住宅に関する話題で大きなテーマの一つに、「購入するなら新築か、それとも中古か」があります。

 

日本では、戦後のベビーブームによる人口急増と経済の高度成長に伴って都心部の世帯数が増加したことにより、住宅不足に陥りました。その解決策として、郊外私鉄沿線型のベットタウン・ニュータウンの開発とそれに伴う新築の住居が人気を博しました。高度経済成長を支えた多くのサラリーマンにとって、人生の目標に「新築マイホーム」が燦然と輝いていた時代が確実にあったといえます。

 

新築は価格が高止まりしているうえにコロナ禍で新築マンションの着工件数が減っています。一方、すぐに入居できることなどから中古住宅が人気の昨今です。ただ、新築には設備が最新だとか、まだだれも使ったことがないとかいうこと以外に、中古にはない最強の「お守り」があります。今回は、その「お守り」について解説します。

 

手に包まれた住宅模型

(写真はイメージです)

 

新築のメリットは目減りしている

 

価格が高騰したことやタワーマンションブームで用地の確保が困難となったことから、首都圏ではここのところ新築マンションの供給数は減少傾向が続いていましたが、戸建ての着工件数は堅調に前年を上回る年が続いていました。しかし、2019年10月の消費増税を契機に、マンション・戸建てともに着工件数は前年比を下回り、2020年はコロナ禍もあり前年割れを続けています。

 

住宅着工統計-210112

 

一方で、中古住宅は、10~11月はマンション・戸建て共に、販売戸数も価格も絶好調の売れ行きを示しています。下記の表は、東日本レインズが12月に発表した首都圏の中古住宅の売買速報です。マンション・戸建て共に昨年を大幅に上回る実績を示しています。

 

レインズ月例速報-2020年11月

 

価格が安い、居住後のイメージがつかみやすい、将来の価格低下リスクが少ないなどのメリットが評価されてコロナ禍のさなかでも人気が高まっているといえるでしょう。

 

では新築のメリットは評価されづらいということでしょうか? 確かに価格が中古に比較して高くなってしまうのは、先行きの不安なコロナ禍ではかなり大きなデメリットといえます。リフォームやリノベーションが普及した現在では、新築の大きなメリットであった仕様や設備の新しさは、そのアドバンテージの大半を失ってしまったかに見えます。

 

むしろ、完成・引き渡しまでの期間の長さに付随するリスクは新築物件の方が大きいといえるかもしれません。引き渡しを受けるまでは現物といえるものは存在せず、まさに絵に描いた餅であるわけですから、「新築はリスクの塊」なのかもしれません。

 

しかし、新築最大のメリット「品確法」は強い

 

しかし、新築住宅には最強といえるメリットがあります。それは「品確法(「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称)」によって10年間の瑕疵担保責任が保証されている、ということです。つまり、新築住宅はたとえ欠陥があったとしても「10年安心」ということで、これは中古住宅にはない強みとなります。詳しく説明しましょう。

 

瑕疵とはなにか

 

2020年4月1日以前の民法では、「瑕疵」とは「売買契約締結当時の取引観念上、通常有すべき、又は売買契約に基づき特別に予定されていた『品質・性能』を欠くこと」を指しました。要するに欠陥のことです。売買物件に「隠れた瑕疵」がある場合は、売主は原則として損害賠償もしくは契約の目的を達しない場合は契約の解除、という瑕疵担保責任を負う、とされていました。

 

従来の民法では、売主は土地や建物を引き渡せばよいとされていました。これでは、引き渡した建物に雨漏りやシロアリ被害があったとしても、売主には債務不履行責任は生じないということになってしまいます。それでは、瑕疵のある土地建物を引き渡す売主と、瑕疵の存在を知らずに対価を支払う買主とで経済的な不公平が生じることになるため、買主を保護するために瑕疵担保責任が設けられたのです。

 

契約不適合責任とは

 

2020年4月に施行された改正民法では、従来の瑕疵担保責任に代わり、「契約不適合責任」が規定されました。「契約不適合」とは「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことをいい、従来の瑕疵の概念とほぼ同じ内容であると考えてよいでしょう。

 

しかし、契約不適合責任とは、「目的物が契約の趣旨に適合しない場合は、特定物の引き渡しがあったとしても債務不履行責任が生じる」ということとなります。そのため「瑕疵」であることや「隠れた」ものであるかは問題とならず、契約の目的に適合しているかどうかが重視されました。より買主の保護が図られたのです。

 

瑕疵担保責任と契約不適合責任の相違を表にまとめてみました。

 

瑕疵担保責任と契約不適合責任の比較

比較ポイント 瑕疵担保責任

契約不適合責任

(2020年4月1日施行)

①概念 社会的通念を基準 当事者の合意を基準
②法的範囲 法的責任 契約責任
(無過失責任⇒過失が無くても売主責任) (債務不履行責任⇒過失が無い場合は免責も有り)
③要件 隠れたる(買主が知らず、無過失) 買主が知っていたかどうかは問わない
瑕疵 目的物の種類・品質及び数量が契約の内容に適合しない場合
④買主の権利行使方法  

追完請求

(売主の過失を問わない)

 

代金減額請求

(売主の過失を問わない)

契約解除

契約解除

(売主の過失を問わない)

損害賠償請求

損害賠償請求

(売主に過失が無い場合は免責)

⑤責任範囲 瑕疵があることを前提とした価値と売買代金の差額 債務不履行と相当因果関係のあるすべての損害
⑥権利行使期間 瑕疵を知ってから1年以内に「請求」 引き渡しから10年で時効
  知ってから1年以内に「通知」し、5年以内に権利行使しなければ時効
  売主が知っていた場合や重大な過失のために売主が知らなかった場合は買主の1年以内の通知義務は免除

 

品確法の成り立ちと仕組み

 

上記は主に中古住宅を対象としています。一方、新築住宅はこれまで、評価方法や表示のルールが明確ではなく、相互比較する方法もない状態が長く続いていました。完成後の品質に対するクレームへの対応も曖昧で、解決まで長く時間がかかっていました。瑕疵担保責任の保証期間についても販売会社によってまちまちで、期間も1~2年と短期の保証しかしないケースもありました。

 

そうした状況を打破するため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が2000年に施行されました。

 

具体的には、新規住宅の取得契約(請負・売買)において、基本構造部分(柱、梁など住宅の構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分等)の瑕疵担保責任(修補請求権等)を10年間義務付ける、基本構造部分以外も含めた瑕疵担保責任の20年までの伸長も可能とする―と規定しています。

 

2020年の民法の改正によって、各種の法令は「瑕疵」という用語を「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない」という用語に改正しています。品確法には「瑕疵」という用語が残されていますが、契約不適合と同義と考えてよいでしょう。

 

売主が破産しても消費者は守られる…住宅瑕疵担保法の制定経緯

 

品確法により、新築住宅の売主は10年間瑕疵担保責任を保証しなければなりません。しかし、売主の住宅建売会社の経営状況が悪くて支払い能力がなかったり破産していたりする場合は、建て直しや補修ができませんでした。実際、2005年に起きた「構造計算書偽装事件」は、発覚時に販売業者が倒産していたため、買主の住民が補修工事費用を自分たちで負担する羽目となりました。

 

そこで2008年4月に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保法)が制定され、新築住宅の販売会社は、10年間の瑕疵担保責任を果たすために必要な資力を「供託金を積む」もしくは「保険に加入する」ことで担保することが義務付けられました。これで、完全に「10年安心」が実現しました。

 

中古住宅には「10年安心」はないのか

 

新築住宅の場合は、品確法により売主の契約不適合責任は10年間保証されています。一方、中古住宅には、品確法のような売主の保証期間の義務規定はありません。どのような規定が適用されるのでしょうか?

 

(1)時効の規定

 

まず一般的には時効の規定が適用されることになります。
・引き渡しから10年で時効
・契約不適合を知ってから1年以内に通知し、また5年以内に権利行使しなければ時効(売主が知っていた場合や重大な過失により知らなかった契約不適合の場合は1年以内の通知義務は免除)

 

(2)契約不適合責任免除の特約

 

契約不適合責任は、当事者同士の特約により免責とすることができます。そのため、売主が一般の方の中古物件の売買は、売主の契約不適合責任を免責とする特約が売買条件に付けられている場合がほとんどですので、注意が必要です。

 

しかし、売主が宅地建物取引業者の場合には、売主の瑕疵担保責任の規定を民法の規定よりも買主に不利なものにすることは無効と定められています。

 

新築は、10年保証があるから安心!

 

新築住宅の場合は、経年劣化が無い分、中古物件よりも、契約不適合が起こる可能性は低いかもしれません。しかし、物件が完成するまでは事前にチェックができませんし、完成後のチェックは基本的に施工主が実施するわけですから、実際に不具合があるかどうかは住んでみないとわからないともいえます。そうした意味では中古住宅よりなんらかの不適合があるリスクは高いといえるかもしれません。

 

しかし、新築住宅の場合は、品確法により、10年間の瑕疵担保責任を売主が保証されているので、安心をサポートする仕組みは、中古住宅よりも充実していると言えます。

 

ただ、断熱材や石膏ボードの施工不良や、床下の水漏れ、基礎の割れまでは品確法では保証しません。こういうところがご心配な方は、第三者機関によるホームインスペクションの実施を検討するのも一策です。引渡し前に実施することで、施工不良などの発見が可能になります。

 

中古住宅ではもはや欠かせないホームインスペクションの利用ですが、新築の場合にも、10年保証の補完効果は非常に大きいと考えられます。ぜひ検討してはいかがでしょうか。

 

 

プロフィール
早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。