2015年の国勢調査によると、30~34歳では、男性はおよそ2人に1人(47.1%)、女性はおよそ3人に1人(34.6%)が未婚であり、35~39 歳では、男性はおよそ3人に1人(35.0%)、女性はおよそ4人に1人(23.9%)が未婚となっています。「おひとりさま」という言葉もすっかり定着するほど結婚していない人が多い世の中になったのですが、今回は独身の人こそ、また独身の間にこそ、マンション購入を検討すべきであることを解説します。

(写真はイメージです)
独身でマンションを買う人は増えている
マンション購入というと、結婚して子供ができて「さぁ、いよいよマンション購入だ」「家族のためにマイホーム」という考えが一昔前の主流でしたし、現在でも主流であるのに変わりはないでしょう。多くの不動産会社のCMで家族がでてくることがほとんどです。しかし、世の中の流れの変化とともにライフスタイルも多様化しています。
では、いったいどのような人たちが、独身の間にマンションを購入しているのでしょうか。独身でマンションを購入したという人を対象に、不動産コンサルティング会社がマンション購入時の年齢を調査したところ、20~30代が62%と一番多いという結果が出ました。
また、独身の間にマンションを購入した理由は
1位 家賃を払い続けるのがもったいなかったから:31%
2位 持ち家は資産になるから:22%
2位 魅力的な物件を見つけたから:22%
4位 住宅ローンの金利が安いから:19%
5位 消費税が上がりそうだったから:4%
という順位でした。
20~30代が一番多いというのは意外な結果に思われたのかもしれません。しかし、筆者の20~30代の顧客の方はみな、自立心が強く、経済観念がしっかりしていて、投資に関して柔軟な考えを持っている方が多いと感じます。なので、このアンケート結果にはなんの違和感もありません。
独身でマンションを買うメリットとは?
では、結婚前にマンションを購入するメリットについて考えてみましょう。上記のアンケートに答えたマンション購入者も、独身の間にマンションを購入することにメリットを感じたから購入したはずです。
たとえば第1位の「家賃を払い続けるのがもったいない」という理由。現在、月8万円の家賃を支払っていると想定しましょう。賃貸ですから、当たり前のことですが、いくら支払っても自分のものにはなりません。他方で、月8万円の住宅ローンを支払うことを考えてみましょう。フラット35の35年ローンで金利を2%と計算して考えますと、2,400万円借り入れすることができます。貯金があったり、親からの援助を受けることができたりすれば、3,000万円の物件にも手が届くかもしれません。
もう少し突っ込んで実例を挙げて考えてみましょう。
①Aさん(男性・27歳)
3年後、30歳で結婚し、子供に恵まれたため、32歳でマンションを購入。独身時代からの賃貸マンション(家賃8万円)にマンション購入まで住み続ける。住宅ローンの支払期間は35年で支払金額は月8万円。
②Bさん(男性・27歳)
27歳で支払期間35年、月8万円の支払いでマンションを購入。30歳で結婚。結婚後も独身時代に購入したマンションに夫婦で居住。
Aさんは住宅ローンを支払い終えるのは67歳です。他方、Bさんが支払い終えるのは62歳です。仮に65歳で退職し、退職金を両者とももらえたとしたら、Aさんは住宅ローンが残っているため、退職金を住宅ローンの返済に充てる必要があるのに対し、Bさんは62歳で住宅ローンを完済できます。退職金をまるまる老後資金に充てることができるだけでなく、62~65歳まで住宅ローン分を貯蓄にまわしたとすると8万円×12か月×3年=288万円にもなります。
他方、Aさんは27~32歳までの5年間、8万円×12か月×5年間=480万円、自分のものにならない不動産の賃料を支払い続けることになります。非常に単純化したモデルではありますが、それほどAさんとBさんとでは、将来の貯金の金額と老後の安心感が違うということをつかんでください。
ローンの残債があっても売却は可能
ここまでの話では独身でマンションを購入した人の意見を取り上げましたが、反対に賃貸派の意見を取り上げてみましょう。
まず「将来も同じところに住み続けるかわからない」という主張があります。確かに、サラリーマンですと転勤もあるでしょう。大きな会社にお勤めの方ほどローンは組みやすいものの転勤の可能性も高くなります。しかし、転勤した場合は賃貸に出すことで家賃収入を得ることができます。そうなると、住宅ローン相当分近くは家賃が月々入ってくることになります。
そのためには、物件選びが重要になってきます。さらに、「売却しようと考えた時に住宅ローンが残っていたら売ることができない」という思い込みがあります。しかし、これは大きな間違いです。私が立ち会った不動産取引の多くは、住宅ローンの支払い途中で売却しています。売買代金で残債を支払い、新たな自宅の住宅ローンを組むという方々も多数いました。もちろん、住宅ローンを完済できるだけの売却代金が入って来なければなりませんが、自己資金とプラスして完済できれば何の問題もありませんので、ご安心ください。
「住みたい」より「売りやすい」を優先しましょう
では、具体的に独身でマンションを購入するならどのようなマンションがいい(=高値で売却しやすく、貸しやすい)のか考えてみましょう。それはズバリ、資産性が高く、かつ、今後のライフスタイルの変化(転勤や結婚、出産など)に対応できる物件です。
そうした物件に共通しているのは、とにかく立地がよいこと。首都圏であれば、千代田・中央・港・渋谷・江東・品川・目黒の各区あたりがいいでしょう。エリアによっては文京・台東・豊島・新宿・世田谷・墨田の各区もいいと思います。
このエリアで、とにかく駅から近い物件を選ぶことで資産性をキープできます。エリアを外した場合、値ごろな価格の新築マンションが見つかったとしても、将来的な資産性は保つことができません。資産性が保てなくなると、なかなか借り手がつかず、売却するとしても売買代金より住宅ローン残高の方が多くなる可能性が高くなります。
上記のエリアで新築マンションに手が届かないのであれば、中古物件でもいいでしょう。とにかく目安としては上記のエリアで駅から近い物件がおすすめです。さらに専有面積は50㎡以上の物件を選びましょう。なぜなら、現在の税制度では50㎡以上なら住宅ローン控除の恩恵を受けることができるからです。
独身時代に買うマンションは、今後の資産性を重視して「住みたい」よりも「売れる」「貸せる」を優先した方がいいでしょう。
実際に売却するためには
ここからの話が最も重要なのですが、資産性の高い物件を購入したとしても実際にすぐに売却できるかは別の問題であるということです。
資産性が高いとは、あくまで換金しやすいということにすぎません。実際のところ、売りに出して買主が見つからなければ意味がないことなのです。業者買い取りを選べば、即時の現金化は容易ですが、仲介による売却価格よりも低くなります。一方、結婚し、家族ができ、家族みんなで新築マンションに住み替えたいと思っても、買い手がついて現金を手に入れられなければダメなのです。
しかし、あきらめないでください。不動産買い取り業者の中でも適正価格で購入してくれる会社も中にはあります。REDSの住み替えなど参考にしてみてください。くれぐれも信頼できる不動産会社にまかせることを忘れないようにしましょう。
坂井田 敬介(宅地建物取引士、行政書士)
司法書士事務所に勤務後、行政書士として独立開業。数多くの不動産取引を担当。その後、外資系生命保険会社に勤務。不動産を含むトータルの資産形成のコンサルティングを行う。