住まいを購入するとき、家そのものの費用のほかにさまざまな諸費用がかかります。今回は新築戸建て住宅購入にかかる諸費用にはどんなものがあるのか、相場はどれくらいなのか、節約する方法はあるのか、具体例をふまえて解説します。

(写真はイメージです)
諸費用とは不動産の本体価格以外の費用すべて
不動産売買で「諸費用」とは不動産の本体以外にかかる費用のことを指します。一般に諸費用は購入価格の7%程度とされています。
このうち最も大きなものは仲介手数料(通常は3%+6万円)です(新築物件の場合、戸建て、マンションにかかわらず仲介手数料を無料とする不動産会社があります)。
不動産の本体については全額住宅ローンの対象となりますが、諸費用は対象外です。金融機関によっては「諸費用ローン」もありますが、金利が店頭金利となることが多く、おすすめしません。しっかりとした資金計画が必要です。
新築戸建住宅にかかる諸費用
新築戸建て住宅を購入する際の諸費用の内訳を細かく見ていきましょう。
印紙税(不動産契約とローン契約時)
不動産の売買契約書や、ローンのための金消契約(金銭消費貸借契約)を締結するときに銀行と締結する契約書に、収入印紙を貼付することで納めるのが印紙税です。契約書に書かれている金額によって印紙税の額は変わり、例えば3,000万円の場合は2万円となります。
不動産取得税
不動産は取得した際に「不動産取得税」という税金がかかります。税額は固定資産税評価額に4%をかけたものです。しかし、住宅用の不動産で、以下の表に示したように一般的なサイズの住宅であれば軽減措置が適用され、多くの場合で取得税はかかりません。
〈以下の床面積要件を満たす新築住宅は、住宅の価格から一定額が控除されます〉
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下限 |
上限 |
一戸建ての住宅 |
一戸建て以外の住宅 |
貸家以外 |
50㎡以上 |
50㎡以上 |
240㎡以下 |
貸家 |
50㎡以上 |
40㎡以上 |
240㎡以下 |
【控除額】 1,200万円
【留意点】
・当該住宅の価格が1,200万円未満の場合はその額を限度とします。
・一戸建て以外の住宅については、独立した区画ごとに控除されます。
・併用住宅の場合は、非住宅部分からは控除されません。
・認定長期優良住宅の場合は、控除額が1,300万円となります。
固定資産税・都市計画税(の清算金)
毎年1月1日現在での不動産の所有者に課せられるもので、固定資産評価額を基準に算出された税金のことです。市町村(東京23区は東京都がまとめている)が徴収します。
徴収方法は、普通徴収といって納税対象者に市町村から納税通知書が送付され、4期に分けられた納付期限内に役所・出張所、ゆうちょ銀行など記載された金融機関、コンビニエンスストア(バーコードの記載がある場合)を通じて納付します。
・固定資産税の税額:課税標準(固定資産税評価額)×1.4%(標準税率)
都市計画事業は、固定資産税と同時に徴収されます。税金の用途は異なりますが、同じと考えて差し支えありません。
・都市計画税の税額:課税標準(固定資産税評価額)×0.3%(制限税率)
固定資産税と都市計画税を併せて「固都税(ことぜい)」と呼びますが、課税標準(固定資産税評価額)×1.7%(標準税率)が固都税の総額となります。そして、この固都税は年額でかかるので、売買時には、買った時点で日割り清算を行います。
登録免許税
住宅を購入するとき、土地や建物に買った人の所有権の登記というものを行います。これは法務局(登記所)にある登記簿に土地や建物の所有権を記録して公示するための手続きで「この不動産は私が所有しているものです」ということを外に向かって示すものです。登録免許税とは、この登記手続きの際に国に納める税金のことです。
新築一戸建てを購入するにあたって必要な登記は以下の2つです。
・所有権移転登記
建売住宅の場合、不動産を売主から移転させる「所有権移転登記」が必要です。土地の所有権移転登記は2.0%、建物(住宅用家屋)を新築したときの所有権保存登記は0.4%、中古住宅などの所有権移転登記は2.0%となっています。住宅の性能によって軽減税率などもありますので、詳細は銀行や司法書士に確認してください。
・抵当権設定登記
登録免許税は住宅ローンを借りる際に必要になります。金融機関が土地や建物に抵当権を設定する登記が必要になり、それは買主が負担することになるからです。
抵当権とは土地・建物を担保にお金を融資し、もしも返済が滞ったら差し押さえて競売などにかけて貸したお金を回収できる権利のことです。抵当権の設定登記にかかる登録免許税は、住宅ローンの借入額に税率0.4%をかけて計算することになります。
登記の種類 |
登録免許税の税率(本則) |
所有権移転登記(土地) |
評価額×2.0% |
住宅用家屋所有権保存登記(新築建物) |
評価額×0.4% |
住宅用家屋所有権移転登記(中古建物) |
評価額×2.0% |
抵当権設定登記(住宅ローン借り入れ) |
借入額(債権額)×0.4% |
司法書士手数料
登記の手続きは司法書士に代行を依頼することがほとんどです。その報酬額は登記の種類により異なり、また司法書士によっても異なります。住宅購入の場合、移転登記と抵当権設定で10万~12万円程度が相場です。
仲介手数料
この仲介手数料が諸費用の中で最も高額になります。不動産売買が成立した際に、不動産会社に払う成功報酬を仲介手数料といいます。仲介手数料は法律で「売買価格×3%+6万円+消費税」と上限が決められています。
ただし、仲介手数料はあくまでも成功報酬ですので、売買が成立しなければ支払う必要はありません。契約が無効や取り消しになったときも同様に、業者は報酬を求めることができないということも覚えておきましょう。
支払時期について決まりはありませんが、一般的なのは「契約時に半分、引渡しの際に残り半分支払う」というものです。
火災保険と地震保険
住宅の保険には、「火災保険」と「地震保険」があります。火災保険加入は住宅ローン融資の条件なので全員が入るものですが、地震保険は火災保険のオプションということになります。
・火災保険:火災をはじめ落雷や破裂・爆発、風災、雪災、盗難などにより保険の目的である建物や家財に損害が生じた場合に保険金が払われます。
・地震保険:地震や噴火、またはこれらによる津波を原因として、居住用建物や家財に損害が生じた場合等に保険金が払われます。地震や噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害については火災保険では補償されません。特に注意しなければならいのは地震を原因とする火災事故が起きたときに保険金は火災保険からは払われず、地震保険が対象となる点です。
火災保険・地震保険は補償額により全く異なるため一概には言えませんが、東京都の一般的な建売住宅で延べ床面積25~30坪程度であれば、10年間で総額25万円前後になることが多いようです。
具体的な計算例
それでは、ここまで見てきた諸費用を、延床面積30坪(100㎡程度)で3,000万円(ローン3,000万円)の新築建売購入の場合で計算してみましょう。
それぞれの項目と、およその金額は以下の表のとおりです。
諸費用項目 |
金額 |
摘要 |
印紙税 |
4万円 |
不動産売買契約書2万円、金消契約2万円 |
不動産取得税 |
0万円 |
一般的な住宅で居住用の場合はかからない |
固都税清算金 |
7万円 |
年額15万円程度の場合が多いため仮置き |
登録免許税 |
52万円 |
登録免許税:40万円(目安概算)
抵当権設定費用:12万円(3,000万円の0.4%)
|
司法書士手数料 |
12万円 |
概算目安 |
仲介手数料 |
105万6,000円 |
(3,000万円×3%+6万円)に10%消費税加算 |
火災保険・地震保険 |
25万円 |
10年間の一般値 |
合計 |
205万6,000円 |
|
総額205万円ということなので、購入額の6.8%(205万円÷3,000万円)となり、前述した7%と近いことが確認できました。
一戸建てを購入するときはこのように物件価格の7%の諸費用を現金で用意しなければなりません。余裕を持った資金計画を立てて住宅購入に臨んでください。また、不動産会社によっては、新築戸建てを購入する際、仲介手数料が無料になることがあります。REDSでは、新築戸建ての仲介手数料は無料です。仲介手数料が無料になると、諸費用の半分近くが節約できることになります。ぜひ検討することをおすすめします。
松村隆平
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。
趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。