最も多いそうです。

 

ちなみに【特定商取引法の罰則】ですが、業者は、訪問販売を行う際には、その勧誘に先立って、客に対して、業者名・勧誘目的・勧誘する商品やサービスの種類等を告知する義務を負い(特定商取引法第3条)、その告知義務に違反して、公衆の出入りする場所以外の場所で商品やサービスの勧誘を行った場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることになります(同法第6条第4項等)。さらに、上記禁止行為を、法人の代表者・管理人・その他の従業者が法人の業務として目的隠匿勧誘を行った場合には、その法人に対して1億円以下の罰金刑が科されることになります(両罰規定)。

 

手付の貸与(契約の誘引行為)は絶対にご法度!

 

花澤の巧みなデート商法により不動産購入を決めた綿村ですが、手付金がありません。

 

手付金とは売買契約が結ばれた際に相手方の債務不履行の有無を問わず解約権を認める目的のため、あるいは相手方に債務不履行があった場合には損害賠償もしくは違約金として買主から売主に対して支払われる金銭です。

 

取引を最後まで円滑に進める意味があり、問題なく引き渡しが終われば売買代金に補填されます。全額返還されるのは、解約になるときだけなので基本的に戻ってこないと考えておきましょう。また、手付金は現金で支払う必要があるので、頭金なしで購入を考えている人は注意が必要です。

 

つまり、手付金がないということは不動産の売買契約をすることができないということです。

 

花澤は焦ります。なんとか綿村に購入してもらわなければ自身の成績は伸びず、同僚の神木に負けてしまいます。

 

ここで花澤、全力の悪知恵が働きます! なんと500万円をミネルヴァ不動産の社長、鵤聖人(高橋克典)から捻出し、それを綿村に貸付け、不動産売買の手付金として使用させるという離れ業をやってのけました! さすがミネルヴァ不動産の社長! 見た目からして悪徳を極めています。

 

まとめます。手付金が用意できない客に、「貸し付けますから」とか「後でいい」、「分割でいい」などと言って契約を急がせ不動産を売りつける『契約の誘引』は宅建業法違反です。

 

もしこれらを実行した場合は、罰則として6カ月以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられるうえ、営業停止は確実。場合によっては宅建免許取消しというキツいペナルティーも科されます。

 

今回、花澤はそれだけ重いことをやっているのです。

 

平成時代、世間を騒がせた耐震偽装マンション

 

終盤、神木が、榎本美波(泉里香)の祖母(早苗)に高値で売りつけようとした「へブンリークエスト八起」は、耐震偽装疑惑で住人トラブルになっているにもかかわらず、その事実を説明していませんでした。これは告知義務違反に当たり、当然契約の解除(白紙解約)を要求できます。

 

耐震偽装事件として、もっとも有名なのは2005年11月に姉歯秀次一級建築士が構造計算書を偽造していたことを国土交通省が公表したことに始まる一連の事件ではないでしょうか。「姉歯事件」、いわゆる「耐震偽装事件」です。

 

高層ビルを建てるとなると耐震設計が必須となります。1981年に建築基準法が改正され、建物は震度5に耐えるように設計されることになっていました。ところが、外見からは基準値を満たしているかどうかわかりません。設計の段階で、国土交通大臣認定構造計算ソフトウェアの計算結果から、ビルの構造が震度に耐えられるかどうかを判断します。姉歯事件では、この計算結果の偽装を繰り返し、ビルを建築して売っていたということです。

 

当時も検査はありましたが、行政や民間の指定確認検査機関は、提出された構造計算書の偽装改ざんを見抜くことができませんでした。その結果、建築が承認されてしまったのです。もちろん行政から承認された建物は建てられました。

 

地震国日本では、建築基準法はとても重要です。熊本地震があった2016年には約6500回、東日本大震災があった2011年にはなんと約1万回もの地震が発生していました。他の年においても平均して約2000回も毎年地震が起こっています。そんな日本だからこそ、特にビルであるマンションやホテルなどは、耐震基準を厳守して建てられているかどうかはかなり重要なのです。

 

その他、耐震にかかわる問題としては、2016年三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市のマンションが傾いた杭問題や、2018年大手油圧機器メーカーKYBおよびその子会社カヤバシステムマシナリーが発表した免震制振オイルダンパーの検査データ改ざん問題などがありました。

 

もし購入を検討している物件がこうした物件だったらそれは恐ろしいことでしょう。もしそういった物件に該当した建物であれば、不動産業者はそれを伝えなければなりませんし、消費者としてはしっかり状況を確かめる必要があります。

 

告知義務について

 

中古の不動産なら「屋根が老朽化して雨漏りがする」「扉がガタついて開きづらい」などの不具合や欠陥がある可能性もあります。このような不動産の不具合や欠陥のことを「瑕疵(かし)」といい、売却時には不動産の瑕疵を買主へきちんと伝えなくてはいけないという「告知義務」があります。

 

告知義務のある不動産の瑕疵は4種類あります。

 

1.物理的瑕疵:雨漏り、シロアリ、地盤沈下、土地に廃棄物が埋まっているなど 
2.環境的瑕疵:近所の工場、ごみ屋敷、電車の振動など
3.法律的瑕疵:建築不可物件のため、増改築ができないなど
4.心理的瑕疵:過去にあった事件事故、自殺他殺、暴力団事務所、火葬場など

 

以上は必ず買主様へ告知しなければなりません。

 

不動産に瑕疵があるのに告知をせずに売却するのは告知義務違反です。売却後に買主から補修請求や減額請求、契約解除、損害賠償請求をされる可能性があります。

 

まとめ

 

第7話で取り上げた3つのポイントは、みなさまご自身とは関係ない話と思っていらっしゃるかもしれませんが、意外と身近で起こっているものです。

 

どうか『正直不動産2』をご覧いただき、「こんなこともあるのか」「こういう場合は気を付けよう」など気づきを得てほしいと思います。

 

また、不動産取引は複雑すぎて、大変専門性の高い内容が多々あります。何かご不明点などあれば、そんな時はお気軽に不動産流通システムへご相談ください。経験豊富なエージェントがご案内させていただきます。

 

私からは以上です。
それでは第8話に続きます!!

 

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