新型コロナウイルス感染拡大の影響によってテレワークが拡大したことから、脱都心して首都圏郊外に移住する動きが進んでいます。ただ、そうした人の中にも都心に自宅マンションを置いたままで、他人に賃貸するケースが多いようです。このようなケースは転勤するサラリーマンの世帯などでは以前からあったことですが、その注意点について考えてみましょう。

 

不動産売却

(写真はイメージです)

 

マンション売却のメリットとデメリット

 

移住や転勤で東京に戻ってくることが不確実ならもう、都心の住まいは売ってしまおうかと考える人もいるでしょう。そもそも、不動産を売却するとはどういうことかについて考えてみます。

 

不動産の売却にあたっては高いローンを組んで買ったものだけに「本当に売ってしまっていいのだろうか?」と考える人も多いようです。しかし、売却資金で残債が完済できるなら、大きなデメリットはありません。満足度は人によって大きく異なりますが、居住期間が10~15年くらいの場合、多くの場合で売却益が出ることがあります。その資金を次の住まい購入の頭金にすることもできますし、場合によっては老人ホームの資金の足しにできます。

 

売却のメリットとデメリットを賃貸と比べてみましょう。

 

(1)売却のメリット

 

・現金化できる
賃料と異なり、住宅ローンは自分の保有不動産の購入額の返済をしているという位置づけのため、売却すれば現金を手にできます。年齢や家族の生活の変化によって最適な住宅のあり方というのは変わっていきます。この現金を元手に、他の住まいの買い替えができるというのは大きな魅力です。

 

・ローンを完済できる
完済の見通しが立っていたとしても、年齢を重ねるとともに、住宅ローンが残っていることに不安が残ることもあります。「家を買ったときに考えていたよりも収入が伸びなかった」「70歳までローンを支払うのは不安」。こんな場合には、今の自宅を売却し、その資金で一括購入できるような自宅を購入することも一つの手です。子供が独立している場合や、そこまで広い家が必要でない場合には縮小買い替えというのも一つの選択肢です。

 

(2)売却のデメリット

 

・仲介手数料や譲渡所得税がかかる
不動産の売却にあたっては、ほとんどの仲介会社に「売却価格の3%+6万円」という仲介手数料を一括で払うよう求められます。3,000万円で売れた場合、100万円程度になります。住み替えで住宅を購入する場合、多くの場合で税金はかかりませんが、賃貸の場合には、売却益に対して税金がかかってきます。税金については物件の状況によって大きく異なりますので、専門家に確認する必要があります。

 

・狙った価格で売れないことがある
当然ですが、狙った価格で売れない場合があります。もし売却額とローンの残債が同じだったり、下回ったりする場合、かなり注意が必要です。

 

・賃貸に出すよりも時間がかかる
賃貸の場合は、相場並みの賃料で募集を出せばすぐに決まる場合が多いですが、売買の場合はそうはいきません。相場で出したとしても、契約まで少なくとも3か月程度は見ておいた方が無難です。また、多くの場合、なるべく高く売ろうとしますので、半年くらいかかることも珍しくありません。契約後、引き渡しまで1~2か月かかるため、長期戦になることを覚悟すべきです。

 

・内覧にあたり労力がかかる
不動産の売却では、購入希望者の内覧に時間と労力を取られます。対応の仕方によっては買い手の印象がかなり変わってきます。場合によってはリフォームしたり、長期間にわたって常に片付けを入念にしたりする必要があります。

 

マンション賃貸のメリットとデメリット

 

次に、都心にマンションを所有したまま、他人に賃貸することのメリットとデメリットを考えてみましょう。

 

(1)賃貸に出すメリット

 

・家賃収入が得られる
自宅を賃貸に出すということは、自分の資産を使って収入を得ることができます。「住宅ローンの支払い額よりも高く貸せればOK」となのですが、結論から言うと、多くの場合で高く貸せます。日本の住宅ローンというのは特に長期的な低金利が続いているため、資産に対する支払いという点で見た場合、住宅ローンで保有している資産は賃料よりも安くなる傾向が強く黒字になる場合が多いからです。特に都心の場合は需要が高いため、相場か相場より少し安いくらいの賃料で募集すれば、空室リスクもかなり抑えられます。われわれも「自宅を賃貸に出したはいいが赤字になった」というのはあまり聞きません。もし赤字続きになったら、自分が自宅に戻ればよいだけともいえます。

 

・節税になる
自宅賃貸を始めると、不動産賃貸事業を始めることになるため、確定申告が必要になります。この場合、不動産会社に支払う管理費や修繕積立金、固定資産税、住宅ローン金利などの諸費用を事業上の「経費」として計上できるようになりますので、節税効果が見込めます。

 

・資産構築のスピードが上がる
売却と最も異なるのはこの点です。資産として保有したままとなるため、住宅ローンの返済は続きます。ローン完済後は賃料がまるごと収入になります。賃貸中であっても、別でローンを組んで自宅用に2つ目の不動産を保有することができれば、資産構築のスピードが飛躍的に上昇します。

 

(2)賃貸に出すデメリット

 

・空室になってしまうと、収入ゼロの期間が生じる
賃貸経営の最大の敵は空室リスクです。空室になった場合、ローンの支払いがそのままマイナスになるため、大きな痛手です。ただ、賃料相場というのは売買相場よりも安定しており、劣化も読みやすいため、賃料相場を事前に確認したり賃料の下落を勘定に入れておいたりすることでリスクを大幅に軽減できます。

 

・建物の劣化や設備の故障による修繕費などは変わらず発生する
賃貸の場合、経年劣化による設備不良や、修繕費はオーナー負担になるため、想定外の費用もあります。

 

・確定申告や物件の維持管理などの手間がかかる
確定申告をしたことがない人にとっては、初めての確定申告は負担がかかります。慣れてしまえばどうと言うこともありませんが。

 

賃貸に向いているマンションとは

 

さて、前項で空き室リスクについて説明しました。あなたのマンションは貸しやすいのか、貸しにくいのかについて考えてみましょう。

 

貸しやすいマンションの特徴は共通しています。結局は、賃料との兼ね合いになりますが、下記の条件をおおむねクリアしていれば貸しやすいと言えるでしょう。

 

駅からの距離が近い

 

アクセスのよさはマンションの命です。「どの程度が近いと言えるか?」は地域によっても異なりますが、コロナ時代に東京脱出を検討している方に向けて今回は東京23区を想定して話をすすめます。

 

自宅探しの場合「最寄り駅から10分」が大きな目安となります。不動産検索のポータルサイトでも「駅徒歩10分以内」という条件検索が必ずあるように、10分以下であれば、単身者から共働きのファミリー世帯まで、相場の範囲内なら借り手がつきやすい状況になります。一方、駅直結、もしくは駅徒歩5分以下の場合は逆に注意が必要です。というのも、駅の至近エリアは商業地域である場合がほとんどなので、ファミリー世帯をはじめとして、騒音や治安を気にする人もいるかもしれません。

 

築年数が20年以下

 

賃貸物件の場合、築10年前後の物件が最も好まれる傾向にあります。適度な新しさ(耐久性の面、きれいさの面)であり、かつ価格も少し下がったあたりで賃貸としてはちょうどいいというのが理由です。今では築20年くらいでも見た目や性能は評価できるようにはなりました、ただ、20年を超えると、デザイン含めて見劣りがするようになってきます。こうなると、賃料で「割安感」を出すしかありません。どの程度なら割安感が出るのは、不動産会社に確認しましょう。

 

子供にとってよい環境

 

ファミリー世帯向けの物件の話になりますが、閑静であったり公園などがあったり医療施設や商業施設がそろっていたりなど住環境のよさが、駅からのアクセスよりも高く評価される可能性もあります。売買の場合、住環境がよいからといって売却価格が大きく上がることはあまり期待できませんが、賃貸の場合は住環境のよさは貸しやすさには直結する傾向にあります。

 

賃貸に出す場合の注意点

 

以上、述べてきたようにメリットの多い自宅賃貸ですが、注意点を2点に絞って説明します。

 

普通借家なのか、定期借家なのか

 

家を貸す場合、賃貸借契約には「普通借家」と「定期借家」の2種類があります。定期借家は、あらかじめ決めておいた期間満了とともに契約終了となり、更新をする必要がありません。これに対して、普通借家は契約期間が満了しても「正当な事由」がない限り、貸主側から更新を拒絶することはできません。数年間だけ自宅を空けるため一時的に家を貸すという場合、普通借家にすると、戻りたくても自宅に戻ることができないということになりかねません。

 

入居者、物件管理

 

不動産取引については、専門知識やノウハウが必要になるため、募集や契約については不動産会社に、その他の管理については管理会社に委託するのが一般的です。設備の故障や税金の支払い、管理料徴収に係る手数料など、かかる費用の種類が異なりますので、不動産会社等に事前に相談し、収支計画を確認しておく必要があります。不動産会社にしてみたら管理を任せてくれるかもしれないお客様ですから、相談してみると丁寧に教えてくれます。

 

さて、今回はマンションの自宅賃貸の注意点について説明しました。立地にもよりますが、23区内であれば自宅マンション賃貸は比較的リスクの少ない投資と考えられるため、コロナ時代に都心を離れたいと考えている方にとっては、有効な資産形成手段となるでしょう。

 

 

半沢隆太郎(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。実家が建設・不動産会社を経営。新卒で大手機械メーカー、その後コンサル会社を経て、現在は不動産業種の上場会社の経営企画部門に勤務。