2018年、不動産取引の仲介手数料の上限に関する告示が48年ぶりに改正されました。改正の背景には、昨今の社会問題となっている空き家問題があり、仲介手数料を実質値上げすることで、問題解決につなげることが目的といわれています。施行から1年が経ちましたが、現実の取引にはどのような影響を与えたのか、振り返ってみます。

 

昔ながらの町並み

(写真はイメージです)

 

従来の仲介手数料の規定と禁止事項

 

そもそも、不動産会社の仲介手数料とは、どのように決まっているのでしょうか。

 

宅地または建物の取引を業として行う不動産会社は、宅地建物取引業者として免許を受ける必要があり、宅地建物取引業法という法律で業務の内容や義務について厳しく定められています。報酬についても、宅地・建物の売買、交換、賃借の代理や媒介に関して受けることのできる報酬の額は国土交通大臣の告示で定められ、この額を越えて報酬を受けてはならない、とされています。その仕組みについてはこちらをご覧ください。

 

仲介手数料は、上限額を超えて請求してはならないだけでなく、実際に受領しなくても、要求しただけで法律違反となります。また、仲介手数料は成功報酬であり、売買契約が成立して初めて受領できるものです。交通費や雑費なども特別な経費として認められないものは基本的に仲介手数料に含まれます。そんな仲介手数料の決まりが以下のように変更されました。

 

「空き家取引かつ取引価格は400万円以下の物件に限り、従来の報酬上限に加え、調査費用などを上乗せできる。その報酬金額は、合計で18万円(税抜き)を超えないようにする」

 

つまり、仲介手数料は不動産会社がかけるあらゆる経費がコミコミだったものが、空き家取引で400万円以下と安い物件を扱う場合に限って、出張費や調査費用を18万円未満なら追加で請求できるということにしたのです。

 

改正の背景は空き家問題の深刻化

 

改正は不動産会社の手取りを18万円まで増やすことを容認することで、空き家の取引量を増やそうとしていることは誰でも理解できると思います。では、その空き家問題はどのくらい深刻なのでしょうか。

 

総務省の住宅・土地統計調査では、空き家の数は2013年の時点ですでに820万戸となっており、5年を経た現在では1000万戸に迫るともいわれています。少子高齢化に伴い、人口減、過疎化・都心部への集中、単身世帯化、健康期間の減少など複合的な要因があるためとされています。

 

空き家増加によって、防災面では家屋倒壊など、防犯面では廃棄物の違法投棄、無権利者の無断使用などにつながるほか、公衆衛生や景観面での悪化、固定資産税の不払いなどが挙げられます。こうした事態を放置することはできないとし、2015年5月に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。「地方自治体は、近隣に悪影響を与える空き家を『特定空き家等』と指定し、必要な措置について助言・勧告・命令をすることができる」という強制力を持つ法律です。

 

この法律を支援する目的で、2016年の税制改正では「特定空き家等」に指定された土地は固定資産税が最大6倍までに増加するというペナルティ的措置が加わりました。オーナーに空き家を放置させないための負の動機付けといえます。

 

また全国の自治体の6割が「空き家バンク」のシステムを構築し、情報を共有するなど、自治体と不動産会社が共同で空き家問題に対応することを模索中です。

 

空き家の仲介手数料改正の目的とポイント

 

今回の仲介手数料改正の目的も、空き家をはじめとする安価な中古住宅の流通を促進させることが最大の目的です。というのも、これまでの仲介手数料の仕組みでは、こうした安価な物件や空き家物件がなかなか動かなかったからです。

 

空き家は立地の悪い郊外や過疎化した地域の老朽化した物件がほとんどで、まず高値がつきません。先ほども述べたとおり、不動産会社の仲介手数料は、販売までの手間や交通費等の経費、販売の困難さに応じてではなく、物件の売買価格に応じて決まります。郊外の300万円の空き家を売却するために交通費と時間をかけて調査や内覧をして、何カ月もかけてやっと売却できても、売主からもらえるのは税抜でたった14万円が上限の仲介手数料です。これでは割に合わないというのが不動産会社の正直なところ。

 

一方で首都圏の戸建の2018年12月の平均価格は3151万円です。仲介手数料の上限額は約100万円が上限となるうえ、よく売れます。これでは、不動産会社が郊外の空き家の仲介に積極的にかかわろうとしないのも理解できます。

 

改正は業界でも話題にならず、効果なし

 

さて、改正後1年が経ちましたが、期待通り、改正により空き家取引は活発化したのでしょうか。残念ながら、公表されているデータからは「NO」です。筆者の体感でも、この1年、今回の改正について不動産業者間でも全く話題にならず、この改正を根拠に積極的に空き家ビジネスに取り組んだという業者も筆者の周辺では皆無でした。全く期待外れの結果といえるでしょう。

 

その原因は、以下の3つでしょう。

 

(1)適用限度の報酬額が上限18万円までであること
(2)特別の依頼業務の経費を請求することは従来から認められていること
(3)報酬額の上乗せ分は依頼者負担であり、依頼者のモチベーションが逆に下がること

 

まず(1)ですが、先述したように首都圏の戸建の販売手数料上限が平均100万円であることに比べて、最大でも18万円というのは、業界のモチベーションのアップを図るためには小さすぎるとしか思えません。不動産会社にとってみれば、「あまり変わらないじゃん」というのが本音です。(2)については従来から遠距離の物件に関する旅費や特別な依頼による広告費などについては、別途経費を請求することは認められてきています。(3)はもっと分かりやすく、増える分の仲介手数料は依頼主からもらうので、依頼主の売却意欲が失われかねないということです。もともと安い空き家物件では売却益も小さいので、不動産会社への報酬が売却額に比べて大きくなり過ぎては、払う原資がないということにもなりかねません。

 

空き家問題は深刻 公的資金をつぎ込むのも一案か?

 

筆者は、もともと不動産会社の仲介手数料は自由化すべきだと考えています。全国ネットワークで駅前など好立地の場所に店舗を構える大手不動産会社と、地域の零細不動産会社が同じコスト構造であるわけでもありませんし、同じ収益が必要なわけでもありません。業容や業態に応じてサービス料金は設定されていき、いずれそれぞれのマーケットで適正な相場が生まれていくものだろうと思います。空き家に関する仲介手数料も、同様に自由に設定されるべきだと思います。

 

ただ空き家問題の解消を加速させるために政策的な施策を実施するのはよいことだと思います。提言ですが、たとえば再生エネルギーによる電力固定価格買取制度(FIT制度)のように、空き家取引に関しては、不動産会社の仲介手数料について一定の公的補助を出す制度などはいかがでしょう。社会インフラへの貢献という意味で、公的資金導入は検討に値するアイデアだと思います。

 

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。1964年生まれ。1987年北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

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