自宅マンションの売却は、引っ越し作業や住所変更などの手続きを終えて日常生活を送るようになっておしまいではありません。売却した翌年3月15日までに確定申告を済ませて初めて完了すると覚えておきましょう。自宅マンション売却時における確定申告の手続きを紹介します。

 

確定申告

(写真はイメージです)

 

マンション売却では確定申告が必要? 不要?

 

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得と納税額を明らかにすることです。年によって若干の差はありますが、おおむね翌年の2月15日~3月15日の間に申告を行います。多くの会社員の場合、確定申告は会社がやってくれるのでピンとこないかもしれません。ただし、給与収入が2,000万円を超えたときや、給与以外の収入が発生した場合は確定申告が必要です。

 

マンション売却では、売却益が出たら確定申告が必須ですが、売却損が生じたときは、納税という意味では確定申告は不要です。確定申告では売却益を「譲渡益」、売却損を「譲渡損」といいます。確定申告をすることによって、譲渡益が生じた場合に、特例措置で納税額が抑えられる可能性があります。一方、譲渡損が出た場合でも「損益通算」「繰越控除」といった特例措置によって節税できることがあります。

 

マンション売却をしたら、譲渡益の有無にかかわらず、確定申告は必要です。

 

マンション売却における確定申告の手続き

 

確定申告の基本的な手続きを紹介します。確認しておきたいのが、確定申告の目的です。確定申告では収入から必要経費を差し引いた「所得」を明らかにし、「所得」をもとに納税額を確定します。つまり、売却額だけで課税の有無が決定されるわけではありません。このため、売却額から差し引くことができる「必要経費」が何かを理解することが重要になります。

 

確定申告の基本的な流れ

 

確定申告の手続きは、大きく3ステップです。

 

(1)譲渡所得の算出

 

得た収入である「売却益(売却価格)」から必要経費を差し引いて「譲渡益(譲渡損)」を算出します。マンション売却にかかる主な必要経費の例は以下のとおりです。

 

・取得費
マンションの購入価格のほか、購入するために支払った司法書士への報酬や不動産会社への仲介手数料などが該当します。さらに設備費やリフォーム費などがあれば、それらも取得費に含めることができます。取得費が不明の場合は「売却金額の5%相当額」を取得費とすることができますので覚えておきましょう。

 

・減価償却費
取得費の一種として、建物の減価償却費を売却価格から差し引くことができます。
計算式は〈建物の購入価格×0.9×償却率×経過年数〉です。償却率は、建物構造によって異なりますので、国税庁のサイト(No.3261 建物の取得費の計算|国税庁)をご覧ください。

 

・譲渡費用
マンション売却時に支払った不動産会社への仲介手数料や印紙税などが該当します。売買契約にあたり「より有利な条件で売る」「より高く売却する」ために違約金が生じた場合は、それらも譲渡費用に算入可能です。

 

(2)所得に税率を乗じて税額を算出

 

所得額に税率を乗じて税額を算出します。譲渡所得の税率は、マンションの保有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年を超えるか、5年以下であるかによって異なります。長期保有していた場合は「20.315%」、短期保有していた場合は「39.63%」です。要するに、5年を超えて住んでいれば税金が安くなるということです。

 

譲渡損が生じた場合の控除や特例については「譲渡益が生じた場合」と「譲渡損が生じた場合」に分けて後述します。

 

(3)確定申告

 

算出した「納税額」で確定申告を行います。譲渡額や所得の算出が難しい場合は、専門家のサポートを受けましょう。購入・売却価格、諸経費を証する書類や契約書など、必要な書類を集めるなどの準備をしたうえで相談するとスムーズに手続きが進むでしょう。

 

税額を多く申告してしまったときは、5年以内なら「更正の請求」という手続きによって還付を受けることが可能です。納税額が少なかった場合も、修正申告で正しい額を自ら納税することができます。税務署から不備を指摘されると「過少申告加算税」というペナルティが課されることがあります。不備に気づいたときは一刻も早く修正申告を行いましょう。

 

(参考サイト)
No.3252 取得費となるもの|国税庁
No.3258 取得費が分からないとき|国税庁
No.3261 建物の取得費の計算|国税庁
No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁
土地建物の取得費と譲渡費用|国税庁
No.2026 確定申告を間違えたとき|国税庁

 

マンション売却における確定申告の必要書類

 

確定申告で必要となる書類を紹介します。税務署で取得できる書類と、ご自身で用意する書類に分けられます。

 

【税務署で取得できる書類】
譲渡所得の内訳書
確定申告書B
申告書第三表(分離課税用)

 

これらは国税庁サイトからもダウンロードできます。国税庁サイトでは申告の手引きも用意しています。難しいと感じるときは、税務署に出向くか電話で相談する方法もあります。なお、控除や特例措置を受ける場合は、それにまつわる書類も必要に応じて用意しましょう。

 

(参考サイト)
令和2年分譲渡所得の申告のしかた(記載例)|国税庁

 

【自身で用意する書類】
・売却物件の売買契約書の写し
・売却物件の購入時の売買契約書の写し(注文住宅の場合は建築当時の請負契約書)
・仲介手数料や印紙税などの金額が分かる領収書

 

領収書類は必要経費を明らかにするための書類です。必須のものではありませんが、所得額を圧縮するために忘れずに提出しましょう。

 

そもそも確定申告が必要な理由

 

マンションの売却において確定申告が必要なのは、譲渡益の有無にかかわらず、節税効果を享受できる可能性があるからです。

 

譲渡益が生じている場合

 

譲渡益が生じた場合には、確定申告によって「3,000万円特別控除」「10年超所有軽減税率の特例」の適用を受けることが可能です。この2つの要件は容易にクリアできますし、併用も可能です。

 

(1)3,000万円特別控除
譲渡所得から3,000万円を控除できます。仮に譲渡益が3,000万円だった人がこの控除を適用すれば、所得がゼロとなります。

 

(2)10年超所有軽減税率の特例
譲渡した年の1月1日で、土地・建物の所有期間がともに10年超である場合に、税率を軽減することができる特例です。税率は所得によって異なります。

 

・譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21%
・譲渡所得6,000万円超の部分:20.315%

 

(1)と(2)は併用が可能なので、売却益が9,000万円であれば、所得を6,000万円(9,000万円-3,000万円特別控除)としたうえで、軽減税率の適用が可能です。

 

買い替えをした場合は「定居住用財産の買い換え特例」も検討の余地があります。所定の条件を満たせば、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です。非課税になるわけではありませんが、買い替え時に自己資金が不足しているので納税を猶予したい場合に有効でしょう。ただし、上の2つの特例と併用することはできません。

 

譲渡損が生じた場合

 

居住用財産の譲渡損失の「損益通算」および「繰越控除」という仕組みがあります。

 

(1)損益通算
損益通算とは、同年中のプラスの所得とマイナスの所得を通算できる制度です。給与所得や事業所得と、マンション売却による譲渡損失を相殺できます。会社員で、すでに所得税を納めている場合は確定申告によって還付を受けることができます。

 

(2)繰越控除
損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失がある場合は、譲渡の年の翌年以後3年まで繰り越して控除することでき、これを「繰越控除」といいます。ただし、こちらは譲渡した年の1月1日で、土地・建物の所有期間がともに5年超である場合にのみ適用されます。繰越控除の適用を受ける年は毎年確定申告をする必要があります。

 

ここで紹介した特例措置は、個別の適用要件があります。適用を検討する際は、事前に適用要件を確認しましょう。

 

(参考サイト)
No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合|国税庁
No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受ける場合の確定申告書等の書き方|国税庁

 

マンション売却の終着駅は確定申告

 

確定申告は納税のための仕組みですが、マンション売却においてはそれ以上の意味を持ちます。特例・控除の適用を受けることで、納税額に大きな差が生じるからです。賢くマンション売却を実行するためにも、当初から確定申告の手続きや必要書類を知り、「マンション売却の終点は確定申告」と認識しましょう。

 

 

横山晴美 ライフプラン応援事務所 代表
2013年にFPとして独立してから一貫して「家計」と向き合い、マネーリテラシーの向上でお金の不安が軽減することを実感。お金の不安を抱える人が、自分自身で問題を解決できるよう、お金の基礎知識を底上げするための啓発活動を行う。WEBコラム・セミナーなどで家計や住宅ローンなどお金について幅広い情報を発信している。