『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

  • 公開日:2024年2月7日

『正直不動産2』第5話宅建士解説|永瀬の「正直営業」も月下の「カスタマーファースト」も今回は失敗した理由

人気コミックが原作のNHKドラマ「正直不動産2」第5話「善意の代償」が2月6日(火)夜10時から放送されました。1月9日(火)に開始したシーズン2もいよいよ第5話、半ばを迎えてドラマも佳境に向かいます。

 

今回の物語は、主人公の永瀬財地(演:山下智久)が中学時代の同級生の若村桃花とその夫の若村直から新居購入の相談を受けるところから始まります。ライバル会社のミネルヴァ不動産が住宅ローンにフラット35を、メリットだけを強調して勧めたのに対し、永瀬はデメリットをきちんと正直に説明。まずは理想の住まい探しを優先し、フラット35よりも金利の安い民間のローンを提案したことで無事、永瀬が成約することとなりました。

 

また、永瀬の後輩の月下咲良(演:福原遥)は、お客様のことを一番に考える「カスタマーファースト」をモットーとして、いつも一所懸命に営業しています。今回は、店舗の仲介をした黒熊猫ラーメンの経営が悪化しているとのことで、無給でお店を手伝ってみたり、新メニューを考案したり、いつもの調子で悪戦苦闘しています。

 

いつもの「正直営業」と「カスタマーファースト」が功を奏する展開なのかな、と思わされますが、今回は一味違うようです。なぜなら第5話のタイトルは「善意の代償」です。

 

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内見

(写真はイメージです)

 

フラット35とはどんな住宅ローンなの?

 

まずミネルヴァ不動産が、お客様に強力に勧めていた「フラット35」とは、どんな住宅ローンなのでしょうか。ドラマの中では永瀬の上司の大河真澄部長(演:長谷川忍)が、箇条書きでメリット・デメリットを説明していましたが、ここでも説明してみます。

 

「フラット35」とは、「全国300以上の民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する、最長35年の全期間固定金利住宅ローン」のことです。住宅金融支援機構とは、政府系金融機関であり、フラット35は、「政府による持ち家促進のための金融商品」といえます。

 

フラット35の特徴とメリット・デメリット

 

その特徴は主に4つです。

 

●固定金利:全期間通して固定金利
●質の高い住宅普及を促進する多彩なメニュー:地方公共団体と連携、子育て支援型、地域活性型などのメニューを設定、住宅金融支援機構が定める技術基準に基づく物件調査を実施、適合する物件が融資対象
●保証人不要・繰り上げ返済手数料不要
●安心サポート:任意の加入だが、新機構団信や新3大疾病付機構団信により契約者の病気や死亡に備えることが可能。自営業や就職・転職したばかりの人や契約社員でも融資可能

 

メリット・デメリットをまとめてみました。

 

メリット 金利が全期間固定のため、返済期間がたてやすい
市場金利が上がっても金利が上がらない
保証料などの諸経費や保証人が不要
自営業や転職したばかりの人でも借りやすい
デメリット 金利が割高
市場金利が下がっても恩恵を受けられない
融資対象の物件に条件がある

 

実際にご利用になりたい方は、詳細が住宅金融支援機構のホームページに記載されていますので、ご参照ください。
初めての方へ:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】

 

ドラマの中では、ミネルヴァ不動産は、自営業や勤続1カ月の方でも利用できるメリットを強調して勧めていました。それ自体は間違いではないと思います。自営業や転職したばかりの人は、たとえ収入や資産状況に問題がなくても、民間の住宅ローンの審査は厳しくなりがちだからです。

 

しかし、若村直のように、大手流通会社に勤めていて収入が安定しているのであれば、民間の住宅ローンでも十分融資が承認されるでしょう。金利も低水準とはいえ、民間の方が低金利ですし、今後もっと下がる可能性もあります。

 

永瀬が勧めたように、フラット35のメリットと民間のローンのメリットを比較して、自分にとってメリットが大きいのはどちらなのか、自分の状況の何を重要視することが自分にとって最適なのか、という比較検討をしたうえで、住宅ローンのタイプを決定することが重要です。

 

月下の「カスタマーファースト」は偽善? ライバルの花澤に軍配が上がる

 

月下は、自分が店舗(テナント)仲介をした「黒熊猫ラーメン」というラーメン店を、終業後に無給で手伝っていました。客足が減ってアルバイトも辞めて困っているので、自分が少しでも役に立てば、という理由からといいます。素人ながらに新メニューを検討したりもしています。

 

月下は「今は苦しくても頑張っていこう、それが店主のためだ」と思っていました。それが月下の考えるカスタマーファーストです。しかし、店主は、月下に内緒でライバルのミネルヴァ不動産の花澤涼子(演:倉科カナ)に相談して閉店の段取りを組んでしまっていたのです。

 

月下は「どうして相談してくれなかったのか」と憤りますが、花澤に「あなたのカスタマーファーストは偽善だ」と言われ、永瀬にも正直に「偽善中の偽善! ただただ自分の考えだけを無理やり押し付けているまさしく妖怪カスタマーファーストそのものだ!」と断じられてしまいます。

 

永瀬は、花澤のいわゆる「ハイエナ店舗仲介」は、「言葉は悪いが地道な努力が必要」「店主のことをより考えていたのは月下より花澤さんと言わざるを得ない」と評価しました。

 

ハイエナ仲介とは?

 

「ハイエナ店舗仲介」について、改めてご説明しましょう。

 

通常、不動産業者は、店舗の貸主から依頼を受けて、借主を探し、借主と貸主が賃貸借契約を締結すれば、その報酬として仲介手数料を最大で賃料の1か月分を得ることとなります。借主が店舗を閉店して解約した場合も、通常は解約の予告を受けた貸主の依頼で、店舗が空になることを前提に次の借主を探すこととなります。

 

賃貸借契約では、解約の際には6カ月前予告も必要になります。また借主は、解約して返却する場合は借りたときの状態に戻して返却する「原状回復義務」があります。店舗の賃貸借では原状回復費用は借主負担が基本です。

 

ドラマのように、ラーメン店さんなどが経営難に陥って閉店を考えるときには、この2つの条件が重くのしかかることとなります。6カ月前に退去を決めても店舗の造作や内装を解体する期間や閉店後退去日までは、収入がなくてもカラ家賃を払わなければなりませんし、解体費用そのものも大きな負担です。店主としては日常の営業とは別にこうした撤退戦略を同時に描かねばなりません。

 

ハイエナ店舗仲介は、そうした店主の救いとなる営業方法です。経営が苦しそうな店舗を探し、信頼関係を築き、撤退の相談を受ければ、同業種の店子を見つけるために奔走し、解体費を浮かし造作や什器の譲渡金が入るように交渉し、貸主とは解約の条件や新しい店子との賃貸借契約もまとめます。

 

その代わり、仲介手数料のほかにコンサルなどの名目で手数料を取ることも一般的です。しかし、本来は解体費用やカラ家賃を払うことになる借主の負担は減り、新しい店子も新規の設備投資よりも安価に手当てすることができ、貸主も空テナントの期間を作るリスクを減らすことができます。

 

筆者も、誰にとっても決して悪いことではないと思います。やはり、ここは花澤のほうが店主のことを考えた結果となっているといえるでしょう。

 

ちなみに造作の譲渡手数料は、不動産の売買ではなく、付随する別契約とされる場合が多く、手数料も宅地建物取引業法の対象ではないため、法的に上限は定められていません。「造作の対価が300万円までは30万円、それ以上は対価の10%」など、業者や地域によって慣習的に設定されているようです。

 

永瀬の言動は、直への配慮に欠けるもの! お客様への節度は重要

 

落ち込む月下に、永瀬は「月下は店子に肩入れし過ぎる傾向が強い」と正直に言い放ちます。しかし、永瀬のほうも、ちょっとした、しかし、若村直にとっては重大なミスを繰り返していたのです。

 

中学の同級生である若村桃花に希望どおりの家を見つけてあげられること、正直な自分を評価してくれていることをうれしく思うあまり、「バイソン」などとあだ名で呼びかけ、妙に親し気な態度で、桃花とだけ熱心に話し込んでしまっていました。それは、後輩の十影ですら、違和感を覚えるほどですから、夫である直が、嫉妬とまではいわないにしても疎外感に浸ってしまうことは無理もない、といえるでしょう。

 

筆者にも経験がありますが、不動産業者の場合、知り合いや昔の同級生の方がお客様となる場合は意外と多いものです。そうした方たちに対しては、「普通の不動産業者に比べて自分自身のことを信頼しているからこそ、大事な住宅選びの際にご指名していただける」と思うので、とてもうれしく感じてしまい、仕事中も友達感覚があふれてしまいがちです。

 

しかし、だからこそ、そうした「業者とお客様」といった関係の時には、節度を保った言葉使いや、身だしなみ、態度を意識するようにしています。特にお客様が、異性の方やご夫婦の場合は、関係性にあらぬ誤解を抱かれないように注意が必要だと思います。永瀬にはそうした配慮が足りなかったような気がします。

 

フラット35の投資利用は犯罪です

 

疎外感に悩んでいた直は、ミネルヴァ不動産の神木たちのセールストークに乗せられて、フラット35の虚偽の申請で、投資を目的としてマンションを購入してしまいました。民間のローンで購入したマンションは販売するということにして、フラット35のローンでマンションを購入、ローンの支払いよりも高い家賃で貸すことができれば節約などしないで済む、妻の桃花を永瀬ではなく直が幸せにできる、と焚きつけたのです。

 

先ほどご紹介した、住宅金融支援機構のホームページでも、フラット35の不適正利用に対する注意喚起が特記されています。
【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】 

 

フラット35が
●建物の価値主体のローンであり、比較的借りやすいローンであること
●他の目的ローンやフリーローンに比べて低金利であること
などを理由に、

 

*自らは居住するつもりがなく、投資目的で住宅を取得すること
*融資住宅に自ら居住せずに、事務所または店舗として利用すること
*自動車の購入費用など住宅取得費以外の費用を上乗せして申し込むこと
*消費者ローンなどの返済に充てる費用を上乗せして申し込むこと(おまとめローン)

 

といった不正利用があとを絶ちません。

 

こうした虚偽の内容で融資を受けることは犯罪(詐欺罪)であり、不動産業者ではなく、融資を受けた本人が責任を問われることになります。また、不適正な目的で融資を受けることは、ローン契約違反であり、住宅金融支援機構からは、融資の残債務について一括返済請求が行われることなります。絶対に甘い誘いに乗ってはいけません。

 

永瀬は直から事情を聞いて、神木を責め立てましたが、神木は「通報すればよい、お前の口で友人を地獄へ落とせ」と突き放します。永瀬は若村夫妻を思うと、どうしても通報することはできませんでした。

 

新たな登場人物、新たな展開がどうやら今後も?

 

永瀬と月下の営業スタイルに懸念を抱いていた永瀬の同僚の藤原が、フラット35で購入したマンションの売却に目星をつけていてくれていたため、なんとか事態は収拾しそうです。しかし、自力で解決することはできなかったため藤原に貸しを作ることにもなりました。

 

ドラマの終わりには桐山や永瀬の新しいライバルとなりそうな黒須が登場します。ミネルヴァ不動産との競合も、ただでさえ手ごわい神木に、勢いが復活した花澤が加わり、ますます激化していきそうです。

 

こうした厳しい状況下で、「正直営業」の永瀬、「カスタマーファースト」の月下は、今回の「ちゃんとお客様と向き合っていなかった」という教訓を生かすことができるのでしょうか?

 

筆者も、他人様から見ると、いかにも、なんともうさん臭さが常に漂うこの業界にいるからこそ、「正直営業」が王道、といわれる世界になっていくことを願っています。永瀬や月下が、報われる業界であってほしいものです。

 

 

プロフィール
早坂 龍太(宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。『正不動産』監修のREDSエージェントは100% 宅建士

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