ここ最近、新築マンションの価格が高騰しています。このことから、中古マンションの中でも古めの物を買って、水回り設備を中心にがっつりリフォームをして新築同様にしてしまおうという人が増えているようです。ただ、人によってリフォームにかけられる費用には差があります。リフォームの仕様や買ったマンションの築年数によっては、当初の資金計画から大きく狂ってしまうので注意が必要です。今回は、このリフォーム費用について詳しく解説します。

(写真はイメージです)
リフォームの仕様によって予算が大きく変わる
リフォームを考える場合、どのぐらいの仕様を考えているのかによって、予算も大きく変わってきます。
たとえばクロスの貼り替えでは、一般的なビニールクロスで張り替える場合は㎡単価1,000~1,200円ぐらいですが、調湿機能の付いたクロスや布クロスなどグレードが高い壁紙の場合は同1,500円以上になります。70㎡の部屋の壁と天井のクロスを張り替える場合は約250㎡の壁紙が必要ですので、一般的なクロスなら25万円程度ですが、上質なクロスを使うと37万円以上かかることになります。
一般的なクロスでも100種類以上ありますので色や柄が選べます。きれいであることを重視するのであれば一般的なクロスで十分ですが、機能や品質まで求めるのであれば相応の費用を投じて上質なものを選択する必要があります。
このように、リフォームに何を求めるのか、どのような仕様を考えるのかによってそのリフォーム費用は大きく変わってきます。予算が不足しないように、早めに計画を練るようにしましょう。
各設備の耐用年数と交換時期は?
リフォームでは、既存の設備がまだ使えるものなのか、それとも交換した方がいいのか気になると思います。各設備の一般的な耐用年数や交換時期を紹介します。同じ製品でも使い方によって長く持つものもあれば、短期間で壊れてしまうものもありますので、あくまで参考値と考えてください。中古マンションを買ったときには、これらの設備を何年くらい使っているのかを確認しましょう。
クロス、フローリング
クロスやフローリングはマンションの見た目や印象を大きく左右します。日焼けなどの経年劣化に加え、使い方によって傷や汚れが発生しています。リフォームすることで室内の見た目がパッと変わりますので、全面的にリフォームすることをおすすめします。ただ、表面積が広いため、単価の差がわずかでも、全体の価格では大きな差が出るので注意しましょう。
キッチン
キッチン本体は10年以上使用することができ、20~30年使っている家庭も少なくありません。ここ数年、奥まで取りやすい引出型の収納や水はねの音が静かなシンクなど機能面が進歩しています。10年以上前のキッチンはこうした機能が大きく劣り、使い勝手が段違いなので、10~15年がリフォームの検討時期と言えるでしょう。
ガスコンロ
ガスコンロを製造している株式会社パロマのホームページでは、ビルトインコンロの耐用年数は7~10年と公表しています。ノーリツやリンナイなどの他のメーカーは公表していませんが、同様の仕組みですので、このぐらいの期間が耐用年数と考えてよいでしょう。
水栓関係
キッチンや浴室、洗面所など水周り設備にある水栓の耐用年数は10年と言われています。使い方の影響も大きい部位なので、中古で購入するときにはぐらつきやパッキンからの水の染み出しがないかチェックしておきましょう。1995年の阪神淡路大震災以降、レバー水栓は下から上に上げるタイプが普及しました。地震が発生したときに物が落ちて、レバーを下げて水が出っぱなしになってしまったためです。レバーのタイプが上から下の水栓になっているようなら、四半世紀ほど前のものでもありますし、地震対策も兼ねて新しい物に交換した方がよいでしょう。
換気扇、浴室換気乾燥機
換気扇などは耐用年数10~15年とされています。法定の耐用年数は15年です。フィルターの清掃をこまめに実施していれば、モーターへの負担が少なく長持ちしますが、フィルター清掃が不十分で目詰まりが進むとモーターへの負担が大きくなり、故障の原因になります。中古で購入するときには、設置からの年数はもちろん、フィルターの清掃状態もチェックしておいた方がよいでしょう。
給湯機
給湯器の耐用年数は10~15年と言われています。急にお湯が出なくなるという不具合もありますが、給湯器が稼働するときに異音がする、給湯器の周辺がガス臭いなどの兆候が表れる場合もあります。特に冬場に故障してしまうと、お風呂やシャワーなどに影響が及びますので、少しでも怪しいと思ったら交換しておくべきポイントです。
築年別にみるおおまかな予算
築年数別にリフォームにどの程度の予算を見ておくべきかを紹介します。
築5年以内 10万~20万円
基本的にはハウスクリーニングで十分です。特に交換するべき設備はありませんが、水回りやクロスなど、気になる人は交換してもよいでしょう。たとえば、リビングの壁一面のクロスの色を変えるとアクセントになって自分好みの部屋に仕上がります。
築10年前後 100万~200万円
それまでの居住者の使い方によって大きく差が生じる築年数です。クロスの貼り替え程度で済む場合もあれば、浴室やキッチンなどの設備更新を検討しなければならないこともあります。
築15年前後 200万~400万円
きれいに使っていたとしても設備の経年劣化が現れる時期です。入居後に追加でリフォームするのは大変ですので、給湯器なども含めて更新を検討しましょう。
築20年前後 400万~600万円
経年によって傷や汚れなど見た目の劣化はもちろん、機能面の劣化が顕著に表れます。前の入居者がリフォームを施している場合がありますので、各設備のリフォーム履歴を確認しながら、どこをリフォームすべきか検討しましょう。
築25年前後 600万~800万円
住戸内の給水管や排水管の状態も確認しておくべきです。築年数の古いマンションは、配管の質も今のマンションに比べて劣ります。表面や設備をきれいにリフォームしても、配管から漏水しては意味がありません。
築30年以上 800万円以上
配管の更新を前提にスケルトンリフォーム(骨組み以外をまるごと取り替えること)を検討すべき築年数です。窓サッシやガラスが古く、熱効率が低い場合があるので、内窓の設置も検討しても良いでしょう。リフォームの自由度は高いですが、リフォーム費用が高額になります。
失敗しないリフォーム見積もりのコツ
インターネットで「リフォーム」と検索すれば、たくさんのリフォーム業者が見つかります。業者の良しあしを判断して1社を選択しなければなりません。選ぶにあたってのポイントをご紹介します。
予算を伝える
「予算300万円でプランを練ってほしい」など金額の目安を伝えると、リフォーム業者も提案しやすくなります。まず予算を伝えて、プランを提示してもらうことで、こちらもリフォーム後のイメージが沸きやすくなります。
優先順位をつけてプランを練る
リフォーム業者の立場からすれば、出来るだけ高いリフォームにしたいので、多くの部位のリフォーム提案を行います。予算とバランスを取りながら、どこが優先的にお金をかける部位なのか考えておきましょう。
相見積を取る
あたりまえですが、そのリフォーム業者の金額が適正かどうかを確認する必要があります。相見積が一番の近道ですが、単純に「リフォームの見積が欲しい」というざっくりとした依頼では、各社のリフォームプランがそろわないので相見積にはなりません。ある程度リフォームプランが固まってきた段階で相見積を取る方が有効です。
詳しくない見積書は説明を聞く
例えば「雑工事一式」などと内訳が示されていない項目に多額の費用が計上されている見積もあります。その内訳は何なのか、しっかりと確認して他社と比較できるようにしましょう。また、どのぐらいの工期を見込んでいるかも重要なポイントです。あまり細かく聞き過ぎるとリフォーム業者から嫌われてしまう場合もありますので、ほどほどが肝心です。
マンションの価格は購入時に目に見えていますが、リフォーム代金はマンション購入時に正確に算定しておくことはできません。プランを練り始めた後に手を付けたいポイントが増えることも多く、当初の想定よりも予算がふくれやすいので、中古マンションを購入してリフォームを検討するときには、資金計画に少し余裕をもたせておくことをおすすめします。
斉藤勇佑(宅地建物取引士)
大学卒業後、5年間不動産売買業務に従事。その後、不動産管理会社に転職し、分譲マンションの維持・管理を中心とした業務に5年間かかわり、現在は不動産のストック分野の業務に従事。