新型コロナウイルスは世界経済に大きな影響を与えました。日々の生活や収入がコロナ禍により変化した人、将来に不安を感じている人も少なくないと思います。一方で、こんな時だからこそ生活の基盤である住居を「自己所有したい」「よりくつろげる空間が欲しい」と考える人もいるでしょう。

 

今回は、今住宅購入を検討している方のために、近年の金利動向や2020年8月の住宅ローン金利についてご紹介します。

 

住宅ローン金利

(写真はイメージです)

 

近年における住宅ローン金利の状況

 

昨今は超低金利時代。ここ10年ほどの住宅ローン金利は、一時的な上昇はあっても基本的に低金利がずっと続いています。

 

特に2016年1月は「マイナス金利」が導入され、「これ以上は下がりようがない」と思われていた住宅ローン金利がさらに押し下げられました。

 

マイナス金利とは、民間の金融機関が日銀に預けている預金の金利をマイナスにすることです。日銀の当座預金は大きく「基礎残高・マクロ加算残高・政策金利残高」の3層構造になっており、そのうちの政策金利残高にマイナス金利が適用されています。対象の預金では、預金者である金融機関が日銀に金利を払います。

 

マイナス金利の狙いは、金融機関が日銀にお金を預けにくくすること。金利の支払いを嫌って、資金を企業融資や投資に回すのを期待しています。実際に2016年1月以降、マイナス金利の影響で住宅ローン金利は下がったため、住宅ローン融資が受けやすくなったといえるでしょう。

 

ただし日銀の最終目的である、経済活性化とデフレ脱却には至っていないため、マイナス金利政策は継続すると見込まれます。

 

住宅ローン金利の決まり方

 

住宅ローン金利は大きく「変動金利」と「固定金利」の2つがありますが、両者の金利の決まり方には違いがあります。

 

変動金利の決まり方

 

住宅ローンの変動金利は、短期プライムレート(短プラ)の影響を大きく受けます。短期プライムレートとは、銀行が1年以内の期間で、優良企業向けに融資する際に指標となる最優遇貸出金利(プライムレート)です。住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートにコストや利益分を加味して決定されます。

 

固定金利の決まり方

 

住宅ローンの固定金利は、長期金利の影響を大きく受けます。長期金利とは、銀行が1年以上の期間でお金を貸し出す際に適用する金利のことで、「10年物国債の利回り」が長期金利の代表的な指標です。

 

短期プライムレートと長期金利

 

短期金利は日銀の金融政策に左右される傾向があります。一方で長期金利は主に経済的な需要と供給によって決まり、物価の変動や短期金利の推移などの複合的、かつ長期的な市場見通しによって変動します。ただし、長期金利も日銀が「日銀の国債買い入れ」によって利回りをコントロールするケースがあるため、金融政策の影響を全く受けないわけではありません。

 

今は新型コロナウイルスの影響で経営状況が悪くなっている企業も多いです。経済活性化のために、金融政策のテコ入れとして、金利押し下げを促進する金融政策が取られる可能性もあります。住宅購入を検討している方は、金融政策決定会合の動向に留意しておくと良いでしょう。

 

2020年8月の金利動向と、実際の金利紹介

 

コロナ禍の真っただ中にあるここ数か月、住宅ローン金利全体の動向に変化はあるのでしょうか。

 

まず変動金利は安定して超低金利状態を維持しています。固定金利も全期間に微上昇が見られますが、低金利状態は維持しています。

 

ただし、コロナ禍の影響で家計の悪化する世帯が増え、住宅ローンの返済に滞るケースが増えると、金融機関がリスクヘッジのために適用金利を上げる可能性があります。今の段階で「コロナ禍でも金利は動かない」と判断するのは早計でしょう。

 

次に実際の金利を、金融機関や住宅ローンの種類ごとに見てみましょう。
※各数値は2020年8月現在のもの。実際の適用金利は各金融機関の審査により決定します。

 

メガバンク

 

みずほ銀行(ネット住宅ローン)
・変動金利:0.625%~0.875%
・10年固定金利:0.85%~1.10%
・35年固定金利:1.14%

 

※参照(変動・10年固定は「全期間重視プラン」、35年固定は「全期間固定プラン」による)

 

三菱UFJ銀行
・変動金利:0.525%
・10年固定金利:0.740%
・35年固定金利:1.82%

 

参照(変動・10年固定は「ネット専用住宅ローン」、35年固定は「店頭住宅ローン」による)

 

三井住友銀行
・変動金利:0.475%~0.500%
・10年固定金利:1.300%~1.325%
・35年固定金利:1.28%~1.48%

 

参照(変動・10年固定は「最後までずーっと引き下げプラン」、35年固定は「超長期固定金利型プラン」による)

 

ネット銀行

 

ジャパンネット銀行
・変動金利:0.380%
・10年固定金利:0.620%
・35年固定金利:1.450%

 

参照

 

住信SBIネット銀行
・変動金利:0.41%
・35年固定金利:0.99%(金利引き下げ期間終了後の金利 年1.24%)

 

参照(変動はネット専用住宅ローンのキャンペーン金利、35年固定は「フラット35S(買取型)」による)

 

全期間固定金利(フラット35)

 

ARUHI
・金利:1.06%(金利引き下げ期間終了後の金利 年1.31%)

 

参照

 

楽天銀行
・金利:1.06%(金利引き下げ期間終了後の金利 年1.31%)

 

参照

 

ご覧のように、変動金利の中には0.5%を切る住宅ローンも登場し、10年固定でも1%を切るものが複数あります。

 

住宅ローン控除の控除率は1%ですので、金利が1%以下の住宅ローンを組んで住宅ローン控除を利用すると、計算上は金利以上の還付を受けられることになります。

 

全期間固定で1%を切るものは少ないですが、住宅が一定の基準を満たせば5年または10年間の金利引き下げが適用される「フラット35S」を活用すれば1%にかなり近づけられそうです。

 

変動金利の低さは非常に魅力的ですが、金利上昇時にも返済できるよう、借入額をシビアに見極める必要があります。その点、全期間固定金利は借入から完済まで返済額が一定で、返済計画が立てやすいのがメリットです。

 

また住宅ローンを組む際には、事務手数料や保証料といった諸経費がかかりますので考慮しておきましょう。

 

金利で総返済額はこれだけ変わる

 

ここでは、金利の違いで総返済額がどの程度変わるのかを試算してみます。
※返済期間は35年。全期間で金利は変動しないものとする。元利均等返済・ボーナス払いなし。その他の条件(保証料・団信保険料等)は考慮しない。
使用シミュレータ

 

借入額 3,000万円の場合

金利 金利0.5% 金利1% 金利1.5%
毎月返済額 7.8 万円 8.5 万円 9.2 万円
総返済額 3,271 万円 3,557 万円 3,858 万円

 

借入額 5,000万円の場合

金利 金利0.5% 金利1% 金利1.5%
毎月返済額 13 万円 14.2 万円 15.4 万円
総返済額 5,452 万円 5,928 万円 6,430 万円

 

同じ借入額・返済期間でも、金利によって総返済額はかなり違ってくることが分かります。例えば3,000万円借入した場合、適用金利が1%の時と1.5%の時とでは、総返済額が300万円以上変わります(表中黄色部分)。

 

ローン返済額を抑えるためには、頭金を入れるか物件を見直すかで借入金額を抑えるのが正攻法ですが、金利の低さに着目するというのも非常に有効です。

 

すでに住宅ローン返済中の方であれば、借り換えも選択肢の一つです。ケースバイケースではありますが、返済実績のある人が新たに顧客となる「借り換え」は、借り換え先の金融機関から歓迎される傾向にあります。まずは一度、諸経費を含めて借り換えがお得になるかどうかを金融機関に試算してもらいましょう。

 

まとめ 住宅購入のベストな時期は自身の考えで決めよう

 

先の見えないコロナ禍で、将来に不安を持たれるのは無理もありません。しかし住宅購入に「景気やコロナ禍が落ち着いてから…」と受け身の姿勢でいては、好機を逃してしまうかもしれません。ご自身のライフプランや返済計画を踏まえて、主体的に購入を決めることをおすすめします。

 

在宅勤務の増加や外出自粛を通して「家」の大切さを再確認した人も多いはずです。住宅ローンで家を買うなら、今の金利の低さは好材料。無理のない範囲で、積極的に住宅購入を検討してみましょう。

 

 

横山晴美 ライフプラン応援事務所 代表
2013年にFPとして独立してから一貫して「家計」と向き合い、マネーリテラシーの向上でお金の不安が軽減することを実感。お金の不安を抱える人が、自分自身で問題を解決できるよう、お金の基礎知識を底上げするための啓蒙活動を行う。WEBコラム・セミナーなどで家計や住宅ローンなどお金について幅広い情報を発信している。