「建築条件付き土地」という物件を検討している方も多いかもしれません。最終的に手に入れるのが新築の一戸建てなのは建売住宅や注文住宅と変わりないのですが、好みの建築家やハウスメーカーに家を建ててもらいたいという希望のある方は要注意です。
後悔しないためのチェックポイントや建築条件付き土地のメリット・デメリットを詳しく解説します。
(写真はイメージです)
建築条件付き土地とはなにか
「建築条件付き土地」とは、文字どおり「『建築する条件』が売買契約に付帯する土地」のことです。「この土地に家を建てるならば売主の不動産業者が指定する建築会社を使うこと」が土地を購入する条件となっています。
さらに売買契約後、一定期間内に指定の建築会社と建物建築の請負契約を結ぶことも売買契約の条件です。期限までに請負契約が結ばれない場合、土地売買契約は解約(もしくは不成立)となります。
建築条件付き土地を購入する際は、「建築条件」という縛りがあることのメリット、デメリットを把握しておくことが重要です。以下、主なメリットとデメリットを解説します。
建築条件付き土地を購入するメリット2つ
建築条件付き土地を購入することのメリットとしては、以下の2つを挙げることができます。
メリット1:近隣の建築条件のない同条件の土地と比べて、割安な場合が多いこと
メリット2:建売住宅に比べると「間取り」や「仕様」に自由度が高いこと
それぞれ詳しく解説します。
メリット1.土地を割安で取得できることがある
建築条件付き土地は、通常の土地取引よりも割安に買えることがほとんどです。
通常の土地取引では、売主は一般の個人法人であり、売主と建築会社は関係ありません。しかし「建築条件付き土地」の場合、ほとんどの売主は建築会社の関連不動産業者です。「建築条件付き土地」にする理由は、建築のお仕事が欲しいから。つまり土地の価格を割安にして建築の仕事をセット販売にしたいということなのです。
要するに「安く土地を販売するので当社(もしくは系列会社)で家を建ててね!」ということなのですが、これが建築条件付き土地が通常の土地取引よりも安く購入できる理由です。
メリット2.建売住宅よりも間取りや仕様に自由度が高い
「建築会社が決まっているって、建売住宅とどう違うの? 実際、建売でも建築前に契約する場合もあるよね」と考える方もいるでしょう。
「建売住宅」への対比として、「建築条件付き土地」は「売建住宅」と呼ばれることがあります。つまり、建売住宅が〝家を建ててから売る〟住宅なのに対し、売建住宅は〝土地を売ってから建てる〟住宅なのです。
違いとしては、すでに建物の仕様が定まっているか、否か。建売住宅は、販売時には建築確認申請が終わっているため、基本的に購入前に仕様変更はできません。
一方、建築条件付き土地の場合は、土地の売買契約後に建築プランを決め、建築確認申請をおこなうため、標準プランに変更を加えることが可能となり、建売住宅に比べると、間取りや仕様の自由度は高いといえます。ただ、自由設計の注文住宅と違い自由度には制限があるため、購入前にどれくらい希望がかなうかを指定建築会社に確認する必要があります。
建築条件付き土地を購入するデメリット2つ
建築条件付き土地にはデメリットもあります。主なものに以下の2つを挙げることができます。
デメリット1:建築会社は売主指定となるため、ハウスメーカーは選べない
デメリット2:家の仕様(設計)を決めるまでの時間が意外と少ない
2つのデメリットについてそれぞれ解説します。
デメリット1.ハウスメーカーを選べない
建築条件付き土地は、先述のように売主指定の建築会社と建築の請負契約を結ぶことが条件です。このため、他の建築会社で家を建てることはできません。たまに「建築条件外し可能」という物件もありますが、こちらは価格を幾分か上乗せすることで条件を外してもよい、というもので、メリットである「安さ」が失われます。
また、他の建築会社で検討できないということは、相見積もりができないということにもなり、建築費用の妥当性を計ることが難しくなるため、注意が必要といえます。
デメリット2.家の仕様を決めるまでの時間が少ない
建築条件付き土地の条件に、「一定期間内に建築の請負契約を結ぶ」というものがあり、その期間は一般に「3カ月以内」とされます。
3カ月あれば結構長いのでは?と思われる方もいるかもしれません。しかし、家族がいればどこの部屋をだれが使うのか、トイレをどこにいくつつけるか、どんなキッチンにするか、リビングの広さや向きなど、いろいろ打ち合わせをしていくと、実際3カ月(約12週)では本当にギリギリまで決めきれない方もいます。
毎週打ち合わせをしていくと結構、疲れますし、別の用事があれば家の打ち合わせに割けない週末もあったりして、3カ月はあっという間に過ぎていきます。家を建てるのって、大変です。
建築条件付き土地の購入で後悔した理由3つ
これまで建築条件付き土地のメリット、デメリットについて解説してきました。こういったことを理解しないままに購入し、失敗したり後悔したりする方は後を絶ちません。次は、実際に買ったあと後悔してしまったという例について解説していきます。
後悔した理由として、主に以下の3つのポイントがあります。
後悔ポイント1:建築条件付き土地のデメリットをよく把握していなかった
後悔ポイント2:不動産会社の営業トークに惑わされた
後悔ポイント3:希望を詰め込みすぎて予算がオーバーしてしまった
後悔ポイント1.建築条件付き土地のデメリットをよく把握していなかった
前に解説した建築条件付き土地のデメリットをよく把握しておらず、以下のような後悔をした、という声をよく耳にします。
●売主指定建築会社の建築プランの融通が利かず、希望の家が建てられなかった
●土地購入契約後、解約期限までに十分な打ち合わせができずに間取りや仕様に不満が残った
建築条件付き土地に建てられる家は、建売に比べると自由度は上がりますが、完全な注文住宅に比べると仕様の自由度は低くなります。
後悔ポイント2.不動産会社の営業トークに惑わされた
不動産会社は、契約してもらうことが最終目的なので、いろいろな営業トークで購入へと導いてきます。それがすべてお客様のためになるものばかりであればよいのですが、伝えるべきことを伝えなかったり、紛らわしい言い回しで勘違いを誘ったりと、誠実でない営業トークをする不動産会社があるのも事実です。
こうした営業トークに惑わされて不本意な契約をしてしまった場合、不幸な結末となってしまいます。不誠実な営業トークの主なものとして以下のようなものがあります。
●契約を急かされた
●「白紙解約が可能」と言われたのに応じてもらえなかった
●契約後に仕様の変更ができないと言われた
それぞれ詳しく解説します。
契約を急かされた
不動産会社の営業マンがよく口にする「早く契約しないと、なくなってしまいますよ」という言葉は、ある面で真実ではあります。好条件の物件は人気があるため、早く契約しないとすぐに売れてしまうのは事実だからです。
お客様に気に入った物件を手に入れてほしいと願う良心的な営業マンも多いため、こうした言葉のすべてを疑う必要はありません。だからといって、あわてて何も確認せず契約することは危険です。
こういった場合には、契約前の重要事項説明を受ける際、「容認事項」「特約条項」の内容に、購入者に不利な点がないかをよく確認することが大事です。営業マンの「これは一般的にこういうものです」「これは念のため書いてあるだけです」という言葉には注意しなければなりません!
不明点を流さずに、納得できるまで説明を受け、納得できない場合にはその条項を修正、削除してもらうように伝え、最悪の場合は契約をやめることも検討するべきです。
「白紙解約が可能」と言われたのに応じてもらえなかった
建築条件付き土地の売買契約には、一定期間(3カ月)内に売主もしくは売主指定建築会社との建築請負契約を締結できなかった場合に白紙解約条項をつけることになっています。これは、独占禁止法の「抱き合わせ販売」にあたる可能性があるという懸念に対して、不動産業の業界団体である不動産公正取引協議会が定めた業界ルールです。
単純に、こういうルールだ、ということが頭にあると逆に契約書のチェックが甘くなり、付帯条項などを見落としがちです。「容認事項」「特約条項」に白紙解約にするための条件がつけられていることに気づかず、設計の打ち合わせが不調で解約したいとなった際に白紙解約は認められず、手付解約になったり、違約金を請求されたりということもよくあります。
また、「土地売買契約後、すぐに白紙解約したい」という要望も、売主側に全く落ち度がない場合には、買主側の契約不履行とみなされる場合もあります。
契約後に仕様の変更ができないと言われた
建築条件付き土地の住宅の仕様について、売主側で「標準プラン」というものを用意しているのが一般的です。この標準プランは、本来であればあくまでも「参考」といったものですが、そのプランからの変更は、決まった選択肢の中から選ぶレベルであることが非常に多いのが実態です。
「標準プラン」については、契約前の検討段階で確認することができます。まずはそこからどのように変更をしたいかを契約前に伝えて、可能かどうかを確認して記録に残すことが重要です。契約後にいろいろ確認すればよいという考えはトラブルの元です。
後悔ポイント3.希望を詰め込みすぎて予算がオーバーしてしまった
家を建てる以上、できるだけ自分や家族の希望を盛り込みたい、というのは当然のことです。しかし、良いものを使えばそれだけお金がかかるというのも自明です。また、標準プランから仕様変更をする場合、それが可能であったとしても実現には高額な費用が必要となり、予算オーバーとなってしまうことがあります。
まずは予算をしっかりと決め、〈絶対に譲れない条件〉〈優先したい条件〉〈可能であればやりたいこと〉という切り分けをしたうえで設計のプランを進めていくことが重要です。
建築条件付き土地を購入しても後悔しないためのポイント5選
それでは、建築条件付き土地の購入をする際に、どんなことに注意すれば後悔しないですむのでしょうか。以下、5つのポイントに絞って解説します。
●契約前にハウスメーカーが理想の家を建てられるか調べる
●契約前に間取りや仕様の希望を実現できるか尋ねる
●事前に設計プランや間取りを固めてから契約する
●標準設備のレベルとオプションの費用を確認する
●土地が本当に気に入ったか自問自答する
契約前にハウスメーカーが理想の家を建てられるか調べる
建築条件付き土地の売主(建築会社)名がわかったら、Googleなどで検索してみましょう。ウェブサイトを確認すると、どのような家を建てているかがわかります。
建築会社なのに建築例がないところは、会社の実態は推して知るべしですね。しかし、そういった建築会社が建築条件付き土地の売主には多いのも事実です。一般論として、「理想の家」を追い求めている方は、建築条件付き土地には手を出さず、注文住宅にしたほうが無難だといえます。
契約前に間取りや仕様の希望を実現できるか尋ねる
契約前に必ず建築会社から仕様の説明がありますので、その際に間取りや仕様の希望を伝えて実現可能か確認しましょう。建築条件付き土地の建築会社はあまり融通が利かないことが多いですが、場合によっては追加費用のかからない範囲でやれることもあります。聞くだけタダということで、必ず聞いてみましょう。
事前に設計プランや間取りを固めてから契約する
契約前に設計プランや間取りをある程度固めておく、というのは理想的です。しかし、立地などが魅力的な土地の場合、他に買われてしまうリスクが先にたつので、どうしても手に入れたい場合は速やかに契約しなくてはならず、先に仕様を詰めることはかなり困難です。
それでも、申込みから契約までの短い期間で確認できることはたくさんあります。気になることや希望はできるだけ契約前に伝えて確認する、というのが大事です。需要が集中しにくい郊外の分譲地であれば、こういった手法は有効かと思われます。
標準設備のレベルとオプションの費用を確認する
契約前に必ず建物の仕様についての説明があり、そのときに住設機器の種類などは確認でき、併せてオプション設備などがあれば確認することができます。そもそもオプションが用意されていないような建築会社というのもあります。建物の設備にこだわる方は、そうした会社とは契約しないほうがいいかもしれません。
あまりにも自由度が低すぎる場合には、公正取引委員会に「独禁法違反の抱き合わせ販売じゃないの?」とチクってやるのもいいかもしれません。
土地が本当に気に入ったか自問自答する
どうしてもそこに住みたい、という土地であれば、少々の家の不満は妥協できます。しかし、家の理想のほうが強い方には(何度も申し上げますが)建築条件付き土地は向きません。
どちらかといえば、エリアを限定して探していてたまたま見つかった安めの土地が建築条件付き土地だった、という流れのほうが多いはずです。「どうしてもこの土地がいい」「長く探してきてこの土地しか見つからない」というような方にこそ、建築条件付き土地をおすすめします。
建築条件付き土地を購入して後悔しがちな人と後悔しにくい人
建築条件付き土地を購入して、後悔しがちな人、しにくい人の特徴を並べてみました。
後悔しがちな人
・住まいに対して高い理想やこだわりを持っている人
・土地へのこだわりがあまりない人
・自分で下調べをすることが苦手な人
・後でなんとかなると根拠のない楽天的思想を持つ人
・自分で調べず、不動産会社の営業マンの言葉を鵜呑みにしがちな人
後悔しにくい人
・土地の立地にこだわりがあり、場所を限定して探している人
・家に対するこだわりがなく、標準的な家であればいい、と考える人
・間取りや仕様について希望を建築会社に伝えられて、場合によっては妥協ができる人
・建築会社に住宅についてできることとできないことを確認できる人
まとめ
建築条件付き土地の特徴や、メリットとデメリット、注文住宅や建売住宅との違いについて確認してきました。契約から着工までの3カ月で、建築プランを考え決定できなければ、せっかくの住まいの計画が白紙になってしまうおそれもあります。
後悔しないためにもデメリットをしっかり把握し、メリットがご自身にあっているかどうかしっかりと確認したうえで購入プランを検討するようにしましょう。