不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 最終更新日:2018年8月10日
  • 公開日:2017年8月11日

マンション売却で不動産会社と結ぶ契約について

マンション売却を不動産会社に依頼する時には、ある契約を結ばねばなりません。それが「媒介契約」です。媒介契約は、マンション売却の成否を左右する大切なものですので、基本から詳しく解説いたします。

 
不動産会社がマンション売却を依頼され、引き受けた場合、不動産会社は依頼者と媒介契約を締結しなくてはなりません。法律でそう定められているからです。
 
でも依頼をする方は、「え? 契約って急に言われても、何か不利なことにならないのかしら?」と不安になってしまいますよね。
 
そこで今回は、マンションを売却する際に不動産会社と結ぶ「媒介契約」について詳しく説明したいと思います。
 

マンション売却
(写真はイメージです)
 

媒介契約とは

 
不動産会社は、売却の依頼を受けた場合に、どういった形で取引するかを下記のうちから明示しなければならないと、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)で定められています。
 
(1)当事者 (2)代理 (3)媒介
これを、取引態様の明示義務といいます。
 
この中で(3)媒介は、「依頼者の意向に基づき、買主を探し、条件交渉を手助けし、売買契約を成立させること」をいいます。
 
不動産会社は、依頼者と媒介契約を締結することに合意した場合、一定の事項を記載した書面を作成して、記名押印の上、依頼者に交付しなければならないと定められています。
 
媒介契約書面の記載事項は、以下の通り宅建業法で定められています。国土交通省が作成した「標準媒介契約約款」を活用することが推奨されています。
 
(1)宅地建物を特定するために必要な表示
(2)売買すべき価格または評価額
(3)媒介契約のかたち(一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の区別)
(4)報酬に関する事項
(5)媒介契約の有効期間および解除に関する事項
(6)媒介契約違反の場合の措置
(7)指定流通機構への登録に関する事項
(8)標準媒介契約約款に基づくか否か
 

売買すべき価格には、根拠の明示義務

 
なお上記(2)の売買価格または評価額について、不動産会社が意見を述べる場合には、「必ず根拠を示さなければならない」と法律で定められています。
 
また、国土交通省が発表している宅建業法の「解釈・運用の考え方」では、根拠については、不動産流通推進センターが作成した「価格査定マニュアル」など合理的な説明がつくものであることとする、とされています。これを「合理的な根拠の明示義務」といいます。
 
また「解釈・運用の考え方」では、根拠の明示は法律上の義務であり、そのために行った価額の査定などに要した費用は依頼者に請求できないものである、としています。
 
こうしたことから、価格の査定については「合理的な根拠」があり、無料で受けることができます。
 

3種類の媒介契約

 
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、どれを選ぶかは、依頼者に委ねられています。
いずれも国土交通省作成の「標準媒介契約約款」があり、使用を推奨されています。
 
この3種類は、「他の業者とも媒介契約が結べるか」「自己発見取引(※1)が可能か」「契約期間の規制があるか」「業務処理状況の報告義務があるか」「指定流通機構(※2)への登録義務があるか」が、それぞれ異なります。
 
※1:売主自ら業者の媒介無しで買主を見つけて契約すること
※2:宅地建物取引業者専用の不動産物件登録・検索システム(通称「レインズ」)
 

(1)一般媒介契約

 
他業者への依頼 可能

自己発見取引 可能
有効期間 制限なし
業務処理状況 報告義務なし
レインズ 登録義務なし
 

(2)専任媒介契約

 
他業者への依頼 不可
自己発見取引 可能
有効期間 3か月
業務処理状況 2週間に1回以上の報告義務
レインズ 契約後7営業日以内の登録義務あり
 

(3)専属専任媒介契約

 
他業者への依頼 不可
自己発見取引 不可
有効期間 3か月
業務処理状況 1週間に1回以上の報告義務
レインズ 契約後5営業日以内の登録義務あり
 
一般媒介契約では、依頼者は他の不動産会社に重複して依頼が可能であるため、不動産会社にとっては義務が少ない契約となります。基本的にはどのような販売活動をするかも自由ということです。
 
一方で、専属専任媒介契約では、依頼者は契約先の不動産会社が紹介した相手としか売買契約が結べない、まさしく専属的な契約となります。そのため不動産会社は成約へ向けて積極的に努力します。具体的に行う業務も明示し、進捗状況の報告回数も多く定められています。
 
物件の情報を広めることを担保するために、レインズへの登録義務が課せられています。また専属期間が長くなるのは依頼者に不利な状況になりかねないため、3か月と期限が設定されており、依頼者からの更新の依頼がない限り、延長はされません。
 
専任媒介契約は、専属専任契約よりも規制が緩くなって、自己発見取引が認められている契約です。
 

状況に応じた契約を結ぼう

 
国土交通省は不動産会社に対して、依頼者に3つの媒介契約の相違点を十分に説明し、意思を確認して媒介契約を締結するよう求めています。
 
しかし、まだまだこれが徹底されているとはいえません。一般媒介契約の存在を教えることなく専属専任契約を結び、紹介の権利を独占しようとする会社もあるのです。
 
もっとひどい会社は、「専属専任契約を結ぶ」と口先では言いながら、実際は買主が見つかってから媒介契約を結ぶというところもあります。
 
不動産会社は、自社が見つけてきた買主と売買契約を成立させれば、売主だけではなく買主からも仲介手数料を得ることができます(両手仲介)。買主が見つかるまでは情報を他社に公開したくないため、あえて媒介契約を結ばないままにしておくのです。
 
マンション売却を成功させるためには、きちんと媒介契約を結び、不動産会社が売却のために動いているかを把握することが重要です。
 
では、3類型のどの媒介契約を選べば良いのでしょうか?
 
「都心部で、駅からも徒歩圏にある物件で、価格も相場レベルで構わない」といったような好条件で売り出す場合は、一般媒介契約で、数社と並行して売り出してはいかがでしょう?
 
複数の業者に依頼していることをはっきり伝えれば、競争原理が働いて、より早く、より高く売却が実現すると期待できます。
 
一方で、「郊外型で、駅からバス圏、築年も古い物件」などは、普通に売り出しても売れにくいかもしれません。こうした物件での一般媒介は、不動産会社にとっては、わざわざ自社で手間をかけても費用対効果として合わないと判断される可能性があります。
 
ここは、不動産会社がじっくり販売戦略を立てて試行錯誤を繰り返しているかどうかをチェックできる専属専任媒介契約を選んではいかがでしょう。
 
専任媒介契約は、親族や知人の方に販売する当てが何件かある、という場合有効です。専属専任と異なり、依頼した不動産会社を通さなくても済みます。そうすれば仲介手数料がかからずに売却できます。ただ、一般の方にとって自己発見取引は現実的に難しいので、よく吟味するべきではないかと思います。
 

契約を変更するコツ

 
一般的に、媒介契約を結んで売り出しをかけてから3か月が、契約を変更する目安の期間といわれています。専属専任媒介契約や専任媒介契約の期間も、まさに3か月となっています。
 
売り出しをかけて3か月もたっていれば、潜在的な購買希望者には情報が行き渡っているはずです。それまでに売却に結び付くような情報や提案が無ければ、その業者は力が足りないと考え、替えることも検討してみるべきです。
 
契約を変更するコツはただ1つ、「売却という結果に結び付いていない」と不動産会社に端的に伝えることです。彼らは、一般媒介契約であれば、他社に依頼されることを当然覚悟しますし、専任・専属専任媒介契約であれば、期間の延長は無いと理解するでしょう。
 
こうした通告を行ってなお売却のための新規提案ができない会社は、契約を解約して構わないのではないでしょうか。
 
以上が、媒介契約の基礎知識となります。売却を成功させるためには、どういう媒介契約をどんな不動産会社と結ぶかが大きなポイントとなります。基礎知識があるかないかで、媒介契約の説明をする不動産会社への見方も変わるはずです。
 
媒介契約について、いい加減な説明をする会社に依頼をすべきではありません。販売に関しても、自社に都合の良いことしか言わない会社かもしれないでしょう。きちんとした説明をしてくれる会社が、信頼できる不動産会社です。
 
■不動産会社選び方について「マンション売却で最適な不動産会社を見つける方法」をご参照ください。
 
早坂龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング 代表取締役。1964年生まれ。1987年北海道大学法学部卒業。石油元売り会社勤務を経て、2015年から北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。
 

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