不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 最終更新日:2018年8月13日
  • 公開日:2016年9月28日

なぜ不動産業界で「囲い込み」が続くのか ーグローバル化に取り残され、衰退の道をたどるのか

中古住宅流通を活性化するために、建物状況調査(インスペクション)の活用を促すことなどを目的とした宅地建物取引業法(宅建業法)を改正案が5月27日に国会で成立しました。改正案の内容は、不動産業界が抱える問題を解消するものになり得るのでしょうか。不動産業界に詳しい三平弁護士と不動産流通システム 代表取締役の深谷が、不動産業界で「囲い込み」が続く構造や仲介手数料の自由化、TPPが不動産業界に与える影響について語っています。

 

業界内に根強い「囲い込み」の動き

 
深谷:昨年、レインズ(不動産流通標準情報システム)※の独占的な運用によって生じる「囲い込み」がマスコミでもテーマとして取り上げられるようになりました。特に問題なのは、業界を代表する団体である一般社団法人 不動産流通経営協会(FRK)の体質が疑われている点です。有名なビジネス誌では、会員の中でもっとも影響力のある数社の卑劣な囲い込みの手口がイラスト付きで紹介されたりもしています。
 
(編集部注:レインズ(REINS)とは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理している不動産流通の標準情報システムで、宅建業者のみが利用することができる)
 
昨年、ヤフーとソニー不動産が中古物件の流通活性化を名目に資本提携したことも不動産業界で波紋を広げています。広告媒体として巨大なポータルサイトだけに、寡占化を狙っているととらえられ、多くの業者から新たな囲い込みだとの反発を招いている状況です。
 

消費者利益のためにレインズのオープン化を

 
インターネットの普及により多くの消費者がWEB利用し、ポータルサイトや不動産会社のHPから自由に物件情報を取り出せる時代なのに、レインズだけは宅建業者専用の閉ざされたシステムとなったままです。私は、レインズを一般消費者に開放することにより、情報の非対称性はもとより不動産業界の不透明感が解消されていくと思っています。業界は何を怖がっているのでしょうね。
 
ネクストのHOME’Sをはじめ、リブセンスのイエシルやソニー不動産は、いわゆるビッグデータを活用し、誰にでも確認できる不動産価格の指標を示そうとしています。膨大な売買・賃貸履歴や需給などをもとに、適正な価格をピンポイントに提示するサービスを提供しようとしていますが、私は少し懐疑的です。というのも、売り手が100人いたら100人とも、なるべく高く売却したいのは当たり前です。一方、買い手は1円でも安く購入したいというのが世の常です。お互いに相反する目標を持っているので、相場観ならともかくピンポイントにどれだけの説得力があるのでしょうか。
 
むしろ、「売りたい」や「買いたい」という状態には段階があり、例えば「売りたい」状態には、①どうしても売りたい、②売れるなら売りたい、③いずれ売りたい、といった段階があるので、それぞれの状況に応じて価格を決めるのが効果的だと思います。ただ、これを形にするまでには相当な時間が必要でしょう。
 

次の課題は両手仲介の禁止・仲介手数料の自由化

 
深谷:かねてから私は、不動産の売主と買主は相反する立場なので、ひとつの仲介業者だけで双方の要望を組み入れた取り引きを行うことは難しいと考えています。最大の要望=価格だからです。だからこそ、売主と買主の双方に信頼のおける仲介業者がいて、それぞれの立場で主張し合い、その交渉過程に納得して契約することが適当な取り引きだと思います。またこれが仲介業者に求められる大きな役割と考えます。でも、より多くの手数料が期待できる両手仲介に対して、それを否定するような踏み込んだ話は、ほとんど出ませんね。両手仲介をしていても、赤字の業者がたくさんいるのが現状なので、仕方ないかもしれませんね。
 
それなら一層のとこ、“仲介手数料の自由化”を目指して、業界として政治に働きかけてはどうでしょうか。また、そうでもしないと目先の利益に固執して小手先に走り、いつまでたっても本質的な改善に繋がらないような気がします。
 
三平氏:たしかに、民法では双方代理は禁止されていますが、仲介は代理と違い、売り手や買い手の代理人にはならないというのも問題ですよね。また、売り手と買い手には、それぞれ不動産を購入するか手放すかという個別要因があるので、そこに相場をつけるのは易しくありません。さらに、現在は法律で定められた仲介手数料の上限が定価のように扱われ、業界全体が『暗黙の価格協定=カルテル』とも言える状態ですが、“仲介手数料の自由化”により、この上限が撤廃されれば新たな価格競争が生まれ、いい意味で業界の活性化につながるかもしれません。
 
なぜ不動産業界で「囲い込み」が続くのか ーグローバル化に取り残され、衰退の道をたどるのか_01
 
みずほ中央事務所
代表弁護士 三平聡史氏
 
深谷:「大手ブランドに契約を任せるのだから、手数料は高くても満足する」、あるいは、逆に「知名度はあまりないけど安い方が助かる」など、自由な競争が打ち出せればいいですよね。
 
三平氏:不動産流通情報が本当の意味でオープンになり、消費者がよく理解して選ぶのであれば、多様化は大変よいことだと思います。
 
深谷:「囲い込み」をする仲介業者にも、大きな利益が出ているならばまだしも、利益すら出ていないのであれば、仲介手数料の仕組み自体を見直すべきです。
 

仲介手数料自由化でサービスは多様化する

 
三平氏:“仲介手数料の自由化”に踏み切ると、消費者に対して良い価値を提供するサービスだけが残っていくことになるでしょうね。
 
深谷:「とにかく値引きが得意」、「定価で売るのが得意」、「掘り出し物件を見つけるのがうまい」など、不動産会社によって多彩なアプローチが出てくるでしょう。
 
三平氏:「ネームバリューはないが、手数料は下げる」といったアプローチもありますよね。不動産業界に限られた話ではありませんが、「大手だから良い」ということはなく、サービス内容によって中小規模の業者も適正な評価を受けることができます。「自分で調べるのでサービスは不要」、という人もいれば、「フルサービスを求めるから仲介手数料は10%でもいい」という人もいますから、多様な消費者を網羅するマーケットになのが理想的だと思います。
 
深谷:消費者レビューはいいですよね。私もよくインターネットで買い物をしますが、商品や事業者に対する書き込みは、モノを選ぶときの大きな判断材料になります。
 
三平氏:インターネットの普及によって、インターネットがあるからこそ実現できるビジネスモデルやサービスがありますが、急速に進むネット化に法律が追い付いていない現状があります。IT技術の進歩も目覚ましいので、旧態依然とした法規制は、既存の一部の顧客を守るツールにしかなりません。古い規制は取り払った方が、サービス自体が磨かれ、システムの自由化を後押しすることにつながると思います。レインズが良い例ですが、情報格差によって利益を得る既存顧客(不動産業者)は、誰にでも同じようなことができてしまうのは困るので、法律で新規参入者を規制する方向に働きかけてしまいがちなのです。
 

TPPが不動産業界に与える影響とは

 
深谷:これからTPP(Trans-Pacific Partnership/環太平洋連携協定)の一環で、外国のルールや情報が投入されるかもしれないというのに、国内でこのような前近代的な商慣習を続けていてよいのでしょうか。
 
三平氏: TPPの主旨は、参加国間の「関税撤廃」と「経済ルールの統一」です。日本独自の商慣習の改善につながることから、不動産業界でも注目され、いろいろと検討されていますね。海外からの新規参入規制や、免許制の適応などについて、意見書を提出していましたが、そのようなことを検討しても、世界から日本だけが取り残されてしまいます。TPPは国境を越えて経済活動を円滑にすることが目的であり、不動産に限らず日本のみの特別なルールを設けるようなことをすれば、訪日外国人旅行客が減ってしまうでしょう。
 
深谷:旧態依然の考え方がはびこったままだと、海外の企業が日本の不動産業界に参入し難いように、「日本の不動産は、日本での宅建免許がないと扱えない」などと言い出すかもしれませ。グローバル化が進展していく中で日本の不動産業者だけが取り残され、気が付けば「海外のフランチャイズに加盟しないと存続できない」、なんてことに、ならなければいいのですが。
 
他のものと同じく、やろうと思えば不動産も個人で売買できるものなので、仲介手数料を払わずに売ったり買ったりできます。しかしながら、高額なので失敗が許されず、個人や家族にまで大きな影響を及ぼすものなので、専門家である不動産仲介業者が売買に介在することは今後も変わらないでしょう。これは他の国でも同じだと思います。日本の不動産業界の古い商慣習を改め、消費者との間で生じている不動産情報の非対称性を解消する様に努めさえすれば、将来、海外企業が参入して来たとしても対等に渡り合える気がします。
 
三平氏:リブセンスを始め、大手業者が先駆けて提供をはじめているサービスに見習うべきところも少なくないと思います。
 
深谷:おっしゃる通りだと思います。
 
つづく
 
○弁護士法人 みずほ中央法律事務所・司法書士法人 みずほ中央事務所
代表弁護士 三平聡史氏
1973年生まれ。早稲田大学理工学部資源工学科卒業後、学習塾で講師をしながら法律学を学び、2000年(旧)司法試験合格。2007年弁護士法人 みずほ中央法律事務所・司法書士法人 みずほ中央事務所開設、現在は同事務所代表弁護士。主な著書に『Q&A事業承継に成功する法務と税務46の知識』『会社法対応 株主代表訴訟の実務相談』などがある。
 
聞き手:株式会社不動産流通システム 代表取締役 深谷十三
2008年株式会社不動産流通システムREDS設立。開業当初より運営の合理化を徹底し、仲介手数料を最大無料とする独自の料率を設定し、宅建士と宅建マイスターの資格保有者によるエージェント制での仲介サービスを展開している。
 

嬉しい口コミも
多数いただいております

  • 40代男性(マンション売却)
    こちらでマンションの売却をいたしました。
    比較した大手の不動産屋よりも専門知識が豊富に感じ、なおかつ仲介手数料も安かったのでこちらにお願いしました。
    結果、売り出し価格で1回の内覧で決まり、満足しています。
    無駄な勧誘が一切なかったのもおすすめできます。
  • 50代女性(マンション購入)
    マンション購入にてお世話になりました。
    担当の鈴木朋子さんには、本当に親切にしていただき感謝しかないです。 いつも私たちの目線になり、分かりやすいアドバイスをしてくださりました!子供への気遣いも嬉しかったです。 何より、鈴木さんの表裏のない感じが私も夫も大好きです。(笑)
    不動産購入で後悔したくない方、安心して物件探しや手続きを進めたい方にはぜひお勧めしたいです! お世話になり、本当にありがとうございました。
  • 40代男性(中古マンション購入)
    中古マンション購入にあたり、いくつかの不動産仲介会社にあたってたところ不動産流通システムさんに辿り着きました。他の仲介会社さんは営業の電話が激しく、仕事の障害になる程でうんざりしておりましたが、不動産流通システムにて担当頂いた成田さんは、押し売りする様なことは一切無く安心して物件を探せました。

    女性ならではの細かい気配りと単刀直入に物件の懸念点をプロの目からアドバイス頂き、納得のいく物件選びができました。会社名が大手の不動産仲介会社ほど知れ渡ってはおりませんが、ネットでの口コミで良いサービスが良いものとして伝わり、より多くの消費者が良いサービスが受けれる様になればと思い書き込ませて頂きました。
    大手の名前だけに騙されて無駄な手数料払うのは、勿体ないですよ。
    不動産流通システムさんで物件を売り買いするのに、大手に引けを取らないサービスをより安価に受けれますので
  • 40代女性(住み替え:購入・売却)
    不動産の売却・購入の両方お世話になりました。
    以前中古マンションを購入する際は、不動産ポータルサイトに掲載している不動産会社に問い合わせをしないと内覧ができなかったことが何度かあり、大手不動産会社に任せると、売却の際幅広く宣伝活動がされないのではないかという不安がありました。
    そこで、「囲い込みはせず、他社にドンドン広告掲載してもらい幅広い媒体で宣伝してもらう」「LINEからの問い合わせも可能」「仲介手数料が安い」の3点に惹かれ、お任せしました。
    担当の鈴木さんの明るく、お茶目な人柄も好きだったので、購入売却にかかる庶務も憂うつにならずに対応できました。 いつも家族のことや、部屋についてもポジティブなことを言ってくれるので安心してお任せしました。
    最寄駅にはないので、いつでも会って相談するというのむずかしいかもしれませんが、心配なことはメールや電話ですぐに対応してくれるので、私達には十分満足できました。
    結果としては売却も1ヶ月で売出価格で決まり、購入時のローンも紹介していただき、購入・住み替えもスムーズに決まりました。また住み替えの際にはぜひお願いしたいです。
  • 50代男性(マンション売却)
    マンション売却で、担当していただいた津司さんには本当にお世話になりました。
    次に住む所の相談と住んでいるマンションの売却を同時進行で行いましたが、分かりやすい説明と進め方の提示が手際良く、安心してお任せする事が出来ました。
    ネットで何でも調べられる時代ですが相手が何を考え、何を優先するかは会話の中でこそ分かると思います。プロフェッショナルを感じました
  • 30代女性(マンション購入)
    とにかくレスが早い。
    専門知識も豊富で、説明が分かりやすいです。
    担当してくれた方は非常に業界に通じており、ホスピタリティーに溢れていてかなり信用できます。 他社と比べて手数料もとても安いのでオススメの会社です。
  • 60代男性(戸建て購入)
    酒井智様にご担当して頂きました!細かい相談も小さな不安も毎回本当に迅速に対応して頂き、無事マイホームを購入できました!
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