国内では「新築信仰」が強かったために中古マンションはあまり人気がなかったのですが、ここのところ、その価値が見直されているようです。建築資材の高騰などから新築マンションの価格が高くなってしまったことや、瑕疵担保責任保険の適用範囲が広がったために中古物件の購入後に欠陥が出てくることへの不安感が減っていることが原因とされます。
築浅のマンションであれば建物自体の傷みはほとんどありません。一方、価格は「新築プレミアム」がなくなって新築時より2割前後は下がっているので、非常にお買い得です。ただ、「安くて安心」という理由だけで中古物件に手を出すのは危険です。マンションを購入するときは「管理を買え」といわれます。つまり、適切に管理された物件を買うことが重要なのです。
今回は、マンションの購入で管理状況をチェックすることが大切な理由を説明します。

(写真はイメージです)
「管理規約」はマンションのルール
マンションのように所有権が区分された建物を区分所有建物といいます。区分所有建物であれば、法律でマンションに応じたルールを定めることが決められており、それをマンション管理規約と呼びます。たとえば、ペット飼育禁止やピアノ演奏禁止などがあたります。
また、管理規約では、生活面でのルールだけではなく、管理費や修繕積立金といった金銭面でのルールも定めています。管理費とは共用部分の管理に使われる費用であり、修繕積立金とは建物のメンテナンスや修繕に使われる費用です。中古マンションを購入する際には、必ず管理規約の書面で管理費と修繕積立金についての記述を確認してください。
マンションの管理の質が悪いと資産価値も下がる
マンションの管理は、住人で組織するマンション管理組合が運営することになっていますが、多くは管理会社などに委託しています。管理の行き届いた会社もあれば、そうではないところもあるでしょう。また、委託費用の額によっても管理の質が変わることもあるかもしれません。つまり、マンションによって管理の状態が著しく異なるということです。
マンションを購入するときは、駅に近くて通勤や通学に便利だという立地のよさにポイントを置くのも大切です。しかし、将来的な資産価値を維持するために、管理が行き届いているマンションであることも忘れてはいけません。
たとえば、マンションを購入しようと内覧に行ったときに、玄関が汚かったり廊下の照明が切れていたりすれば、購入意欲も下がるのではないでしょうか? つまり、管理が行き届いていないマンションは魅力が半減するのです。
魅力が少ないマンションを売るためには、価格を下げるしかありません。売れるまで価格を下げないといけないのです。つまり、資産価値が下がったということになります。
管理費や修繕積立金に滞納があると後で困る
管理費は廊下や玄関など共用部分を清掃するなど日常のメンテナンス費用のことで、修繕積立金は建物が劣化したり破損したりした際に補修するために使うお金です。管理費や修繕積立金に滞納が多ければ、日常の管理や定期的な修繕に確実に支障が出ます。清掃ができず、定期的なペンキの塗り替えなどができないと、マンションは汚れ、手すりはさびてしまいます。
このため、管理費や修繕積立金を滞納している住人が多いマンションは注意が必要なのです。購入時に不動産会社から重要事項として修繕積立金の総額は説明されますが、その前に、ご自身で管理会社にも管理費や修繕積立金の滞納額などを確認した方が賢明です。
滞納戸数が1割程度あれば多いといえるでしょう。マンションを資産として考えるのであれば、避けたほうがよいかもしれません。
修繕積立金は長期修繕計画に対応しているか?
修繕は計画的に実施する必要があります。そこで、長期修繕計画により管理していくのです。具体的には、「○○年には○○円が積み立てられている」という予定を立てた計画になります。適正な額が積み立てられているかをチェックしてください。
長期修繕計画の積立額を下回っていれば、適正な修繕ができないかもしれません。定期的に修繕されていないマンションは、当然に老朽化も進みます。資産価値としては大きく下がるでしょう。
台風や災害などで修繕の必要に迫られたときに修繕積立金が足りない場合、「修繕一時金」が徴収されることも実際にあります。マンションの住人にとっては予定外の出費となるため、納得がいかないという人も出てくるでしょう。そうしたトラブルに遭わないためにも、それらの費用の滞納が多いマンションは避けた方がいいということになるのです。
修繕計画と修繕履歴を比較する
築年数の古いマンションでそこそこきれいな状態ならば、定期的な修繕は実施されてきたといえるでしょう。ただ、修繕が計画通りに行われてきたかもチェックしてください。修繕が場当たり的だと、建物の不具合などの可能性が高まり資産価値が下がっていくからです。
また、計画には、物価の変動に応じた適正な見直しも必要です。すでに実態とかけ離れてしまっているのに、新築のときに建てた計画がいつまでも使用されているケースがありますが、それでは計画管理が行き届いているとはいえません。修繕計画の中には、徐々に金額が上昇していくようにしたものや、一定期間後に修繕一時金を徴収することが、あらかじめ決まっているものもあります。積立金額の変動や一時金の徴収が家計に与える影響は少なくありません。事前に確認しておく必要があるでしょう。
管理組合の議事録を取り寄せて閲覧を
マンションの購入希望者であれば、原則として管理規約や管理組合の議事録は閲覧できます。
議事録を確認することで、議事の運営がスムーズに行われているかどうかを読み解くことができます。ひとつの案件を決定するまでに思いのほか時間がかかっているようなら、管理組合が機能していないかもしれません。管理組合の決定が遅いということは、マンションにとってよくないことといえます。なぜなら、違法建築で傾いたことが判明したり、災害で緊急的に修繕が必要になったりするなど、重大な局面で動きがもたもたしていると、住人にとって不利益になることがあるからです。
調査報告書は仲介業者に取り寄せてもらう
調査報告書とは、滞納者の有無や管理組合の借入金の有無など金銭的な内容のほか、修繕履歴や管理形態などについて記した書面です。マンション管理組合の委託を受けた管理会社が作成します。
調査報告書は仲介業者に頼めば入手できます。手数料は必要ですが、購入するために必要なデータを確認できるので必要な出費と考えてください。手数料の額は、5,000~1万円くらいです。
記載されている修繕積立金の額が、相場と比べて大きく下回っていれば、お得と考える方も多いかもしれません。しかし、安さがメリットであるとは限りません。なぜなら、相場を下回るぶん、将来の大規模修繕のときに修繕一時金として、多額の支払いをしなければならないかもしれないからです。
最後に
マンションを購入する時には、なんとか掘り出し物を見つけたいと考えるでしょう。しかし、実際のところ掘り出し物に出合うことは、なかなかありません。なぜなら、優良な物件は、売主が仲介を相談した時点で、不動産会社が購入してしまうことが多いからです。
掘り出し物を探すことに手間をかけるよりも、管理費や修繕積立金を確認することのほうが賢明でしょう。逆に、今は一般的な物件でも適正な管理が継続されれば、将来的に掘り出し物、すなわち「いつまでも使える資産価値を維持したマンション」に化ける可能性が高いのです。
今中克己
約20年にわたりビジネススクールで宅建士・社労士など資格試験の講師を務める。宅建士以外の所有資格は、社労士、測量士補、マンション管理業務主任者等。