建物の耐震基準は、よく「旧耐震」「新耐震」で区別されます。「旧耐震」とは「昭和56(1981)年5月31日以前に建築確認を受けた建物」の耐震基準のこと、「新耐震」は「同年6月1日以降に建築確認を受けた建物」の耐震基準とされています。
実はもう一つの耐震基準として「2000年基準」があることをご存知でしょうか。
(写真はイメージです)
「2000年基準」は阪神淡路大震災がきっかけ
1995年に起きた阪神・淡路大震災を受けて、さらなる耐震基準が設けられたのが2000年の改正建築基準法です。
このときに「地盤(地耐力)が一定以上の強さであること」「壁の配置バランスで耐震性を保つ(構造計算)」「(木造家屋は)柱や筋交いなどを金物で補強すること」と、特に木造家屋についての具体的な耐震基準を保持する方法が、法律で明確化されました。
それまでは単に「震度6強以上に耐えられ、中にいる人が死なないような構造にしろ」ということだけで、具体的にどうすれば良いかまでは決められていなかったのです。
2000年にはこのほか、いわゆる「品確法」(住宅の品質確保の促進等に関する法律)も制定され、新築住宅の主要構造部に対する10年の保証が法律で義務付けられました。
大騒ぎとなった耐震偽装事件でも厳格化
こうして住宅に対する安心度は高まっていったはずでしたが、この後に建物に対する信頼を根底から揺るがす「あの大事件」が起こります。2005年のいわゆる「姉歯事件」。当時、構造計算書を偽装して、耐震基準に満たない建物があちこちに建設されたことが発覚しました。
この事件は構造計算ソフトの数値設定で簡単に構造計算を偽装でき、しかもそれを検査機関が見抜けないということが大きな原因でした。そこで2007年に、検査機関が建築確認を厳格に行うよう、建築基準法がまた改正されます。
「2000年基準」によると「2000年以前に建てられた建築物には注意が必要」ということになりますが、姉歯事件を勘案すれば2007年以前の建築物にも注意が必要、と言えてしまうのではないでしょうか。
でも、これまでの建築基準に対する数々の事件を経て、建築基準や確認審査はだんだん厳しくなってきているのがわかります。
やはり自分が住むのであれば、厳しい基準をクリアした建物のほうが安心です。また、建築基準以外にも、「住宅性能評価」「CASBEE」「トップランナー基準」など住宅に関する性能基準は増えていて、性能の向上は日進月歩です。
日本人は「新築信仰」が強いなどとよく言われます。弊社もお世話になっている「オラガ総研」の牧野知弘先生の説では、「質が良い住宅は常に新築住宅」という考え方が日本人の間にまだ根強いのは、深刻な住宅不足に陥った戦後にひたすら住宅の「量的な充足」を満たすために、「質」を重要視してこなかった代償なのかも、ということです。(ニュースサイトで読む: Copyright © Business Journal All Rights Reserved.)
現在、人口減少が進んでいて、中古住宅の流通が拡大していることは事実ですが、できるだけ新しい住宅を購入したい気持ちというのは、これからもなくならないのではないでしょうか。また中古住宅をお求めの際は、耐震がどうなっているのかを入念にチェックするようにしましょう。