2018(平成30)年の公示地価が、3月27日に国土交通省から発表されました。東京都内では前年比で3.4%上昇し、5年連続となる伸びを見せました。発表された数字から国内の不動産や経済の現状について読み解いてみます。

 

地価公示,東京23区

(写真はイメージです)

 

商業地・銀座は不動の1位、ナンバーワン億ション街の座は赤坂に

 

まず基礎から押さえておきましょう。商業地で最も地価が高いのは、やはり銀座でした。銀座では『GINZA SIX』などの再開発が一巡しましたが、物販需要が旺盛で、引き続き店舗賃料が堅調のため、地価が上昇しています。山野楽器銀座本店前の土地は対前年比9.9%の5,550万円/㎡。堂々たる全国1位です。

 

住宅地は昨年まで全国1位だった千代田区番町地区(385万円/㎡)を、赤坂(401万円/㎡、変動率9.0%)が抜きました。千代田区番町地区は古くから高級住宅地としての名声は高く、富裕層による需要は堅調ですが、それだけ高いところを買うことができる人は限られるため、上昇が緩やかだったようです。これに対し、赤坂周辺では複数の再開発事業が進展していることや、「職住近接」を求める新興の富裕層によるマンション需要が旺盛です。東京商工リサーチの2017年調べでは、全国の会社社長が多く住む街のトップはここ数年、赤坂。新興の富裕層とは主にIT関連の経営者で、これも時代を反映しているようです。

 

リゾート、インバウンド需要が地方の地価に反映

 

近年、リゾート需要やインバウンド需要が高まった地方のエリアで地価が急上昇しているのも、今回の地価公示の特徴的でした。

 

住宅地の変動率の上位10位は、北海道と沖縄県でほとんどを占めています。北海道のスキー場「ニセコ」のある俱知安町が1~3位(価格は1㎡あたり1万7,000~5万円、変動率25.9~33.3%)、沖縄県の那覇市や浦添市などが4~9位(同10万9,000円~27万円、12.0~17.4%)を占めました。ニセコは外国人に大人気で、スキーに限らず登山やサイクリング、ゴルフ、乗馬とさまざまなアウトドアスポーツを楽しむことができる温泉地として、高級ホテルの進出も顕著。一方、那覇市に隣接する浦添市は那覇空港から近いという好立地もあって、海沿いのエリアにリゾートホテルや大型商業施設が数年以内に続々と完成予定です。

 

商業地の上昇率1位は上記の俱知安町(変動率35.6%)ですが、2位は大阪市中央区の道頓堀(同27.5%)でした。ここにほど近い心斎橋地区の地価は1,580万円/㎡で大阪市の1位でした。外国人観光客の増加による消費の高まりを受けた出店需要がその背景です。昨年まで、大阪市での価格1位はJR大阪駅周辺の北区・梅田のオフィス街(1,500万円/㎡、上昇率7.1%)でしたが、今年はそれが逆転しました。地元では「ついにミナミがキタに勝ったぞ」と大きな話題になっています。消費の動きが強いと店舗収入は大幅に増加するため、オフィス賃料に比べて店舗の賃料の上昇傾向が強くなります。キタとミナミの逆転はこれが原因ですが、いずれにしても商人の街・大阪はとてもにぎわっていることが分かります。

 

スタバがない荒川区がなぜ値上がり?

 

東京23区はどういう結果だったでしょうか。

 

特に住宅地で目を引いたのは、ほかの名だたるエリアを押さえて最高の地価上昇率6.1%をマークした荒川区(前年3.9%)です。荒川区といえば昭和の雰囲気を色濃く残した下町エリアで、東京23区で唯一、スターバックスが出店していないことでも知られます。住むには少し華がないというイメージから、地価上昇率1位というのは意外な感じを受けた方も多かったと思います。

 

荒川区がトップだったことは確かに目を引きますが、5%台では、北区5.6%(前年3.5%)、品川・文京区5.5%(前年品川区3.5%、文京区3.6%)、港区5.3%(前年5.2%)と続きます。昨年(平成29年)の住宅地の上昇率順位は千代田区7.5%、中央区6.2%、港区5.2%でしたので、今年の上昇率が高かった区は、いずれも、以下のグラフのように、地価の割安感があった区です。

 

 

上昇率が高かった一番の理由は、荒川区をはじめとする23区の東側エリアにマンション用地としての需要が高まっているためです。これまで上昇率上位は都心5区やその西側の区でした。しかし、ここ最近、地価と建築資材の高騰や建設作業員の人手不足などからマンション価格が高騰しており、庶民には手の届かない存在になりつつあります。地価が安い荒川・文京・足立区だと販売価格が抑えられるため、東部へ需要が移っているのです。

 

また、公示地価のポイントを見ると、住宅地17ポイント中、14ポイントで用途地域は準工業地域です。準工業地域は、工業地域と違ってマンションなどの住宅の建築は排除されません。したがって、マンションを建築するには、住居系の用途地域よりも建築規制が緩やかです。しかも、住居系では容積率200%が一般的なのに比べて、荒川区での準工業地域の容積率は300%~400%。デベロッパーにとっては、同じ土地の広さで1.5倍~2倍も多く建築できるメリットがあります。

 

さらに、2015年に開通したJR上野東京ラインの影響が表面化してきたことも理由のひとつとしてあげられています。ただ、荒川区は以前から交通の便がとてもよかったのです。日暮里駅にはJR山手線や京成線など5つの路線が乗り入れていますし、京成スカイライナーに乗れば成田空港まで最速36分で行けます。こうした交通利便性が優れているところにマンション需要が見いだされ、人気エリアとなるのは先例として足立区の北千住があります。北千住駅には4社5路線が乗り入れ、JR特急以外の全ての旅客列車が停車するという非常に強いスペックを誇っています。北千住のように日暮里が「住みたい街ランキング」に入る日がくるかもしれません。

 

30年前のバブル期を思わせる価格高騰の行方

 

不動産経済研究所によるマンション価格推移を見ると、2017年度の東京23区における1戸当たりの平均分譲価格は7,089万円で、前年度の6,629万円から6.9%上昇しました。7,000万円台に突入する勢いの一因には、高めの価格設定でも売れるタワーマンションの増加もありそうです。

 

東京23区に限らず、首都圏全体で見てもこの傾向は同じです。昭和の不動産バブルのピーク時(1890年)には、首都圏(1都3県)でのマンション平均分譲価格は6,123万円でした。上記調査によると2017年度の同価格は5,908万円となり、直近調査(2018年3月度)では6,220万円とついに1890年の価格を超えました。筆者が30年前に経験した昭和のバブル期を改めて思い出します。

 

ただ、当時のように不動産の価格が上昇しているといっても、世の中に当時のような浮ついた雰囲気はありません。また、政府によるデフレ脱却宣言がされていなかったり、賃金上昇の実感が乏しい人が大半を占めたりする現状では、バブルと言われてもピンとこないのも確かでしょう。そんな中、2020年の東京五輪後に不動産価格の暴落もありうるとの指摘がされていて、その予兆も出ているようです。

 

現在、金利上昇への懸念が世界的に広がっています。景気が非常に好調な米国では、10年物国債利回りが2017年9月の2.07%を底に反転し、現在3%に迫ろうとしています。同じく1年物国債になると上昇は顕著で、2015年1月には0.2%だったのが現在2.25%です。日本の日本銀行に当たるFRB連邦準備制度理事会は、これからも金利の上昇を予定していますし、今年9月にはECBヨーロッパ中央銀行が金融緩和政策を止める予定です。

 

国内においても、マイナス金利を含むこれまでの大規模な金融緩和政策による金融機関の無理な融資による弊害が、サブリース「かぼちゃの馬車」問題などとして表面化しています。金融緩和政策が資金利ザヤの縮小を通じて金融機関の収益を圧迫していることは日銀も認めており、社会の批判が高まったり現政権が倒れたりすれば政策転換を迫られるかもしれません。

 

バブル崩壊の引き金は、融資している金融機関が、これから予想される金利の上昇によって、いつ回収に走るか、その一点に絞られていると感じます。金利上昇=利息の支払が増える。今まで低金利が続いていたので、借入金が多額になっています。たとえば、金利が3%の時なら1億円借りる企業や投資家は、金利が0.5%であれば、その6倍の6億円を借りる傾向になるものです。

 

しかし、金利の上昇に見合った収益や家賃の上昇は見込みにくい経済環境にあるので、増えた利息の支払いができなければ、金融機関は、不動産を売却することで資金を回収しようと一斉に動き出します。当然、売却する価格は、相場に関係なくすぐに売れる価格です。あちこちで売り物件が増えると、ほかの売り物件と比べてより安い価格へと、負の連鎖が始まります。バブルの崩壊は、バブルに参加した人だけが影響を受けるのではありません。不動産価格が暴落すると、みなさんがお持ちの土地やマンションの資産価値が大きく目減りしてしまうことになります。国内はもちろん、海外の情勢に対して油断できません。

 

 

三浦雅文(みうら まさふみ)米国国際資産評価士・不動産鑑定士
土地家屋調査士・行政書士・宅地建物取引士の資格も保有。1954年北海道生まれ。大学卒業後、測量、登記、鑑定、総合不動産会社を経て独立。多分野での経験を活かした不動産のアドバイスとオールラウンドの鑑定評価を業務の中心に活動中。

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