都内のマンションを売却したい、あるいは既に売却に出しているのになかなか売却が決まらずに困っている。そんな方々に、マンション売却のコツをお教えしましょう。

(写真はイメージです)
マンション売却の2つのコツとは?
マンション売却のコツは、
- 価格設定が適正であること
- 買主に、物件の「魅力を伝える」ことができること
の2点に集約されます。
これはマンション売却に限らず、全ての物販において共通するコツかもしれませんね。「何を当たり前のことを…」とがっかりしないでください。これから具体的に、マンション販売の場合について考えていきましょう。
適正な売り出し価格設定のために
買主によって、マンション購入の目的や予算は様々です。そして買主が「この物件がこの価格であれば、目的と予算に見合う」と判断した時に、売買が成立します。したがって売主においては、物件の長所や短所、特性を理解した上での価格設定が極めて重要になります。
まずは不動産会社の査定価格から
売主にとって、せっかくの財産を「できるだけ高く売りたい」と思うのは当たり前のことです。何らかの事情で、必要な金額ありきの売却である方もいるでしょう。
しかし、「売りたい価格=売却できる価格」とは限りません。不動産の売買は固定された価格で決まるものではなく、売りたい価格と買いたい価格の妥協点を探り合って絶えず変化していくものです。
そのため、一般的にマンションの売り出し価格を決定する場合には、不動産会社に「3か月以内で売れるであろう価格」を算出してもらい、参考にします。これを不動産会社の「査定」といいます。
信頼できる査定価格であれば、それに5~10%の値幅を乗せて売り出し価格を設定すれば良いでしょう。その値幅は、買主との条件交渉時の「ネゴしろ」となります。
しかし、きちんと査定をしてもらったつもりでも、相場より高い売り出し価格となってしまう場合もあります。それにはいくつかの理由が考えられます。
(a)ランニングコストが高い
マンションを所有するには、毎月、管理費や修繕積立金が必要です。クルマがあれば駐車場料金も必要になります。こうしたランニングコストが周辺物件よりも高い物件は、相対的に魅力がない物件になってしまいます。買主は、第一に販売価格そのものを見ますが、最終決断においてはランニングコストも重視するからです。
(b)査定価格そのものが高い
査定価格はあくまで不動産会社が「売れるであろう」と考える価格であって、その不動産会社が買い取る価格あるいは売却を保証する価格ではありません。中には、その物件の媒介契約を締結したいがために、相場より高い査定価格を提示して売主の歓心を買う不動産業者もいます。査定の根拠を合理的に示すことは不動産会社の義務として法律で定められていますので、しっかりと確認しましょう。
(c)市場環境の変化
査定の時点では正しい相場観で価格が設定されていても、売り出し期間中に市場環境が変化した結果、相場より高額となるケースもあります。(後述)
市場環境の変化にも注意を
同じ売り出し価格でも、その適正度は、マーケットの情勢によって変化します。
「アベノミクス」の低金利政策と2015年の相続税制改正への対策から、活況を示してきた近年の不動産市場ですが、2017年には調整局面を迎えるのではないか、という論調が増えてきています。米国長期金利の上昇に伴う金利の上昇や、タワーマンションの相続税評価の改正、老齢人口の上昇による需要減、価格の上昇などがその原因と言われています。
東日本レインズが発表した2017年2月の「月例マーケットウオッチ」では、同月の首都圏の中古マンションの成約件数が6か月ぶりに前年を下回ったとしています。在庫件数も21か月連続で増加。細かく見ると、東京都と神奈川県の成約件数は増加しているので、都心部と郊外の2極分化が進んでいるとも判断できます。
(参照 http://www.reins.or.jp/trend/mw/index.html)
実際に調整局面に入っているのだとすると、従来は適正とされていた販売価格でも成約されにくくなってきます。こうしたマクロの市場環境についても注意しておくべきでしょう。
ミクロの市場環境の変化としては、周辺に同様の競合物件が何件も販売されたというケースが考えられます。競合物件が価格を下げてくれば、それまでの相場価格も局所的に下げ圧力が働きます。今までの価格では販売することが難しくなることもあるでしょう。
物件の魅力を伝えるために
売却したいマンションにいくら魅力があっても、それが買主に伝わらなければ意味がありません。
物件の魅力を買主に伝えるためには、
- 物件の訴求ポイントを売主が理解する
- 物件情報の内容、表現、掲載先や広告方法を考慮し、確実に買主に情報を届ける
- 内覧を成功させる
といったことが必要になります。
カタログ的な物件情報の充実化は、物件に興味を持ってくれる人を増やすことにつながります。しかし実際に購入を決心させるためには、内覧に来てくれた買主にいかに魅力を伝えるか、が特に重要になってきます。なぜなら、内覧に来る買主は、スペック的な物件情報については合格点レベルと想定しているからです。
内覧で物件の印象を良くしておくことは、確実に物件の購入につながります。逆に「内覧時には良い印象が無いが、思い返して購入した」というケースは経験上ほとんどありません。
内覧を成功させるには
いくつかのチェックポイントを挙げてみます。
- 第一印象は玄関から
- トイレ・お風呂・キッチンなどの水回りは特に厳しい目で
- 整理整頓は当たり前
- 花は便利、アクセントにも臭い消しにも
- 空室の場合は、寂れた感がないように特に清潔に
玄関やエントランスの印象は、第一印象を大きく左右します。靴などが散乱していては印象が悪いばかりか、シュークローゼットなどの収納スペースが小さいのではないかと機能面まで疑われてしまいます。これは各部屋にも同じことが言えます。内覧の前日には整理整頓・念入りな清掃は必須です。
特に水回りは、実際に毎日使うものですから、チェックの眼も厳しくなります。「このくらいでいいだろう」は買主には通用しません。ピカピカに磨き上げるつもりで。
意外に売主が気づかず、買主の敬遠要因となるのは部屋の「匂い」です。個々の家庭独特の匂いは、売主本人には分かりませんし、こればっかりは不動産会社の担当者も露骨に「臭います」とも言えません。自らで芳香剤の利用や、玄関に花を飾るなどの工夫をしてはいかがでしょう。
また、空室は思った以上に寂しい感じがしますし、買主もなかなか購入後のイメージを作りにくいものです。せめてハウスクリーニングを頼むくらい積極的にきれいにするべきでしょう。
都内ならでは!ホームステージングはいかがでしょう?
都内のマンションの売却ということでしたら、「ホームステージング」の利用も、物件の魅力を伝える方法としては有効でしょう。
ホームステージングとは、事前のコンサルティングにより購入層を設定し、家具やインテリアをコーディネートし、モデルルームのように内覧者に物件の魅力を体感させる手法です。欧米では一般化していますが、日本では2010年代になってから導入されてきています。
専門の業者が首都圏や関西地区にしかないこと、費用がフルサービスで売買価格の1%程度かかることなどから、まだまだ普及には時間がかかりますが、売買価格の高い都内マンションであれば、利用を検討する価値があるかもしれません。
マンション売却の最大のコツは?!
冒頭で、マンション売却の2つのコツは「適正な価格設定」「物件の魅力を伝えること」と申し上げました。前者には不動産会社の信頼ある査定が不可欠であり、後者には物件の訴求ポイントの把握と、効果的な広告・販売方法を検討しなくてはなりません。
そう、いずれにおいても不動産会社の能力を活用しないと難しいのです。信頼できる不動産会社を選択し、売却のための方法や戦略を検討し相談していくことが、マンション売却の最大のコツ、といえるでしょう。
早坂龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング 代表取締役。1964年生まれ。1987年北海道大学法学部卒業。石油元売り会社勤務を経て、2015年から北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。