全国の土地の価格を調べた「都道府県地価調査」が2021年9月21日に公表されました。都心部と周辺地域の「東京圏」の地価の平均は、住宅地が2年ぶりに上昇に転じる一方、商業地は上昇率が0.1%に縮まりました。

 

このニュースは同日、NHKで放送された『首都圏ネットワーク』でも報じられました。この日の東京の新型コロナウイルス新規感染者数は253人とひと頃よりも激減しました。コロナがこのまま収束に向かうのか、また大きな波が来るかは予断を許さないところですが、番組ではコロナ禍による生活様式やビジネスのあり方の変化が、地価に大きな影響を与えていたことが強調されていました。

 

番組で伝えられた内容を中心に、東京や首都圏の地価の変化や今後の見通しについて解説します。

 

(不動産のリアル編集部)

 

コロナによる打撃

(写真はイメージです)

 

東京圏の住宅地は2年ぶりプラスに、商業地は伸びが鈍化

 

「都道府県地価調査」は、毎年7月1日時点の全国の土地の価格を都道府県が調べたもので、国土交通省がこの時期に公表しています。路線価や公示地価などに並んで注目される地価のひとつの指標です。

 

今回の発表では、東京を中心に神奈川、埼玉、千葉、茨城の4県の一部を含む「東京圏」で、住宅地の平均がプラス0.1%となりました。2020年発表分はマイナス0.2%で、プラスに転じたのは2年ぶりということです。

 

番組では「新型コロナの感染が拡大する中、在宅勤務や外出の自粛などによって家の中で過ごす時間が増え、自宅を購入するニーズが高まっているため」と解説していました。

 

一方、店舗やオフィス向けなどの商業地の平均も住宅地と同じプラス0.1%。ただし、継続している上昇傾向の中、その幅は去年のプラス1.0%から10分の1に縮小しています。アベノミクスによってプラスに転じた2013年以降で最も低い上昇率となりました。

 

都心に限って見ると、東京23区はマイナス0.3%と9年ぶりに下落していました。これについて番組では「緊急事態宣言が繰り返されて、繁華街の人出が減少しているほか、オフィスを縮小する企業も相次いだ」としています。

 

以上まとめると、コロナ禍によって住宅需要が増したために住宅地の地価は上昇し、オフィス需要が下がった都心の地価は伸びなかったという結果になったということのようです。

 

在宅勤務&新築高騰で空き家購入&リフォームの増加

 

首都圏の新築マンションの価格上昇が続き、2021年8月には7,452万円に達しました(前年同月比24%増、不動産研究所調べ)。昨今、都心の新築マンションは庶民にとって高嶺の花となりつつあります。

 

こうした現状から、番組では新築マンションではなく築古の空き家を購入し、全面リフォームをした横浜市の家族が番組で紹介されていました。

 

世帯主の男性はテレワークによって、働き方が在宅勤務に移行して、執務スペースが必要になったとのことです。男性によると、新築物件も検討したものの、3人の子育てにかかる費用も含めると、新築が高くなりすぎた現状では、負担が重くなりすぎるということでした。

 

そこで、空き家をリフォームすることを選択。新築マンションや注文住宅よりも購入費が大幅に安くすむだけでなく、世帯主にとっては在宅勤務がしやすい環境を得られ、家族にとってはより広くて過ごしやすい空間作りをすることができたようです。

 

こうした傾向はコロナ禍が始まった2020年夏ごろにはすでに見られましたが、2021年に入っても続いているようです。NHKの首都圏NEWS WEBに掲載されていた記事「地価調査 東京圏 住宅地で上昇に転じる 商業地は上昇率縮小」によると、ある大手不動産会社では2021年に入って、中古住宅を取得した子育て世帯からのリフォームの注文が大幅に増えていて、首都圏1都3県では、2021年8月時点で前年同期比の5割増になるといいます。

 

「コロナ禍で在宅勤務用のスペースが欲しいというお客様が増えたが、新築住宅の価格高騰していることで、リーズナブルなリフォームが受け入れられているのではないか」との担当者の声が紹介されていました。

 

今は新築マンションを購入するほうが、中古をリフォームするより高くつきますが、住宅地価格上昇の傾向が今後も続くなら、そのメリットが薄れることになりますから、検討中の方は早めの決断がいいのかもしれません。

 

コロナ収束の見通しが不透明なら脱オフィスは続くか

 

一方、地価の上昇が鈍化した商業地。ひと頃よりもテナントを求める企業が減っているということです。

 

番組で取り上げられていたのは9月に本社を移転した都内の人材サービス会社。以前はビル内に役400㎡の広さでしたが、引っ越した先は広さ6畳のシェアオフィスでした。毎日100人余りが働いていましたが、ほぼ全員がリモートワークとなり、アフターコロナでもこの働き方は元には戻らないと判断したということです。

 

番組では、不動産調査会社「東京カンテイ」の研究員の「これまで割と需要が底堅かったオフィスに関しても、『そんなに広い面積が必要なのか』と、今まさに検討されている最中だ。先行きの不透明感がなくならないかぎり、需要の弱い状況が続く可能性がある」というコメントが紹介されていました。

 

このコメントは裏を返せば「コロナ収束が見えてきたら、オフィス需要は回復するかもしれない」ということになります。先述の人材サービス会社は「アフターコロナでもリモートという働き方は変わらない」と判断したのですが、これはどちらが正しいのか、現時点では不明です。

 

コロナ収束と新総理によって地価は逆回転するのか

 

さて、今後の地価はどうなっていくのでしょうか。地価は住宅価格にかかわるだけに動向が気になります。

 

その要素のひとつが言うまでもなくコロナ禍の行方です。ここ最近の新規感染者数の減少は、やはりワクチン接種が進んだから、と見るのが自然でしょう。新たな変異株が次々と出現しているさなかですから、まだまだ安心はできませんが、収束には近づいているといえます。コロナ収束で働き方や世の中の雰囲気は再び元に戻り、地価も元に戻るのでしょうか。

 

一方、地価を決める別の要素に景気動向と政府の経済政策があります。折しも、事実上の次期内閣総理大臣を決める自民党総裁選挙(9月29日投開票)の真っ最中です。総裁選を巡る候補者同士の討論を聞いていると「アベノミクスをもう一度」と景気浮揚に向けた経済政策にアクセルを吹かしそうな候補もいれば、増税路線で景気を冷やしそうな候補もいます。総裁選挙は白熱していて、現時点では「誰で決まり」とは言えない情勢になっています。

 

地価の動向にはもちろん世界経済の動向も無視できませんが、当面、コロナと新総理の動向が大きな影響を与えることはほぼ間違いないでしょう。コロナ禍によって上昇した住宅地の地価は、来年にかけて逆回転するのでしょうか。不動産のリアル編集部ではじっくり見守っていこうと思います。