2020年10月1日、NHK『クローズアップ現代』が「コロナ禍なのになぜ購入? 追跡! 都心の不動産売買」というタイトルで東京における直近の不動産事情について取り上げました。

 

新型コロナウイルス感染拡大を受け、企業がテレワークを推進したところ「従来のマンションの間取りでは仕事がしにくい」と、郊外の戸建てを求める動きがありましたが、最近ではその動きは一段落。「在宅勤務を経験し、通勤時間の無駄に気づいた」という高所得者層を中心に「都心の好立地のタワーマンションなどの人気が再燃してきた」と番組は伝えています。

 

さらに、都心のオフィスビルでテナントの撤退が相次いでいるのですが、それでも、海外の巨大ファンドが金融緩和であふれた投資マネーを注ぎ込んでいるようです。

 

この2つの事象に共通しているプレーヤーはだれなのか、考えてみました。

 

(不動産のリアル編集部)

 

東京豊洲のタワーマンション群と豊洲運河

(写真はイメージです)

 

都心タワマンに集まる「コロナ勝ち組」

 

番組でまず紹介されたのは、価格が高くても都心のタワーマンションを求める収入の高い世帯の動きです。コロナ禍で景気が悪いのにどうしてこんな動きがあるのか、という視点で取材されていました。

 

カメラが入ったのは豊洲にある築13年2LDKのタワーマンション。分譲価格が4,500万円だったのが、現在8,100万に跳ね上がっているにもかかわらず、内覧会には不動産会社が想定していた2倍以上の13組も訪れていました。

 

有明の新築マンションを5,000万円台後半で購入したという30代の共働き夫婦も、「在宅勤務になり、郊外移住も考えたが、価格は高くても週に1、2回の出社でも通勤時間がかからない方がいい」と答えていました。

 

NHKは7月末に放映した『首都圏情報 ネタドリ!』で、コロナウイルスの影響でテレワークが普及した結果、都心の狭いマンションに住んでいた世帯が、広い居住空間を求めて郊外に移住したり戸建てを購入したりする動きを紹介していて、「不動産のリアル」でも〈【NHKネタドリ!東京大変革】コロナが「人間らしさ」への回帰を促し、住まい選びが変わる〉という記事で紹介しましたが、今回の内容はその真逆でした。

 

一方、REDS「不動産のリアル」では〈コロナ禍の不動産市場、反転攻勢の鍵は戸建てとリフォーム。「街」で買おう、「中古」の価値を見直そう~不動産事業P牧野氏インタビュー〉という記事で「都心マンションの使命は変わらない」という、番組内容とほぼ一致する意見も紹介しています。

 

ただ、これまで「不動産のリアル」では触れていなかったことがあります。それは「都心に家を探す人は一定の収入がある人たち」という事実です。この点、番組ではしっかり説明されていました。

 

スタジオ出演していた不動産コンサルタントの長嶋修氏も「こうした動きはパワーカップルやコロナによって収入に影響が出なかった人たちによる」と解説。コロナ禍によって収入が減った世帯ばかりがクローズアップされますが、収入が減っていないか収入が増えている「勝ち組」が存在し、そういう人たちにとっては郊外よりも都心の方が何をするにも便利ということなのでしょう。

 

コロナ禍で手放された物件で不動産投資が加速

 

次に紹介されていたのは、コロナ禍で住まいを手放した人たちの物件を買い取り、転売することで利益を得る不動産投資家でした。

 

自作のAIシステムで相場より割安になったマンションの売却情報を集めるその投資家は「世の中がパニックなときほど市場のボラティリティ(価格変動)は高い。市場のひずみが取れるので投資家にとってはチャンス」と語ります。新宿の800万円台のマンションを700万円で買い取り、すぐに1,000万円で売却していました。

 

昨日買った不動産の価格が明日になったら上がっている――。平成バブルでよく見られた光景です。当時は、投機目的で不動産を買いあさって利益を得る人たちが続出しました。番組で紹介されていたのはまさにそれを彷彿とさせます。

こうした動きを不動産コンサルタントの長嶋修氏は「最近の不動産は活況と言っていい。緊急事態宣言中は半分に押さえられていた需要が噴き出している」と評しました。

 

東京23区の新築マンションの平均価格が7,000万円台であることを引き合いに、世情と不動産の世界がかけ離れていることにアナウンサーは困惑した表情を浮かべていましたが、そこからなぜ東京で投資が過熱しているのかに話題は移ります。

 

外国人投資家から選ばれる東京。日本のコロナ対策は優れていた

 

「いま世界の投資家はリスクを取らなくなっている。リスクが低い東京に強い需要がある」。ドイツ大手ファンドのアジア担当者はこう言います。

 

コロナショックで世界各国の政府と中央銀行は金融緩和を実行して市中に大量のマネーを供給しました。騒動が一段落した今、行き場を失った巨額の投資マネーがホットスポットとなった東京に流れ込んでいるというのです。実際、2020年上半期の商業用不動産投資額は1兆6000億円と世界1位になっています。

 

なぜ東京が買いなのかというと、コロナでアメリカやヨーロッパの都市がロックダウンして経済が大打撃を受けたのに対し、東京の影響は軽微だったというのです。指標のひとつがオフィスビルの空室率ですが、ニューヨークが8%超え、シンガポールが7%近く、ロンドンも5%台へと上昇しているのに、東京は1%を切る横ばい状態。つまり、安定した賃料収入が見込めるということです。

 

不動産投資の分野で東京は世界の「勝ち組」。この点からいうと、さまざま批判はあったものの、日本政府のコロナ対策は世界でも優れていたと評価できるものだったといえそうです。

 

コロナ「勝ち組」「負け組」で居住エリアが分断される

 

最後にアナウンサーが念を押すように「居住用マンションの価格は下がらないのか」と質問しました。長嶋氏は「人口減少局面の中で、(デベロッパーが)着工数を減らしている。一方、好立地で利便性の高いものの割合が増えているので、価格は落ちない。低金利である限り、高止まりが続く」などと答えていました。

 

都心にある利便性が高いマンションの価格は下がりようがなく、今後も買えるのは収入が高い人に限られるということです。こうした傾向は以前からありましたが、コロナウイルスによって生まれた新たな「勝ち組」と「負け組」によって住むエリア、マンションが分断され、可視化が進み、今後はその差がさらに色濃くなっていくのかもしれません。

 

ただ、大事なことは「どこに住んだら勝ち組になれるか」ではなく、「あなたが本当に実現したいライフスタイルはなにで、それをかなえてくれるのはどのエリアなのか」のはずです。郊外に住んだからといって、決して「負け組」ではなく、そこが住んでいて心地よい街であるなら、都心に住むよりも幸福度は高いでしょう。

 

住まい探しのお手伝いをするわれわれとしては、お客様にはその視点を優先していただきたいと願っています。