住宅探しをしていて「長期優良住宅」という言葉を耳にした人がいるかもしれません。長期優良住宅制度は「長く住める良好な建物」を普及させること目的に定められたもので、長期優良住宅を購入すればさまざまなメリットが受けられます。具体的にどんな住宅で、どんなメリットが受けられるのか、説明します。
(写真はイメージです)
目次
長期優良住宅とは
日本では長らく「新築信仰」と呼ばれるほど、住宅に関しては新築が好まれる傾向にありました。それは今でもあまり変わっていません。しかし、建築資材の質が高まり、建築技術も向上してきた現在では、建物はきちんと管理をすれば定められた耐用年数以上に長く使うことができますし、まだ使える建物を壊して新しい建物を造り続けるのは環境面にもよろしくありません。
このような社会的課題を受け、長く使える優良な住宅の普及を目指して「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」という法律が生まれました。一定の基準を満たした長期優良住宅を購入した人にさまざまなメリットを与えることで、長期優良住宅の普及を図っています。
■長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅に認定されるためには、基準審査項目すべてをクリアしている必要があります。審査項目は以下のような内容です。
□バリアフリー性
□可変性(将来のリノベーションのしやすさ)
□耐震性
□省エネ性
□環境性(住みやすさ)
□維持・修繕計画の有無
□維持管理の容易性
□経年劣化への対策
□住戸面積
上記の基準を満たしていれば自動的に長期優良住宅とみなされるわけではありません。長期優良住宅として認定されるためには、建物の設計段階から認定機関の検査や申請手続きを行う必要があります。
(1)プランニング
建物のプランニングの時点で、長期優良住宅の適合基準を意識した図面を作成しなければなりません。建物のプランニングは評価機関と相談しながら進めることができます。
(2)技術的審査依頼
建物の設計図書(設計の内容を示す書類)ができたら、評価機関へ審査を依頼します。
(3)審査
評価機関による審査が行われ、問題がなければ、評価機関から「適合証」を受理します。
(4)認定
適合証が発行されたら、所管の行政庁へ認定の申請を行います。申請が受理されたら、正式に「長期優良住宅」として扱われることとなります。
長期優良住宅のメリット
長期優良住宅を購入すると、主に「税金面」「金利面」「資産価値の面」でメリットがあります。それぞれ具体的に見てみましょう。
税金の優遇が受けられる
税金面では以下のような優遇を受けることができます。
■不動産取得税の控除額が大きい
不動産を取得した人には不動産取得税を納める義務が生じます。建物の不動産取得税は評価額が1,200万円以内だと非課税になります。1,200万円を超える場合は、超過部分に税率(3%)を掛けて税金の額を算出します。
長期優良住宅の場合は、基礎控除額が1,200万円から1,300万円になります。
■住宅ローン控除の枠が増える
住宅ローン控除の適用を受けるにあたり、一般的な住宅であれば年間の控除額の上限は最大40万円で、控除期間が10年だと最大で計400万円の控除となります。
長期優良住宅では年間控除額の上限が50万円まで引き上げられます。10年間だと最大で合計500万円分、節税できます。
■固定資産税
新築住宅を取得したとき、所定の条件を満たせば一定期間は建物の固定資産税が2分の1になるという減税制度があります。原則として戸建ては3年間、マンションは5年間の減税を受けられますが、長期優良住宅の場合は戸建てで5年間、マンションで7年間に引き延ばされます。
■登録免許税
建物を登記するとき登録免許税がかかります。新築住宅の保存登記にかかる建物部分の登録免許税は原則として「建物評価額×0.15%」です。長期優良住宅であれば、税率がマンションの場合0.01%、戸建ての場合0.02%に軽減されます。
※上記税率は令和4年3月31日までに取得する住宅の場合です。
住宅ローンの金利が引き下げられることがある
住宅ローンの金利も通常より引き下げられます。住宅金融支援機構が融資する「フラット35」を利用する場合、特別金利が適用される「フラット35S」を利用することができ、最大10年間は通常固定金利から0.25%引き下げられることとなります。
フラット35の最頻金利(提供する金利で最も多い金利)は2021年5月時点で1.36%、フラット35Sは1.11%ですので、大きな優遇だといえます。フラット35以外の住宅ローンでも、担保評価の高い長期優良住宅は金利優遇が受けやすくなります。
資産価値が落ちにくい
長期優良住宅は一般的な住宅よりも長く使うことを前提に建てられた住宅なので、建物の劣化が少なく、資産価値が落ちにくいという特徴があります。将来売却するときに有利になるだけでなく、「生涯自分が住み続ける家」としての価値も高くなります。
長期優良住宅のデメリット
一方、長期優良住宅には一般的な住宅よりもコストがかかるというデメリットがあります。
まず、認定を受けるための申請の手続きなどに5万~10万円ほどの費用がかかります。また、基準を満たす導入必須の設備や施工費などの建築コストも割高になり、一般に通常の住宅より1.1~1.3倍ほどの費用がかかるとされています。
長期優良住宅を購入するには
長期優良住宅は、分譲住宅を購入する場合と注文住宅を建てる場合があります。
(1)分譲住宅
新築分譲マンションや建売戸建ての場合は、あらかじめ開発業者(事業主)が長期優良住宅に適合した企画を立てて建築しています。物件チラシなどに「長期優良住宅」と謳われています。
(2)注文住宅
ハウスメーカーや工務店などで注文住宅を建てる場合は、設計段階から長期優良住宅に適合したプランニングをしなければなりません。長期優良住宅は一般的な住宅よりもコストが高くなりますので、予算オーバーにならないよう建築費をリアルタイムで把握するようにしましょう。
(3)中古住宅
中古住宅の場合、現状有姿(あるがままの状態)で長期優良住宅の認定を受けることは基本的には不可能です。ただ、リノベーションを行うことで認定を受けられることがありますので、専門業者に相談することをお勧めします。
長く使えて資産価値も高い長期優良住宅は購入の価値あり
日本人は新築から築浅の建物を好み、新しい建物を次々と建ててきましたが、さまざまな面で時代と合わなくなっています。長く使えるよう設計された建物を長期にわたって利用することに価値を置くことも、時代の要請かもしれません。長期優良住宅をぜひ住宅購入の際の選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
真地リョウ太(宅地建物取引士、2級FP技能士、行政書士試験合格)
不動産売買実務をはじめ、住宅ローン相談、相続案件、住宅企画、投資物件購入相談などの業務を9年にわたって担当。2019年より、実務経験を活かしてライターとして活動開始。