2020年5月25日、BSテレ東の番組『日経プラス10』で、「さよならオフィス! 不動産値下がり避けられず?」をテーマに「オフィス不要論」が議論されました。新型コロナウイルスをきっかけにテレワークが広まったことで、都心にある企業がオフィスを削減する動きが出ています。

 

折しも25日には首都圏を含む全国で緊急事態宣言が解除されましたが、一度変わった働き方は元には戻らないでしょう。「平日は毎日出勤」が基本だった日本の働き方が大きく変われば、オフィスはもう不要になるのでしょうか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏がリモートでゲスト出演して語りました。

 

テレワーク

(写真はイメージです)

 

テレワークと経営対策で都心オフィスビルは空室率15%に

 

『日経プラス10』は、BSテレ東が日本経済新聞、日経BP、英フィナンシャル・タイムズ(FT)など日経グループ各社と制作する報道番組で、最新の経済産業ニュースについて分かりやすく解説しています。メインキャスターは榎戸教子さんで、この日はREDS「不動産のリアル」でインタビュー記事を掲載している不動産事業プロデューサーでオラガ総研代表の牧野知弘氏がゲスト出演しました。

 

番組冒頭、2015年には5%を超えていた都心5区のオフィス空室率は右肩下がりが続き、2020年4月には1.56%になったことを紹介。ところが、全就業者の1割がテレワークを続けた場合、2020年以降、空室率は15%に上昇し、賃料も2割程度下がるという予測も示しました。

 

牧野氏はコロナ禍を受けて広がったテレワークについて「全国的に社会実験を行ったようなもの。結果、社員からみても効率的に仕事ができるし、経営者側からみても使えるツールだった」と評価。「大きなオフィスを構えて社員全員が集まらなくても仕事はできるし、個々の社員の能力も見極めやすいという声も聞かれる。オフィス対する考え方も変わる」との見解を示しました。

 

番組ではオフィスを解約したベンチャー企業社長にもインタビューしていて、「3月末からテレワークをやっているが、トライしてみたらけっこうできるので、これまでのオフィスは必要ないことが分かった」「今後の景気の悪化も予測されるので身軽にする必要があった」と説明し、牧野氏の見立てを裏付ける結果に。テレワークの有用性と経営改善の2つの面から、今後のオフィス縮小トレンドは定着しそうです。

 

大手企業も「司令部を分散」する流れで都心から撤退していく

 

そこからオフィスに対する価値観が変わってくるのではないかという話に移ります。牧野氏は「かつては都心に広いオフィスを構えるのがステータスだった。新入社員のリクルーティングにも効率がよかったし、社員みんなが集まることでコミュニケーションが図れると思っていた。でも、それはツールを使えばできることが分かった」と指摘。

 

今後はITやベンチャーだけでなく、大手企業にも動きは波及し「司令部を分散」する動きになるそうです。都心に本社がある大手企業の社長から「同じフロアに役員全員がいるのは感染リスクが高い」として首都圏で3カ所に本社機能を分散したことを聞かされたと明かしました。

 

このように、これまで飽和状態だった都心のオフィスビルで撤退が続けば、ビル同士でテナントの奪い合いも起こりそうです。牧野氏は、利便性がよく機能的なビルが生き残り、ビル間格差の拡大が起こり、一部で値崩れも起こることから「好況だったオフィスマーケットが変わっていく」と話しました。

 

「生活ファースト」シフトで変わる住宅選び、街選び

 

働き方の変容は、住宅選びも変えそうです。牧野氏は「会社ファーストから生活ファーストになる」と指摘。共働きだと会社まで近いところを選ぶのが常識だったが、今後はテレワークで自分の家や住んでいる街の中で一日の大半を過ごすことになるため、「自分が住んで楽しいとか、自分が住むことのステータスや誇りを重視するようになる」と言います。

 

これまでは通勤するには評価が低かった横須賀や三浦、逗子や湘南の環境や住みやすさが見直され、人気が復活する可能性に触れていました。

 

最後に、「アフターコロナの提言」として、「街をコーディネートする時代へ」向かっていることを説きます。「これまでベッドタウンとして住む街を選んできたが、今後はその街がどんな機能を持っているかが問われてくる」と締めくくりました。

 

牧野氏は1年以上前からこうなると予測していた

 

以上のような分析と予測、提言を語っていた牧野氏ですが、実はほぼ同じ内容を2019年初頭に出版した著書『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(中公新書ラクレ)で語っていました(紹介記事はこちら)。 

 

また、今回のテレビ出演で語った内容も、今年4月頭にインタビューしたときにもほぼ同じ内容を語っており、その慧眼にはいつも驚かされます。ぜひ、『コロナが急変させた働き方と不動産価格と住まい観。こんな時代の賢い家探しとは――不動産事業P牧野知弘氏インタビュー』も併せてご一読ください。コロナ後の不動産売買には不安がつきまといますが、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

 

(不動産のリアル編集部)

 

 

オラガ総研株式会社 代表取締役 牧野知弘氏
東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。2009年株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年オラガ総研株式会社設立、代表取締役に就任する。2018年11月、全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立、使い手のいなくなった古民家や歴史ある町の町家、大自然の中にある西洋風別荘などを会員に貸し出して「自分らしい暮らしの再発見」を提供している。

 

著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』(祥伝社新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(中公新書ラクレ)などがある。テレビ、新聞などメディア出演多数。