都内の不動産を相続した場合には、相続税が課せられる場合があります。相続した遺産の額が基礎控除額よりも少額であれば、相続税はかかりません。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。相続税の評価は時価評価によるものですから、高価で取引されている東京都内の物件は、基礎控除額を超え、相続税が課税されるおそれがあるということになります。
特に既に配偶者がお亡くなりになって独り身の親御様からご相続される、いわゆる「二次相続」の場合は、「配偶者の税額軽減」がないうえに相続人が1人減るため、相続税の金額が重い負担となることも多いでしょう。相続後利用の予定がなく、空き家になる場合などは、固定資産税や管理維持の費用負担も大きくなります。「小規模宅地等の特例」による軽減もされません。資産の状況によっては売却を余儀なくされることも想定しなくてはいけません。
また法定相続人が複数いる場合に、不動産のままで分け合うことが実質困難な場合もあります。相続不動産が1つしかない、あるいは複数の不動産が相続対象だけれども、評価がまちまちだとどのように分けたとしても当事者には不満が残る場合があります。そうした場合は、売却によって現金化して等分した方がよいでしょう。
ただ、被相続人が死亡したばかりの間は、相続のことについて考えるのはあまりに生々しいと忌避する傾向にあり「せめて四十九日が終わってから」「ある程度整理がついてからおいおい」などと考える方が多いのが実態です。しかし、あまりのんびり構えていてはいけません。相続税の申告期限は「相続後10カ月」と決まっています。不動産の売却は、3カ月程度かかると見積もっておいた方がよいでしょう。売却の方針を固めたら、早めに手順を踏んでいく必要があります。

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相続した財産の売却は、名義変更が必須!
相続した不動産を売却するには、不動産の名義を亡くなった方(被相続人)の名義から、相続した方の名義に変更しなければなりません。売却すると、購入者の名義に変更するので無駄な作業だと思われるかもしれません。しかし法律上、名義変更を省略することはできません。
相続した不動産を売却し、相続人で現金を分け合うことを、「換価分割」といいます。相続分通りの比率で遺産を分割できますから、公平感があるといえるでしょう。
相続した不動産は、相続人全員の「共有」名義とすることができます。しかし、「共有」の場合、すべての共有者の合意が売買の時に必要となります。時間が経つにつれて、意思の統一は難しくなりますし、共有者の配偶者など第三者の意見や思惑などで、合意が困難になるケースも多いことでしょう。
売買の手続きにも全員が立ち会うのが原則。できない場合は委任状を提出してもらう必要があるなど手続きが煩雑になります。売却ということで意思が合意されているのならば、事前に協議の上で、代表者の名義にしておくのが望ましいでしょう。その場合、遺産分割協議ということで、事前に売却の時期や予定金額、分配率などを決定し、書面に残すことになります。
相続した不動産の売却手続き
相続した不動産の売却には、以下の手続きが必要です。
- 遺産分割協議
- 相続人への名義変更
- 査定
- 不動産会社との媒介契約
- 宣伝・販売活動
- 契約・決済・引き渡し
- 確定申告
遺産分割協議と、相続人への名義変更が最初のステップとなります。まずは売却について相続人の同意を得て、どういう名義にするのかを決定します。これは、ある意味一番大きなハードルです。金銭が絡むと、どうしても各人各様の事情が生まれるからです。この意思統一が済めば、相続不動産の売却は半分が終わったといっても過言ではないでしょう。あとは、基本的には、通常の不動産の売却と変わりません。
次のステップは、不動産会社に売却価格を査定してもらうこと。査定とは、不動産会社がおよそ3カ月以内に売れると思える価格を見積もることをいいます。ここでは、1社ではなく複数の不動産会社に査定してもらうことをお勧めします。価格や手続きに関する質疑応答を複数の会社と繰り返す中で、信頼できる会社が選択できるからです。
信頼できると思える不動産会社を選択できたならば、次はその会社に売買を成立させてもらう仕事を依頼する媒介契約(仲介契約)を締結することになります。媒介契約は、依頼した不動産会社への依存度によって、一般、専任、専属専任の3種類に大きく分類されます。依存度が高くなるほど、不動産会社の義務もまた厳しく規定されます。
- ・一般媒介契約…他の不動産会社にも依頼できる。依頼者が見つけた買主とも自由に契約できる(自己発見取引)
- ・専任媒介契約…他の不動産会社には依頼できない。自己発見取引は可能
- ・専属専任媒介契約…他の不動産会社への依頼も自己発見取引も不可
不動産会社との媒介契約を締結したあとは、その会社に販売活動を実施してもらい、買主を見つけ、売買契約を締結します。その後、決済と引き渡しを終え、代金を相続人で分割し、確定申告を実施する、という流れになります。
相続税の申告(相続後10カ月)までに売買が決定すれば、相続税の評価額よりも低額で売却した場合に減税となる可能性があります。また、相続後3年10カ月以内に売却した場合、譲渡所得税の申告時に相続税を不動産の取得費に計上することが認められる場合があります。税理士や税務署ともよく相談しておきましょう。
売買が合意済みの個人間の不動産売買について
相続した不動産の場合、双方の合意の上で、相続人同士や親族に贈与・売却するケースや、近隣の住民に買い取ってもらうケースも多いものです。こうした取引の場合も、契約の際には、専門家である不動産会社を間に入れた方が、後顧に憂いを残しません。取引の手続きや契約の内容など専門的なことについては、一般の方ではわからないことが多いからです。
しかし、不動産会社を利用すると、仲介手数料が発生します。不動産会社の仲介手数料は、法律で売買価格の3%+6万円+(消費税相当額)を上限とすることが定められています。多くの不動産会社は、この上限を当然のように請求してきます。都内の不動産の場合は、仲介手数料も多額となってしまいますよね。1億円の土地の売買ということになれば、手数料は売主と買主はそれぞれ306万円、合計で612万円(いずれも消費税抜き)となってしまいます。
本記事を掲載している不動産流通システム(REDS)では、「合意済み個人間の不動産売買仲介サービス」にも力を入れております。相続はもちろん各種手続きについて、専門家の立場からサポートします。具体的な業務内容は以下の通りです。
- 売買契約書の作成
- 重要事項説明書の作成、説明
- ローンの申し込みの相談、補助
- 完済前の不動産に対する金融機関との調整
- 売買・移転登記などの手続き
- 司法書士・税理士・弁護士などのご紹介、連携
- その他取引に付随する業務
この場合、手数料については特別価格を設定しました。通常なら「売買価格の3%+6万円(税別)」ですが、その4分の1である「同0.75%+1.5万円(税別)」としております。上記1億円の売買の場合、売主と買主はそれぞれ76.5万円(税抜)でOK。双方の合計額では、一般的な不動産に依頼するよりも459万円もお得になります。
早坂龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング 代表取締役。1964年生まれ。1987年北海道大学法学部卒業。石油元売り会社勤務を経て、2015年から北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。
監修 :不動産流通システム