家を売りたい、買いたいと思う方は、不動産会社に相談するのが一般的でしょう。そこで気になるのが手数料です。「相談するだけでも手数料がかかるの?」「いったいどのくらい手数料が取られるの?」などの不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
⇒仲介手数料の仕組みや基礎知識についてはこちら
そこで、今回は不動産を売買した際に不動産会社に支払う仲介手数料について、簡単にご説明いたしましょう。
(写真はイメージです)
仲介手数料は成功報酬です!
宅地建物の取引を継続して事業として行う不動産会社は、宅地建物取引業法(宅建業法)という法律に基づいた免許の取得が必要で、宅地建物取引業者(宅建業者)ともいわれます。取引の当事者の利益を保護するために、様々な規定を遵守することが義務付けられています。 宅建業法第34条2項では、不動産の売買・交換・貸借に関する注文を受けた場合、遅滞なく、
(1) 自己が契約の当事者となって売買・交換を成立させる
(2) 代理人として売買・交換・賃借を成立させる
(3) 媒介して売買・交換・賃貸を成立させる
といった取引態様を明示する義務を規定しています。
「媒介」とは「売主(貸主)」と「買主(借主)」との間に立って契約成立に向けて尽力することを指します。ここで「代理人として」あるいは「媒介して」取引を「成立させる」ことが、宅建業者の業務として規定されていることが重要です。尽力することだけでは業務を果たしたとはいえません。「取引」が「成立」して初めて、不動産会社は業務を果たしたとされ、報酬を手に入れることができるのです。
報酬額=仲介手数料の規定は上限額を決めるもの
宅建業法第46条では、宅建業者の代理・媒介に関して受けることのできる報酬の額、すなわち仲介手数料について規定しています。それによると、報酬は国土交通大臣によって定められ、その額を超えて報酬を受けてはならないとされています。
国土交通大臣は報酬の決め方を告示しなくてはいけません。平成26年に消費税が8%に改定されたことに対応するために公示された国土交通省告示第172号「宅地建物取引業者が宅地または建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」が、最新版となります。国土交通省告示は、媒介・代理の取引態様別に、売買と賃貸についての報酬額をそれぞれ定めています。計算方法については、後ほど詳しく説明することにしましょう。
ここで着目しておきたいのは「超えてはならない」と定めてある点です。つまり、あくまで報酬額の上限を定めているのであって、一定額を定めている訳ではありません。
依頼者の利益のために、宅建業法では第47条2号で不当に高額の報酬を要求する行為を禁止しています。実際にその金額を受け取ることがなくても、要求しただけで宅建業法違反になります。このように報酬額の上限には非常に厳しい法律となっていますが、下限については規定も罰則もありません。不動産会社が合意するのであれば、仲介手数料は無料でも構わないのです。
実際に、仲介手数料最大無料をキャッチコピーにする不動産会社も増えてきています。
仲介手数料の計算方法(1)…売買
国土交通省の告示で定められている仲介手数料の上限額について、その計算方法を説明しましょう。不動産会社に行く機会があれば、店内で一度ぐるりと周りを見渡してみてください。どこか見やすい場所に必ず告示が掲示されています。これは宅建業法第46条4項で、そう決められているからです。ただし、告示は法律用語ばかりで理解しづらいかもしれません。ここでは、シンプルに説明できるように努力してみます。
不動産売買の仲介手数料は、売買される不動産の取引価格(税抜き)から計算されます。告示では、取引価額が200万円以下については5.40%、200万円を超えて400万円以下については4.32%、400万円を超える価額については3.24%を、依頼者から受ける報酬の上限としています。報酬は消費税相当額を含んで表示されていますので、税抜き価格を表示すると以下の表の通りとなります。
取引価額 |
報酬額 |
(税込み) |
(税抜き) |
200万円以下 |
5.40% |
5% |
|
|
|
200万円を超えて400万円以下 |
4.32% |
4% |
|
|
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400万円超 |
3.2% |
3% |
ここで注意しなければいけないポイントは、例えば400万円超の取引価額の場合に単純に総額の3%が報酬額(税抜き)となるのではないというところです。総額のうち、200万円以下の価額分には5%、200万円から400万円の200万円分は4%、400万円を超えた分については3%の報酬額となります。200万円を超えて400万円以下の取引価額の場合は、総額のうち200万円以下の価額分には5%、200万円を超えた分について4%が報酬額となります。
報酬額の上限は、依頼者一方に対して定められているので、売買双方ともに依頼者の場合は、不動産会社は、双方から仲介手数料をもらうことができます。これを俗に「両手仲介」といいます。不動産会社にとっては魅力的な取引形態ですが、このような取引のみを不動産会社が追い求めると、物件の情報を同業者にも広めず、自社の顧客や情報網にだけ頼った販売に偏るため、早くて公平な取引が実現しない、という弊害も起こりえます。
簡易計算式とは?
「200万円を超えるとか、以下とか、掛けたり引いたり、ちっとも簡単じゃないよ」とお怒りの方もいるのではないでしょうか? 安心してください! 簡単な方法があります。400万円超の取引価額の場合に使える「簡易計算式」をご紹介しましょう。
上図の式をよくご覧ください。400万円超の取引額の報酬額の計算式を記載しています。これをできるだけ、簡単な式に変えてみましょう。
報酬額=200万円×5%+200万円×4%+(総額-400万円)×3%
=200万円×(3%+2%)+200万円×(3%+1%)+総額×3%-400万円×3%
=200万円×3%+200万円×2%+200万円×3%+200万円×1%+総額×3%-400万円×3%
=200万円×3%+4万円+200万円×3%+2万円+総額×3%-400万円×3%
=400万円×3%+6万円+総額×3%-400万円×3%
=総額×3%+6万円
ずいぶんスッキリしたと思いませんか? 税抜きの報酬額は、取引額の総額×3%+6万円で、上限額を算出できるのです。
仲介手数料の計算方法(2)…賃貸
賃貸の場合の仲介手数料も、国土交通省の告示によって上限額が決められています。極めてシンプルに賃貸料の1カ月分を税抜き報酬額の上限としています。共益費や敷金などは対象に含みません。ただし、賃貸の場合は、借主・貸主からそれぞれ受け取る仲介手数料は、双方の承諾が得られない限り半月分の賃貸料を超えてはならないとされています。従来は借主が仲介手数料を負担する、という賃貸契約になっていて貸主は仲介手数料を負担しないことが多かったのですが、最近は借主の負担を少なくする不動産会社も増えています。
悪質な不動産会社には注意しましょう
最後になりますが、本文で何度も申し上げた通り、仲介手数料の規定はあくまで上限を規定するものです。あたかも法律で一定額が決められたものであるかのように説明したり、仲介手数料以外に営業経費を請求したりする業者もいますので、注意しましょう。
早坂龍太(宅地建物取引士) 龍翔プランニング 代表取締役。1964年生まれ。1987年北海道大学法学部卒業。石油元売り会社勤務を経て、2015年から北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。
監修 :不動産流通システム
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