新型コロナウイルス感染拡大によって、住宅に対する考え方は大きく変わりつつあります。住み替え需要は高まりを見せ、不動産市場は活況となっています。住まいについては昔から尽きない議論として「買うが得か、借りるが得か」がありますが、最新のアップデートを加えつつ、考えてみましょう。

 

購入と賃貸

(写真はイメージです)

 

「絶対」はないが……

 

まず購入の場合と賃貸では、支払い額はどちらがお得なのでしょうか。住宅ローンのMAX借入期間である35年で購入した場合で考えると、ここ数年の超低金利の恩恵を受け、同じスペックの家を賃貸で借りたときよりも月々の支払いは少なくなる傾向が強いです。

 

とはいうものの、住まいはライフスタイル全体に関わる問題のため金銭面だけで判断できるものではなく、単純に「いい」「悪い」で切り分けられない部分が多くあります。そのため絶対の答えはありません。

 

賃貸と購入のメリット・デメリットをそれぞれ分類するとこんな感じになります。

 

  メリット デメリット
賃貸 ・いつでも自由に引っ越しができる
・設備の交換や修理費用の負担がない
・収入の変化に合わせて住居費をコントロールしやすい
・間取り、設備などが自分で決められない
・一生、家賃の支払いが続く
・高齢になったとき契約を更新できない危険性
購入 ・同じ支払いなら内装や設備などハード面のクオリティが高い
・間取り変更や設備交換などを自由にできる
・ローン完済後は居費の負担が軽くなる
・他人に貸すという選択肢が生まれる
・賃貸に比べて簡単に引っ越せない
・住居費を下げられない
・メンテナンス費用がかかる
・固定資産税・都市計画税がかかる
・マンションは修繕積立金、管理費、駐車場代が恒常的にかかる

 

アメリカなどでは住宅ローンの金利が日本よりも大幅に高い場合が多いため、支払いや安定性の面で賃貸を支持する声も大きいのですが、日本の場合は「購入できるなら買ったほうが安心」という意見が多いです。

 

また、不動産売買の現場においては、お客様の意見で最も多い「賃貸で家賃を捨てるのがもったいない」というものがあります。しかし、賃貸のデメリットはそれだけではありません。

 

それぞれ、以下で詳しく解説しましょう。

 

賃貸のメリット・デメリット

 

(1)メリット

 

賃貸のメリットの最たるものは事情が変わったらすぐに引っ越せることにつきます。転勤の多い企業などに勤めていると、安定した住まいよりも自由に動ける方が価値があるという人もいるでしょう。また、見逃せないメリットとして、設備が故障したり老朽化したりした場合や、災害で被災したりしたときも修繕などにかかる費用はオーナー持ちです。購入してしまったら全て自己責任となりますので、「家賃の支払いが高くても、不測の事態で大損するのは嫌だ」という人は賃貸の方が安心できるかもしれません。

 

(2)デメリット

 

先述したように、同じ支払額であれば購入の方が家のスペックは高くなります。賃貸の場合は一生住むことを想定していないため、コスパを優先して作られています。古い物件の場合は、コンセントの数が足りなかったり、家電を使うとブレーカーがすぐに落ちてしまったりすることもありますし、インターネット回線が標準装備になっていないこともあります。

 

そして、賃貸派の最も大きなデメリットがお金と健康に関することです。賃貸は、住み続ける限り家賃の支払いが必要なうえ、多くで更新料がかかります。現役時代は心配ありませんが、老後は健康面で波があり、収入が不安定になりがちです。そこから家賃滞納が増えるようになると、賃貸契約の更新を断られることがあります。少しひどい話と思うかもしれませんが、大家さんも慈善事業を行っているわけではありませんので、致し方ないと言えます。

 

購入のメリット・デメリット

 

(1)メリット

 

自宅を購入する一番のメリットは、「不動産が自分のものになる」ということです。戸建てでもマンションでも経年劣化はあるものの、価値ある資産を子供に残せますし、換金して老人ホームの資金とすることもできます。たとえば3,000万円で戸建てを購入し、30年後に1,000万円で売れたとします。ローンの総支払額で3,600万円程度となったとしても、2600万円で360カ月住んだことになるため、月当たりの支払いは7.2万円です。場所にもよりますが、賃貸よりかなり安くつく場合が多いです。当然ですが、ローンを完済してしまえば、家計の最も大きい支出がゼロになるわけですから、老後も安泰です。

 

(2)デメリット

 

一方、デメリットとしては、家を所有してしまうと簡単には移動しにくくなることがあります。このほか、収入が減っても住居費を減らしにくいこと、経年劣化に応じた家の補修や設備交換が必要になること、固定資産税・都市計画税がかかること、マンションの場合は修繕積立金や管理費、駐車場代といった恒常的な出費があることなど、賃貸にはない負担があります。

 

特に、外壁塗装などは100万単位のお金が必要になるため、臨時支出にも耐えられる蓄えが必要となります。マンションの場合、老朽化によって修繕積立金が大きく上昇することがあります。

 

コロナ時代におけるデータ分析によるプロの意見

 

分譲マンション購入・売却検討者26万人を有する不動産のセカンドオピニオンサイト「住まいサーフィン」(運営:スタイルアクト株式会社)の調査によると、コロナ下においてはマンション、戸建てともに購入意欲はコロナ前よりも増していることが分かります。

 

絶対数からするとマンションの方が伸びは大きいですが、コロナ下では戸建ての部屋数の多さが魅力ということから、戸建て購入需要が増しているようです。

 

結論としては、現在の低金利時代においては、コロナ前も後も「無理のない範囲で購入できるなら、買ったほうがいい」というのが大方の意見のようですし、筆者も同じ考えです。

 

ただ、話の前提として、購入する物件に高い資産価値があるか、すなわち早く高く売りやすいか、です。そういう物件を買う際は「30年後、その家はどのくらいで売れるのか?」というリセールバリューを考えることが最も重要な視点です。

 

結論としては、
・転勤が多いなど住む場所が確定しない
・収入が安定せずローンが組めない
・大きな借金を背負いたくない
という人でなければ、購入したほうがメリットが大きいと考えられます。

 

 

半沢隆太郎(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。実家が建設・不動産会社を経営。新卒で大手機械メーカー、その後コンサル会社を経て、現在は不動産業種の上場会社の経営企画部門に勤務。