株式会社住宅新報社では毎年、主要不動産会社の売買仲介実績を5月に公表しています。これは同社によるアンケート調査をもとにしたものです。今年も2018年3月期の各社の仲介手数料収入、取扱高、取り扱い件数などが公表されました。(※速報記事はこちら

 

過去2年、同データに基づき、各社の仲介手数料率を算出し、不動産会社の仲介手数料の実態を分析・解説してきましたが、3年目の今回も、分析と解説に挑戦してみます。

 

仲介手数料

 

2017年度も増収増益…2018年3月期 仲介手数料実績の概要

 

アンケートに回答したのは昨年と同様29社。『オープンハウス』の代わりに『ME グループ』が登場しました。オープンハウスは「極小邸宅」の販売で一気に成長を果たし、有名になった会社です。高収益性が話題になりましたので、こうしたアンケートの回答は自粛したのかもしれませんね。一方、『ME グループ』は関東圏を中心に展開する不動産会社です。

 

大手不動産会社は昨年度に引き続き、好調な業績に恵まれたといえるでしょう。単純平均ではありますが、取扱高で106%、手数料収入で105%の実績です。

 

2017年度も、『三井不動産リアルティ』『住友不動産販売』『東急リバブル』のいわゆる不動産ビッグ3が市場をけん引したといっても過言ではないでしょう。取扱件数、取扱高、仲介手数料収入、どれも他社を圧倒しています。東急リバブルは、一件当たりの取扱高が三井・住友の2社よりも高いため、2017年度は取扱高で2位を奪回しています。東急線沿線の人気の高いエリアを自社開発で販売しており、そうした物件を取り扱う機会が多いからといわれています。

 

仲介手数料率は、単純平均で4.5%。上位5社は5%を越えており、逆に3%以下の会社は1社しかありません。この構造も昨年とほとんど変わっていません。ビッグ3の実績を比較してみましょう。

 

  2016年度 2017年度
三井不動産リアルティ 5.22%(4位) 5.10%(5位)
住友不動産販売 5.13%(5位) 5.27%(3位)
東急リバブル 4.71%(13位) 4.17%(17位)

 

東急リバブルの仲介手数料が若干低めですが、それでも4%を上回っています。1件あたりの手数料収入が225万円ですから、なかなかよい収益率といえそうです。

 

今回のアンケートでは、仲介手数料率の1位はMEグループの8%というから驚きです。ん? 8%? ちょっと待ってください、おかしくないですか? 不動産会社の仲介手数料って上限が決まっていたはずですよね。そんなに高率の手数料収入なんて、あり得るのでしょうか。

 

仲介手数料率の上限は3%+6万円

 

REDSの『不動産のリアル』読者の方にはおなじみのことかもしれませんが、一般の方にはあまり知られていない不動産会社の仲介手数料について、簡単に解説しておきます。

 

不動産会社は、媒介契約に基づき不動産売買契約を成立させた場合(仲介した場合)に、依頼者から報酬を受けることができます。これを一般的に仲介手数料といいます。報酬の額は、宅地建物取引業法という法律で、国土交通大臣の告示によって定められた額を超えてはならない、と規定されています。つまり「上限額」が法律で定められているのです。

 

その上限額とは、当該不動産の売買金額の3%+6万円(売買金額が400万円を超える場合、消費税別)と、売買金額に応じて料率で定められています。法律で定められているのは上限額ですから、もちろんこの料率以下で決定することは法律違反ではありません。当事者同士で協議して定めるのが原則となっているからです。

 

しかし、前述の上位不動産会社の手数料率実績では3%以下の実績の会社は1社しかありません。大手不動産会社は、みんな法律違反を犯しているということでしょうか?

 

不動産取引は「両手仲介」もOK

 

不動産の仲介では、売買の当事者双方から依頼を受けたときは双方から仲介手数料をもらうことができます。これを「両手仲介」といいます。売主(または買主)から依頼を受けた不動産会社が、他の不動産会社の紹介に頼らずに独自で買主(または売主)を見つけて売買を成約した場合には、売主・買主の双方から仲介手数料をもらえます。

 

両手仲介の場合、それぞれ上限の料率を適用すると、(売買金額の3%+6万円)×2=売買金額の6%+12万円の報酬となります。つまり、「仲介手数料の上限額は、両手仲介の場合、6%+12万円」ということになります。

 

これまでの仲介手数料に関する基本的な規定を踏まえると、上位不動産会社の仲介手数料率の平均が4.5%ということについて、以下のように類推してみました。

 

(1)上限の手数料率を採用していても、平均4.5%の仲介手数料率を達成するためには、約半数の取引が「両手仲介」でなくてはならない。平均5%の料率であれば約3分の2の取引が両手仲介となる。

 

(2)上限以下の例えば2%の料率を採用していては、平均4.5%の仲介手数料はすべての取引が「両手仲介」でも達成できない。

 

従って、以下の仮説が成り立ちます。

a.大手不動産会社は、上限値からの値引きをあまりしない
b.大手不動産会社は、「両手仲介」志向である

 

上位不動産会社の仲介手数料率が、軒並み高いのは、上記の仮説で説明ができると思います。

 

しかし、それでもMEグループの8%の手数料率は説明がつきませんね。私企業についてあまり無責任な仮説を述べるのも差し控えたいと思います。(編集部注:この点について住宅新報の編集部に確認したところ「『手数料収入』には、不動産売買の仲介手数料の収入だけではなく、その他の収入も含まれる場合がある」という回答を得ました。)

 

「両手仲介」の弊害とは

 

民法では、自己代理・双方代理を原則禁止しています。売主の高く売りたいという利益と、買主の安く買いたいという利益は相反するため、売主・買主の双方代理を禁じているのです。

 

不動産の「仲介」は、代理ではないこと、商慣習上、という理由から「両手仲介」が認められています。不動産会社は「売主・買主のWin-Winの関係構築」を目指す、などといいますね。それは、売買の上で理想の関係です。しかし、売主・買主の利益が相反することには変わりありません。ぎりぎりのお互いの主張があって成り立つ合意こそがWin-Winの関係といえるでしょう。そこにはなれ合いがあってはならないはずです。

 

「両手仲介」は不動産会社の収益を高めますので、不動産会社が追求するのは営利企業として当たり前のことです。しかし、「両手仲介」を追い求めるあまりに、他社紹介の満額申入れの顧客を断り、値引きを要求する自社客を優先する(売主の利益を損なう)ようなことが起こりえます。逆に購入を依頼されている場合に、自社物件を多少条件に合わなくても優先して説得する(買主の利益を損なう)などということも起こります。こうした、顧客の利益を毀損(きそん)してでも、自社の利益を優先する事態が起こりやすいことが、「両手仲介の弊害」といえるでしょう。

 

いたちごっこの「囲い込み」手口と対策

 

こうした事例が高じると、「囲い込み」という悪質な手口が横行するようになります。これは売却依頼をされた物件の情報を他社に流さずに、自社の顧客だけを販売対象とすることを指します。顧客の利益のためには、広く早く情報を市場に流通させ成約に結び付けることが必要ですが、「両手仲介」による自社の利益を優先させるために情報を制限してしまうのです。

 

また、事業として不動産の購入を依頼する顧客の中には「市場に出ていない」情報を「お得な」「通だけが知ることのできる」情報だと重宝する傾向があります。不動産は「同じ物件が二つとない」特殊な市場であるため、「自分だけが知ることのできる情報」こそ大きな価値を持つ、という神話がまかり通っています。そのため、クローズドマーケットであること自体が価値を持つことがあるのです。

 

不動産会社の多くのウェブサイトでは「当社会員のみの独占情報」「ここでしか見られない非公開物件」「他社取り扱いお断り」などの宣伝文句があふれています。こうした煽り文句がまかり通っていること自体、不動産市場が「囲い込み」と親和性が高い市場であることを物語っているといえるでしょう。

 

不動産会社が売却の依頼を受ける場合、法律上は必ず媒介契約を依頼者と結ばなければなりません。媒介契約には、他社との契約が可能な「一般」媒介契約、他社とは契約できない「専任」「専属専任」媒介契約の3種類があります。不動産会社の宣伝文句の「非公開物件」はなんなのでしょうか? 

 

「専任」「専属専任」契約は、「囲い込み」を防ぐために、指定流通機構(通称:レインズ)という不動産会社専用の物件検索システムに登録することが法律で義務付けられています。「一般」媒介契約はレインズへの登録は義務付けられてはいませんが、「当社だけ」の契約ではありません。「当社だけの非公開物件」という煽り文句自体、法律上きわめてグレーな表現ということになりますね。

 

レインズに登録が義務付けられているならば、「囲い込み」なんて実行不可能なのではないかとお考えになるかもしれません。しかし、レインズで物件情報を見て連絡しても、「その物件は現在検討中です」「売主が海外旅行で今は連絡が取れません」などと言い逃れをする会社は多いのです。不動産会社も明らかにウソだと分かっていながら、あまりにもそういう数が多いために、聞き流してしまっているというのが現状です。

 

そのため、2016年1月以降は、取引情報として「公開中」「購入申し込みあり」「一時停止中」などのステータスの登録が義務づけられ、売主がその情報を確認することが可能となりました。そのようなことを法律で明記しなければならないくらい、「囲い込み」が慢性化しているのがこの業界のありのままの姿です。

 

仲介手数料率の自由化こそが「囲い込み」をなくす一歩

 

不動産の取引価格自体は、市況が決めるものです。仲介する不動産会社によって大きく価格が変わることは、理論上あり得ませんし、また、あってはならないものだともいえます。仲介する不動産会社の大小にかかわらず、取引価格は同等のレベルに収斂するはずです。しかし、仲介するコストや依頼者の利便性は不動産会社によって明らかに相違があります。

 

不動産の売買金額の3%というのは、かなり大きな金額となります。1億円の売買があると300万円、「両手仲介」だと600万円です。司法書士や弁護士の手数料と比較しても、不動産の仲介手数料は、高いといわれる所以です。私のような田舎町の不動産業者が、そのような取引をまとめることができれば、手数料など1.5%でも左団扇の暮らしができるのに、と夢想していないといえば嘘になります。

 

一方で、大手不動産会社は、ビジネスのために膨大なコストがかかっています。全国の一等地に店舗を構え、営業のみならず管理部門にも人員を配置し、広告宣伝費をかけてブランドを確立し、独自の物件検索システムや査定システムを構築して、取引をサポートしています。そこで収益を上げるためには、取引件数を増やすか、「両手仲介」をするしかありません。

 

仲介手数料の上限があるからこそ、なんとかそれを打破しようと「両手仲介」の様な手法を追求しなければならない状況だといえます。仲介手数料はサービスの対価です。

 

たとえば外食において、求めるサービスによって、ファストフードを選んだりフルコースのレストランを選んだりすることができるように、コストや規模、提供する内容に応じて、対価は自由に設定できればこそ、依頼者にとっても選択の幅が広がり、不動産業界のサービスの質も向上するのではないでしょうか。今年も各不動産会社の売買実績から仲介手数料率について分析しながら、そんなことを考えました。

 

早坂龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。1964年生まれ。1987年北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

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