「マンションは管理を買え」という格言めいたことばが、不動産の世界にはあります。マンション選びの際は築年数や駅からの距離、間取り、価格など外から見える条件に気を取られがちですが、長い目で見てマンションの資産価値に大きくかかわるのがマンションの「管理」だからです。

 

マンションの管理を担っている管理会社でつくる「マンション管理業協会」は2021年3月、2020年に実施した「マンション管理状態評価(等級評価)」をS~Dの5ランクに分け、それぞれどのくらいの割合なのかを公表しました。ここからマンションの管理の悪化は何と相関関係にあるのか読み解きました。

 

マンション

(写真はイメージです)

マンション管理の評価Sランクは1割、要注意のC・Dランク7.5%

 

マンション評価項目

 

マンション管理業協会では、マンションの管理を下記5項目で評価し、点数をつけています。

 

評価項目 配点 内容
1.管理組合体制関係 20点 運営体制全般について
2.管理組合収支関係 40点 収支関連の財務安全性について
3.建築・設備関係 20点 設備管理の状況について
4.耐震診断関係 10点 耐震性能について
5.生活関連 10点 緊急時の対応や災害時の対応の安全性について
(満点) 100点  

 

最も配点を大きくしているのは収支関連です。マンションの規模にふさわしい管理費と修繕積立金の徴収が行われ、コストパフォーマンスがしっかり図られた修繕活動が行われているかは入居者にとって分かりにくいため、この部分が重要視されていることについては、宅建士の立場からしても納得感があります。

 

ランクごとの管理状態

 

マンション評価はS~Dの5段階となっています。

 

S:90~100P
A:70~89P
B:40~69P
C:1~39P
D:点数なし

 

全国のマンションのうち管理状態が最もよいSランクのマンションが占める割合は10.50%。続いてAランクが54.59%、Bランクが27.33%、Cランクが7.11%、Dランクは0.47%でした。

 

評価項目からすると、S、A、Bランクで9割を超えているので、全国のマンションの管理はおおむね良好と言えます。ただ、特に注意が必要となるC・Dランクも7.5%程度あります。出くわす確率がそれほど低いとは考えない方がいいかもしれません。

 

マンション管理についての地域差、築年数別の状態

 

地域差より築年数で大きく変わる

 

マンション管理のランク分布について、まず、地域差があるのかを見てみましょう。

 

発表によると、三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏のSランクは11.17%、その他の地域のSランクは8.05%でした。都会の方がSランクは多めで、やや差があるものの、全体的な傾向としては管理状況の分布に地域差はあまり見られないようです。なので、地域性は考えなくてよいでしょう。

 

次に築年別です。1979年以前に竣工したマンションの場合、Sランクは2.19%でDランクは1.35%。これに対し、2011年以降に竣工したマンションの場合はSランクが29.67%でDランクは0.01%となっています。つまり、新しいマンションであるほど、管理状態はよいということです。逆に古いほど管理は悪くなる傾向にあります。

 

現状、築25~30年付近かそれ以上のマンションを購入する場合、管理状況に差が大きくなります。このくらいの古さのマンションを買う際は、特に注意が必要となりそうです。

 

築年数で管理が劣化する3つの理由

 

古いマンション管理が劣化する理由はいくつかあります。

 

マンション住民の主体性や意欲

 

マンション管理では、管理会社の質の良し悪しが大きく影響するのはもちろんですが、マンション住民の意識の高さとも大きく影響します。「良い住環境を維持したい」という住民の声が管理会社に伝わるという環境が分譲当時にいくらあっても、年数が経ってくると、汚い部分に気がつかなくなったり居住者が高齢化したりで住民の意識が低下する傾向にあるようです。

 

入居住民の数

 

築年数が20年を超えると、入居率が下がってくることがあります。さらに高齢化も進みます。そうすると、管理費と修繕積立金を納める母数が少なくなり、滞納も増えるため、自然と財政状態も圧迫されます。収支計画が狂うと、修繕や清掃に影響が出るのは明らかです。

 

大規模修繕の不備で差が出てくる

 

外壁や大型設備更新などの大規模修繕は通常10年前後で行われますが、これが適正に行われているかどうかで、20年先のマンション設備の稼働具合や美観に大きく影響します。

 

マンションの資産価値のために管理は重要

 

これまで述べてきたように、マンションの管理の質は築年数が古くなるほど悪くなるものと疑っておきましょう(もちろんビンテージマンションと呼ばれるマンションのように優れた管理の築古マンションもあります)。

 

中には入居した途端に修繕積立金が値上げになったり、一時金を徴収されたりすることがありますが、そういうマンションは資金管理がずさんかもしれないのでよく調べた方がいいでしょう。不動産仲介会社に依頼して管理組合から重要事項に係る調査報告書という書類を取得してもらうと、現在の管理費・修繕積立金だけではなく、値上げの予定や一時金の徴収の予定なども分かります。

 

不動産仲介は大手だと両手仲介や囲い込みをやってお客様に迷惑をかけることはありますが、管理会社に関しては大手の方が人員やマニュアル、態勢がしっかりしているので間違いないと考えてもいいでしょう。どこが管理をやっているか、管理は十分かは、内見をするときにマンション内の掲示物や清掃具合、管理人や売主への聞き取りなどでも情報を得ることはできます。

 

管理は売却するときに大きく影響しますし、何より住んでいて快適かどうかも左右します。ぜひ、注意してください。

 

 

松村隆平
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。
趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。