1989年に導入された消費税。当初は3%でスタートしましたが、1997年に5%、2014年に8%と段階的に引き上げられ、2019年10月には10%まで増税される予定になっています。皆様の日常生活で最も身近で、増税の影響を大きく受ける税の1つではないでしょうか。
スーパーで買う100円のお菓子なら増税はわずか2円ですが、本体価格が数千万円にも及ぶマンションなどの不動産では、付帯する諸費用も含めて消費増税の影響は無視できなくなります。今回は消費増税が、不動産の購入時にどのような影響を与えるのかについて解説いたします。
土地は消費税非課税
消費税とは「消費する物品やサービス」の取引を課税対象とする税金です。マンションや戸建てなどの不動産は、土地と建物に分かれますが、土地に関しては「消費」に該当しないため、土地の取引は、消費税は非課税扱いになります。
例えば、税抜5,000万円のマンションの内訳が「土地500万円・建物4,500万円」であれば、消費税増税の影響は以下の通りです。
| |
本体価格(税抜) |
消費税8% |
消費税10% |
| 土 地 |
500万円 |
500万円 |
500万円 |
| 建 物 |
4,500万円 |
4,860万円 |
4,950万円 |
| 計 |
5,000万円 |
5,360万円 |
5,450万円 |
| 消費税分 |
|
360万円 |
450万円 |
土地の割合が大きくなればなるほど、消費増税の影響は小さくなります。タワーマンションは、少ない土地に高さのある建物を建てて多くの住戸に区分されますので、土地の割合が低層マンションに比べて少なくなるため、増税の影響を受けやすくなります。
売主によって消費税の影響が変わる
マンションや戸建ての売主は、「業者」と「個人」とがあります。業者とは、新築マンションや戸建てなどの販売業者です。また中古マンションなどを買い取り、リフォームして再販する業者も含まれます。これらの業者は基本的に消費税課税業者ですので、消費税の増税が販売価格に影響を与えます。
一方、個人が売主になり、宅地建物取引業者が仲介に入る取引態様では、一般的に物件価格に消費税は課税されず、増税の影響もありません。
ただし売主が個人であっても、購入時にかかる諸費用には、宅建業者の仲介手数料や登記手続きを行う司法書士の報酬など多くの項目で消費税が課税されます。これらの項目は、支払い先が個人(売主)ではなく業者であるため、消費税の課税対象となり、また消費税増税の影響を受けます。

(写真はイメージです)
諸費用における消費税増税の影響を検証
先ほどと同じ事例で、諸費用における消費税の影響をシミュレートしてみます。
※あくまで一例としてご参考にしていただき、詳細は不動産仲介業者などにお問い合わせください。
(例)物件価格:税抜5,000万円(土地500万円・建物4,500万円)、売主は個人
| 項 目 |
課税
非課税
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消費税 |
| 5%の場合 |
8%の場合 |
10%の場合 |
| 【契約時 |
| (1)手付金 |
非課税
|
5,000,000
|
5,000,000
|
5,000,000
|
| (2)仲介手数料 |
課税
|
819,000
|
842,400
|
858,000
|
| (3)印紙代 |
非課税
|
10,000
|
10,000
|
10,000
|
| 【残金決済時】 |
|
(4)残金
|
非課税
|
45,000,000
|
45,000,000
|
45,000,000
|
|
(5)仲介手数料(半額)
|
課税
|
819,000
|
842,400
|
858,000
|
|
(6)登記費用(税)
|
非課税
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約100,000
|
約100,000
|
約100,000
|
|
(7)登記費用(報酬)
|
課税
|
約84,000
|
約86,400
|
約88,000
|
|
(8)ローン事務手数料
|
課税
|
31,500
|
32,400
|
33,000
|
|
(9)ローン保証料
|
非課税
|
約800,000
|
約800,000
|
約800,000
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|
(10)印紙代(ローン
|
非課税
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20,000
|
20,000
|
20,000
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(11)固定資産税精算
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非課税
|
約60,000
|
約60,000
|
約60,000
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|
(12)管理費等精算
|
非課税
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約30,000
|
約30,000
|
約30,000
|
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合 計
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約52,773,500
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約52,823,600
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約52,857,000
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5%からの差額
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50,100
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83,500
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【備考】
(1):売買契約金額の10%としています。
(2)(5):仲介手数料は「(物件価格×3%)+6万円(税抜)」として契約・残金時に半分ずつとしています。
(8)(9):4,000万円を大手都市銀行から借り入れることを想定しています。
(借入金額や借入先の金融機関、残金決済の時期などにより費用は変動します)
(11)(12):固定資産税は半年分、管理費等は1か月分を精算することを想定しています。
この通り、不動産売買の諸費用における消費税増税の影響は、売買全体の金額から見ると0.1~0.2%程度であり、そこまで大きいものではありません。住宅ローン金利が0.1%違うだけで総返済額が数万~数十万円変わることを考えれば、増税を前に焦って売買を決断するほどの影響ではないと思います。
リフォーム工事などは要注意
前述の通り、不動産売買の諸費用に関しては、消費税増税の影響は大きくありませんが、引渡し後に大きなリフォーム工事を検討している場合は注意が必要です。リフォーム工事はもちろん消費税の課税対象で、増税の影響を受けるからです。
クロスの張り替えなど小規模なリフォームであれば増税の影響は小さいですが、スケルトンリフォームなど大規模なリフォーム工事になると、工事金額が大きくなり増税の影響も大きくなります。50万円の工事で増税の影響は1万円ですが、500万円の工事だと10万円に及びます。
昨今では、古めの中古マンションを購入して大掛かりなリフォーム工事(リノベーション)を行うプランも多くなってきています。このような場合には、消費税の増税を意識して検討を進めましょう。
消費税増税で中古市場も活発になる
主に個人が売主である中古市場では、消費税増税の影響は少なく、増税前に駆け込みで購入するという事案はそこまで増えません。
一方、新築マンションなど業者が売主である不動産は、消費税増税の影響を受けるため、駆け込み購入が予想されます。また、注文住宅の建築において消費増税を回避するためには、増税開始の6か月前までに請負契約を締結する必要があります(※)。
こうして消費増税前の駆け込み購入の契約後、住み替えのため現在の住まいを売却する動きが活発になるため、中古市場に売却物件が増えることが予想されるのです。
マンション・戸建て購入時は販売図面の税金表記をしっかり確認
消費税の増税は、売主が個人なのか業者なのかによって、その影響の度合いが大きく変わります。中古物件の販売図面には「課税・非課税」「税込」などが物件価格の近くに表記されていますので、しっかりと確認しましょう。もし記載がなければ、仲介業者に必ず確認してください。
また、増税に伴う新築マンションや注文住宅の駆け込み需要の影響で、中古の売買市場も活発になると予想されます。近々住み替えを考えているという方には、物件見学などお住まい探しに動き出す良い機会になるかもしれません。
斉藤勇佑(宅地建物取引士)
大学卒業後、5年間不動産売買業務に従事。その後、不動産管理会社に転職し、分譲マンションの維持・管理を中心とした業務に5年間かかわり、現在は不動産のストック分野の業務に従事。