不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 公開日:2022年7月28日

【NHKクロ現・宅建士解説】世界に買われる安い日本でも、培ってきた「安全」「清潔」はタダで売り渡してはならない!

2022年7月26日、NHKの人気ドキュメンタリー番組の「クローズアップ現代」では、「バーゲンジャパン」と題して、世界の様々な国から「安い」と評価され「買われている日本」を「不動産」をテーマに特集しました。

 

番組では、その主な原因を「もともと世界に比べて安い」ことに加えて、今年3月以降の急激な「円安」がお得感に拍車をかけていること、としています。

 

番組の趣旨については、REDS不動産のリアル編集部がコラム記事にまとめています。【NHKクロ現】世界に買われる安い日本の不動産! 日本の魅力は日本人が見つけて守ろう | 仲介手数料無料、割引での不動産の売却・購入はREDS(レッズ)

 

そこで、本記事では、宅建士であり不動産会社を営んでいる筆者が番組内容で特に気になったことについて、書き記していこうと思います。

 

リセッションイメージ

(写真はイメージです)

 

日本の不動産、30年間で0.7倍というのは安さの証拠なのか?

 

番組では、日本の不動産が売れる原因は「圧倒的な安さ」だとしています。番組内で紹介された一橋大学の教授の資料によると、1990年と2021年の住宅価格の比較では、香港ではなんと8.34倍。カナダ2.80倍、イギリス2.38倍、フランス1.95倍、アメリカ1.86倍と、2倍近く上昇した国も多い中、日本は0.7倍と安くなっているのです。

 

しかし、連日の報道では、コロナ禍にもかかわらず、国内の不動産価格は上昇している、という情報で持ちきりです。不動産価格が30年間で0.7倍に下がっている、といわれると違和感があるのではないでしょうか?

 

下記は、国土交通省がまとめている不動産価格指数(2010年の価格を100として指数化したもの)のグラフです。これを見ると不動産価格は、少なくともマンションは、2021年は2010年のほぼ1.7倍に上昇しています。住宅総合でも、1.2倍です。他国に比べると少なめとはいえますが、価格が下がっている兆候はあまりないような気になりますよね。

 

不動産価格指数

 

日本の住宅価格が上がっていないというのは、ミスリード

 

日本の住宅価格が0.7倍と値下がりしているというのは、番組でも触れられていたように、比較の起点である1990年がバブル景気の絶頂期であるのが最大の理由です。バブル景気とは1986年から1991年にかけての株価・不動産の上昇を招いた好景気をいいます。

 

公示価格推移

 

グラフは国土交通省発表の、全国の公示価格(一般の土地の取引価格を基に策定される指標価格)平均の推移です。1990年は平成2年です。まさに日本の土地の価格のピーク時であることがわかります。

 

バブル景気時の価格を起点とすれば、確かに日本の不動産価格は低下しているといえます。しかし、バブル景気による価格の上昇はむしろ異常な高騰であり、その価格を起点とするのは明らかにミスリードを誘うものだといえるでしょう。価格の傾向を見る場合にはむしろピークカットした価格を基準にするべきだと考えます。

 

日本の不動産が相対的に安い理由

 

しかし、日本の不動産、特に都市部の商業地の不動産は諸外国に比べて割安感がある、というのは正しいと思います。私も実際に韓国のソウルやプサン、シンガポール、ジャカルタ、バンコクなどのマンション価格を調べたことがありますが、日本の不動産価格の2~3倍の相場という感覚です。また5つ星の国際的なホテルがさまざまな国にあること、一泊の価格が日本のビジネスホテルの3倍以上というのもまた相場であると思われます。

 

その理由は、「安全」で「清潔」な住居、宿泊場所というのが富裕層のためのものであり、そのコストが住居の価格に含まれている、ということではないでしょうか? そして「安全」「清潔」は日本においては、諸外国よりも「安い」のだといえるでしょう。

 

そう考えると、日本の不動産が相対的に「安い」というのは、「安全」「清潔」が日本のコスト競争力の源泉であり、強みであることを表していると言い換えられます。そうした強みを自ら日本人が誇りを持って理解し、利益と考えていくことが重要だと思われます。

 

円安の影響

 

番組で語られていた「日本が安い」とされるもう一つの理由は、ここ最近の円安です。筆者は、少なくとも2022年にこの円安傾向が続くのであれば、間違いなく外国人による不動産の「爆買い」がもうひと段階進むのではないかと予想しています。

 

番組内で香港の不動産屋さんが内覧していた温泉旅館、日本円では4億円です。2022年1月の月間平均ドル円相場は114.86円/ドルでした。6月平均は134.15円/ドルとなりました。ドル換算すると、1月に348万ドルだった温泉旅館が、わずか半年で298万ドルとなったわけです。黙って15%引きです。黙って50万ドルの値引き、6,000万円です。そりゃあ、ただでさえ割安感のある日本の不動産、売れないわけがありません。

 

為替ドル円相場

 

外国人の不動産購入の弊害と解決の方向性

 

外国人による日本の不動産購入の弊害として、(1)コロナ禍期間の放置・廃墟化、(2)転売により開発が進まず地元に資金も落ちない、といった問題があることが番組内では指摘されています。

 

また北海道の例を挙げ、町の固定資産税収入は2016年10.7億円から2020年16.2億円と5.5億円も上昇しているのに、令和6年には町の財政は赤字に転落することが予想されています。上水道の使用量が開発の進むリゾートエリアでは12年間でほぼ倍増することが予想されるために、その整備費用が65億円もかかることが見込まれているから、ということです。

 

また140軒あったペンションも今や10軒となり、地域のコミュニテイは失われてしまいました。

 

こうした弊害は、外国資本を受け入れる際には十分予測されうるものです。外国人投資家が日本の不動産を評価しているところは、(1)伸びしろ(2)所有や利用規制等に関する自由度―と番組では説明していました。日本人が価値として考えてこなかったものを評価し、かつ所有や利用についておおらかでコストのかからないことに投資価値を見出してきたというのです。

 

しかし、本来、受益者が負担すべき水道コストまで自治体が面倒を見る必要があるとは思えません。あまりにも外資の論理に対して無防備すぎると思われます。前述したように、日本文化として培われた安全や清潔は、十分対価が得られる価値であることを理解した地方制度や価格体系を新たに構築し、地域の発展に貢献できるようにしていくことが重要だと思われます。

 

 

早坂龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

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宅建士・マンション管理士で、

マンション仲介のスペシャリストである

REDSエージェントの津司 徳義(つし のりよし)が、

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