不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 公開日:2020年9月4日

コロナ禍の不動産市場、反転攻勢の鍵は戸建てとリフォーム。「街」で買おう、「中古」の価値を見直そう~不動産事業P牧野氏インタビュー(下)

コロナ禍によってテレワークが進み、日本人の住まい観に変化が起こっています。

 

各自の仕事部屋を求めて、ワンフロアのマンションから部屋数の多い戸建て住宅にトレンドが完全にシフトしています。特に都心寄りに位置し、狭い敷地に3階建てで構えた「狭小住宅」はその値頃さが受けて人気が急上昇。一方、マンションのワンフロアを細分化して小部屋を確保したり、中古マンションに書斎を新たに設置したりするリフォームも活発に行われています。

 

4~6月の国内総生産(GDP)成長率が戦後最大の落ち込みとなり、今後の景気悪化が確実視され、停滞も予想される不動産市場にあって、格安戸建てとリフォームは救世主になるのか。マンションではなく戸建て住宅を買うなら特に注意することはあるのか、どこに買うべきなのか。不動産事業プロデューサーでオラガ総研株式会社代表取締役の牧野知弘氏にうかがいました。

 

(中)より続く

 

連載最終回は、テレワークで追い風となっているリフォーム業界について語っていただきました。

 

(不動産のリアル編集部)

 

牧野知弘氏

牧野知弘氏

 

テレワークがリフォーム業界を盛り上げる

 

――近年、新築マンションが高額になりすぎたことから、中古マンションを買ってリフォームする人が増えています。また、これまでの間取りではテレワークがしづらいということで、中古マンションをテレワーク仕様にしたマンションを販売する業者も多くなってきました。今後、リフォーム業界は伸びてくるでしょうか。

 

牧野 リフォーム業界にとっては追い風です。日本の住まいに「働く」という要素が入ってきたのはこれまでの住宅の歴史の中で初めてのことです。

 

これまでは住まいに「働く」ということを一切考えなくてよかったのですが、コロナによって急に自宅で仕事をすることを迫られました。ところが実際にやってみると、ひとつのダイニングテーブルで夫婦2人がテレワークするとお互い気が散って仕事にならないとか、Zoom会議なんかすると、お互いに顔が映っちゃうとか、Wi-Fiの速度が落ちてしまうとか、いろんな問題が起こりました。

 

今後は簡単な書斎コーナーを設けるのに止まらず、Zoom会議で大きな声でしゃべっても大丈夫な防音ブースとか、あるいは夫婦2人が働いても同時に仕事ができるという間取りも含めたリフォーム需要が高まってくるでしょう。この変化は興味深いですね。

 

――昔の住宅は居住空間に小さな部屋をたくさん取ることが多かったのですが、最近はリビングやダイニングスペースの面積を大きく取るトレンドにあるようです。今後は逆戻りしていき、そのためのリフォーム工事が増えるかもしれません。

 

牧野 そうですね。テレワークのスペースは広くなくていいので、むしろ壁でちゃんと区切られて、空調が入って、ネット環境が整っていれば快適だと思うのですよね。この空調や照明も今の家では働くためのものではありません。いかに仕事を快適にできる空間にできるかが、リフォーム業者の腕の見せ所になると思います。

 

タワマンの豪華エントランスや空き駐車場を仕事ブースにすれば?

 

――既存のタワーマンションも豪華なエントランスはいらないので、テレワークのスペースにするといいかもしれませんね。

 

牧野 豪華なスペースに高級家具などを置いていても、ほとんど使わないですからね。それよりももっと合理的に考えてワーキングスペースに変えてしまうのがいいのではないでしょうか。このほか、マンションの共用部分にテレワークスペースとして個室のブースをズラッと並べる。マンションの専有スペースには限りがある場合、エレベーターで降りてきて、テレワークブースで働いて、部屋に戻るというスタイルが人気になるでしょうね。

 

マンションの駐車場で収入が減っているところにこういう設備を作ると、新たな収入源になりますよね。スマートフォンで予約を取って決済し、暗証番号を打ち込んでスマートロックを解錠して入るものを作れば空きスペースの有効活用になります。

 

――新築についてはいかがですか。

 

牧野 新築マンションの1階や2階を丸々コワーキングにするところも出てくるでしょうね。テレワーク設備が付いた社宅もニーズがあるでしょう。

 

ぼったくりや手抜き工事で評判悪かったリフォーム業界

 

――テレワークの普及でリフォーム業界が盛り上がることはよく分かりました。ただ、不動産業界というと世間のイメージがあまりよいものではなく、リフォームに対しても「手抜き工事をされるのではないか」と懐疑的に見る人も多いと思います。これからリフォーム業界が伸びていくために乗り越えるべき壁というのはありますか?

 

牧野 実はリフォーム業界は昔から評判が悪かった。まず、ぼったくりが多かったのです。客は素人で事情を知らないからと、部材を本当は1万円なのに5万円で請求したり、雑費だ、経費だとして大きく請求したりなんてことがありました。というのも、昔は工務店が新築ばかりを手がけていて、リフォーム需要がほとんどなく、受ける側も嫌々やっていたからなのです。

 

そういうトラブルがずっとあったから、日本人の「新築信仰」に拍車をかけることにもなりました。リフォーム業者がいいかげんな工事をして、しかもぼったくられたのでは、新築の方がいいということになりますよね。

 

しかし、これだけ新築需要が少なくなり、リフォーム専門業者もたくさん出てきましたので、本腰を入れて真面目にやる工務店も増えてくるでしょう。素人への対応を毛嫌いしていると、メシは食えないですからね。

 

イメージ払拭のカギは「見える化」

 

――そのほか、仲介業者でも問われている「情報公開化」も大事ですね。

牧野 マイナスイメージを拭い去るカギは「リフォーム工事の見える化」でしょうね。見積もりの段階で部材や工事の日数などを詳細に明らかにすることと、消費者側がネット上で比較ができることの2点は必須です。

 

――現時点で業界の古い体質はどれくらい改まってきたのでしょうか。

 

牧野 最近、だいぶよくなっていると思いますよ。都会では以前ほど大きなトラブルは見受けられなくなってきました。やはりネットで情報を得られるようになり、消費者も口コミや評判を発信できますから、変わっているのだと思います。リフォーム需要が高まり競争が激しくなっていけば、より洗練されていくでしょうね。

 

ただ、もっと言うと、リフォームの本質は「コンサルティング」です。客は打ち合わせをしているうちに夢が膨らみ、あれもこれも追加するので予算オーバーしてしまいがちですが、客にとって本当に必要なのはどこで、おまけの部分はどこで、おまけの中でも大事な順にA、B、Cと順を付けてもらうことが大事ではないでしょうか。

 

そこで予算オーバーとなったらはっきりと伝える。それでも追加工事したいというならお金がかかることを伝える。こうすれば、客にとっての理想の住まいや暮らしがはっきりしてくるし、金銭面でのトラブルもなくなります。

 

これまでは逆で、客にとって不要なものまで工事して請求していました。客が納得し、業者も負担が少ないところを目指すべきでしょう。

 

中古の価値を見直そう。欧米では新築より価値が高い

 

――欧米では新築よりも中古リフォーム物件のほうが価値が高いそうですね。

 

牧野 アメリカ人などは「新築は人が住んだ履歴がないのでどんなトラブルが起こるかわからない」というのが常識なのです。昔、デーブスペクターさんと話したときに「新築住宅ってヤバいよ」と言うのです。「だって一度も使っていない、履歴がない。全部使って試してみないとわからないじゃない。中古は全部使って、どこをどう修繕したのかがわかるじゃない」と。アメリカの中古住宅は過去の修繕履歴などがすべて開陳されているから安心して買えるのです。

 

日本も政府がようやく、住宅政策をそういう方向で進めようとしています。私たち国民も中古に価値を見いだすようにすることが大事です。

 

これまで悪いリフォーム業者は「あれもダメ、コレもダメだ。直しましょう」と適当なことを言って荒稼ぎしてきましたが、中古住宅の修繕履歴をしっかり残し、なぜ直すのかを「見える化」する動きを業界にはぜひ進めていただきたい。そうすれば使う人は必要にして十分なリフォームを行うことができ、不必要なお金をかけずに快適な生活が送れるのですから。

 

(おわり)

(上)(中)を読む

 

 

牧野知弘氏
オラガ総研株式会社 代表取締役
東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。2009年株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年オラガ総研株式会社設立、代表取締役に就任する。2018年11月、全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立、使い手のいなくなった古民家や歴史ある町の町家、大自然の中にある西洋風別荘などを会員に貸し出して「自分らしい暮らしの再発見」を提供している。

 

著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』(祥伝社新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(中公新書ラクレ)などがある。テレビ、新聞などメディア出演多数。

 

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