2019年2月に発表された「SUUMO住みたい街ランキング2019関東版」。トップ10の顔ぶれに「大宮」が4位、「浦和」が8位にランクインしたほか、23位に「さいたま新都心」、67位に「武蔵浦和」と、これまでは人気が薄かったさいたま市の中核駅が躍進しました。映画『翔んで埼玉』もヒットして注目が集まる埼玉県ですが、これからの時代、都心から少し離れた埼玉に住むのはアリなのか、ナシなのか。働き方が変化し、住まい選びに必ずしも交通利便性が重視されない時代はすぐそこにきています。時代を読み、一歩先を行くマンション選びの方法について、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏に話をうかがいました。

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

牧野知弘氏①-6

牧野知弘氏

 

「住みたい街」に埼玉県が躍進している理由

 

――最新の「住みたい街ランキング」に大宮や浦和が入ってきたことをどう分析されますか?

 

牧野 勤め先にどれだけ便利に向かえるかという交通利便性こそが、住みたい街を決める上で最も大きな選択理由になっていることが明確になったといえます。上野東京ラインが開通したことで、大宮や浦和は意外と都心に近いことが知られるようになり、これまでメインで使われていた埼京線による池袋や新宿へのアクセスとともに、上野から先の東京・新橋・品川に迅速に通えるようになりました。

 

東京のオフィス街というと、新宿や渋谷も大きなオフィス街ですが、やはり東京駅を中心とした、大手町や日本橋、さらに最近は品川など東京の東側がメインのオフィス街です。鉄道ダイヤの改正でこうしたエリアに大宮や浦和からつながることで、その利便性が見直されたのでしょう。

 

交通利便性が高いのは武蔵小杉も同じです。JR横須賀線の新駅ができて品川や新橋、東京につながり、東横線副都心線ができて新宿や渋谷、池袋につながって、東京のどこのオフィス街に行くにも便利なところが評価されました。大宮と浦和は埼玉県の中ではもともと中心的な都市でしたが、これに拍車をかけたというところではないでしょうか。

 

――住宅が交通利便性で選ばれるようになったのは何が原因ですか?

 

牧野 最大の理由は、夫婦共働きが普通になったことです。奥さんが専業主婦だと、電車に乗って頑張るのはお父さんだけなので、「郊外の自然環境の豊かな場所で子供を育てたい」などと住環境が優先される傾向にありました。これが昭和から平成初めくらいの生活パターンでした。

 

ところが、共働きで子供を保育園に預けて通勤しなければならなくなると、交通利便性がよくないと生活が成り立たないということになったのです。それで都心居住が進みましたし、1都3県の中でもより交通利便性の高い駅近エリアが選択されているのだと思います。

 

――都心回帰と逆の動きにも見えますが

 

牧野 都心回帰と逆の動きではなく、東京23区では新築マンションの平均価格が7000万円を超えてくるほど高くなりましたから、これでは夫婦共働きでいわゆる「パワーカップル」といえども手が出しづらい。一方、主要幹線の主要ターミナル駅は東京都内のマンションと比べると割安。都心部に集まるなかで、今度はそこにつながる主要幹線の主要駅に集まる傾向になってきたということです。

 

もう一つは通勤だけではなく、埼玉県などのニュータウンに住んでいたシニアの方々が、主要なターミナル駅のマンションに買い換えようとする動きです。これは全国で起こっていて、県庁所在地に人が集まっています。なぜかというと、ニュータウンは開発地域のため坂道が多かったり、車がないと生活できなかったりと、リタイアして高齢化すると生活がしづらいんですね。埼玉県でもこういった人たちが住んでいた家を手放して大宮や浦和に移っているのだと思います。

 

130万人突破で狂喜乱舞のさいたま市、一方で柏市は

 

――さいたま市も人口が増えて、2018年9月に130万人を突破したと大騒ぎしています

 

牧野 すごく伸び筋になってきましたが、最大の原因はやはり距離の割に割安だったことでしょう。大宮はインフラが整った交通の結節点で、街にすべての機能を持っています。さいたまスーパーアリーナ、大宮アルディージャの本拠地スタジアムがあり、イベント需要が集中していることも、街としての魅力を高めているんじゃないでしょうか。それでいて、横浜よりはずいぶん安いです。浦和も昔からの文教地区です。浦和が好きという人と大宮がいいという人の棲み分けができているという印象ですね。

 

同じような交通の結節点でも、たとえば千葉県の「柏」駅はだいぶ衰退してしまいました。JR東海道線にもつながった常磐線ですが、一時は相当に乗客が減ってしまいました。

 

柏がなぜ大宮のようにならなかったというと、交通結節点としてのインフラ整備が全くできていなかったのです。どちらかと柏市の色々な機能が、新しくできたつくばエクスプレス(TX)沿線の「柏の葉キャンパス」駅のほうに移ってしまいました。そして住宅需要もそれにあわせて移ってしまったのです。常磐線はもともと混雑率が高くて評判が悪かったのですが、TXは秋葉原までですが都心に直通でアクセスできるようになった点が評価されました。

 

しかも、大宮と違って柏はアリーナもないし、百貨店のそごうも閉店してしまいました。跡地利用も決まらなくて寂れた印象です。都市としての成長は住宅を作って人を集めるだけではなく、人々が暮らす、生活する楽しさがあることです。柏と比べて大宮はこの点ではるかに優れています。

 

今後は高崎沿線が強くなる

 

――埼玉は路線が東京に向いていて、東西のつながりが悪いと言われています。今後は東の高崎線・宇都宮線と、西の埼京線・西武線ではどちらに軍配が上がりますか?

 

牧野 あえていうと、高崎線側ですね。たしかに埼京線側の渋谷は東急による大規模再開発で話題になっていますが、私は東京の中心部が今後、東京の東側に偏るのではないかと思っています。最大の理由はリニアモーターカーの始発が品川になることと、羽田空港と成田空港には関東地方の東側からのほうがアクセスしやすいことですね。

 

このため、オフィスを含めて東京の中心が東側および南側になります。東京駅というよりは南側の品川よりに中心がずれてくるでしょう。そうすると埼玉から見ると少し遠くなってきますが、埼玉も東側の路線が強くなると思います。

 

――「埼玉県池袋市」なんて言われたように、埼玉はずっと西側の路線が強かったのが変わると

 

牧野 池袋中心の文化圏は変わってくるかもしれないですね。上野東京ラインの開通は非常に大きな意味がありますよ。埼玉県民にとって、直通で品川まで来られるというのは大きなメリットでしょう。でも神奈川県民には東京から先に行く用事はありません(笑)。僕は神奈川県民で、東海道線でオフィスのある新橋まで通っていますが、直通のメリットは神奈川県民には薄かったですね。逆に埼玉側には大きなインパクトがありました。

 

(中)に続く

 

 

■牧野知弘氏(オラガ総研株式会社 代表取締役)
東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年、三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。2009年、株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年にオラガ総研株式会社を設立、代表取締役に就任する。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(ともに文春新書)、『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(中公新書ラクレ)などがある。

 

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